あいりのCinema cafe

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人のセックスを笑うな

2008-03-22 13:22:32 | 邦画 (69)

Hitoseku_sub3

英題(Don't laugh at my romance)
監督 井口奈己
原作 山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』
出演 永作博美(ユリ)松山ケンイチ(磯貝みるめ)
    蒼井優 (えんちゃん)忍成修吾(堂本)
    あがた森魚 (猪熊・ユリの夫)
    温水洋一 (美大の教師)
    桂春團治(みるめのじいちゃん)


2008年、日本


恋におちる。
世界がかわる。
19歳のボクと39歳のユリのいかれた冬の物語。


>>「みるめくんに触ってみたかったんだよね」
19歳の美術学校生のみるめ。ある日、絵のモデルを20才年上の講師ユリに頼まれる。その気まぐれで自由奔放な魅力に、吸い込まれるように恋におちた。初めての恋に有頂天のみるめだったが、実はユリは ―


フランス映画のような~~、というキャッチフレーズをチラと聞いて、これはこれはと神戸シネカノンで鑑賞。


舞台は群馬県は桐生市。
のんびりした田園風景に美術大学。
美大を舞台にすれ違う恋心、蒼井優とくれば、『はちみつとクローバー』を思い出す人もあるでしょう。
物語は英題の『Don't laugh at my romance』のほうがお話には合ってます。
過激なセックスシーンなどなくて、みるめとユリが恋に落ちた実に幸せそうな笑顔が見られます。


みるめの家もユリの家も昔風の作りで、なんだか温かさを感じます。


それにしても、チケットを買う人泣かせなタイトルですよね。
私も売り場の人が男性だったので『人の~』を一枚ください、でごまかしました。笑


原作はサッと読んでみましたが、みるめは映画のように純情一途ではなく、ユリと夫の関係も単純ではありません。みるめの心の動きがよく描かれています。


監督のインタビューが興味深かった。
>>脚本作りの参考にしたのがイタリア映画メロドラマの巨匠、ヴァレリオ・ズルリーニ監督の『鞄を持った女』(’61)です。
「39才のユリを男性として、19才のみるめを女性として撮ることを意識してユリをかっこよく、みるめを史上最強にかわいく撮りました。


松山ケンイチさんをスクリーンで見るのは初めてで、イメージはやはり”白”でしたね~。


なるほど~。笑
ジャック・ペランとクラウディア・カルデナーレの『鞄を持った女』は私の大好きな映画です。
嬉しい偶然でした。
『鞄』にはユリのような天真爛漫な小悪魔は出てくなくて、お人良しで貧しく健気なショーガール(男運は悪いけど)が出てきます。


そう言えば、みるめはまるで恋する乙女のように純情で可憐。笑
ユリは自分からみるめを誘って、さらりと、父親と勘違いしそうな夫を紹介する。
そこには何のひっかかりもない。
まあ、ここまであっけらかんとした人もそうはいないと思うけど。
「だって、さわってみたかったんだもん」・・かなわないね。
えんちゃんだってみるめにさわりたかったと思うよ。


オー、イエース!!!


ユリに夫がいると知って、携帯を針金でぐるぐる巻きにして泣くみるめの姿に、最早忘れそうな純粋さを思い出して甘酸っぱいものが込みあげてきた。
ユリの旦那さんが信玄餅の食べ方を教えてもてなしてくれるいい人だから、だから我慢する・・・・・ユリの保護者みたいなあがた森魚さんがいいです。


濃~い初恋の一撃を食らって身も世もあらぬみるめに比べて、ユリはもちろん、えんちゃんもそれぞれに強い。
ユリの個展(三人展)にえんちゃんが行く。いつも被っている帽子を脱ぎ長い黒髪を下ろす。
彼女なりの戦線布告なんだろうなあ。
ドキッとさせられる場面です。


ユリは風のように来て、また風のように去っていくタイプなんでしょう。
彼女なりにまあ、色々あったりもするんだろうけど。
こういう人は女友達にしても寂しいね。
あまり女性っぽさが鼻につかないタイプの永作博美さんだからこの役がいやらしくなかった。


大学の廊下ですれ違いざまに、みるめがユリを小部屋に押し倒すように連れ込む。
抑えきれないみるめの激情が伝わってきてフランス映画っぽいですよね。笑


ここから結末にふれています。
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見終わって思うに、この映画の隠れた”芯”は蒼井優じゃないかな。

へこむことなく、しっかり現実を見つめて、地に足がついている。


女性が20歳年上の恋・・
そういうのってどうなんだろう。
ラストの結末ははっきりしない。


会えないから終わりって、そんなもんじゃない。


紅いハートのライターの火がまたついたってことは?
みるめにとってまだユリへの希望があるってことかな?


みるめが猪熊さんの域に辿りつくまでにはまだ時間がかかりそうだけど。^^


ガチ☆ボーイ

2008-03-15 16:15:21 | 邦画 (69)

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監督:小泉徳宏
原作:蓬莱竜太
脚本:
出演:佐藤隆太(マリリン仮面・五十嵐)
    サエコ(朝岡麻子)
    向井理 (レッドタイフーン・奥寺)
    仲里依紗 (五十嵐の妹)
    宮川大輔 (チョチョッビ・君島)
    泉谷しげる (五十嵐の父)
    西田征史(ボラギノール・日野)
    川岡大次郎 (ドロップキック・佐田)
    瀬川亮 (シーラカンズ)
2008年、日本

 

神戸シネリーブルにて


>>大学在学中に司法試験合格も夢ではないと言われる秀才、五十嵐は、学園祭で見た学生プロレスが忘れられず、プロレス研究会の門を叩く。「マリリン仮面」というリングネームをもらい、大切な事は何でもメモする真面目な五十嵐だったが、肝心の「段取り」を覚えられず、ガチンコの試合をしてしまう。しかし、それが客に大ウケ。五十嵐の人気でプロレス研究会は活気付く。しかし、五十嵐が段取りを覚えられないのには理由があった。


ボクの記憶は一日しか持たない・・
そんなボクが学生プロレスに出会った
アザが・・筋肉痛が・・カラダだって記憶する


ボクの記憶は一日しか持たない
だから毎日が一生懸命


ボクは幸せだ


最初からなんとなく内容は想像できてしまったけど、素直に感動しました。
想像以上によい映画だと思いました。


まず、大学生の主人公は自転車で転倒して、高次脳機能障害という記憶障害になってしまう。
前途洋々の真面目な秀才が事故以降、眠ると前の日の記憶をいっさい失ってしまう。
レッドタイフーン・奥寺も言うように、想像もできないこの事実。


でも、映画は重い事実を抱えながらも、ひとりの青年の懸命な姿を爽やかに綴っていく。
笑える場面まである凄さ。


親しみやすい佐藤隆太の笑顔よしの個性がここでは大きな力になっていると思う。


昨日あったことはメモ(&ポラロイドカメラ)に頼るしかない彼は大学を卒業したら、家業の銭湯を継ぐことになるのだろう。
父と妹にお世話される人生。
密かに死にたいとも思った。
せめて、そうなる前に好きなことをしたいと、憧れの大学内のプロレス部の門を叩いた。
安全第一の、(どこかの建設会社の看板がすえられている^^)だけど、廃部寸前のプロレス部。


身体のことは秘密だ。これ以上悪くなったらと、止められるのは分かっている。


そこで、彼は気づく。
記憶はなくなっても、身体が昨日の練習の痕跡を残している。
それを感じると、昨日のことが思い出せそうな気がする。
これは五十嵐にとって、とても重要なことだろう。
生きてるって実感。


そしてまた、それがラストの盛り上がりに繋がる。


朝、目覚めた五十嵐の部屋の壁には「日記を見よ!」の紙が張巡らされているのに目を見張ってしまう。鳥肌がたちました。
他人がのんびりした朝を迎えている間にも五十嵐は毎朝、日記で今の自分の状況を把握する。
メモを読み返す。
ここで、観衆も五十嵐のおかれた状況を体験する。
毎朝、生まれ変わっているような感じだろうか。


五十嵐にとっては毎朝が部員たちとは初対面同様なんだなあ。
ただ、部員たちの五十嵐に対する笑顔が救いだ。


マリリン仮面っていうより、グリーン・ケロロ仮面か、カメレオン仮面って感じ。


四度も告白して、泣きながらあさこに、「これ言うの二度目よ、私は奥寺さんが好き」と聞かされるのは切なく忘れがたい場面です。
どうしてそんな大事なこと、メモしていないんだろう・・
でも、やはり、あさこさんは奥寺さんが好き・・と、どうしてもメモできない五十嵐。


五十嵐の事情も知れて、落ち込んだ様子の彼の家にキャプテンの奥寺がやってくる。
ふたりで銭湯につかりながら。


オマエが記憶を失っても、オレがオマエの記憶をきざんでやる。
どうだ、今の台詞、カッコよくない?(ガクッ)一晩考えたんだ。
奥寺・・鷹揚で、徹底的好青年です。笑


そして、プロレスに反対していた父親は五十嵐の何冊もの日記を読む。『明日の僕へ』
ダメ押しでこのタイトルを見た瞬間、私の目から水がポロリ。
泉谷しげるさんが父親の悲哀を演じています。
自慢の息子だった・・・


五十嵐の日記から
オヤジはお客に昔の僕の自慢ばかりしている。
オヤジのなかで、僕はもう終わってしまったんだ。死にたい。


部屋中に部員たちと撮ったたくさんの写真が貼ってある。
どの写真でも五十嵐は笑顔だ。幸せだったのだ。


ここから結末にふれています。
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他校との試合で、五十嵐は散々に敵の学生レスラーに打ちのめされる。
シーラカンズが憎たらしくていい。


体育館に来る途中、バスのなかで思わず眠り込んで、よく復習する間がなかった。


だが、だが、五十嵐の反射神経は覚えていた!
「一日一技」で練習した技が炸裂する。
技が炸裂する度、教えた部員たちがひとり、ひとり、狂喜する。
彼女にダサいと言われ、プロレスからロックに転向した^^佐田が、笑わせて縁の下の力持ち的役柄で印象的。


体育館はマリリン仮面・五十嵐コールで埋め尽くされる。
努力の人、負けず嫌いの五十嵐は、奥寺の嘆願・悲鳴に近い呼びかけにも、頑としてギブアップしない。
最後にキマる、マリリン仮面の佐田指導による大技、ドロップキック。


父親も応援に来た。
五十嵐は試合には負けたが、自分に打ち勝ったのだろう。


最後はあっさりと終わる。
五十嵐のその後は描かれてはいない。


五十嵐のその後を考えると、悲しみは拭えないけれど、また、なにやら希望も湧いてくる。
君の記憶は仲間や人々がきざむ。そんなふうに思いたい。


明日の僕のために、今日を懸命に生きる。


書いているうちにまた、見たくなった。笑