英題(Don't laugh at my romance)
監督 井口奈己
原作 山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』
出演 永作博美(ユリ)松山ケンイチ(磯貝みるめ)
蒼井優 (えんちゃん)忍成修吾(堂本)
あがた森魚 (猪熊・ユリの夫)
温水洋一 (美大の教師)
桂春團治(みるめのじいちゃん)
2008年、日本
恋におちる。
世界がかわる。
19歳のボクと39歳のユリのいかれた冬の物語。
>>「みるめくんに触ってみたかったんだよね」
19歳の美術学校生のみるめ。ある日、絵のモデルを20才年上の講師ユリに頼まれる。その気まぐれで自由奔放な魅力に、吸い込まれるように恋におちた。初めての恋に有頂天のみるめだったが、実はユリは ―
フランス映画のような~~、というキャッチフレーズをチラと聞いて、これはこれはと神戸シネカノンで鑑賞。
舞台は群馬県は桐生市。
のんびりした田園風景に美術大学。
美大を舞台にすれ違う恋心、蒼井優とくれば、『はちみつとクローバー』を思い出す人もあるでしょう。
物語は英題の『Don't laugh at my romance』のほうがお話には合ってます。
過激なセックスシーンなどなくて、みるめとユリが恋に落ちた実に幸せそうな笑顔が見られます。
みるめの家もユリの家も昔風の作りで、なんだか温かさを感じます。
それにしても、チケットを買う人泣かせなタイトルですよね。
私も売り場の人が男性だったので『人の~』を一枚ください、でごまかしました。笑
原作はサッと読んでみましたが、みるめは映画のように純情一途ではなく、ユリと夫の関係も単純ではありません。みるめの心の動きがよく描かれています。
監督のインタビューが興味深かった。
>>脚本作りの参考にしたのがイタリア映画メロドラマの巨匠、ヴァレリオ・ズルリーニ監督の『鞄を持った女』(’61)です。
「39才のユリを男性として、19才のみるめを女性として撮ることを意識してユリをかっこよく、みるめを史上最強にかわいく撮りました。
松山ケンイチさんをスクリーンで見るのは初めてで、イメージはやはり”白”でしたね~。
なるほど~。笑
ジャック・ペランとクラウディア・カルデナーレの『鞄を持った女』は私の大好きな映画です。
嬉しい偶然でした。
『鞄』にはユリのような天真爛漫な小悪魔は出てくなくて、お人良しで貧しく健気なショーガール(男運は悪いけど)が出てきます。
そう言えば、みるめはまるで恋する乙女のように純情で可憐。笑
ユリは自分からみるめを誘って、さらりと、父親と勘違いしそうな夫を紹介する。
そこには何のひっかかりもない。
まあ、ここまであっけらかんとした人もそうはいないと思うけど。
「だって、さわってみたかったんだもん」・・かなわないね。
えんちゃんだってみるめにさわりたかったと思うよ。
オー、イエース!!!
ユリに夫がいると知って、携帯を針金でぐるぐる巻きにして泣くみるめの姿に、最早忘れそうな純粋さを思い出して甘酸っぱいものが込みあげてきた。
ユリの旦那さんが信玄餅の食べ方を教えてもてなしてくれるいい人だから、だから我慢する・・・・・ユリの保護者みたいなあがた森魚さんがいいです。
濃~い初恋の一撃を食らって身も世もあらぬみるめに比べて、ユリはもちろん、えんちゃんもそれぞれに強い。
ユリの個展(三人展)にえんちゃんが行く。いつも被っている帽子を脱ぎ長い黒髪を下ろす。
彼女なりの戦線布告なんだろうなあ。
ドキッとさせられる場面です。
ユリは風のように来て、また風のように去っていくタイプなんでしょう。
彼女なりにまあ、色々あったりもするんだろうけど。
こういう人は女友達にしても寂しいね。
あまり女性っぽさが鼻につかないタイプの永作博美さんだからこの役がいやらしくなかった。
大学の廊下ですれ違いざまに、みるめがユリを小部屋に押し倒すように連れ込む。
抑えきれないみるめの激情が伝わってきてフランス映画っぽいですよね。笑
ここから結末にふれています。
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見終わって思うに、この映画の隠れた”芯”は蒼井優じゃないかな。
へこむことなく、しっかり現実を見つめて、地に足がついている。
女性が20歳年上の恋・・
そういうのってどうなんだろう。
ラストの結末ははっきりしない。
会えないから終わりって、そんなもんじゃない。
紅いハートのライターの火がまたついたってことは?
みるめにとってまだユリへの希望があるってことかな?
みるめが猪熊さんの域に辿りつくまでにはまだ時間がかかりそうだけど。^^