自分史 物怖じしない国際人を育てるヒント集

近現代史に触れつつ自分の生涯を追体験的に語ることによって環境、体験、教育がいかに一個人の自己形成に影響したか跡付ける。

父母の国/第一歩

2012-04-06 | 体験>知識

横浜のホテルで第一夜を迎えたはずだ。
住宅地を意図的に狙った横浜大空襲で8千人余りが犠牲になったのに焼け跡の
記憶がない。
はとバスに乗って東京名所巡りをしたらしい。
二重橋、浅草、・・・見たようで見なかったようで記憶が定かでない。
探せば焼け跡も闇市もまだ有ったかもしれない。
なにせ東京大空襲は1晩で10万人以上が亡くなるほど酷かったのだから。
船が通るときだけ交通を止めて開閉する勝鬨橋以外何故か何も覚えていない。
勝鬨!
何たる皮肉、父母たちは負け組による勝鬨の耳鳴り、幻覚に、悩まされなかった
か?
だがこの間、父は横浜の中華街に両替の闇取引に行った。
母国に持ち帰ったドルを1ドル360円の公定レートで円に替えるものは誰もいな
かった。
1ドルが闇で400円になった。
危険を犯せばずっと高く売れただろう。
1万ドルぐらい胴巻きに入れていたと想像できるのでマジックのように一瞬にして
金持に化けた。
アメリカ、ブラジル等の連合国が勝った、これほど実感できる証拠がほかにあろ
うか?
今日からわたしはアメリカ帰りの金持ちの坊ちゃんと見られることになる。
日本人にとってブラジルはアメリカだった。
その頃アメリカ人は畏敬の対照だった。
まもなく父の故郷でそのことを実感することになる。



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