監督:篠原哲雄
原作:松久淳+田中捗
音楽:松任谷正隆
出演:竹内結子(翔子・香夏子)玉山鉄二(健太)
原田芳雄(ヤマキ)香川照之(瀧本)
新井浩文(サトシ)香里奈(由衣)
2004年、日本
願いはかなう。
想いは伝わる。
完成しなかったピアノ組曲。
2度と上がらなくなった”恋する花火”。
「天国」と「地上」が交わりあいながら、
結ばれなかった恋人たちに今、奇跡がおこる_____
大甘な恋愛物語かな、という予想を裏切るいい映画だと思います。
人は一度は死後について、天国がどんなか?考えたことはあるだろう。
映画では天国について描かれていて面白かった。
どこまでも続く青い空と道。
人はお金のためにあくせくしない。自然は哀しいくらいに美しい。
人の寿命は100歳と設定されていて、その寿命をまっとうできなかった人は亡くなった時の姿のまま、100歳までを天国で暮らす。そしてリセットして地上に帰るシステムになっている。
天国では生前親しかった人とは会えないことになっている。亡くなった人に会いたくて自殺する人が増えないように。成るほど。
健太はピアニストだが、演奏に行き詰って飲んだくれていた時、ヤマキ(天国と現世を行き来する移動師)に、天国に連れてこられる。
人は生きていると、知らぬ間に誰かを傷つけてしまうことはあると思う。
天国にはそう思い込んで心に悔いを残している者もいる。
ピアニストの翔子もそうであった。
自分の片耳が聞こえなくなったのは花火師の恋人のせいだと、思わずなじってしまった。
その後、病で亡くなり、天国に来ても、ピアノが弾けないままでいる。
健太は天国の本屋で朗読のアルバイトをして、翔子と出会う。
翔子「本をどうしても人に読んでほしい時ってない?
思い入れが強すぎて独りでは読めないとか。
言葉を音として聞ききたいとか」
本を読んで貰う。
本を読んで聞かせる、これはとてもいいことだなと思った。
人と人とが触れ合える。
人恋しい時は誰にでもあるもの。
天国には幼い弟の死は自分のせいだと自分を責め、自殺しようとして連れてこられた若い女性、由衣もいた。
彼女は弟に会える。由衣の魂は救われたのだ!涙
会いたいと思い続けていれば、いつか会えるものなんだな。
由衣は地上に帰る。
彼女に恋していた移動師見習いのサトシは言う。でも、帰んなよ。
こっちにいたほうがアイツ幸せじゃないのかな。
それでも生きなけりゃいけないんだよ。
移動師ヤマキのこの台詞は胸ににズンとくる。
天国と地上は交わりながら話がすすむ。
でも、お話はよく整理されて、こんがらがることはない。
翔子の姪、香夏子は最近、益々翔子に似てきた。竹内さん、二役。
香夏子は翔子と花火師、瀧本の叶わなかった恋の物語を知る。
偶然、カナは瀧本に花火の依頼に行き、瀧本が花火士を止めて自堕落に暮らしているのを見る。
香夏子は天国で待っている翔子のためにも花火を上げることを薦めるが。
「翔子が言ったんだ。
自分の耳を聞こえなくした責任を取って、花火師を止めろって。
翔子が自分でそう言ったんだよ」
苦しんで泣く瀧本は演技派の香川照之さん。
男の純情を演じて切ないです。
心優しい男性よりも、香夏子のほうが強い。
天国の翔子と健太は次第に心を通わせ、健太は翔子が完成させられなかった組曲、作曲の手伝いをする。
「貴方、よく曲を自分の耳で聞くといいわね」
翔子はどこか淋しげで、冷たい感じがする。
翔子の的確なアドバイスを受け、健太はピアノへの情熱をまた、持ち始める。
香夏子たちの町内の花火大会の日。
彼女が諦めた時、瀧本の恋する花火が上がる。
天国でも花火は見えるんだ。
天国の本屋の大きな窓が額縁のように、すぐ近くに美しい花火が見える。
天国の夜空をこがす花火は本当に美しい。
竹内結子さんがとても美しい。
竹内さんは翔子を透明で儚げな感じに、香夏子は溌剌と別人のように演じていてやはり凄い人だなと思う。
翔子は初めて、ピアノを弾く。
完成した組曲の最終楽章「永遠」を。
地上に戻った健太も花火の上がる場所で、ピアノを弾く。
翔子と二人で作曲した「永遠」を。
天国と地上。交わることのないかに見えたふたつの場所に、そのとき、同じ旋律が流れ出した・・・
花火の音にピアノの音色が混じり心が熱くなる。
そして最後の夜空いっぱいの”わ火”はまるで光の洪水。
ここから結末に触れています。
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香夏子:それ・・永遠?
健太:さっきまで一緒だった。信じる?
輝くような香夏子の笑顔に「はじまり」を感じた。
翔子もきっと大好きなピアノを弾きながら、天国で二人を見守っているのだろう。