監督 イ・ジュンイク
出演 カム・ウソン(チャンセン) イ・ジュンギ(コンギル)
チョン・ジニョン(ヨンサングン)カン・ソンヨン(ノクス)
チャン・ハンソン(王のお守役・チョソン)
2005年、韓国
神戸シネカノンにて。
◆固い友情で結ばれた
2人の芸人たちと、愛を知らない暴君
>>史実とフィクションが融合したドラマティックでスキャンダラスなストーリー。
16世紀初頭、燕山朝、漢陽に逃げて来たきた旅芸人チャンセンと相棒の女形コンギル。ふたりは都で時の王、暴君ヨンサングン(燕山君)と宮廷を皮肉った芝居を始める。一座は侮辱罪で逮捕されてしまう。重臣に「王を笑わせることができれば、侮辱ではない」と反論したチャンセンたちは、死をかけて王の前で芸を披露する。
最下層の貧しい大道芸人が、宮廷に招かれたことから、重臣や愛妾の陰謀と策略に巻き込まれていく。
歴史上の事実を土台にしたお話で、人間の本性に迫った見応えのある映画でした。
宮廷や官女、舞踊人の衣装の色鮮やかなこと。
洗練された美しさです。
残虐場面も映像では極力見せないようにしているので、なんとかOK。
初めのほうで、チャンセンと美貌のコンギルふたりが盲目のお年寄りの芝居をして楽しむところが唯一ほのぼのして好きです。
手探りで、ようよう互いを探し当てた時の幸せそうな顔。これは案外、その後のふたりの運命を象徴しているかなと思います。
このふたりはどうもゲイの絆で結ばれているのではなく、芸の絆で結ばれているみたい。笑
強く、誇り高いチャンセンは兄のように非力な弟、妹?を守らなければならない、
コンギルは自分の命よりも大切な愛しい者なのだ。
身分の卑しい大道芸人として、美しく生まれついてしまったコンギルは身売りもしなければならない。
それを止めさせようとするチャンセンと親方との揉め事から人を殺め、ふたりは逃げ出した。
ふたりの間にあるのは家族愛に近い友情か?同性愛か?どうとるかは見る人の自由ですね。
お国柄か、はっきり同性愛としては描いてないと思います。
いつの世にも暴君はいたものらしく、でも、ヨンサングンは幼い時に母が殺されたことから性格が歪んでしまったらしい。
チョン・ジニョンという俳優は王の悲哀と孤独を怪演。
風貌がどこか憎めないんですよね。
コンギルのイ・ジュンギは中性的。
粗末ながらピンクの普段着が可愛い。この人は断然!動いている時のほうが魅力的だと思う。
カム・ウソンの綱渡りは圧巻で、久しぶりに映画を見てワクワク感を味わいました。
王をちゃかす芸はお下劣。
王への憤懣がそうさせるのか、この時代の貧しい人々の笑いというのはこういうものだったのかも。
王が気に入ったコンギルに「遊ぼう!」と誘って、その内容が人形劇や影絵遊びだったのには愕然。
この王は心が子供のままストップしちゃってるのかも。
コンギルの指輪の話にはホロリとしてしまう。
身体を求められるわけでもなく、王の孤独な素顔、涙を見たコンギルは哀れを感じたのかな。
チャンセンとの間にも微妙なズレがうまれる。
彼らが舞うたび血が流れる。
宮中での最後の芝居・・コンギルの扮装と顔を見てドキッとした。
中国の京劇の『覇王別姫』に似ている。
今は亡い、あの俳優を思い出して胸が熱くなる。涙
王は自分の母親の暗殺の真相を知らされて、いよいよ狂気に走る。
陰謀渦巻く不吉な影に覆われた宮殿など、チャンセンの言うとおりにとっとと退散すればよかったのに。。
コンギルが死のうとした時、
王が「なぜだ~~!?」と絶叫する。
この男は愛を知らないのだ・・・
ここから結末に触れています。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
韓国の映画はやはりハッピーエンドでは終わらない。ため息。。
結局、燕山朝はクーデターで滅びるのだろう。
最後にふたりが王の前で、綱渡りをしながら話す感動の場面が素晴らしい。
「生まれ変わったら何になりたい?」
「やはり、芸人に!」
「最後にもう一度、一緒に芸を見せよう!」
狂王に目を焼かれ盲目となり、それでも、芸人魂を失わないチャンセンと、コンギルは空高く力強く飛翔する。
かすかな安らぎが彼らの顔に見えた。
チャンセンの台詞。
「目が見えなければ、人が(王)コンギルの心を盗むのを見なくてすむ」
最後の場面も、純愛の愛の告白ととれなくもない。