あいりのCinema cafe

只今gooブログにお引っ越し(工事中)

たみおのしあわせ

2008-08-10 07:08:30 | 邦画 (69)

20080612

監督:岩松了
出演:オダギリジョー(神崎民男)
   麻生久美子(瞳)原田芳雄(神崎伸男)
   大竹しのぶ(宮地雪江)小林薫(透)
2008年日本


父・伸男と2人暮らしの神埼民男はオクテだが、最近お見合いした瞳とはうまくいき、結婚を目前に控えていた。一方伸男は部下の宮地と交際中。しかし民男の目を気にして、関係を秘匿していた。そんな中神埼家の天井裏に、ニューヨークから逃げ帰った親戚の透が居着く。透は偶然宮地に発見されてしまうものの、なんと2人は恋に落ちてしまい……。


お見合いをしてなんとなく結婚へと進んでいく息子・民男。部下とつきあいつつも息子の目を気にしてしまう父・伸男。そんな2人の関係を通して、しあわせのかたちをゆるゆると映し出していく、コミカルなドラマ。オクテな青年の民男を演じたオダギリジョーは、その格好良さを完全に封印。ダサいオーラを身にまとっての演技はなかなか新鮮だ。伸男を演じた原田芳雄も息子に弱い伊達男を好演。そんな2人の演じた親子の関係は、民男の婚約者・瞳をはじめヒトクセもフタクセもある周囲の人々や出来事に揺れ動かされ続けながら、クライマックスで衝撃の展開を迎える。その姿は爆笑ものだが、同時に胸にちょっとだけ刺さるものを感じることになるだろう。


なにがなんでも息子を結婚させたい父親と、たいしてその気のない息子・・


結婚してもしなくても、どのみち君は後悔することになる
                ーーソクラテス


結婚は人生最大のエンターティンメント
たみおと一緒に考えよう
で、結局、しあわせってなに?


結婚するとは半分だけ幸せなような気が私はしている。笑


岩松了って監督さんがテレビドラマ「時効警察」の、あの部長だとは知らなかったあ。
そんな驚きもあって、人生を半分以上生きてきた私は、この映画、なかなか味わい深く(笑)面白かった。
ゆったりした映画がダメな人には無理だけど、ほのかに切なく、大人の映画だと思う。
気楽に楽しみました。


父子が暮らす古めかしい家の様子にパロディなのかな?小津監督の映画を思い出した。
父親の作った夕飯を食べるたみおが岩下志麻に見えたりして。爆笑
父親の愛情に、息子のたみお(家ではいつもパジャマ^^)がまるで深窓の令嬢みたいに見えてくる。


この二人、もちろん男同士のことで、口では優しい言葉などかけるごころか、ズバズバ言い合う。
そのやりとりがおかしくてクスクス。


色んな映画も観たけど、あのラストは笑えた。
これ以上書くと、ネタバレになるから書かないけど。


デパートで見合いの晴れの衣装を買って、(こんな父息子も珍しい)一休み。

靴は買わないのか?

靴まで新品だと、みじめでしょ?

靴がみじめなのか自分がか?爆


しかし、登場する女性たちの自由奔放でたくましいこと。
たみおなんて彼らに比べたら、純粋培養されたようなもので、太刀打ちできないだろう。笑


大した欲もなく、可愛い息子に気を遣いながら生きる原田芳雄が渋い。
芸達者な大竹しのぶ、小林薫のこの三人が人間臭くて微笑ましく、映画を面白くしている。


ここから核心に触れています。


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大正浪漫チックなオダギリさんの黒の燕尾服姿は優雅で綺麗です。
結婚が決まって、たみおは自分が父親の再婚のネックになっていたことに、つくづく気づくところがいい。


瞳さんと二人で自転車で走るところは古きよき時代の青春映画のワンシーンである。
それは爽やかで一見の価値あり♪


可愛い顔して瞳さんのすることって大胆。怖


そして、男ふたりが手に手をとってあの『卒業』も真っ青の逃避行。


父親が土壇場で、たみおの結婚を阻止したのは、自分の瞳に対する理性に自信がなかったからだろうが、(それはたみおを不幸にする)たみおも同じく逃亡したのは映画を見ている間はなぜだか分からなかった。


父親が、透と雪江にいいようにされて一人ぼっちになる姿を鏡のなかに見たのかな。
父さんをひとりにはできない・・?


結局この父子はふたりで暮らすのがしあわせなのかも。


瞳さんに亡き母親の浴衣を貸したり、最後に他人に母の面影を見たり、たみおには母親が神聖で永遠の女性なのかな。
でも、たみおも中年、壮年の色模様?現実も学んだからには(笑)これからは父親の幸せも考えることだろう。
それとも逆効果?^^;


幸せもひとそれぞれ。


で、結局、しあわせってなに?笑

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マイ・ブルーベリー・ナイツ

2008-04-05 06:25:05 | ヨーロッパ映画/イギリス・フランス (2

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監 督 ウォン・カーウァイ
脚 本 ローレンス・ブロック ウォン・カーウァイ
出 演 ノラ・ジョーンズ(エリザベス)
            ジュード・ロウ(ジェレミー)
            デイヴィッド・ストラザーン(アーニー)
            レイチェル・ワイズ(スー・リン)
            ナタリー・ポートマン(レスリー)


2007年 フランス=香港映画


あなたに近づくための5、603マイルの旅


>>監督は『恋する惑星』『2046』で眩暈がするほど美しく濃密な愛を描いてきたウォン・カーウァイ。前作『2046』で「時間」(『欲望の翼』もまた)をテーマにした監督が、今回選んだテーマは「距離」。独特のスタイリッシュな映像、夢うつつの雰囲気はそのままにアメリカを舞台に新たな愛の側面を描く、監督初の英語映画。


・・と、公式ページにはそう紹介されている。


ここでの「距離」は人と人との親密さの距離でもあるという。


物語の発端が「鍵!」と、『恋する惑星』を下敷きに、爽快感溢れるアメリカ的なロードムービーになっている。
監督の初めての英語映画は初心に戻ってのデビューというのが面白い。

英語圏デビュー作はハリウッド(アメリカ?)映画の王道をゆくものでした。
カーウァイ監督もアン・リー監督の海外成功で、心中穏やかでないものがあるでしょうね。


製作国は香港、フランスなんですね。
カーウァイ監督にはやはり、もっともっとフランス映画っぽい作品を期待したいです。


ジェレミーは商売柄、たくさんの人の人生(鍵)を見てきた。


(預かった)鍵を捨てると、開かない扉ができるんだ。
そんな決断をどうして僕ができる?


確かに、それは難しい。
考えさせられる台詞だ。


映像もブルーがかった色彩も相変わらず美しいのだけれど、ウォン・カーウァイっぽさが弱いなと思ったら、脚本がきちんとあって製作された映画らしい。
なるほど、監督の即興的な話運びのうちに、パズルが合わさり収束するような危うい意外性はない。


ノラ・ジョーンズ演じるエリザベスが失恋して、デリで働くジェレミーに慰められ心を残しながらも傷心を癒す旅に出る。
そう言えば『恋する惑星』でも、監督はヒロインに映画初主演の歌手のフェイ・ウォンを起用している。
故意か偶然か。笑


映画中、『恋する惑星』や一連の監督の映画お馴染みの名前や物たちが見え隠れ。
ニヤリとする楽しみはある。
レスリーやスー・リン(花様年華』『2046』のスー・リンチェン)、警官姿(思わず笑ったわ^^)、店のショーケース、女ギャンブラー等等。


でも、私はやっぱり、「夢のカリフォルニア」などの音楽といい、香港の雑多な街中に起こる不思議な奇跡のような愛らしく天真爛漫な恋の物語のほうが好きですが。
私には新鮮で斬新、目からウロコでしたから。笑


ニューヨーカーなら、そうでなくともアメリカ大陸横断は夢なんだろうと思う。
エリザベスは働きながらの旅の途中、様々な土地で様々な人たちに会う。
皆、愛においてなんらかの「喪失」を味わっている。


エリザベスが旅に出た時から、私にはラストは推測できてしまうのだけれど、(笑)いくつかの街で出会う人たちの傷つき、また、立ち直っていく姿をじっくり味わった。

あの二枚目のジュード・ロウがなりふりかまわぬ(モテると思うけどなあ、汗)気のいい働き者のマスターかな?を生き生き演じていて意外でした。
『スモーク』のオギーみたいに情のあるマスター、いそうでいないところに夢があります。


ジュード・ロウの面差しの目元など、レスリー・チャンを思い出させて感傷的になる。


特筆すべきはスー・リンを演じたレイチェル・ワイズ。
強くて、男性を惹きつけずにおかない、なまめかしさが色白の肌や目つきに表れていましたねえ。


愛が重すぎて・・
彼女が街を去らなかったのはやはり、彼を憎んではいなかったから。
気になって置いてはいけなかったんでしょうね。

愛していても、どうにもならない二人の複雑な関係・心理はやるせない。

このワンストーリーだけでも1本の映画になりそう。


愛するにも「距離」は必要なのだと・・気づかされる。


ナタリー・ポートマンは大人の女性になっていて驚きました。
気品もあって、スポーツカーがお似合いでカッコいい。


彼女は颯爽と、一匹狼のギャンブラーとして彼女の新しい人生を歩む。


ここから結末に触れています。
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エリザベスからの葉書を読む嬉しそうなジェレミー。
300日と字幕が出たところで、彼女は帰るんだな!と思いました。笑
『恋する』のフェイが1年後に恋しい人のもとに戻りましたからね。


甘い甘いキスもロマンチックだけど、ラストにはしゃれた台詞や、もうひとひねり欲しかったかな。
ここは『恋する』ファンとしてはつい期待してしまいますよね。笑
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数年後はジェレミーが赤ん坊をおぶって妻のためにブルーベリー・パイを焼いているとか。
エリザベスは二人目を妊娠中。爆


人のセックスを笑うな

2008-03-22 13:22:32 | 邦画 (69)

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英題(Don't laugh at my romance)
監督 井口奈己
原作 山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』
出演 永作博美(ユリ)松山ケンイチ(磯貝みるめ)
    蒼井優 (えんちゃん)忍成修吾(堂本)
    あがた森魚 (猪熊・ユリの夫)
    温水洋一 (美大の教師)
    桂春團治(みるめのじいちゃん)


2008年、日本


恋におちる。
世界がかわる。
19歳のボクと39歳のユリのいかれた冬の物語。


>>「みるめくんに触ってみたかったんだよね」
19歳の美術学校生のみるめ。ある日、絵のモデルを20才年上の講師ユリに頼まれる。その気まぐれで自由奔放な魅力に、吸い込まれるように恋におちた。初めての恋に有頂天のみるめだったが、実はユリは ―


フランス映画のような~~、というキャッチフレーズをチラと聞いて、これはこれはと神戸シネカノンで鑑賞。


舞台は群馬県は桐生市。
のんびりした田園風景に美術大学。
美大を舞台にすれ違う恋心、蒼井優とくれば、『はちみつとクローバー』を思い出す人もあるでしょう。
物語は英題の『Don't laugh at my romance』のほうがお話には合ってます。
過激なセックスシーンなどなくて、みるめとユリが恋に落ちた実に幸せそうな笑顔が見られます。


みるめの家もユリの家も昔風の作りで、なんだか温かさを感じます。


それにしても、チケットを買う人泣かせなタイトルですよね。
私も売り場の人が男性だったので『人の~』を一枚ください、でごまかしました。笑


原作はサッと読んでみましたが、みるめは映画のように純情一途ではなく、ユリと夫の関係も単純ではありません。みるめの心の動きがよく描かれています。


監督のインタビューが興味深かった。
>>脚本作りの参考にしたのがイタリア映画メロドラマの巨匠、ヴァレリオ・ズルリーニ監督の『鞄を持った女』(’61)です。
「39才のユリを男性として、19才のみるめを女性として撮ることを意識してユリをかっこよく、みるめを史上最強にかわいく撮りました。


松山ケンイチさんをスクリーンで見るのは初めてで、イメージはやはり”白”でしたね~。


なるほど~。笑
ジャック・ペランとクラウディア・カルデナーレの『鞄を持った女』は私の大好きな映画です。
嬉しい偶然でした。
『鞄』にはユリのような天真爛漫な小悪魔は出てくなくて、お人良しで貧しく健気なショーガール(男運は悪いけど)が出てきます。


そう言えば、みるめはまるで恋する乙女のように純情で可憐。笑
ユリは自分からみるめを誘って、さらりと、父親と勘違いしそうな夫を紹介する。
そこには何のひっかかりもない。
まあ、ここまであっけらかんとした人もそうはいないと思うけど。
「だって、さわってみたかったんだもん」・・かなわないね。
えんちゃんだってみるめにさわりたかったと思うよ。


オー、イエース!!!


ユリに夫がいると知って、携帯を針金でぐるぐる巻きにして泣くみるめの姿に、最早忘れそうな純粋さを思い出して甘酸っぱいものが込みあげてきた。
ユリの旦那さんが信玄餅の食べ方を教えてもてなしてくれるいい人だから、だから我慢する・・・・・ユリの保護者みたいなあがた森魚さんがいいです。


濃~い初恋の一撃を食らって身も世もあらぬみるめに比べて、ユリはもちろん、えんちゃんもそれぞれに強い。
ユリの個展(三人展)にえんちゃんが行く。いつも被っている帽子を脱ぎ長い黒髪を下ろす。
彼女なりの戦線布告なんだろうなあ。
ドキッとさせられる場面です。


ユリは風のように来て、また風のように去っていくタイプなんでしょう。
彼女なりにまあ、色々あったりもするんだろうけど。
こういう人は女友達にしても寂しいね。
あまり女性っぽさが鼻につかないタイプの永作博美さんだからこの役がいやらしくなかった。


大学の廊下ですれ違いざまに、みるめがユリを小部屋に押し倒すように連れ込む。
抑えきれないみるめの激情が伝わってきてフランス映画っぽいですよね。笑


ここから結末にふれています。
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見終わって思うに、この映画の隠れた”芯”は蒼井優じゃないかな。

へこむことなく、しっかり現実を見つめて、地に足がついている。


女性が20歳年上の恋・・
そういうのってどうなんだろう。
ラストの結末ははっきりしない。


会えないから終わりって、そんなもんじゃない。


紅いハートのライターの火がまたついたってことは?
みるめにとってまだユリへの希望があるってことかな?


みるめが猪熊さんの域に辿りつくまでにはまだ時間がかかりそうだけど。^^


ガチ☆ボーイ

2008-03-15 16:15:21 | 邦画 (69)

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監督:小泉徳宏
原作:蓬莱竜太
脚本:
出演:佐藤隆太(マリリン仮面・五十嵐)
    サエコ(朝岡麻子)
    向井理 (レッドタイフーン・奥寺)
    仲里依紗 (五十嵐の妹)
    宮川大輔 (チョチョッビ・君島)
    泉谷しげる (五十嵐の父)
    西田征史(ボラギノール・日野)
    川岡大次郎 (ドロップキック・佐田)
    瀬川亮 (シーラカンズ)
2008年、日本

 

神戸シネリーブルにて


>>大学在学中に司法試験合格も夢ではないと言われる秀才、五十嵐は、学園祭で見た学生プロレスが忘れられず、プロレス研究会の門を叩く。「マリリン仮面」というリングネームをもらい、大切な事は何でもメモする真面目な五十嵐だったが、肝心の「段取り」を覚えられず、ガチンコの試合をしてしまう。しかし、それが客に大ウケ。五十嵐の人気でプロレス研究会は活気付く。しかし、五十嵐が段取りを覚えられないのには理由があった。


ボクの記憶は一日しか持たない・・
そんなボクが学生プロレスに出会った
アザが・・筋肉痛が・・カラダだって記憶する


ボクの記憶は一日しか持たない
だから毎日が一生懸命


ボクは幸せだ


最初からなんとなく内容は想像できてしまったけど、素直に感動しました。
想像以上によい映画だと思いました。


まず、大学生の主人公は自転車で転倒して、高次脳機能障害という記憶障害になってしまう。
前途洋々の真面目な秀才が事故以降、眠ると前の日の記憶をいっさい失ってしまう。
レッドタイフーン・奥寺も言うように、想像もできないこの事実。


でも、映画は重い事実を抱えながらも、ひとりの青年の懸命な姿を爽やかに綴っていく。
笑える場面まである凄さ。


親しみやすい佐藤隆太の笑顔よしの個性がここでは大きな力になっていると思う。


昨日あったことはメモ(&ポラロイドカメラ)に頼るしかない彼は大学を卒業したら、家業の銭湯を継ぐことになるのだろう。
父と妹にお世話される人生。
密かに死にたいとも思った。
せめて、そうなる前に好きなことをしたいと、憧れの大学内のプロレス部の門を叩いた。
安全第一の、(どこかの建設会社の看板がすえられている^^)だけど、廃部寸前のプロレス部。


身体のことは秘密だ。これ以上悪くなったらと、止められるのは分かっている。


そこで、彼は気づく。
記憶はなくなっても、身体が昨日の練習の痕跡を残している。
それを感じると、昨日のことが思い出せそうな気がする。
これは五十嵐にとって、とても重要なことだろう。
生きてるって実感。


そしてまた、それがラストの盛り上がりに繋がる。


朝、目覚めた五十嵐の部屋の壁には「日記を見よ!」の紙が張巡らされているのに目を見張ってしまう。鳥肌がたちました。
他人がのんびりした朝を迎えている間にも五十嵐は毎朝、日記で今の自分の状況を把握する。
メモを読み返す。
ここで、観衆も五十嵐のおかれた状況を体験する。
毎朝、生まれ変わっているような感じだろうか。


五十嵐にとっては毎朝が部員たちとは初対面同様なんだなあ。
ただ、部員たちの五十嵐に対する笑顔が救いだ。


マリリン仮面っていうより、グリーン・ケロロ仮面か、カメレオン仮面って感じ。


四度も告白して、泣きながらあさこに、「これ言うの二度目よ、私は奥寺さんが好き」と聞かされるのは切なく忘れがたい場面です。
どうしてそんな大事なこと、メモしていないんだろう・・
でも、やはり、あさこさんは奥寺さんが好き・・と、どうしてもメモできない五十嵐。


五十嵐の事情も知れて、落ち込んだ様子の彼の家にキャプテンの奥寺がやってくる。
ふたりで銭湯につかりながら。


オマエが記憶を失っても、オレがオマエの記憶をきざんでやる。
どうだ、今の台詞、カッコよくない?(ガクッ)一晩考えたんだ。
奥寺・・鷹揚で、徹底的好青年です。笑


そして、プロレスに反対していた父親は五十嵐の何冊もの日記を読む。『明日の僕へ』
ダメ押しでこのタイトルを見た瞬間、私の目から水がポロリ。
泉谷しげるさんが父親の悲哀を演じています。
自慢の息子だった・・・


五十嵐の日記から
オヤジはお客に昔の僕の自慢ばかりしている。
オヤジのなかで、僕はもう終わってしまったんだ。死にたい。


部屋中に部員たちと撮ったたくさんの写真が貼ってある。
どの写真でも五十嵐は笑顔だ。幸せだったのだ。


ここから結末にふれています。
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他校との試合で、五十嵐は散々に敵の学生レスラーに打ちのめされる。
シーラカンズが憎たらしくていい。


体育館に来る途中、バスのなかで思わず眠り込んで、よく復習する間がなかった。


だが、だが、五十嵐の反射神経は覚えていた!
「一日一技」で練習した技が炸裂する。
技が炸裂する度、教えた部員たちがひとり、ひとり、狂喜する。
彼女にダサいと言われ、プロレスからロックに転向した^^佐田が、笑わせて縁の下の力持ち的役柄で印象的。


体育館はマリリン仮面・五十嵐コールで埋め尽くされる。
努力の人、負けず嫌いの五十嵐は、奥寺の嘆願・悲鳴に近い呼びかけにも、頑としてギブアップしない。
最後にキマる、マリリン仮面の佐田指導による大技、ドロップキック。


父親も応援に来た。
五十嵐は試合には負けたが、自分に打ち勝ったのだろう。


最後はあっさりと終わる。
五十嵐のその後は描かれてはいない。


五十嵐のその後を考えると、悲しみは拭えないけれど、また、なにやら希望も湧いてくる。
君の記憶は仲間や人々がきざむ。そんなふうに思いたい。


明日の僕のために、今日を懸命に生きる。


書いているうちにまた、見たくなった。笑



ラスト、コーション LUST, CAUTION 色|戒

2008-02-11 11:51:19 | アメリカ映画 (40)

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監督・製作:アン・リー
原作:アイリーン・チャン『ラスト、コーション』
出演;
トニー・レオン(傀儡汪精衛政権の特務機関の幹部、イー)
タン・ウェイ(ワン・チアチー)
ワン・リーホン(演劇部と抗日運動のリーダー香港の学生)
ウー(反日組織の幹部)
チェン・ガーロウ(ツァオ、イーの元で働くスパイ、クァンの幼なじみ)


2007年・アメリカ、中国、台湾、香港合作映画・158分


神戸シネリーブルにて。


1942年、日本占領下の上海。抗日運動に身を投じる美しき女スパイ、ワン(タン・ウェイ)は敵対する特務機関のリーダー、イー(トニー・レオン)に近づき暗殺の機会を伺っていた。しかし、危険な逢瀬を重ねるうちにいつしかウォンは、虚無の匂いを漂わせるイーに惹かれていく。ある日、ふたりは死と隣り合わせの日常から逃れるように、暴力的なまでに激しくお互いを求め合う。そして、二人のスリリングで危険に満ちた禁断の愛は、時代の大きなうねりの中で運命的なラストへとなだれ込んでいくーー。公式ページより。


「色」・Lustは中国語で仏教用語の「欲情」を意味し、「戒」・Cautionは「戒め」「警戒、警告」「誓い」の意味を持つとか。


アン・リー監督と言えば『恋人たちの食卓』や『ウエディング・バンケット』など、好きな作品だ。
『ブロークバック・マウンティン』あたりからガラッと作風が代わった気がする。
過激、衝撃的がキャッチフレーズとなった感あり。^^
人間の本性をえぐり出すような厳しい映画が続いているような。


チャン・ツィイーの『パープル・バタフライ』という映画を見ていたので、少しはこの時代背景を知っていたのは良かった。
それにしても、発端は日本が中国に侵攻したという紛れもない事実に、見ていてやや辛い。


クァンは抗日家の兄を殺害されているが、なぜ?チアチーがあそこまでの犠牲を払い、命がけでイーの命を狙うことになったか、その動機がいまひとつ私の頭の中で納得できなかった。
クァンへの想いとしても、なんだかな~である。
『パープル・バタフライ』の少女は目の前で、抗日運動家の兄を殺され女闘志となる。


自分の国が他国に侵略されれば、そうして当然と言われればそれまでなのだが。


既婚の婦人が乙女なわけはないと、抗日仲間に過酷な訓練を受ける。ある意味、問題の衝撃シーンより、衝撃だったり。大汗
それも、ひそかに心を寄せるクァンではなく、愛もなにもない同志によって・・

血気盛んな真っ直ぐな若者が演劇から抗日運動にはまっていく。


それもツァオを刺殺してしまうことで抜き差しならないものとなっていく。


思うに、チアチーはかの有名なマタハリのように潜在的にスパイ、ハンター;の素質を持っていたのだろうか。
だいたい、この映画の中の男性群は不甲斐なかったり(クァン)、意外に臆病だったり。(イーの逃げ足の速いことよ!)
それに対してチアチーはカプセルを見せられても最早動揺しない。
もう、後には戻れない。


(キスするクァンに)なぜ、3年前にしてくれなかったの?


問題のシーンは思ったほどでもなく、疑心暗鬼のなか愛し合うとなれば、当然殺し合いにも似た”闘い”の場面だった。
官能美というより、アクロバットな○スリ○グ。m(__)m

最初こそ、チアチーはされるがままだったが、次第にふたりの形勢は逆転してゆく。


私が血を流せばそれが彼が生きているという証なの。
その代わり、私も彼の最後の最後まで絞り尽くしてやる。
げに恐ろしや。


何年も誰の言うことも信じない。
だが、おまえだけは信じている!


事実、ベッドイン中、あのまま枕を被せれば殺害できる機会もありそうだった。
しかし、そうしなかったのはイーとチアチーは心が通い合う愛の瞬間を共有したのだ。


指輪を中国語に翻訳していただきたい。戒指なのも面白い。


チアチーを演じたタン・ウェイはかつて、アン・リーがお気に入りだったン・シンリンに、古風な面差しがどこか似通っていると思った。


トニー・レオンはやはり心底からの極悪人には見えず、最後には助かって欲しいと思わせる得な人です。笑


麻雀のシーンは中国語が分かれば面白いんでしょうね。
お陰で、長いと覚悟はしていたけど、3時間近くシートに座り続けねばならなかった。笑


ここから結末に触れています。


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チアチーの歌に涙するイー。
歌の題名は『天涯歌女』。この時代の中国人なら誰もが知っている歌らしいです。

きわめつけは予期しなかったダイヤモンドの指輪。
最後の最後にチアチーの口をついて出た言葉は・・
LAST CAUTION


その後、例のカプセルを取り出したチアチーの表情に笑みを見た気がした。


イーは当然、チアチーを見殺しにする。
でないと、次は自分の命が危うい。


イーもまた、時代の被害者なのかも。


いとおしそうにベッドをなでるイー。
そして、チアチーは二度と戻らない・・


* * * * *