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あいりのCinema cafe

只今gooブログにお引っ越し(工事中)

『かもめ食堂』原作、読了

2006-06-01 08:43:24 | 本と雑誌

Suomikahvila

上の写真は撮影に使われたCafeだそうです。

まだ、原作未読のかたはお楽しみが半減すると思われるので、読まれないようお願いします。

映画もいいけど、やっぱり本はいいものです。笑

群さんの他の本も読んだけど、女性の目から見て生活に密着したお話が多いのね。

『かもめ』の原作を読んで、3人がなぜ、フィンランドに行くことになったかがよく分かり、納得できました。

サチエと父親の関係がいいです。

この父親にしてこの自立した娘ありで。人生は修行だ___

映画のほうが原作をふくらませてあって面白いと思います。

フィンランドの景色と雰囲気も楽しめますしね。

特に、マサコは原作ではそれほどキャラクターは際立ってません。

映画では不思議系、お笑いを一手に担当してましたけど。

群さん、小林聡美、もたいまさこさんは実生活でもよく行動をともにしているらしいです。

そうそう、主役の3人の年齢が30代、40代、50代なんですよ。これ、面白いなと思いました。

マサコはだから、人生の建て直しを計るにはサチエ、ミドリほど時間がないので、フィンランドでゆっくりしてられないって考える。

「すみません。

ご迷惑でしょうけど、また来ることにしちゃいました」

原作の最後は爽やかです。

「今日も一日、よろしくお願いします!」

リンクかもめ食堂・本


生協の白石さん

2005-12-06 12:20:55 | 本と雑誌
東京農工大の生協のひとことカード、(目安箱みたいなもの)に寄せられる学生たちの難問、奇問に思いがけない切り口からユーモアいっぱいに誠実に回答する白石さんがいます。

ご本人の希望に関係なく、白石さんは今や時の人です。
そんな白石さんを学生たちは暴き出すことなく、自分たちの夢として大切にしているようです。

白石さんの独特な”愛”と機知にあふれる回答は現代の一休さんかも。(たとえが古いですね;)
白石さんも初めはこの忙しい時に、「舐めるのは販売しているチュッパチャプスだけにしてほしい」と思ったそうです。

でも、学生の茶目っ気あふれる質問に腹を立てるなんて大人気ない・・そう気持ちを切り替えたところが白石さんの白石さんたるゆえんですかね。

この部分は本の宣伝にも使われているので書いていいでしょう。
Q 愛は売っていないのですか・・・?

  どうやら、愛は非売品のようです。
  もし、どこかで販売していたとしたら、それは何かの罠かと思われま
  す。
  くれぐれもご注意ください。               [担当] 白石

最後の回答も書いちゃいます。
Q 白石さん、好きっす。

  光栄っす。                  [担当] 白石

なんという切り替えしの鮮やかさ。笑
白石さんの珍回答に吹き出す事しばし。

この本は手頃な値段だし、娘のバースデイプレゼントにと思ってます。
モノよりこころを・・ですね。笑

買うまでもないと思われます方はこちらのサイトにて少しだけ読むことができます。
がんばれ、白石さん!

今日も白石さんは業務のかたわら、回答を書くのにお忙しいことと思われます。


「日暮し」を読む

2005-09-28 09:01:32 | 本と雑誌
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宮部みゆき:著
弓之助とおでこがコロコロ、コロコロと駆けて行く。

「日暮し」が「ぼんくら」の続編というのは知っていた。
けど、読んでみたらこれは続編というか完全に事件は解決していなくて続きなのだった。
びっくりした。

仇し仇なる 身は浮き枕 ーー小唄の一節

その日暮しのお徳の煮売り屋、人様に喜ばれ、愛されるそんな暮らしが羨ましいと言う者もいる。
商い・・か、お徳は考え込んでしまう。

さて、お話は「ぼんくら」では終わっていなくて、後日談がある。
いや、新たな大事件が起こった。
佐助の母親、葵が殺され現場にいた佐助がしょっ引かれた。

適度にいい加減な世事に長けた「ぼんくら」同心、平四郎は佐助の無実を信じる。
気の優しい佐助が葵を殺す筈がない。

そこで、いよいよ尋常でない美形(笑)の弓之助の出番となった。
今回は弓之助の独壇場である。
おでこも、おでこなりに自分が生かされている理由、ま、思春期ですな。
そお~んなことを考え込んで寝込んでしまったりと、相変わらず可愛いが。

弓之助の慧眼は以外な真犯人をかぎつけた。
犯人を追い詰めたところで彼が取った態度は凄い。

ここから結末に触れています。
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押入れに立て篭もった晴香先生をまるで男がすねた女をなだめるように口説き始める!
13の子供が、あの凄絶なる笑みを浮かべて。
健気ではないか、真っ直ぐではないか。
この辺りの描写が素晴らしくて好きだな。

宮部さんはミステリー作家だけではなく、感動できる本を書く人なんだと改めて思ったとです。
人間の心の中には哀しいことに鬼が棲んでいることもあるのだ。

葵の幻が素晴らしい。
美しい余韻を残して、物語は爽やかな結末を迎えた。
今度こそほんとに終わりなのかしら。(笑)




ぼんくら

2005-08-27 17:16:21 | 本と雑誌
宮部みゆきさんの「ぼんくら」を読んだ。

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>>江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。

宮部さんの時代劇物を初めて読んだけど、
文句なしに面白かった!

まず、殺人事件が起こってハッとする。
そして、同心・井筒平四郎が登場すると、俄然話は面白くなって一気に読めてしまった。

時代物は少しくらいお話が荒唐無稽でも違和感がないので面白いと思う。
江戸は八丁堀の気のいい長屋の連中がのまるで落語の世界のような人情話。

世情に通じた、”適度にいい加減な男”が必要と見た与力の命で、馬があくびをしたような平四郎は同心となる。
小賢しい若者など目まぐるしい。
適度にいい加減・・これが題名の由来のようだ。
万事に無頓着でめんどくさがりの平四郎だが、情に篤く、人の道に外れることは嫌いである。

宮部さんの人間を観察する目と人を見る目の温かさを感じる。
物語に出てくる人物が生き生きと描かれて読んでいて楽しい。。
根っからの極悪人はほとんど出てこない。

長屋の若い差配人、真面目な佐助や、住人、鉄瓶長屋の肝っ玉、良心、お徳。
お徳とは間逆の生き方だが、いいコンビのおくめ。
ひどい近眼が玉に瑕の、大店の美人お嬢さん(笑)、みすず。
それから、子供たちが実にかわいい。

佐助が育てる孤児の純真無垢な長助、コンピューター並みの記憶力を持つ”おでこ”、何でも測らないと気のすまぬ狐が化けたか、人形のように綺麗な弓之助。

中でも、おでこがなんとも可愛らしい。
記憶の糸をたぐり寄せる時は黒目がアチコチ、上に寄ってしまう。爆
途中で話を遮ると、頭っから巻き戻してじゃべり直さないといけないのがおかしい。
ビデオテープの再生みたい;

頭脳明晰、平四郎も真っ青の弓之助は自他共に許す器量よし。笑
上等の生菓子みたいで、平四郎曰く、中身に白餡が詰まってそう。
さしずめ、平四郎んちの養子になれば、あんこの助か井筒屋の白餡だな。 あはは

>>それでも、お徳は泣き止んだ。
お徳のような人間はいつも必ず泣き止むのだ。
そういうたくましい女性はいるよねえ。ちょっと切ない。

平四郎はその人徳のお陰で子供たちや本職の岡引の親分、その手下に助けられ事件を解決してゆく。
岡引っていうのは元々悪行を犯してなる者たちがほとんどだとは知らなかった。
はてさて、その事件のなりゆきは、謎解きは。。

以下、結末に触れています。
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事件の元はと言えば男を挟んでの女同士の遺恨、痴情のもつれ。
罪もない者まで巻き込んでの大芝居。なんというハタ迷惑;

湊屋の内儀、おふじもおふじなら、葵も葵であった。
ケロッと長屋を見物に来たりして哀れな息子、佐吉のことなんか忘れたのだろうか。

平四郎にはまた出会いたいものだ、そんな愛着も湧いてくる。

柿食えば どこの犬の骨   字足らず^^



「嗤う伊右衛門」を読む

2005-08-23 08:21:18 | 本と雑誌
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>>疱瘡を病み、姿崩れても、なお凛として正しさを失わぬ女、岩。
そして、その民谷家へ婿入りすることになった、ついぞ笑ったことなぞない生真面目な浪人・伊右衛門―。渦巻く数々の陰惨な事件の果てに明らかになる、全てを飲み込むほどの情念とは―!?愛と憎、美と醜、正気と狂気の物語。

私も遅まきながら初めて京極さんの本と出会った。

おどろおどろしい雰囲気を漂うものの、魑魅魍魎の類はほとんど出てこない。
ただ、ほんとうに恐ろしいのは人間の持つ、性(さが)業なのだと思う。

4世鶴屋南北のオリジナルは歌舞伎などで見られるように、
伊右衛門が自分の野心のため、出世のため、仕官できる家柄の娘との婚姻を望む。
しかし、子まであった岩が邪魔となり、毒を盛って惨たらしく殺めてしまう。
伊右衛門に捨てられた岩は恨んで伊右衛門にとり憑く。
もっとも、伊右衛門は良心の呵責によって幻に苦しめられ、狂死したとも見えるのだけど。

京極さんはその四谷怪談を人間の心の闇の恐ろしさ、人間の深層心理を突いたお話に変えてあって面白かった。

私はこの本を純愛物語として読んだ。
不思議な余韻の残る物語だ。

本に登場する岩は名は体を表すか、どちらかと言うと男に近いような頑固なまでに強い女性だ。
元々たいそう美しい女性であったが、美貌にも執着はなく自分が醜くなった(顔半分がただれててしまった)など、意にも介さない。
それがどうした、笑う者は笑えばよい。

端正な面差しを持ち、腕も立つ境野伊右衛門は、しかし、人には言えない暗い過去を持ち、以来、笑うこともない浪人であった。
人生になんの意味も見出しえないで、婿養子にと請われるままに岩と結婚する。

ただ、伊右衛門は誠実で心根が優しかった。
岩と伊右衛門、まことに性が反対のような気がする。

伊右衛門は長い浪々の孤独な身の上で、人の愛し方さえ知らぬ不器用者。
岩を気遣うあまり、岩の顔を正視もできず「すまぬ」を繰り返すばかり。

>>慈しみと哀れみ、そうした気持ちはー。
誹りとあざけりと、そうした気持ちに摺り変わる。
凡ては加減次第。その按配が伊右衛門には量れなかったのだ。

岩は自分の顔色ばかり見る夫に苛立った。

京極・岩は原作の運命に従うだけのお岩さんと違って常に行動的である。
岩は自分の姿には恥じることはないと思っているが、一緒に住む者はどんなに気遣いが要るかを知った。
伊右衛門は岩が離縁を口にしたとき、
>>俺のー 俺の気持ちは如何なるのだというのだー。
伊右衛門は困惑し、泣いたり怒ったりした。

これが男の純情か。
笑うこともなかった伊右衛門がここで激しく自己主張をしたのは興味深い。
岩も伊右衛門と出会わなければ気楽な一人身を貫いたろう。
こうして、二人は互いを深く想いながらもすれ違っていく。

人間はなぜ見えるものしか理解できないのだろう。

岩の思いは伊右衛門の幸せのみ。
自分は伊右衛門を幸せにはできぬ、ならば、身を引こう。
「どうして伊右衛門殿は幸せになれぬのじゃ」という岩の絶叫は心に響く。

伊右衛門は岩の本心を量りかね、悪意ある者のせいで引き裂かれ、生きて地獄に落ちた。

私は速読、飛ばし読みの悪い癖があるが、この本は至るところに布石がしてあるので慎重に読まないと面白さが半減する。
周到なミステリーなのだ。

ここから結末に触れています。
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最後に全ての謎は解け、驚愕の事実が明かされる。
>>”誰にも渡したくなかっったか”
そんなことが許されるものか。

>>生きるも独り。死ぬのも独り、
ならば生きるの死ぬのに変わりはないぞ。
”岩は俺がもろうた”

死ぬことでしか岩は伊右衛門のものにならなかったか。皮肉な。
伊右衛門は岩の骸に優しく寄り添い”嗤っていた”

岩が伊右衛門の元に戻った頃から、伊右衛門の顔には’嗤い’がよみがえっていたのだ。
狂気とも見える二人の姿は血の池に咲いた二輪の真っ白な蓮の花のように美しい。

桐の箱の中の二人を見て、役人が訳もなくはらはらと涙を流す。
これは読む者が感じる哀しさと同じ気持ちなのだろうと思った。