65オヤジのスタイルブック

サン・チャイルドが示した問題提起



8月22日の中日新聞の「話題の発掘 ニュースの追跡」で、福島市が設置した芸術作品「サン・チャイルド」に対し、「風評被害を増幅する」「科学的にあり得ない」なと批判が寄せられ、市民から撤去か残すかで賛否となり結果撤去されることになった。

作者のヤノベケンジさんは、僕の住む愛知のトリエンナーレでも注目を浴びる現代美術家で、開催期間中にもサン・チャイルドは設置されている。また、2012年に福島空港で開かれたビエンナーレでも披露され、長期間設置されたが今回のような批判はなかったという。

ヤノベ氏は、1991年から原発事故をテーマにした作品を作り、サン・チャイルドは「原子力災害がない世界」の象徴です。また、今回の批判を受けて自身のウエブサイトで「私の作品が一部の方々に不愉快な思いをさせてしまったことについて、大変申し訳なく思っています」と謝罪している。もとより、作品が平和的な象徴として作られているのことを理解しているものとしては、謝罪の必要はないと思うが、ヤノベ氏の現代アートに対して認識なき人々に対しても、真摯で福島の人々の対する慈愛を感じます。

日本では、パブリックアートに対して、具象化された彫刻作品には理解があっても、見た目には難解な現代アートに対しては、まだまだ一般には許容できないのだろう。一方で、若者や外国人観光客により、パブリックアートとしての現代アートは理解されつつある。

今回の撤去は、作者がもたらした問題提起とは別の方向で進んでいってしまったことは、アートを愛するものにとって残念なことだ。しかも、市は存続希望22件。移転撤去を望む75件と100にも満たないアンケート結果を受けての早々に撤去を決定。果たしてこの結果が市民の声か、疑問に思うのは僕だけだろうか。原発推進の思惑がどこかで働いているようで不気味さを感じる。

現代アートは、社会の風潮や権力に対し、作品を通して問題提起する一面を持っている。作者が意図する問題提起を前提にして、議論を深めながら賛否を問うべきではないか。パブリックアートに詳しい識者の方も同様の見識を示している。今回の撤去は、ごくごく一部の多数決の論理で決められた、歪んだ民主主義のように感じる。

名古屋市北区のパチンコ店ZENT内に設置されたウルトラサン・チャイルド。パチンコなどをギャンブルをしない僕ですが、本店には、ヤノベ作品やビート・たけし作品を展示するミュージアムもあり、託児所の壁面にもヤノベ絵本作品が描かれていて楽しめる場所で、アート好きにも興味深い施設です。


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