死とは、重いテーマです。
あるいは、少なくとも、重くて暗くて忌むべきテーマだと、私たちの多くは信じ込んでいます。
社会の常識を代表するテレビ番組が映し出す死は、例外なく暗くて灰色のトーンで描かれます。そこでニコニコすることなど決して許されないという空気感、死はやはり悲劇以外の何ものでもないと、すでに最初の最初から決めてかかっている。まるで、それ以外のありようなどないかのような圧倒的な印象で。
けれども、これが死の真実の姿なのだろうか、これが生きるということなのか?
自分自身の死について見つめれば見つめるほど、こうした問いは切実なものになっていくのではないでしょうか。
それで思い出すのが、日本映画の巨匠黒澤明の晩年の作品「夢」です。名監督として名を馳せた彼が、自分の伝えたいメッセージを思いのままに描いたこの映画は、全編がまさに夢のワンシーンのような短編で織り成され、その物語はすべて、人類の行く末に警鐘を鳴らすような鋭い視線に貫かれているのですが、その最後の物語のテーマがお葬式でした。生を生き切って亡くなった女性を送る葬儀は、まるでお祭りかと見まがうような陽気なもの。人々はカラフルな衣装をまとい、鳴り物入りで練り歩き、にぎやかに、死者の旅立ちを祝うのです。
この映画を見たのはずいぶん昔のことですが、人生を締めくくるにふさわしい、喜びに満ちた美しいシーンがとても感動的でした。
インドのOSHOの瞑想センターでは、彼の存命中はもとより、今でも近しい弟子が亡くなるたびに、この映画に描かれたようなお祝い、「デス・セレブレーション」が行われます。私も初めてインドに渡って間もないころ、訳も分からないままにその場に居合わせたことがありました。日本のお葬式からは考えられないアップテンポでビートのきいた音楽に乗って、激しいダンスとともに、亡骸が近くの川べりの火葬場へと運ばれたあと、弟子たちみずからの手で薪が積まれ、火がかけられる。炎に包まれていく身体を静かに見守るのは、じつに強烈な体験でした。喜びと悲しみが交錯する瞬間、みずからのいのちを見つめ直す、かけがえのない瞑想の機会……そしてOSHO自身もまた、たくさんの弟子たちに祝われ、感謝と喜びの涙とともにこうして見送られたのです。
OSHOは、死とは生のクライマックスだ、究極のオーガズムなのだと語っています。
この言葉が指し示すヴィジョンの一瞥とともに、生き方そのものが丸ごと変わってしまう――本書は、そんな大きな潜在性を秘めた一冊です。
これは、弟子を目の前に、朝に夕にOSHOが語った膨大な講話から、テーマに添った内容を集めて編まれた編集本です。実際に死に直面している人たち、その家族や友人たちの切実な問いに、妥協なしに真実を語りかけている内容であること、それこそが本書のすばらしさです。ここで語られているメッセージは、じつにストレートです。死が差し迫っているときには、もはや無駄な時間はない。何かがなされなくてはならない。その切迫感こそ、真に大切なこと、自分自身の真実に目覚めるための、大きな原動力になりうるのです。
ですからこの本は、あなたにとって、かつてなかったような魂のための実用書になるかもしれません。最初から順序立てて読む必要はありません。あなた自身の人生の切実な問いを頼りに、どこからでも、そして自分なりのペースで読み進めてもらえばいい。
そして興味が湧けば、どうぞご自分で瞑想法を試してみてください。
一つ言っておきたいのは、OSHO自身が忠告しているように、彼の言葉を鵜呑みにはしないでほしいということ。彼は、自身の体験とヴィジョンを分かち合ってくれてはいますが、今までの信念の代わりに彼の言葉を信じたとしても、何の役にも立たないからです。彼は、お手軽な回答を与えてくれはしません。私たちをけっして子供扱いしないのです。そこには、私たちの持つ可能性への全面的な信頼があるからです。
私は訳者として本書にかかわるという幸運を得て、これまで何度となく原稿に向き合う機会がありましたが、師のあまりにも大きな慈愛に圧倒され、目頭が熱くなることもしばしば。読むごとに新しく、ハッと自分に戻される体験の連続でした。これについてはもう分かった、という地点は決して来ない。読書体験そのものが、目覚めへのプロセスになりうる。本当に、ありがたいというほかありません。
また、「あとがきに代えて」で取り上げている抜隊禅師による経文ですが、OSHO自身が禅師の原文を当意即妙にアレンジした節があります。元々史実にはとんと頓着せず、核心が伝わることしか念頭になかった彼の自由自在な表現から、肝心肝要なメッセージが伝わることを願っています。
最後になりましたが、この本がこうして世に出るまでに、大変多くの方々のご尽力がありました。英語の原書をまとめ上げ、人々が意識的に生き、死ぬためのサポート「OSHOサマサティ」を主宰するマニーシャ・ジェームス、OEJブックスの江谷信壽さん、めるくまーるの梶原正弘さん、奥村友彦さん、 編集長の高田勝弘さん、 デザインのJUNさん、 照校のニラーラ、 編集のまどぅりさん、営業の大澤環さんをはじめ、有形無形の存在からの愛と力添えに、こころからの感謝を捧げます。
OSHO、ありがとう! そして本作りに関わった私たちの熱い熱い思いが、どうかあなたに伝わりますように。
2014年 今年最大の台風が本州に上陸した夜に
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さいごまでお読みいただき、ありがとうございます~
これは、「訳者あとがき」として書いた文章ですが、諸般の事情により、書籍はOSHOの言葉のみの出版となりました。
もしも何かがあなたのハートに響いたら・・・
ぜひ書店でお手に取ってみてくださいネ
「死について 41の答え」
OSHO 著/伊藤アジータ訳
四六判/並製/ 456 頁(本体2,400 円+税)
ISBN978-4-8397-0160-4
発行元:OEJ Books 発売元:めるくまーる
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