あいりのCinema cafe

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はなればなれに/ Bande a part

2007-05-09 07:35:55 | ヨーロッパ映画/イギリス・フランス (2

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監督・ナレーション ジャン=リュック・ゴダール
出演 アンナ・カリーナ(オディール) サミー・フレー(フランツ)
     クロード・ブラッスール(アルチュール)
音楽 ミシェル・ルグラン

1964年、フランス

>>肌をさす冷気がこころよい冬のパリ。

北欧から叔母の住む屋敷へやってきた英語学校の生徒オディール(アンナ・カリーナ) はロマンティックに美しい。フランツ(サミー・フレイ) とアルチュール(クロード・ブラッスール) は彼女にヒトメボレした。大の親友の二人だが、性格は地球の表と裏ほど違う。二人とも推理小説マニア。ヒマはふんだんにあるが金はないだけが共通点。オディールからから、屋敷に脱税か何かで隠している大金があると聞かされる。可愛いオディールに惹かれる2人だが、一方、その金をくすねようと彼女を巻き込んで泥棒計画を立てる。

>>日本初公開のこの映画を心のゴダール映画ベストワンと推す人は、タランティーノ、ヴェンダースや「ミツバチのささやき」のエリセ、アニエス・bなど、多い。

前から見たいと焦がれていた『はなればなれに』を「BOW30th/映画祭/ベスト・オブ・ワールド・世界の傑作12選」で見ることができた。
例の、アートビレッジセンターの60席、視聴覚教室^^にて。

40年以上も前に作られた映画(モノクロ)であるのに、その疾走感と展開の速さ、洒落た感じに驚く。
古くて、むしろ新しい。

ゴダールは『勝手にしやがれ』をもって、ロケ中心、同時録音、即興演出、ジャンプカット(画面の連続性を無視して、カットを繋ぎ合わせること)、新しいスタイルと感覚で、ヌーベルヴァーグ映画の評価を確かなものにした・・らしい。

ヌーベルヴァーグと言えば日本でも『狂った果実』なんて映画を思い出す。

>>1956年7月12日に日本で公開された本作がその年、パリで上映され、それを目撃した批評家トリュフォーは、『Si jeunes et des japonais』を書いて絶賛した。ゴダールも本作を観た。
とりわけトリュフォーには、中平康『狂った果実』のパリ上映の多大なる影響があったことが知られている。
ヌーヴェルヴァーグよりも前にヌーヴェルヴァーグだったのは、日活調布撮影所だった。
          リンク ウィキペディア、フリー百科事典より。

↑このサイト、興味深いです。

さて、話を『はなればなれに』戻します。汗

以前、TVで、『勝手にしやがれ』を見たのだけど、あろうことか!私は(笑)ジーン・セバーグが叫ぶ「トリュビューン!」と、ベルモンドがやたらに走っていたことしか覚えていない;
冒涜もいいとこです。

真面目に見た『気狂いピエロ』とはまた違い、『はなればなれに』は楽しい映画だった。
この時、23歳のアンナ・カリーナはぽちゃっとして、まだ高校生みたいな少女っぽい可愛らしさ。

ヒマで金欠のフランツとアルチュール。
フランスの太陽族?リッチじゃないところが違いますね。笑
暴走・・倦怠・・刹那・享楽主義・・若気

オディールとフランツの間にアルチュールが割り込んでくる。
青年らしく健康的な感じさえするフランツに比べ、アルチュールはどこか危険な香り。
狙った獲物は逃がさない。くどきも年季が入ってそう。

ゴダールの映画は物語があるようで、ないようで。
どうせ汚れた金だ。盗もう。アッサリ
男ふたりにとって、人生はゲームなのだろうか。

危うさを孕んで、コトはすすんでいく。

話はシンプルな代わりに、聞き逃すと惜しいような言葉で溢れている。

誰も、もう、後戻りできないのはわかっていた。・空虚・

フランツ「変だと思わないか?人々は一体になろうとしない。みんな、バラバラで」

すれ違う想いが交錯する。
     
ルーヴル美術館をアメリカ人より速く観る記録への挑戦にワクワクした。
沈黙ゲームもくだらないのに、なんだか記憶に残る。

最高なのはやはり、3人が気持ちよさそうにカツ、カツ踊るマジソン・ダンス。(アメリカで生まれ、50~60年代に世界中で流行ったダンスステップ)

私が学生のころも、ホールの全員がこういう4方向に向きを変えて踊るステップあったです。^^
中折れ帽を小粋にかぶったアンナ・カリーナは少女っぽいなかに成熟した女性の香りが匂いたつ。

この映画、この場面だけでも見られたら満足というものです。

そうそう、どの場面か、オディールの姿に重なって、『シェルブールの雨傘』のテーマが聞こえた。
確かに、聞こえた。笑
ミシェル・ルグランのいたずらかな。

そして、待ってました。「足のない鳥」の話。
リンク『欲望の翼』にガツンとやられてから、ずっと、ずっと、気になってた。
ウォン・カーウァイ監督もまた、この映画が好きなんだな。

「ヤツと寝たのか」

「足のない鳥のインディアンの伝説を知っているか」これは粋人のアルチュールがフランツに言う台詞。

足のない鳥は死ぬまで飛び続けるんだ。
羽は大きくて、でも、手のひらにおさまる大きさなんだ。

これはアルチュールの未来を暗示してるのね。

アルチュールは『欲望の翼』のヨディほど屈折してはいないけど、好きなものは手に入れないとすまない気質、破滅型なのは似ている。

『勝手にしやがれ』を見直そう。また、違う目で見られそうだから。

情報:
『勝手にしやがれ』のジャン・リュック=ゴダールが続編のつもりで監督したヌーヴェルバーグ絶頂期の作品。即興演出が冴え、ミュージカルシーンも織り込んだコメディタッチの犯罪ミステリー。主演に若く美しいアンナ・カリーナ!! 音楽は『シェルブールの雨傘』のミッシェル・ルグランが担当。

DVDも出ています!

ここから結末に触れています。

∽∽∽∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

アルチュールは結局、身内の叔父に射殺される。
ごろつきみたいな一家を持った身の不運。

そして、

* 映画は三文小説のように終わる *

02


浮き雲 / Kauas Pilvet Karkaavat Drafting Clouds 

2007-05-03 17:54:20 | ヨーロッパ映画/イギリス・フランス (2

Chy0523

監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:カティ・オウティネン(イロナ)カリ・ヴァーナネン(ラウリ)
    エリナ・サロ / サカリ・クオスマネン

1996年、フィンランド

涙がにじむ街角に、雲が浮かぶ

>>イロナ(カティ・オウティネン)は名門レストランの給仕長。夫のラウリ(カリ・ヴァーナネン)は市電の運転手。ささやかな幸せの中に生きがいを見出した生活を送っていたふたりが、ある日突然職を失う。イロナは大手レストラン・チェーンの乗っ取りにあい解雇される。夫婦同時失職の危機を、ふたりはどう乗り越えるか?

アキ・カウリスマキ・・私の好きそうな監督なのに、この映画が2作目です。

監督は日本びいきで、小津監督を愛しているとか。

成るほど、日々の暮らしを淡々と描いたところ、人の心の動きを丁寧に描いているところは似ているのかもしれない。

でも、こちらはフィンランド、映画のなかの空気は違う。
登場人物は地味、台詞は徹底的に少なくして、余分な説明もなく、無声映画に近い。笑

空気感と言えば、秋の黄金色の景色も綺麗だけれど、バスの鮮やかな緑や、アパートのソファの赤、壁紙の水色と、優しい原色が使われていて素敵だ。

この青空を思わせる清々しい水色は『かもめ食堂』の壁の色と同じで、嬉しくなった。

イロナのいっちょうらの赤いコートは小津監督っぽいかな。笑

台詞は極端に少ないけれど、じっと画面を見ていたら、人の心のぬくもりがちゃんと伝わってくるのです。
決して退屈ではない。
妻イロナを演じるカティ・オウティネンは女優としては地味だけど、身体の線も美しくて見ているうちに綺麗な人だと思えてくる。

イロナは機転も利くし、レストランの給仕としては有能。
でも、当時のフィンランドは不況で就職難。
外食産業は斜陽だという。

妻想いの夫が妻を喜ばせようと買ってくるのがソニーのテレビ。
リモコンを喜んでいるけれど、いつの時代設定なのかな。70年代?
ジュークボックスもよく登場する。

せっかく車を売って作ったお金を、夫はつい増やそうとして、結局、スッてしまうが、妻はそんな夫に腹を立てない。
夫はいいことがあっても、なんでも妻に花を買ってくる。
いいなあ。

棚には子供の写真、妻はひとり墓参りに行く。
子供を亡くしたのか、それもふたりの固い絆になっているのだろう。
夫婦が互いに寄り添う姿にしみじみする。

見ようによっては暗いお話なのに、暗く感じないのは夫婦ふたりの無表情ぶりが滑稽なのかも。笑
淡々としていて悲壮感はない。

でも、ふたりは一生懸命、決してあきらめない。
だまされても、踏みにじられても、立ち上がる雑草みたいにひたむきだ。

妻イロナを演じるカティ・オウティネンが素晴らしい!

ここから結末に触れています。

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救いは意外なところから(予想できなくもなかったけど)やってきた。
イロナは就職活動先の美容院で、乗っ取られたレストランの元オーナー夫人に出くわす。

事情を知った夫人はもう一度レストランをやってみよう、資金は出そう、それに、イロナにレストランの経営を任せてくれると言う。

*

開店の日、お客が来てくれるか緊張するイロナと夫と、元のレストランの同僚たち。
ああ、ここも『かもめ食堂』だ!

『かもめ』の女性監督か原作者は絶対に『浮雲』のファンですね、とにんまり。

お客で満杯になった店を眺めて、イロナは一服しに外に出る。
夫と、愛犬と、彼女はそよ風に髪をなびかせ、空を見上げる。

ここはフィンランド
しあわせな夫婦と1匹。
空の色はやはり壁紙の美しい水色?

いつまでも見ていたい美しいラスト。
なんて素敵。

年を重ねて、より深く理解できるだろう味わい深い映画です。
そう、雨上がりの虹みたいにね。

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ちょっと気分が落ち込んだ時、元気が出て落ち着く映画だと思う。おススメです。