アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

メカニズム派の呪縛(SIDSの例より)

2014年03月26日 | 生活
先日の記事で触れた「医学的根拠とは何か」(津田敏秀、岩波新書)ですが、そのときには半分くらいまでしか読んでなかったので続きを。

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子育てしたことある方は、必ずや「乳児突然死症候群(SIDS)」についてお聞き及びと思いますが、その聞き方は、お子さんの年齢によって異なるかもしれません。

SIDSは、たとえばビニールが口にかぶさってて窒息死したというようなこととは違います。そういう事故や、あるいはもともと心臓疾患があってというような病気を除いて、なぜか寝ているうちに亡くなってしまうことを指します。つまり、諸々の原因により元から乳児死亡率が高かったら、埋もれてしまってあまり話題に上りませんが、ほかの原因で死亡しなくなるとクローズアップされてきます。

日本でのSIDS死亡率は、1980年代に上がり、1990年代にピークを迎えます(その前がほんとに低かったというよりSIDSとしてカウントされなかっただけかもしれませんが)。

それはともかく、日本では1998年に厚生省からSIDS防止の観点から「うつぶせ寝」を避けるように警告が出されました。SIDSの発生率は1993年をピークに右肩下がりになっています。

1993年といえば、ちょうどまたろうが生まれた年です。厚生省からの警告はこの五年後に出されることになりますが、私がお世話になった助産院ではすでに仰向け寝を奨められました。先生は、「うつぶせ寝がSIDSの原因かどうかわからないみたいだけど、うつぶせ寝のほうがなりやすいという話もあるし、わざわざうつぶせ寝にする必要もない」というような言い方をしていました。

というか、寝ている赤ん坊をあやしたり、オムツを替えたりする場合は仰向けにしているということもあり、特にわざわざうつぶせ寝にしようと思わない限り仰向け寝になりますから私はそうしていました。そういえば、私の母も「うつぶせ寝のほうが頭の形がよくなるっていって、うつぶせ寝を奨められたけど、面倒だからなかなかそうできなかった」といっていました(笑) ちなみに、うつぶせ寝のほうが云々といって、うつぶせ寝を流行らせたのはかの有名なスポック博士らしいですよ。え? 知らない?? 今の若い人は知らないかなぁ。「スポック博士の育児書」っていって…まぁぐぐってください。育児業界のバイブルみたいなものだったこともあるんですよ。

ところで、「うつぶせ寝」とSIDSの関連ですが、うつぶせ寝にしたらSIDSに必ずなるというわけではもちろんなく(当たり前です。そんなんだったらさすがに流行りません)、SIDSになった子が必ずうつぶせ寝だったというわけでもありません。ただ、「仰向け寝」と「うつぶせ寝」で発生率を比べると、4倍から5倍になるようだ(数字は、研究により少しずつ違う)ということです。

「原因」という言葉をメカニズム的に捉えれば、「うつぶせ寝」をSIDSの原因と呼ぶには抵抗があると思います。呼ばないなら呼ばないでいいと思います。危険因子とか要因とか。SIDSの場合、ほかにも危険因子は見つかっていて、たとえば親の喫煙とかがあります。とにかく、「うつぶせ寝」をやめるようキャンペーンすると発生率が減る、というのは1998年よりだいぶ前からわかっていました。

1986年にはオランダ、1990年にはノルウェー、そしてイギリス・オーストラリア・アメリカなどの国が相次いで警告を出し、それぞれ発生率が減少することが確かめられました。

日本の厚生省でも、実はけっこう古く、1981年には大掛かりな乳幼児突然死研究班が立ち上がっていたのです。でもその研究班は1984年に再編されたのをきっかけに、メカニズム派(病態生理学的研究者)だけになっていました。研究班では当然、海外文献なども検討するので、他国でなされた疫学研究の成果とかも知ってはいたんですけど…

1994年の報告書:
「最も顕著なことはSIDSの歴史の中で偶然ではなく介入(アンダンテ注: うつぶせ寝やめろって警告のことね)によってはじめてSIDSの発生頻度が下がったことである」(アメリカなどの例について)
「疫学で示されているごとく、うつぶせ寝を止めることがSIDSを有意に減少させることが示されているが、その学問的な因果関係の説明は明らかではない」

と、ここまでいってまだ警告しない…

メカニズムが明らかでないから言えないんですね。まぁ、厚生省が言わなくても、SIDS家族の会などがキャンペーンを始めたり諸外国の例が報道されたりして、日本でも1993年から減少に転じたんですけど。何がそんなにひっかかっているのか、今から考えるとなんか不可思議ですけれども、研究班が警告を出すことに反対した理由については、この本に長々と引用されています。長すぎてここに写せませんが、たとえば、過去に「うつぶせ寝のせいではない」といわれて納得していた母親が、やっぱりうつぶせ寝をしなければよかったと自分を責めるとか、キャンペーン開始後にうつぶせ寝をしていてSIDSが起きた場合、責任問題に発展するのではという懸念とかが書かれています。気持ちはわかるけど…警告しない理由にはならないような。

この逡巡は、現在の子宮がんワクチンの話と似ています。話がうつぶせ寝の場合は、ワクチン業界の思惑といったような、儲け話とは関係ないのに、なかなか警告を出すことには踏み切れないわけですから。ワクチンが安全かどうかという議論の場合は、メカニズム論では究極の結論が出るわけがないので(「この成分から副反応が起こることはない」「この成分から副反応が起こることもない」…と、副反応が起こるメカニズムが見当たらないことを積み重ねることは、安全性を確認することとは違う)、早く頭を切り替えてまっとうな検討をしてほしいと思います。

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コメント (4)
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