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傷だらけの男たち 傷城

2007-07-12 20:42:49 | 香港映画 (57)

Kizu

監督 アンドリュー・ラウ
出演 トニー・レオン (ヘイ)金城武 (ポン)
    シュー・ジンレイ(スクツァン)
    チャップマン・トー  スー・チー
2006年、香港

  

傷ついた二人に
愛を呼び戻した、殺人事件。

  

生きることが、痛みだった。


この痛みに、生きていた。


>>かつては上司と部下の関係だったベテラン刑事のヘイ(トニー・レオン)とポン(金城武)。だがボンは恋人の自殺で、生活が一転。彼は刑事を辞職し、酒浸りの私立探偵に成り下がっていた。それとは逆にヘイは、億万長者のチャウの娘・スクツァン(シュー・ジンレイ)と結婚し、幸せの絶頂にいた。しかし、そんなある日チャウが、彼の豪邸で何者かに惨殺される。父の死に不審を抱くスクツァンはポンに事件の捜査協力を仰ぐのだが、血塗られた事件の裏には驚くべき因果関係と真実が隠されていた…。


原題は「傷城」で傷ついた街の意味だ。物語は2003年のクリスマスイブから始まる。この年はSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るい、レスリー・チャンが自殺するなど香港全体が沈んでいて、そんな街の再生を願う意図があった。(ラウ監督)


こういう背景のなかで、映画が作られているのも興味深いです。
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以下、核心に触れずには感想を書けないので、映画未見の方は読まないようお願いします。


全てはマカオから始まった。


冒頭の部分から物語はスピーディーで、香港の街も生活感いっぱいというより、美しく洗練された風景を楽しめます。


今回も(笑)私は集中力を欠いて、全部を理解できませんでした。


ヘイとボンたち刑事が車で、猟奇的犯罪者を追う途中に見かけた炎上する車にポンの恋人の自殺原因となった彼が乗っていた。
この三角関係の末に堕胎し自殺するポンの彼女のお話はもう少し説明があれば、ポンの傷の痛みももっと理解できたかなと思う。


また、刑事ヘイを追う第三の男は何者だったのか、他の方のブログを見て知りました。
冒頭、ポンたちが追いかけていた、あの女性への猟奇的犯罪を犯した男だったのですね。
背の高さが違うように思ったけど。


画面に気をとられ、台詞ひとつ読み落としたかもしれない。


テンポよくもいいけれど、物語を味わい理解する余裕はほしい。


この事件は複雑で奥が深い。


ミステリーでも、この映画は最初に犯人がわかっていて、その謎解きの面白さが見所です。
ヘイのあの狂気をはらんだ執拗な残虐さには理由があった。
彼は復讐することにしか生きる意味を見出せなかったのだ。


ヘイは金銭欲から殺人を犯したのか、いったい何が目的なのか。
次の彼の行動が予測できず、背筋がゾッとするような恐怖を感じさせた演出はいい。


ポンとの友情?友情なのかすら怪しく思える。


ヘイは妻が神経質になっていると言い聞かせ、労わるそぶりを見せ、睡眠薬を飲ませている。


細工を施して、妻を徐々に精神病にしたてあげる?
バーグマンの『ガス燈』、そういう恐ろしい古い映画があったのを思い出し、不気味さが募る。


トニー・レオンの仮面をかぶったような冷静な悪役の顔は不気味で、この人のこういう役も珍しい。
ラウ・チンワンと共演して、悪徳刑事を演じた『ロンゲストナイト~暗花~』がこれに近かったかな。
『ロンゲスト』は二度見るには勇気のいる凄まじい映画ですが。^^


トニーと金城武の顔合わせも珍しい。
金城武は酔いどれ探偵が似合うようになったんですね。
ふたりが一緒だったのは『恋する惑星』以来で、あの時は金城武は少年のような役柄だった。


チャップマン・トーが息の詰まるような暗い物語のひとつの癒しに見える。
シュー・ジンレイという女優さんを私は知らない。
一度見ただけでは魅力がわからず、少し地味に感じた。


ポンは自殺した彼女の相手を探し出し、怪我を負った男の世話をする。
彼は憎しみを捨てた。


けれど、憎しみを捨てるにはヘイの傷はあまりにも深く、復讐そのものが彼の生きる全てだった。
最早、戻ることはできない。


このふたりの対比が印象的。


スクツァンはヘイの一家を惨殺したチャウの実の娘ではなく、養女だった。
ヘイがそれを知った時、時既に遅く、夫の犯行だと勘付いたらしいスクツァンを始末する手配は進んでいた。


この時のヘイの凍りついた顔が目に焼きつく。


私を一度でも愛してくれた?
もちろん・・・


ヘイは最後に気づく。
スクツァンを愛していた。
でも、遅過ぎた。


すべてを失った者しか
傷の痛みは分からない。


お前変わったな。
警官だった頃は世界を変えようとしてた。
結局変わったのは
世界じゃなくて俺だった。


人は変わることができる。
若い男はようやくかすかな光を見つけ、もうひとりの男にはもう明日はやっては来ない。


シナリオも細部に凝った作品らしいけれど、(かなり見落とした模様;)終わってしまえば短く感じた。
あと、ひとひねりでもほしい感じは残ったけれど。


ここでも、悪と善は表裏一体というテーマが繰り返されているように思う。


ヘイの一生はいったい何だったのだろう。。


あの時、家族とともに、ヘイの心もまた死んでしまったのかもしれない。