岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「岩木山ものしりマップ」の「コマクサ」写真掲載に思う…(その2)

2007-06-28 06:27:53 | Weblog
 ☆★「岩木山ものしりマップ」の「コマクサ」写真掲載に思う…(その2)★☆
(承前)
 かなり昔のことである…。弘前在住の者が「この場所」一帯に「コマクサ」を植え付けたり、種を蒔いたりしたことがあった。
 そして、一時的ながら「この場所」にコマクサが根づいて、花を咲かせたことがある。しかし、人為・人工的なこの行為は植生的には、無理なことでいつの間にか「コマクサ」は、自然に淘汰されて消えてしまった。
 「自然保護の立場」とは「あるがままの自然を存続・継続させること」であるだろう。だから、「本来その場所に生育してないもの」、つまり「異物」を持ち込むことは決して許されないことなのである。この立場から「コマクサを植栽し、種を蒔いた」行為は厳しく批判されたものである。
 しかし、美しく、可愛らしく「珍しい」花が、「おらほの岩木山」にあってもいいではないかと言う人もいた。八甲田山や白神山地にない「コマクサ」が岩木山で咲くとなると、しかも比較的安全に、誰もが「行ける」場所に「生育」しているとなれば「観光客集め」の手段として大いに有効と考える人もいた。この「コマクサの咲く岩木山」を大いに宣伝するべきだとする人たちもいたのである。
 だが、「コマクサ」自体も自然に「消滅してしまった」かのように「見えなくなってしまった」ので「岩木山のコマクサ」問題はいつの間にか話題に上らなくなった。

 ところが、2005年に再び登場したのである。いや、本当はすでに何年も前から「咲き出して」いたのであろう。本会がこの事実を「確認」したのが、たまたま2005年であったというだけのことかも知れない。
近年、八甲田山でも「本来生育していないはずのコマクサ」が発見された。環境省や県自然保護課は「誰かが意識的に植栽したもの」として、調査を継続している。
 「調査継続」とは「植栽行為」を許容しているのではない。それが「人工的に植栽されたものである」という事実を検証するためのものである。調査の結果ではすべて「引き抜いて処分する」ことになるのだろう。岩木山の「コマクサ」も、「コマクサ」自身に「罪」はないが、同じ「処分」を受けるはずである。
 何故ならば、本来の八甲田山という自然に、そこになかった「異物」コマクサを持ち込んだこと自体が自然破壊だからである。岩木山の「コマクサ」も「異物」である。その場所の自然を壊してしまい、本来そこに生えている植物が枯渇してしまう恐れもあるのだ。

 その「場所」には行こうという意志のある者ならば、歩きやすいルートなので、誰でも行けるのである。誰でも行ける場所に「コマクサ」が咲いていれば、きっと多くの人がやって来るに違いない。「岩木山には普通咲かないコマクサ」を楽に見ることが可能となれば、もっともっと多数のお客がやって来そうである。多くの「お客」がやって来ることが、すべての「観光産業」を支えるというのが原則だ。だから、「コマクサ」はこの意味で「岩木山観光」の「目玉」となりうるであろう。
 しかし、この手段は、正攻法ではない。まるで「不二家」や「ミートホープ」の手法とそっくりではないか。「フィクション」を「ノンフィクション」として見せようとするものだろう。「コマクサ」を「見せ物」にすることはやめよう。このコマクサは本来この岩木山にはないものである。つまり、ウソごとであり、ニセモノなのである。「ニセモノ」を「ホンモノ」と偽る行為は犯罪である。
 「岩木山ものしりマップ」に「コマクサ」の写真を掲載したことも「ニセモノ」を「ホンモノ」として紹介した「偽り行為」であることに変わりはない。この小冊子「岩木山ものしりマップ」は岩木山に登らない一般の観光客にも配れている。より多くの人々が、この「偽情報」を掴ませられて、それを信じたのである。これは罪深いことだ。
 しかし、編集した人たちには、おそらく他意はなかっただろう。ただ、この「コマクサ」が人工的に「植栽」されたという事実を知らないままに、美しく、可愛い花「コマクサ」が岩木山にもあるのだということを、多くの人たちに知ってもらいたかったのだ。私はそう信じている。だからこそ、次の大改訂では「コマクサ」の写真は謝罪と反省を込めて、削除する。

 その後、一体、この「コマクサ」を誰かが植えたのだろうか。誰が種を蒔いたのだろうか。それとも数年前のものが、また芽を出して花をつけたのだろうか。植えた人、種を蒔いた人、あなたがたは間違っている。「岩木山ものしりマップ」に写真を掲載した行為は仮に許されるとしても、あなた方は決して許されない。
 もし、この人たちと関わっている人たちがいるのならば、本来の岩木山の「植生」を守り、岩木山の自然を保護するために早急に「抜き取り」をしてもらいたいものだ。ただ、この「場所」は特別保護地区に指定されているので、勝手に「抜き取る」ことは出来ない。「法律」は厄介である。
 本来生育していないものを持ち込んで「植える」「種を蒔く」行為は盗掘と同じように絶対してはならないことである。これらの行為は「盗掘」と同じように、法的にも厳しく処分される。
 「鳥が種を運んで来たのではないか」という人もいるだろう。しかし、この仮説には、「鳥が運んで来るものならば、すでに数百年数千年前からこの場所にコマクサは生えているのである。」と反論しておく。
 本会と県自然保護課は2005年から、この「コマクサ」の「小群落の下部には実生と思われる小さい株が十本ばかり出ていること、また南に向かって別な株分けも出ている」という事実に着目して、「数年にわたって観察を続けた上で、抜き取りを含めて、どうするかを各分野の専門的な立場の意見を加味しながら決定する」という方向で取り組んでいる。(この稿はこれで終了)