あいりのCinema cafe

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泥の河(テレビ)

2004-07-28 15:48:17 | 邦画 (69)
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監督 小栗康平
原作 宮田輝
出演 田村高廣 藤田弓子 朝原康貴
   桜井稔 加賀まりこ  1981年
好き嫌い当てにならないオススメ度 ★★★★☆90点
以前からこの映画の評判を聞いていたが、テレビで初めて見ることができた。
子役と動物にはどんな名優も負けるというが、この子供たちの顔は忘れられないだろう。
田村高廣さんを久しぶりに見た。
映画は土佐堀川を舞台にしているらしい。
昭和三十年頃の戦後の日本を、庶民をこんなに丁寧に描いた映画を見るのは初めてだった。
二十年前の映画なのにモノクロで、実際に昭和三十年代の映画を見ているようだ。
大阪育ちの私には関西弁が懐かしかった。
私が小さかった頃もまだバラックが密集した地域はあった。
テレビを持つ家もまだ多くはなかった。
「戦場で、どうしても生きて日本に帰ろうと思ったが、帰って来ても日本は・・自分はこのままで終わるのかな。」
この時代の人はこんな風に思っていたのだろうか。
「信雄が生まれんかったら、わいはここできんつば焼いてえへん。」
小さなうどん屋をの一人息子(9歳)は信雄。
信雄は船上生活者の子供たち、姉銀子と弟の喜一と仲良くなる。
喜一の母親は船頭だった夫を亡くした後、郭舟と人に陰口を叩かれる商売をしている。
何もかも悟ったような優しい喜一の姉の銀子が痛々しい。
子供たちは学校にも行っていない。
信雄の父は貧しい暮らしはしていても人間としての正しさを失ってはいない。
宿舟の子供が遊びに来るというのを、母親はどうしたものかと夫に尋ねる。
父親は「子供は生まれとうて生まれてきたんやない、子供は親を選ばれへん。」と子供たちを歓待する。
立派な人だと思った。
或る日、ふとしたことから信雄はきっちゃんの母親の見てはいけない姿を見てしまう。
銀子と男の子二人の目に涙が光る。
母親も決して好き好んでしている商売ではないだろうが、酷いなあ。
その後すぐ、きっちゃんの船は舫いを解いてどこかに越して行く。
父親が目顔で頷くのを見て、信雄はきっちゃんの船をどこまでも追いかけるが。

狭い船の中で、映画雑誌などを前にした加賀まり子は場違いのように美しかった。
そんなお金があるんなら、きっちゃんの破れた運動靴の新品でも買ってやれば良いのにと思った。
これもまた商売道具なのだろうか。

「きっちゃ~ん!」信雄のいつまでも船を追いかける姿が印象的であった。






永遠の片想い(劇場)

2004-07-28 15:38:08 | 韓国映画

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監督・脚本 イ・ハン 
出演 チャ・テヒョン(ジファン)
   ソン・イエジン(スイン)『ラブストーリー』
   イ・ウンジュ(ギョンヒ)       2003年韓国
                   ★★★★☆85点
『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンが出演していると喜び勇んで見に行きました。
これが一作目と違って、悲しい映画だったんですね。
映画が終わった後、私は堪えていた涙が溢れたのですが、お隣の席のお嬢さんが急に泣き始めちゃって。
私も、そのお嬢さんの気持ちが分かりました。

なぜ『永遠の片思い』なのかがよっく分かりました。
大学を休学して学費を稼ぐジファンは或る日、アルバイト先の喫茶店に来た二人連れの女の子のスインに一目惚れしてしまう。
ジファンが速攻で行動に移すところに、ジファンの素直で愛すべき性格が現れていて胸にグッときました。

チャ・テヒョンは前作と同じような素に近い明るい役柄で、やっぱり現代の男の子という感じです。
切ない物語なんだけど、笑える場面も多かったです。
唐突な告白に困るスインに大きな掛け時計を見せ、時間を戻したからこの次は友達として会ってと頼みます。
この演出は新鮮でした。

それから、三人の楽しい交際が始まる。
スインは病弱な美少女(お似合いです)、ギョンヒは元気でボーイッシュ。
落ち込んだ時の慰めにギュと丸めてポケットに突っ込んで持って帰りたい!ようなギョンヒ
この台詞が言い得て妙です。

二人の女の子は親友。
次第に三人の関係は変わり始めるが、スインとギョンヒは互いに譲り合ってジファンへの本当の想いを伝えられない。切ないです。

三人で旅に出てジファンは運転しながら片方の手のひらを外に出します。
風を感じて彼がどんなに幸せか。いいシーンです。

ラストの意外なドンデン返しには驚きました。
二人にはこんな秘密があったのか。やられたって感じ。
それからジファンの妹、この少女、感情表現が豊かでとても初々しい、注目です。
以下は結末に触れていますのでご用心。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ジファンはギョンヒの最後の手紙を読みます。
三人の輝くような楽しい思い出を胸に・・・
ジファンの悲しみがこちらに伝わって胸が痛む。

前半が明るい雰囲気だっただけに、この二重の悲劇はどうなのかなあ。
個人的にはせめてギョンヒは幸せになって欲しいと思いました。
三人は映画『イルポスティーノ』を見てそれぞれが同じ台詞をつぶやく。

「人を愛しているんだ。胸が痛い。でもこの痛さを持ち続けたいんだ。」


チルソクの夏(劇場)

2004-07-05 12:04:00 | 邦画 (69)
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監督 佐々部清
出演 水谷又妃里(郁子) 上野樹里(真理) 
桂亜沙美(巴)三村恭代(玲子)
淳評(安大豪)高樹澪(26年後の郁子)

好き嫌い当てにならないオススメ度 ★★★★80点

1977年の下関。長府高校の陸上部員郁子は姉妹都市釜山との親善事業として、毎年夏に開催される関釜陸上競技大会に出場します。
同じ高跳び競技の韓国人の男の子、安大豪(アンテイホウ)に出会います。
仲の良い親友3人が郁子の初恋に全面協力してくれるが。
安大豪が郁子に淡い恋心を抱き、釜山の宿舎に会いに来る。
まるでロミオとジュリエットみたいな場面は笑わせてくれます。

およそ26年前、私は意識した事はないが、日本人は韓国の人々に偏見があったかもしれない。
韓国の人は血縁の者を日本兵に殺され、いまだ日本人に憎しみを持つ人もいる。この現実。

安大豪の言葉。
「憎しみが僕たちの時代にまで続くのはおかしいよ。」
「僕は父のように外交官になって世界の平和のために働く。その前に南北の統一を果たす。」
「儒教の教えの中で育った僕は、親が日本人と付き合うことを好まないなら、その考えも尊重しなければ。」
郁子は同じ17歳の安大豪が自分のなすべき事を深く考えている事に驚くが。
「良いんだよ。日本は平和なんだから」

映画は恋物語に終わらず、国と国とのと関係、家族、友情についても描かれている。
二人は翌年の再会を約束する。
一年に一度出会う織姫と牽牛のように。
チルソクとは韓国語で七夕という意味なんだそうです。

兵役につく安大豪の言葉に4年後の再会を約束するが、それは叶わず26年の月日が経った。
26年前の日韓は今よりもっともっと遠い国だったろう。
二人の伝達手段は手紙だけ。
このお話は実話であるらしい。
多感な年頃の人たちが新しい恋を見つけたとしても、現実とはそういう物かもしれない。

郁子は安大豪と4年後の再会を約束して見送る。
3人の友は郁子を励ますために歌います。
安大豪が日本語を覚えて歌ってくれた「なごり雪」を。
一緒に泣いてくれる友がいる・・幸せだよね。
下関と韓国では互いの国のラジオ放送が聞ける。それ程二つの国は近いのか。

見終わった感想としては、安大豪の気持ちや境遇が少し説明不足なところが惜しい。
物語としては面白いのに、やや平板な感じがしたけど。

26年後の関釜陸上競技大会に指導者として参加した郁子を待っていたものは・・ ・




さよなら、クロ(DVD)

2004-07-04 11:49:00 | 邦画 (69)
監督 松岡錠司
出演 山本クロ 妻夫木 聡(木村亮介) 
伊藤歩(五十嵐雪子) 新井浩文(神戸孝二) 
田辺誠一(三枝昭吾)

好き嫌い当てにならないオススメ度 ★★★☆75点
信州の松本を舞台にクロと名づけられた犬が高校に住みつき、10年の間高校生たちの青春と成長を見守り続けた。
実話に基づいたお話だそうです。映画の中でさりげなく映し出される映画館のポスターが時代を伝えてくれる。
『卒業』『ボニー&クライド』1970年代かな。
白い雪を頂いた山々が連なる美しい信州。
家族にやむおえず置いていかれた子犬のクロはある高校に住みつく。
高校三年生の亮介、孝二、歩は将来の進路が決まる時期だが、仲良しである。
孝二は正直に自分の気持ちを歩に伝えるが、歩の本心は。
失恋したと悟った孝二はその直後にバイクで事故死してしまう。残された二人はそれぞれに悲しみ、傷つく。
10年後に獣医となった亮介は郷里に戻った。
クロが老衰で死に、離婚を経験した歩と亮介は再会する。
歩「私幸せになろうと思うの、亮介君は?」二人はゆっくりと日本アルプスの見える一本道を歩き始めた。
過去を乗り越え、10年の歳月をかけ新しい幸せに向かって。
いつも彼らの傍らにはそっと寄り添うクロがいた。

松本のとある高校、中庭の陽だまりに懐かしいものが胸にグッと込み上げる。何なのだろうな?
犬嫌いの先生がクロの死を知って拳を握って男泣きするところは、笑えてホロリとする。
知らない間に皆クロの存在に励まされ、勇気付けられる。大人しいクロがとても愛らしい。
動物と人間との関係をさりげなく描いているところが良い。
ペットは生涯の友達。その小さな命も大切にしてやりたい。そんなメッセージも押し付けがましくなくて良いと思う。
一人暮らしの高校の守衛さん(井川比佐志)とクロの姿が微笑ましく心温まる。
高校生の中に『ウオーターボーイズ』の出演者の顔が見えたのにニンマリした。

青春の影
        チューリップ
君の心へ続く長い一本道は
いつも僕を勇気づけた
とてもとてもけわしく細い道だったけど
今君を迎えにゆこう

自分の大きな夢を追うことが
今までの僕の仕事だったけど
君を幸せにするそれこそが
これからの僕の生きるしるし 
久しぶりに聞いた曲、忘れかけた青春時代。改めて良い曲だと思った。。





東京マリーゴールド(ビデオ)

2004-07-02 11:44:00 | 邦画 (69)
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監督 市川準 原作 林真理子
出演 田中麗奈(酒井エリコ) 小澤征悦 (タムラ) 
樹木希林(エリコの母) 2001年

当てにならない好き嫌いオススメ度 ★★★☆75点
最近ダメな男とつきあってませんか?
エリコ21歳は恋人に振られたばかり。友人に合コンに誘われタムラに出会う。
どこか古風なタムラはエリコに別れ際に携帯の番号を教える。
東京には住んだことはあるが、最近の東京の洒落た街とと下町の風景の対比が面白い。
タムラは恋人は?とのエリコの問いに「この年の男なら、普通恋人はいるでしょう」と答える。
ん?自分から番号を言ったくせにイヤなこと言うわね、この男。男には留学中の恋人マユミがいる。

エリコは彼女が戻るまでの一年間の期間限定の付き合いを申し込む。
エリコへの初めてのプレゼントはべっ甲アメ。
「なめちゃえば消えるから、その方がいいでしょ」なんだあ?それならプレゼントなんてしなきゃいいじゃないの。寒~。
タムラの提案で二人は小さな部屋を持つが、季節は美しく過ぎ、タムラの恋人が戻る時期が来た。
エリコ「眠れないの。貴方の存在が段々大きくなって、自分でもどうして良いか分からないの。何も手につかない、何も喉を通らない。」
タムラ「脅迫みたいだね、何か・・」
結局、タムラはマユミを選んだ。
傷心のエリコ。以前エリコが頼まれて出演したC・Fのビデオテープが届いた。
そこには懸命に野球のボールを投げる自分がいた。
期間限定の恋、自分が選んだ道だもん。涙を拭きながら、笑顔を取り戻すエリコ。
放任主義の芸術家のように見えても、樹木希林のエリコを気遣う顔は正しく母親の顔だなと思った。
一番じんわりくる場面です。
エリコが母親の作ったお味噌汁を飲んでほっとする場面が良いなあ。

その後、エリコはタムラの意外な事実を知ることになる。何だ、そうだったのか。
一つ大人になったエリコは風の中を真っ直ぐ走り去る。可哀想なタムラはもう過去の人。

タムラと恋人マユミの関係が映画を見た後、すぐには分からなかった。
何だ、そうだったのか。「最近ダメな男とつきあってませんか?」の意味がようやく理解できた。
タムラはダメな男だったのか?
マリーゴールド・一年草 一年で実を付け枯れていく儚い花だけど、金色に精一杯輝いて逞しく咲く。