先日、元同僚の方の個展に行ってきました。
並べられた作品は日本画。それも仏画です。
一緒に働いていた時は、日本画をされているということは知っていましたが、実際の絵を観たことはなかったので新鮮でした。
一緒に行った方に(その方も以前の会社の先輩)「あなたも絵を描くから、観かたが違うでしょう」なんて言われて恥ずかしかった。
まず絵のクォリティ自体違いますし、私は美専のグラフィックデザイン科で、卒業後会社で描いていた絵もぜんぜん種類の違うものですし。
ちょっとしたカットやイラストマップ、イベントのポスターやメニューのイラストなど……。
お客様は雑誌の切り抜きなど持ってきて、「こういうタッチで」などと言いますし、個性も何もあったものではありません。
(もっとも、それが心から嫌だったわけではないですけどね。何より仕事だし、縛りがある方がむしろ描きやすい方だし、お客様の要求にこたえるのも好きな方だった。仕事に自分の好き嫌いなんて関係ないと思っていた)
もちろん、いいかげんに描いているのではない、自分なりのベストを尽くすわけですが、アートではない。
線ひとつもおざなりにしない、とか、まして自分の内面に向き合うとか、そういう経験は残念ながらないんですよね。
仏画だから、自分の内的宇宙とか、仏教の思想や歴史の自分なりの理解の表現、なんていうのにもかかわっていそうで、正直、足を踏み入れたことのない未知の世界でした。
でも、もちろん、自分なりに絵を観ることを楽しみました。難しいことは分からないけれど、澄んだ美しい色合い、色のバランスには感心したし。
それに、個人的に印象的だったのは線でした。迷いのない、のびやかな線。とても軽やかで、天女が舞う飛天の絵が多かったのですが、いかにもふうわりと、飛び立ちそう。
細かな筆致の確かさにも感心しました。大きな曼陀羅の絵を前にしたときは、仏教に知識のない私も、内部に入り込んでいくような感覚がしましたし。
そうして、個人的に一番印象的だったのは、真っ赤な童子の絵でした。夢に出てきた光景だそう。夢のストーリーを作品にしたことは私もありますが、絵にする、ということもあるのだなぁ、ととても新鮮でした。
謎の絵もあって、作者に絵の意味を聞ける、というチャンスは普通ないので、尋ねてみました。
するとそれは、施主、絵の依頼人の方の要求だということでした。なるほど。
(おもえば、アートの世界だって、クライアントの要求に合わせる、ってことがあるんですよね。っていうか、印象派以前は西洋絵画も王侯貴族のために描かれて個性も際立ってなかったような)
平日だったのでゆっくり見られて、ふわあ、と自分の体も軽くなるような、春を感じる時間でした。