5,6歳頃、新築したわが家で。
連合敵国の中に居ながら何ら圧迫を受けず繁盛できたことに今さらながら驚 いている。
左手は天日で皮付きコーヒーの実を乾燥するセメント張りテレーロ、その奥は乾燥済みのコーヒーを落とし込む2階建て倉庫。戦争中この中にピストルを隠していた。
落成直後のことだと思うがテレーロと家の間を妙齢のインディオ娘が通り過ぎて行ったことがあった。
家はポーチから入ると右手に裁縫室と寝室が縦につらなり,それらの左が広い応接室だった。最奥にダイニングキチンがあった。典型的な精農の家だ。
3人家族だったが入れ替わり立ち代り叔母といとこたちがわたしの子守に来ていた。
戦争中密告を受けて警官が家探しに来たのをおぼろげながらおぼえている。
容疑は銃器所持であったが倉庫までは探さなかった。
父母が恐れていたのは隠していた「御真影」(天皇の写真)が見つかることだ った。
御真影が夷狄に没収されることは今日では想像できない程畏れ多いことだった。