18日(土)の名古屋公演につづき、チョン・キョンファの大阪公演を聴いた。ちょうど、その間の19日に大阪フィル合唱団のレッスンがあったため、1日滞在をのばして聴くことにしたのだ。
プログラムは全く同じ。
正直、名古屋公演を聴き終えたとき、「大阪公演の切符を買ったのは早まったか?」と思わないでもなかった。しかし、今宵は聴きにきて本当に良かった。
プログラム冒頭のベートーヴェン「スプリング」から、名古屋に較べて全く音が違った。否、袖からステージ中央への歩みから違っていたといってよい。名古屋公演の後半以降、チョン・キョンファの魂に灯った焔がそのまま持続しているのを感じたのだ。
技術的には彼女の全盛期と較べるべきではないし、今もっと上手い若手はごまんといるだろう。しかし、魂の自由さと言うのだろうか、ベートーヴェンの霊と対話をしているような趣は、なんとも得難い美しい体験であった。
ヴェーベルンは今宵の白眉。名古屋以上の緊張感の漲るビアニシモに魅せられた。
アンコールも同じ3曲であったが、演奏順はエルガーとブラームスが入れ替わっていた。ブラームスは名古屋のスリリングさには及ばなかったものの、エルガーはいつまでも続いて欲しいと願わずにおれない心の音楽。ああ幸せだった。
今宵の感銘は、名古屋公演を聴いたことで一層深いものとなった。とともに、彼女の30代の頃の女豹のようなステージ姿と今の彼女を重ね合わすことで、人生を思わせるズシリと重みのあるものとなった。
ところで、久しぶりのザ・シンフォニーホール。ホール内を散策していたら朝比奈先生とお会いできた。良い写真だなぁ。
かつて、オープン直後のこのホールで聴いたブラームス「1番」やベートーヴェン「エロイカ」の響きが脳内に蘇った。