英題 A world uithout thieves
監督・脚本 フォン・シャオガン
出演 アンディ・ラウ(ワン・ポー) レネ・リウ(ワン・リー )
グォ・ヨウ(窃盗団の頭目フー・リー)
リー・ビンビン(シャオイエ)ワン・バオチアン(シャーケン)
2004年、中国
汚れない世界で
永遠の愛を知った
戦いの中で運命が変わるのを、僕は気づいた。
現代の童話
「天下無賊」とはこの世に泥棒などいないという意味なんだって。
>>詐欺やスリで世間を渡り歩く恋人同士のワン・ポーとワン・リーだが、チベットの高原地帯で二人は仲たがいをし、怒ったワン・リーは車を降りてしまう。そこでワン・リーは、出稼ぎに来ている若者シャーケンと出会う。その後、彼女は列車の始発駅で、貯めた大金を持って故郷に帰ろうとするシャーケンに再会するが、そこへワン・ポーもやって来た。彼はシャーケンの金に狙いをつけるが、同じ列車には窃盗集団も乗り合わせていた…。
本作は2005年正月の中国公開では、同時期公開の『カンフーハッスル』をしのぐ大ヒットになったそうです。
久しぶりの香港映画?(実は中国映画)と、なにげに見に行ったのだけど、これが水準以上に面白くて。
1日1回きり上映、大した宣伝もなしなんて、勿体無い~。
そこいらの洋画も真っ青に面白かった。
平凡なラブストーリーと、勘違いしちゃ損というもの。
色彩やテンポいい話運びも、シーンの切り替えも新鮮なものがあって、洗練されている。
ヨーロッパのサスペンス映画を見ているような錯覚をおこしそう。笑
中国映画に新しい風を感じて、喜ぶべきだな。
チベットで、寺の彩色の修複の仕事をする青年は、大地にひれ付して仏に祈るワン・リー(レネ・リウ)を見て、目を奪われる。
青年の名はシャーケン。
このレネ・リウが美しい。
この時、青年の持つ筆から金色の絵の具がひとしずく、大地に落ちる。
これが、後に印象的な場面につながる演出が憎い。
チベットに出稼ぎに来ている、バカがつくくらいイノセントな天涯孤独な青年(意外に頑固)は稼いだ大金(全財産・結婚資金)を手元に持っていることを駅の雑踏のなかで、口にしてしまう。
列車に乗り合わせた狼たちの目が光る。
疾走する列車、閉鎖された空間で繰り広げられるスリのプロと窃盗団の攻防戦、意地の張り合い。
列車は轟然と大陸を走りに走り続ける。
ゲームからも、疾走する列車からも降りることはできない。
大陸縦断列車。ここはやはり、大陸。
列車内は人生の縮図。庶民の生活の熱気や匂いがこちらにもムンムン伝わってくる。
こういう人々のエネルギー溢れる生活感は中国、地元の監督だからこそ出せるんだろうな。
でも、列車の扉一枚隔てた向こうは別世界。
華やかな退廃の夜がひらけている。
悪人たちの技の競い合いはラテン系だったかな?軽快な曲に合わせて流れるよう。
○○○リでの闘いに目を奪われる。プロの手にかかったら、こんなものも強力な武器になる。
純朴青年は全く人を疑わず、だんだん、彼に肩入れしたくなってくる。
彼の人を信じる清い心を傷つけるな!!!
たとえ、それがバカげていようと。
せちがらいこの世の中に、こんな人がいたら貴重よ。
いかにも、大陸の奥地にいそうな純朴な青年シャーケン役をワン・バオチアンが自然に、リアルに演じている。
ワン・リーはある切ない願いから悪事から足を洗おうとし、青年を守ろうとする。
ポーはそのせいで、のっぴきならない事態へと巻き込まれていく。
あの人(リー)は信心深い人だ。
青年は直感を信じて疑わない。
孤児育ちの青年は仲間が故郷に帰る時もチベットに残って働いた。
狼たちを話し相手に。(ウルウル)
彼が狼と別れる凍てつく「蒼い」場面が幻想的でなんとも美しい。
車窓に流れる壮大な景色に熱い浪漫を感じる。
途中の夜の停車駅のたたずまいにも詩情をかきたてられる。
さて、この列車には強盗団逮捕のための警察組織も送り込まれていた。
こうして三つ巴の闘いは始まる。
大人たちの必死の努力で、純朴青年は大金があっちへいったり、こっちへいったりしているのも、何も知らない。
それは大人たちの心に残る”希望”や”良心”なのかもしれない。
さて青年の心(大金)は誰の手に!?
ここから結末に触れています。
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リーは妊娠していた。
こうしてポーと古狸フー・リーの最後の一騎打ちが始まる。
リー「待ってるわ、置き去りにしないでね」
殺しにも手をそめたフー・リーは極悪なことでは一枚上手であった。
ポーは最後の力を振り絞って、青年シャーケンの元に金を返してやる。
青年に、生まれてくるであろう自分は目にすることのない子を重ねて・・
真っ当に育ってくれ・・・
何も知らずに眠りこけるシャーケンの頬に、ポツリと血のひとしずく。
携帯の画面。
リー、シャーケンは大丈夫。待っていてくれ・・の文字が悲しい。
アンディ・ラウと言えば、イメージは壮絶な死。
この世に未練を残して、自分に何が起こったのか信じられない、死が受け入れられない眼。
これ、お約束ですね~。
いつも思うのだけど、この人の首から肩への線が美しい。
雨の日、しゃれたレストランで、(ここ、どこ?北京かな。綺麗です)リーは警官にポーが逝ったことを聞かされる。
また、この警官がエエ人で。
彼女の目は涙で光って、むせびながらも、でも、食べものにむしゃぶりつくことを止めない。
生きて、生きて、ポーの子供を産む!
強い中国女性の意志が彼女の姿に見える。
泣けます。
閑話休題っていうかおまけ:
アンディ・ラウもお茶目なカツラを被って、どこにでもいそう?なスリに化けてる。(笑)
何やってもアンディとは言わせない!彼の心意気やね~。^^
このお話は童話なのだから。
ポーは死なせなくてもよかったんじゃないかなと思う。
それこそ、よくあるエンディングになってしまう。
死んだと見せかけて、得意の手品で生還なんてどうでしょう?
悲劇よりも、そのほうがセンスよくない?
あの、ひとりぼっちの青年を純粋培養しながら(笑)広々とした草原で、ポーたち親子もみんな一緒に暮らす幸せな姿を見たかった。
私はひとりそんな幻想を見る・・