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めがね

2007-10-06 15:57:21 | 邦画 (69)

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監督・脚本 萩上直子
出演 小林聡美(タエコ)市川実日子(ハルミ)
     加瀬亮(ヨモギ)光石研(ユージ)
     もたいまさこ(サクラ)薬師丸ひろ子

 

2007年、日本

 

神戸シネリーブルにて。

 

今度は5人で、南の海辺。
一瞬のようで永遠のような、
たそがれどきの物語。

 

携帯も繋がらないようなところに行きたいと、どこか南の島にやって来たタエコ(小林聡美)は、素朴な小さな宿であるハマダに到着した。ハマダの主人であるユージ(光石研)とその愛犬コージ、さらには不敵なほほ笑みの女性・サクラ(もたいまさこ)らにそこで出会う。ハマダで数日を過ごしたタエコは、さりげなく気遣ってくれるハマダ方式?にも違和感を感じ、勝手きままに過ごそうと、別の宿へ移る決心をするのだが...

 

何が自由か、知っている

 

まず、この映画はもたいまさこさんの映画だと思った。
『かもめ食堂』のもたいさんのキヤラクターをふくらませた感じかな。

 

「・・・来た」
春まだ浅いころ、この世界のどこかにある南に海辺にプロペラ機がついた。
背筋のシャンと伸びたひとりの女性が颯爽と降りたち、心待ちにしていた様子の迎えのユージとハルナに深々と一礼する。

監督も脚本も萩上監督が手がけただけに、これといったストーリーはなく、半・環境映画みたいではあります。
本当に疲れている人は寝てしまいそう;
気分転換にワクワク刺激がほしい人、映画にドラマや物語を期待する人には向いていないかな。

 

台詞も思いっきり少なくて、タエコとヨモギの関係や、(恋愛でもなさそうだし、ちょっと気になる)サクラの正体などは一切説明がありません。彼女ってデン!としていて、仙人か桜の精?^^

台詞が少ないのも静かで、悪くない。
自然に、登場人物の動きや表情に目がゆく。
ずっと波の音が聞こえている。

 

お互い、深く詮索しない、それもひとつの思いやりなのかもしれませんね。
人と人との適当な距離感は『かもめ食堂』と同じ。

 

才能ありますヨ。
ここにいる才能。

 

私は子供のころから年中、ぼ~っとするのが好きで、こういう才能はあると思う。笑

 

朝、起きたら、サクラさんが枕元で、にっこり座っている・・
誰だって気味が悪いよ。

 

観光地なんて、この島にはないという。
たそがれるとは、どうも何もしないで、ぼ~っとすることらしい。

 

観光地はなくとも、海はエメラルドグリーンで、空は青く風は心地よい。
夕日は、それは美しくて、なんて贅沢。

豊かな自然と同化してたそがれたくなる。


でも、たそがれるだけではなく、”ハマダの人たち”がいてほしいと思う。

人は人の暖かさに癒されるものだから。


大切なのはあせらないこと。
あせらなければそのうちきっと。

 

いくら真面目にやっていても、休憩は必要です。

 

ここの人たちは羨ましいくらい毎日に満足して、ゆったりと暮らしている。
だいたい、この映画、お金の話は一切出てこない。

 

ユージはサクラのカキ氷を食べなかったらここにいなかったと言う。
彼もサクラに何かを貰ったのかな。

 

ハルミは死について考えている。
サクラは言う。死?二度は死なないということ。
成るほど~。禅問答みたい。

 

初めのころのタエコはどちらかというと、角ばってイヤな女性である。
旅に出ても、着ているのはカッチリしたもの。
先生って・・医者のような気がする。

 

印象に残る場面はふたつ。

 

タエコは別の宿から仕方なく歩いてハマダに帰ってくる。
サクラさんが自転車で迎えに来る。
サクラの登場の仕方がいつも妙に劇的(笑)なのですね。
タエコが重い旅行カバンを捨てた時、彼女は変わったのだと思う。

 

「ここに来る前は私、地球なんか消滅してしまうといいって思ってました。」

 

そして、ついに彼女はサクラのカキ氷を食べる。
タエコの表情に注目。
何かを想い出している目。
過去や未来や、今はもういない誰か?
彼女の目が潤んで見えたのは気のせいかな。

 

彼女の心にあずきの甘さとともに、何かがひろがっていく・・
サクラさんの氷アズキは愛情という隠し味が利いている?

 

サクラさんが炊く小豆はふっくらとほんとに美味しそう。

 

が、この時間が決して永遠ではないことを、誰もが確かに感じていた。

 

サクラはその名のとおり、梅雨の前に姿を消した。
ヨモギも帰った。

 

このふたつの名に共通するものは春・・

 

サクラ不在で、閉じたカキ氷の店。
あたりが急につまらなく見える。

 

ここから結末に触れています。

 

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そして、時は移り、ユージとハルナはカキ氷の店を開ける準備をしている。
帰ってきたのか、島に留まったのか、タエコの微笑む顔も見える。
タエコのめがねのフレームが赤になっている。ドレスも赤い花柄。

 

再び、颯爽と表れるのはサクラさん。ヨモギも一緒だ。
赤いマフラーを首に・・・

 

限られた時間は永遠ではない。

 

けれど、春は必ず訪れるのである。

 
 
 
 

なんだろう?この嬉しさは?



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