今宵の東京ジングフェラインの「マタイ受難曲」レッスンは、大阪組、厚木組からの参加者に加え、男声に3名の賛助出演者を迎え、たいへんに充実したものとなった。
本番のイメージがようやく見えてきた想いがする。その意味で今日はひとつの記念日と呼べるかもしれない。
そうした満ち足りた気持ちで帰宅し、早速、マイソニックラボのEminent Soloをヘッドシェルに装着。クナッパーツブッシュのブルックナー4番 英デッカ・オリジナル盤を再生したが、実にお見事。ウィーン・フィルの溶けるような金管群、鄙びた木管群、そして、艶やかな弦の歌に恍惚となった。間違いなく、我が家でクナッパーツブッシュのロマンティックが最も美しく鳴り響いた瞬間である。
夜も更けてきたので、ブルックナーは第1楽章のみに留め、いまは手に入れたばかりのフィッシャー=ディースカウの歌うヴォルフ「メーリケ歌曲集」を聴いている。ピアノはジェラルド・ムーア。同歌曲集53曲中の37曲が3枚組のレコードの5面にわたって納められている。6面中の1面はブランクだ。レコード番号は英EMI ALP1617-19でもちろんモノーラル・プレス。同じ歌唱のステレオ・プレスの有無は分からない。
いやあ、なんという歌唱芸術だろう。この完璧の前に言葉は不要。フィッシャー=ディースカウの歌声が忙しさに疲れ、ささくれ立った我が心を穏やかに調律してくれるようだ。
この凄みを孕んだ美しさ、若い頃には分からなかった。上手すぎると敬遠していたことを恥じるのみだが、いまこうして素直に享受できる自分を歓びたい。