あいりのCinema cafe

只今gooブログにお引っ越し(工事中)

ラブ・レター (ビデオ)

2003-12-27 20:28:00 | 邦画 (69)
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監督 岩井俊二
出演 中山美穂(二役、渡辺博子・藤井樹) 豊川悦司(博子の男友達)
    柏原崇(少年時代の藤井樹) 坂井美紀(少女時代の藤井樹)
                           1999年
随分前に観た映画をもう一度観る機会があった。
神戸と小樽の雪景色や洋館風の古い家が、美しい。
日の差す学校の図書館が、どこか懐かしい。
澄んだ映像とロマンチックな物語が清清しい、よくできた映画だと改めて思った。
         拝啓 藤井樹様
         お元気ですか?
         私は元気です。

2年前に雪山で遭難した恋人を忘れることができない博子は、彼(藤井樹)が中学生時代に過ごした住所に手紙を書いた。
天国の彼に書いたつもりだったが、神さまのいたずらのような不思議な事が起きる。
そこから中学生時代の「ふたり」の同姓同名の藤井樹の物語に戻る。
中山美穂が輝いている。
藤井樹の中学生時代を演じた坂井美紀が初々しい。
さりげない「物たち」が効果的に用いられている。
雪の中で凍ったトンボ、赤い郵便受け、図書カード、本(題名・失われた時を求めて)、白樺の木、陽だまりの縁側、ひざ掛け。
藤井樹と記入した何枚もの図書カードは彼の彼女へのラブ・レターだったのか。
学生のころノートに一生懸命に好きな人の名前を書いた経験がないだろうか。

そして中学校の後輩が樹に届けてくれたのは、思いがけない贈り物だった・・・
暖かいものが胸にこみ上げる。
少女たちの優しい笑い声が聞こえてくる・・・誰もが経験したのではないだろうか「はつこい」
高熱を出した樹をおぶって必死で雪の中を病院に運ぶ小樽の樹の祖父(アーティスト・クマさん)が暖かくていいです。




生きる・活着(ビデオ)

2003-12-08 17:23:00 | 中国映画 (19)

監督 チャン・イーモウ
出演 家珍(コン・リー) 福貴(グオ・ヨウ) 
1994年 
1940年代空1960年代の動乱の中国が舞台。
毛沢東政府から文化革命へと、混沌とした時代の中で、それでも生きていく庶民の姿が、心を打つ。

裕福な家の放蕩息子、福貴(グオ・ヨウ)は賭博の果てに家屋敷まで取られてしまう。
妻の家珍(コン・リー)は一旦は夫の元を去るが、
共産軍と国民軍の戦争に巻き込まれ、九死に一生を得て生還した夫と再会する。

幼い娘は高熱がもとで口が利けなくなっていた。
福貴は道楽で覚えた影絵義太夫として、なんとか生計を立てる。
福貴に比べて家珍は逞しい。
体制が変わる度に何が正しいのか、誰を信じて良いのか分からぬ混乱のなか、懸命に家族を守るため賢く立ち回る家珍。

娘にも縁談が持ち込まれる。
相手も足に障害を持つが、優しく頼りがいのある男だった。
嫁ぐ日、新郎の漕ぐ自転車の荷台に乗せられ、母を振り返り、振り返り、ベソをかきながら遠ざかる娘。
忘れられない場面です。
新郎側の人々がさりげなく幼い新婦を励ます。

悲劇は次から次へと容赦なく起る。
文革のあおりで医者が叫弾される。
娘の出産に医者が間に合わず、なす術もなく家珍の腕の中で娘は死んでいく。
娘の名をよび続ける母親の気持ちはどんなに悲しいことか。

何のための革命か、誰のための政治か、見ていて本当に腹が立った。
時代の波に翻弄されながらも、やっと最後に訪れた静かな生活。

涙、涙、になる題材なのだが、家族の真心とたくましさがこの映画を救っていると思う。
人々は悲しみや憎しみを素直に表す。
良家の若奥様から、貧しくとも心優しい芯の強い母親への変身が見事だったコン・リー。
彼女の他に、この役をできる女優はいないと思った。

チャン・イーモー監督は歴史に翻弄される家族を自然にありのままに描いている。
愛する一人息子を故意ではないが事故で死なせた男を決して許そうとしなかった家珍。
男が文化革命のあおりで、破滅し「もう生きていたくない」と泣いた時。
家珍は男を気遣って「生きるのよ!あんたは、うちに借りがあるんだから」と声をかける。

この場面は、印象的であった・・


風の輝く朝に(等侍黎明) ビデオ

2003-12-03 17:09:00 | 香港映画 (57)
監督 レオン・ポーチー
出演 フェイ=チョウ・ユンファ ナン=イップ・トン カン=アレックス・マン

香港映画の名作の一本だと思う。

1941年、日本軍の迫る香港が舞台。
映画中で日本軍は、見ているこちらの身が縮むほど、徹底的に悪として描かれている。
こういう歴史が、あったという事実を思い知らされ。
チョウ・ユンファという俳優の凄さを、知ることができた。
ユンファが、輝いている。
イップ・トンは、繊細な女を演じ、アレックス・マンは、血の気の多い単純で良いヤツを、力演して愛嬌がある。

フェイは、米倉で仕事を見つけ、そこで血気盛んなカンと知り合う。
世話の焼けるカンと無口なフェイに不思議な友情が生まれ、カンには恋人のナンがいた。
日本軍の悪行ぶりは、すさまじくカンは、方耳を失い、
ナンは、暴徒に強姦されてしまう。  
フェイは、心身ともに傷ついた二人を助け、世話をするが。

ナンへの愛を、決して面に出すことはない。
ナンが自分を、愛し始めている事を知っても・・・
フェイの男気と優しさ。
3人は、船で、阿鼻叫喚の巷と化した香港を脱出するが、行く手に,日本軍の船が、迫って来る。
フェイは、敵船に乗り移り、人質を取り、カンたちに逃げろと告げる。
その足元には、爆薬があった。
遠ざかるカンとナンの船をじっと見送りながら
フェイは、端然と船べりに座り、最後に、にっこりと微笑む・・・・・
友のために・・・

この場面をもって、チョウ・ユンファは、亜州帝王となった。

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ニューシネマパラダイス

2003-12-01 15:19:00 | ヨーロッパ映画/イギリス・フランス (2
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監督 ジュゼッペ・トルナトーレ 音楽 エンリコ・モリコーネ
出演 ジャック・ペラン フィリップ・ノワレ
   
「映画好きによる、映画好きのための映画」この言葉が、ぴったりの映画ですね。

第二次世界大戦後の美しいシチリア島が舞台。
少年トトと、父親のないトトを可愛がる映写技師アルフレードとの物語です。
素朴で陽気な島の人々の楽しみは、映画を観ること。
アルフレードとトトは、島の人のために映画を上映します。
泣いたり、笑ったり、貧しくても、幸せな日々。

愛らしいトトも、やがて青年になり恋を知り、失い・・・
映画監督になるという夢のために島を出ます。
島を離れる日、年老いたアルフレードが、じっと別れの悲しみに耐える姿が切ないです。
それから何十年かの後、監督として成功した初老のトトが島に戻って来ます。
社会的に成功しても、彼は幸せそうではない。

アルフレードはもうこの世の人ではなく。
彼がトトに残してくれた物、トトはそれを見る。
何ということ!! この時のトトの輝く表情が良い。
アルフレードの天国からの贈り物は、沢山のカットされた素晴らしいフィルムでした。

涙が止まらない美しい場面です・・・
この映画を思い出すと、あの軽やかな美しいテーマ曲が聞こえてくるようです♪
思いがけず、トトの中年をジャック・ペランが演じてたのは嬉しいプレゼントでした。

余談ですが、この映画の完全版でトトの初恋の成人した彼女を演じたのは、あの名作、『禁じられた遊び』のポーレット役の女優でした。