あいりのCinema cafe

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さらば、わが愛 覇王別姫(劇場にて)

2004-10-31 11:57:35 | 中国映画 (19)

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監督: チェン・カイコー
出演: レスリー・チャン/程蝶衣
チャン・フォンイー/段小樓
コン・リー/菊仙 1993年

冒頭、娼婦らしき母親が京劇学校に、育てられない子供(後の程蝶衣)を預けようとする。
子の指に問題があると指摘され、母親はその場で子の指を斧で切り落とす。
これでガツンと目を覚まされる衝撃の場面から映画は始まる。
チェン・カイコー監督で中国映画、お、お、重いです;ずっしりきます。

1925年当時、京劇学校は寄宿制であり、その訓練たるや過酷なものだった。
蝶衣は女形として訓練され、身も心も女であれと仕込まれる。
成人した蝶衣の想いを他所に、いつも兄のように蝶衣を庇ってくれた段小樓は美しい娼婦、菊仙と結婚してしまいます。
そこから3人の愛と憎しみ、戦乱の中での京劇の存続が描かれていく。

母に捨てられ、女であることを強いられ、蝶衣には段小樓を愛するという以外に生き方はなかったのでしょう。
レスリー・チャンは蝶衣が憑依したかのような凄絶な熱演ぶりでした。
なぜ自分は女として生まれなかったのか、菊仙への嫉妬に狂おしげに涙を流す蝶衣の哀しみが心に痛いです。

また、菊仙の女としての強さがとても印象に残に残りました。
嫉妬と京劇の花形の座を狙う若手の嫌がらせ。
苦悩の中、アヘンに溺れる蝶衣を立ち直らせようとする菊仙の姿は母を思わせます。
文化革命のあおりで、京劇役者は互いを弾劾させられ、
切羽詰った時の人間の弱さと愚かしさの現実には目を覆いたくなりました。

そして10年後、蝶衣と段小樓は再び舞台に立つことになりますが。
衝撃のラストシーンには驚きで涙も出なかった。
ふと思ったのだけど、老いていく段小樓をひとり残していくことで彼にに復讐したのではないかしら。
蝶衣の涙の滲む顔は段小樓を哀れんでいるようにも見えて仕方がないのです。

思えば、レスリー・チャンが蝶衣だったのか、蝶衣がレスリーだったのでしょうか。

事実上、芸能界を引退していたレスリーが是非にと乞われて演じた蝶衣。
撮影中のレスリーは蝶衣に成りきって奇異にも見えたらしい。

レスリーが何を想い蝶衣を演じたか、今となっては知ることはできません。


今すぐ抱きしめたい(劇場にて)

2004-10-30 10:35:53 | 香港映画 (57)
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監督 ウォン・カーウァイ
出演 アンディー・ラウ 
    ジャッキー・チュン 
    マギー・チャン 1988年、香港

ウォン・カーウァイ初監督、出世作です。

特殊な黒社会が背景の映画だけど、そこでしか生きることのできない若者たちの出口の見えない青春を描いた映画でした。
ヤクザ組織の一員ワーのアパートに遠い親戚だというマギーがやって来る。
ワーには、いつもヘマばかりやっているが憎めない弟分がいる。
彼がふと香港の街の頭上を飛ぶ飛行機を見上げる場面があるけど、
あれはこの世のしがらみを捨てて、何処か遠くに行きたかったのではないかしら。

故郷に帰ったマギーを忘れられないワーは後を追う。
バスに乗るワー、緑が目に沁みるカーウァイ監督らしいシーンだと思います。
また、王傑(ウォン・キ)のシャンソンを思わせる歌声が流れるようで。
そう言えばこの映画、どこかフランス映画を見ているようです。

若い二人が再会し、駆け寄り互いを求め合い。
魂が求め合い若さが爆発する・・・何度見ても胸を打つ素敵な場面です。

この映画の原題は「モンコック・カルメン」だけど、カルメンはワーのことだと言われています。
恋人を想い、彼女との地道な生活を夢見て、
けれど、弟分を救うために結局はヤクザ世界に戻っていく。

恋人と弟分の間を揺れながら行ったり来たり。切ないです。

別れの日、二人はお互いを少しでも長く見つめようとする。
バスの中で頭を巡らせマギーを探すワーは迷子の子犬みたいに心細げで。
やがて、あきらめて背を向けるマギー。

「もう、会えないかもしれない」・・・

やっぱり弟分は見捨てられないか・・見ている私も心が揺れます。

ここから結末に触れています。
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最後に、路上にまるでボロ布のように倒れるしがないチンピラの脳裏をよぎったのは・・・
この場面でパタパタパタと鳥が羽ばたくような音が聞こえるのは気のせいかな。
ワーが地上から飛び去った音にも聞こえる。

ちなみにこのラストは実際は二通りあるそうです。
韓国版ビデオなどはワーは生き延びるのか。

こちらのほうがシンプルでいいらしいです。

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2046 (劇場)

2004-10-30 08:25:21 | 香港映画 (57)

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監督 ウォン・カーウァイ
出演 トニー・レオン 木村拓哉 
    チャン・チェン コーン・リー 
    マギー・チャン カリーナ・ラウ
    フェイ・ウォン チャン・ツィイー
今週はゆっくりとPCの前に座れなくて、久々の日記です;
さて、早く書きたかった『2046』の感想で~す♪

ん?何だろうこの感覚?
遠い未来から響いてくるような音楽と共に、虹色の光の洪水2046年の香港が目の前に広がった時のあの感覚は。。
ミステリートレイン?・・

まだこの映画を見ていない人のお楽しみに、できるだけおしゃべりは控えたつもりだけど。
これから見る予定の方はザッと流し読みして下さるといいかも。

映画は『花様年華』に続いてはいるけど、見ていなくても大丈夫だと思います。
ただ、カーワイ監督のこれまでの映画を見ているとより楽しめますが。
とても感覚的な映画で、シナリオなんてあったのかなかったのか、この映画をダメだと言う人の気持ちもよくわかるな。

お話はいたってシンプルで、ただ映画の雰囲気にドップリと浸かってればいいだけ。
人は誰もが秘密を持っているし。
2046は想像の中だけで存在するのだから。

『恋する惑星』と同じように人々は交錯し、互いの想いはすれ違っていく。
”輪廻”

前の日記に書いたように私は『欲望の翼』には思い入れがあって
ミミが出てきた時は悲しい映画じゃないのに涙がこぼれそうになった。
『欲望の翼』のラストシーンから今もずっと彼女は彼を探す旅を続けている。
カリーナは素敵過ぎます。カ、カリーナ~~~ア♪

また、『恋する惑星』と同じようにトニーレオンがやはりフェィ・ウォンに恋をするのが微笑ましい。
アンドロイドは物悲しいけど、『2046』はどうやらこの二人が主役らしい。
二人を軸に人々が関わっていく。
そして、ある二人がタクシーの後部座席に座り寄り添う場面はどこか『ブエノスアイレス』を思い出させる。
みんなが旅人で、自分の行く先を知らない。ミステリートレイン・・

「あなたは私を愛していないけど、私はあなたを愛している」
あっ、そうか、チャウはヨディなのかもしれない。
じゃあチャン・ツィイーはコーラ売りのマギー?
そんな深読みもまた楽しい。

人生なんて終わりのない旅みたいなものかも知れない。
確かなのは今という時間だけ。
”刹那”

カーウァイ監督よ、心地よい映画をありがとうと心に思いながらぽ~~っとして、私は電車を乗り過ごした。うう~涙

ラストシーンで私はこの映画はまだ終わっていないと思った。
それから、もうひとつ、『2046』の中にレスリー・チャンは出演していないけれど、彼はそこに確かにいた。


トカゲの次はノックテン;

2004-10-21 19:46:31 | 日記・エッセイ・コラム
ふ~ん、これ台風の名前なのね。
ノックテンってカクテルかなんかみたいな名前だけど、ラオス語で”鳥”の意味だとか。

それから、よそ様のブログを読んで初めて知ったけど、このブログにスポンサー広告がついたのね。
それが、当たり前だろうか?ちゃんとそのブログ人のカテゴリーの広告が載ってる。
旅行好きの人には格安旅行案内、グルメな人には食べ物、私は当然映画の広告。笑
いやあ、面白いんじゃな~~い。

って、映画製作への道とか、女優を目指すにはとか、書いてるんだけどお。。
ちょっと手遅れなんですよね、私には。。






花とアリス

2004-10-20 11:38:38 | 邦画 (69)
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監督・脚本・音楽: 岩井俊二
出演 鈴木杏/花 蒼井優/アリス 郭智博/雅志
   相田翔子/アリスの母 平泉成/アリスの父 
   大沢たかお 広末涼子 ルー大柴 1994年

映画館では見ることができず、ビデオで見た。
『スワローテール』『LOVE LETTER』の監督の映画であり期待もあったが、今回は高校生の世界を描いて可愛い童話のような映画だった。

花とアリスは幼馴染で親友、仲良くバレエを習っている。
なぜ花とアリスという名前なのかは見てのお楽しみです。笑
花のほうが見たところ活発に見え、恋とは縁遠い感じ。
でも、意外に繊細であることが後に或る事実で分かる。

アリスは普段はとても明るい少女だが、離婚した両親の間で彼女も心を痛めている。
アリスと父親のデートの場面が素敵でホロリとします。
花が通学電車の中で、恋をしたらしい。
それから彼女がついた嘘から花、アリス、雅志の関係はこんがらがっていく。

険悪になりそうな状況なのに、花とアリスは純粋で優しさを失わない。
彼女たちが仲良しなのも或る理由があるから。笑
涙と笑いの中で、春の桜、夏の緑、雨が美しい。
バレエの衣装、チュチュ姿の少女たちは白い蝶の精みたいです。
岩井監督らしく映像はピカイチ。
韓国映画にも負けてはいない。笑 うっかりすると負かされそうだけど。。
監督自身が作曲した(驚きました)ピアノ曲が心に軽やかに響く。

何といっても、圧巻はアリスのバレエのシーンでしょうか。
背景が真っ白で、なぜかコーヒーに浮かんだ白い生クリームが目に浮かびました。
仕事に追われる辣腕のカメラマン(大沢たかお)がフと穏やかな顔になる、アリスの瑞々しいこと!
蒼井優さん良いですねえ。

岩井監督さんってほんとに繊細な優しい人なんだなあ。
若い人にはおススメです。
高校生をもう何十年も前に卒業した私も、見終わって清清しい気持ちになれる映画でした。