あいりのCinema cafe

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サイボーグでも大丈夫

2007-11-11 14:16:12 | その他の国の映画/オーストラリア・アジア

Nui

原題:I AM A CYBORG, BUT THAT'S OK
監督:パク・チャヌク
出演:チョン・ジフン /RAIN(イルスン)
    イム・スジョン(ヨングン)
    チェ・ヒジン イ・ヨンニョ
    ユ・ホジョン オ・ダルス
    キム・ビョンオク


2006年韓国


復讐は終わり、愛が始まる……


ここは突飛な想像と空想に満ちた新世界精神クリニック。
ある日、新しい患者が入ってくる。少女の名はヨングン(イム・スジョン)。ヨングンは、自分のことをかわいがってくれたおばあちゃんが療養所に送られて以来、頭のネジがちょっとおかしくなった。でも仕事が忙しいヨングンの母親は、「私はネズミよ」と言っていたおばあちゃんと自分の娘が同じようにビョーキだとは認めたくない。そんなヨングンに目をとめたのは、同じ年頃のイルスン(チョン・ジフン)。「人のもの」なら特徴でもなんでも盗むことができるイルスンに、ヨングンはお願いする──「盗んでください、私の同情心を。殺したいのに殺せない気持ち……」


パク・チャヌク<復讐三部作>監督最新作は、アンチソーシャル・ラブストーリー。
ラブ・コメディーらしいが、そこはパク・チャヌク監督。
一筋縄ではいかず、毒のツヨい童話世界がひろがる。


『チャーリーとチョコレート工場』に、似てるかな。


パク・チャヌク監督作は好んでは見ないのだけど、チョン・ジフンに興味があって見た。笑


ヨングンも、彼女のおばあちゃんも、イルスンも、現実世界では統合失調症、精神病である。


予告編で見て覚悟していたものの、ヨングンによる医者や看護婦(ホワイトマン)の殺戮シーン(ヒロインと相手役の青年の妄想ですが)はやっぱり見たくなかったな。


ヨングンは自分を可愛がってくれたおばあちゃんを連れ去ったホワイトマンをやっつけて、助けなければと焦っているが、”同情心”がじゃまをしてできない。
・・・ホワイトマンたちにもおばあちゃんがいる・・・
彼女の心は妄想に占拠されてはいるが、このあたりは女の子らしい正常な優しさを持っている。


イルソンは15歳の時に母に捨てられた。
それ以来彼は満たされぬ心を埋めるように盗み(妄想も含み)を繰り返すようになった。
自分が縮んで点になって消えてしまうという恐れを感じている。


ふたりとも十分に母の愛情を受けられなかったという心の傷を負っている。
病というけれど、心はとても純粋なふたり。

ヨングンの母親は娘のことより世間体ばかり心配している身勝手な人のように見える。


自分をサイボーグだと信じ込むヨングンに比べるとイルソンはやや正常な人に見えるが。
サイボーグだから食事をとると壊れてしまうと、頑なに絶食するヨングン。


電気ショック治療を施され(これもなかなかに残酷)、鼻からチューブで栄養分を入れられるヨングン。
ちらと、名作、『カッコーの巣の上で』を思い出す。


このままではヨングンの命が尽きてしまう。


嫌がってるじゃないか、無理に食べさせちゃダメだ~。


優しいイルソンは彼らしい可愛いやり方で彼女を励まし続ける。


工事関係の仕事をしていたイルソンはヨングンが食べたものをエネルギーに変えられる装置を作ってやる。
ご飯を食べると自分の身体は壊れると、心配するヨングンにイルソンは言う。


君が壊れたら僕が治す。
保障期間は一生!


一生、ヨングンのために尽くす・・これはこの上ない愛の告白ですね。
グッときます。


絶食でやせ細った彼女の背中にサイボーグの”ドア”はなく、イルソンは涙を流す。
ヨングンが人間なのは彼にもわかる。(ドアはイルソンが鉛筆で書いて、ヨングンには「ドアはある」と言ってやる。涙)
イルソンが彼女のすべてを受け入れる、この場面は切なくも感動。


ここから結末に触れています。


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患者たちも祈る思いで見守るなか、ヨングンは食事する。
安堵と感激に、膝まづき、しっかとヨングンを抱きしめるイルソン!


繊細でかげろうのような機械たちがヨングンの身体のなかで動き出すイメージ(妄想?)は美しい。


それから、おばあちゃんは亡くなってしまった。
復讐は終わった。
でも、ヨングンの「存在理由」は言いかけたまま逝ってしまった。


イルスンは母の写真(過去?)に、お別れをする。


雷が鳴る雨の夜、荒涼とした地にふたりは自分たちの存在理由を探しに行く。
これでは感電してしまう。ふたりは死んでしまうのか?


そして、朝がやってきて雲のなかから朝日が射す。
降臨のごとく、宗教画のようだ。
ふたりを包み込むように大きな虹がかかる。


サイボーグでも大丈夫。愛してる・・

もうひとつ、サイボーグでもかまわない。人はあるがままの存在でいいとの監督のメッセージも感じられる。


あの虹の向こうに・・
幸せがふたりを待っていることを予感させる、この美しい場面はちょっと忘れがたい。


ふたりの「存在理由」はね、イルスンはヨングンのために、ヨングンはイルスンのために、この世にあるということ。ふふ


ALWAYS 続・三丁目の夕日

2007-11-10 17:42:29 | 邦画 (69)

003


監督:山崎貴
原作:西岸良平
主題歌:「花の名」BAMP OF CHICKEN
出演:吉岡秀隆(茶川龍之介)
    堤真一(鈴木則文)
    小雪(ヒロミ)堀北真希(六子)
    もたいまさこ(大田キン) 
    三浦友和(宅間先生)
    薬師丸ひろ子(鈴木トモエ)
    小清水一揮(鈴木一平)
    須賀健太(淳之介)小池彩夢(美加)


2007年、日本


>>昭和34年春。東京オリンピックの開催が決定し、日本が高度成長時代に足を踏み入れることになるこの年。黙って去っていったヒロミを思い続けながら、淳之介と暮らしていた茶川。淳之介のために、またヒロミに一人前の自分を見せるために、一度はあきらめていた“芥川賞受賞”の夢に向かって再び純文学の執筆を始める。一方、鈴木オートでは、六子も一人前に仕事をこなせるようになり、順調に取引先が拡大し始める。そんなある日、鈴木家に新しい家族が加わって…。


どんなに時代が変わろうと、変わらない大切なものがきっとある。


夕日町三丁目では、以前にも増して、にぎやかで人情味溢れるやり取りが繰り広げられているようです。


冒頭、嬉しくなる場面が出てきます。笑


『寅さん』が映画の冒頭で見る”夢”を連想しますね。
これだけでも見に来た甲斐があった。
1作目の余韻のある終わり方でも十分だったんですけど、パワーアップした三丁目の住人にまた会えました。
本作をもって完結らしい。


今回は1作目から4ヶ月後。
お話は1作目の続きだから、大きな変化も事件もありません。


新たに鈴木オートに住人(親戚の女の子)が増えたり、三丁目の人々は茶川の芥川賞再チャレンジを我がことのように応援したり、相変わらずそこには暖かく優しい笑顔があって、人情の華が咲いています。
成長した六子には彼?ができた様子。


エピソードが増えた分、多少の中ダルミ感はぬぐえませんが。


「美智子様御懐妊」なるほど~、そんな時代だったのですね。


銭湯で飲むコーヒー牛乳の味、覚えています。笑
叔母に連れられて見た裕次郎の映画。
劇場はいつも盛況で、熱気に溢れていました。


懐かしい風景や人々に、ふと、自分の子供の頃や母親の姿を重ねてしまう。
セピア色の世界が穏やかです。


「お金よりも大切なものがある」


人が助け合って生きた時代があった。
もう後戻りはできないけれど、人の心はそう簡単に変わってたまるか。
そう思いたい。

妻の鏡のようなトモエにも「君の名は」みたいな秘めた恋があったのですねえ。
則文が戦友に会うエピソードにホロリ。


幸せになっていいんだよ。
生きて戻った者はうんと、幸せになっていいんだよ。


彼は蛍になって帰って来たのかな。
戦争の傷跡をまだまだ引きずっていた時代だから。戦死した友へ、生還した人は罪の意識を感じていたのでしょうね。


それと、三浦友和、悪魔先生のあのほのぼの感は堪りませんね。
タバコ屋のおばちゃん、もたいさんの出番が増えて嬉しい。


さて、ここから結末に触れています。


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久しぶりに破壊王、ゴジラを見て興奮してしまった。笑


茶川は芥川賞は取れなかったけど、幸せな結末でした。
ヒロミの姿を見て、流石に淳之介の父親も降参。


あの軽やかなテーマ曲とともに、三丁目の人々の笑顔を思い出す度に、胸がポッと温かくなります。