徒然なるまままに

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ドビュッシー 、音楽と美術 ー印象派と象徴派のあいだで

2012-09-16 | 絵画
9月16日
  • #42 オルセー美術館、オランジュリー美術館共同企画
    ドビュッシー 、音楽と美術 ー印象派と象徴派のあいだで
    @ブリジストン美術館

    ドビュッシー の音楽のリズム感、色彩感が、10章の絵画を見て、すこし分かったような気が。


    クロード・アシル・ドビュッシー(1862-1918)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスを代表する音楽家です。その作品は、伝統的な楽式・和声を超えて、自由な音の響きを重視した感覚的な印象を表現する革新性によって知られています。
     音楽史上でドビュッシーを最初に「印象派」と呼んだのは、1888年末のフランスの音楽アカデミーでした。ドビュッシーの2番目のローマ留学作品をおとしめることが目的だったようです。かならずしも美術史上の印象派との関連からそう呼んだのではなく、アカデミックな伝統的手法を無視した作曲態度を非難するためだったのです。印象派の画家たちにとってはむしろ名誉なことだったでしょう。
     現在の音楽史の通説では、ドビュッシーは象徴派に位置しています。歴史的な流れからすれば、美術の場合も音楽の場合も、印象派のつぎに登場するのは象徴派です。印象主義によって写実主義が完成したと考えるならば、その後を行く前衛芸術は反写実主義を標榜せざるをえません。象徴主義はその急先鋒のひとつです。しかし、印象派の代表者モネの例にみられるように、印象主義を究極的な地点にまで追求すると象徴的な表現に到達します。つまり、印象派と象徴派とは、反発する面と通底する面があるのです。画家のワシリー・カンディンスキーは、ドビュッシーについて、つぎのように記しています。

     ドビュッシーのように最も現代的な音楽家たちは、おおむね自然から印象を借り出してきて、それを純粋に音楽的な形式をとった精神的イメージに変容させる。そのためドビュッシーは往々にして印象派の画家たちと比較された。 印象派の画家と同じ方法で、彼は自然を自由に翻案して、極めて個性的な曲を作る、と主張されているのだから。しかし、この定義だけでドビュッシーの重要性を説明できると言い張るのは無理があろう。 印象派とのこのように共通点があるものの、彼は心の内側にあるものと切に向き合ったのであって、そのため、作品の中には、現代人の魂のひび割れた音、そのあらゆる苦悩と神経の慄きの音をすぐさま聴きとることができる。
    カンディンスキー『芸術における精神的なもの』1912年より

     ドビュッシーが活躍した時代は、まさに印象主義と象徴主義が拮抗しながら影響し合う意趣ゆたかな時代でした。ドビュッシーの創作には、同時代のジャンルを超えた芸術の影響が顕著に表れています。彼が生きた時代には、音楽や美術、文学、舞台芸術が互いに共鳴しあい、芸術家たちが共同で作品を創り上げることもありました。ドビュッシーはその代表的な存在です。たとえばその代表作「牧神の午後への前奏曲」(1892-94年)は、象徴派の詩人マラルメの「牧神の午後」(1876年)に感銘を受けて生まれた作品ですが、1912年には、舞踏家ニジンスキーによるバレーの振り付けを伴い、美術家レオン・バクスト装飾によるバレー・リュスの舞台で上演されました。その総合芸術としての革新性は、芸術界に大きな衝撃を与えました。
     ドビュッシーは若き時代より、3人の仲間———画家アンリ・ルロール、作曲家エルンスト・ショーソン、高級官僚アルチュール・フォンテーヌより、同時代の革新的美術の存在を知らされました。そして彼らのコレクションの中にあったドガ、ルノワール、モネ、ヴュイヤール、カミーユ・クローデル、モーリス・ドニ、ボナール、ルドンら印象派やポスト印象派、象徴派の美術家たちの作品に多大な関心を寄せるようになったのです。彼は、しばしばそれらからインスピレーションを得て、自らの創造活動に反映させました。それゆえにドビュッシーの作品には、ピアノ曲「版画」(1903年)や「映像」(1905-12年)のように、視覚芸術を想起させる作品が多くあります。さらにドビュッシーは、日本美術にも関心を寄せて作品を蒐集し、1905年に上梓された交響詩「海」(1903-5年)のスコアの表紙には、葛飾北斎の《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》に倣ったイメージを使用したことが知られています。
     2012年は、ドビュッシーの生誕150年にあたります。オルセー美術館、オランジュリー美術館との共催により、石橋財団ブリヂストン美術館と日本経済新聞社は、これを記念して、ドビュッシーと同時代の芸術、なかでも美術との関係に焦点を当てた展覧会を開催いたします。ドビュッシーが愛した印象派や世紀末の芸術家たちの絵画、彫刻、工芸作品のほか、愛蔵品や直筆の手紙、写真などの資料を展示し、ドビュッシーを取り巻く19世紀末のジャンルを超えた芸術創造の精華をご紹介いたします。
     本展は、オルセー美術館、オランジュリー美術館、そしてブリヂストン美術館の所蔵品を中心に、国内外から借用した作品約150点で構成されます。パリではオランジュリー美術館、日本ではブリヂストン美術館のみの開催となります。









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