熟メン茶々丸の「毎日が美びっとカルチャー」

アートショップ店主・熟メン茶々丸のアート・シネマ・グルメ・スポーツなどのカルチャーコラム&レビュー

映画 グッバイ・クルエル・ワールド

2022年09月29日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは大森立嗣監督、西島秀俊主演の「グッバイ・クルエル・ワールド」です。

さよなら渓谷やマザーなどで知られる社会にはみ出した人々の悲哀を描くことで名高い監督が、今回挑んだのはクライムエンターテーメント。一夜限りで結成された強盗団がラブホテルの一室でヤクザ組織がマネーロンダリング現場を襲い強奪に成功しますが、子飼いの刑事を使って見つけ出す始末すると言う内容です。

強盗団の面々は西島演じる元やくざ安西に、全学連上がりに三浦友和演じる浜田、金貸しの斎藤工演じる萩原、金を借りた相手の宮川大輔演じる武藤と恋人役の玉城ティナ演じる美流。そこにラブホテルの従業員の宮沢氷魚演じる矢野が加わり、血に血を争う惨劇が繰り広げられます。

子飼いの刑事役には、監督の弟でもある大森南朋が演じ刑事得意の情報戦で犯人を見つけ出すのですが、そこからの展開が面白いです。やくざの金を狙うという凡そ日本では考えられない強盗を計画に加わった一味の過去とうまく絡ませてます。中でも主役の西島を食った宮沢氷魚を玉城ティナの演技が最高でした。何が凄いって一味の中で容姿共に残忍な斎藤工を。。。

映画としては音楽やファッションなどエンターテーメント色は十分楽しめましたが、西島秀俊はやはり善人感が漂い、朝ドラ「ちむどんどん」を観てる僕にとっては大森南朋や宮沢氷魚役のイメージ払しょくが大変でした。大森監督にとってはエンターテーメント映画への挑戦でしたが、白石和彌監督と共に犯罪をベースにした社会派ドラマが好きです。

次回作はぜひ王道路線でよろしくお願いします。


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映画 ブレット・トレイン

2022年09月27日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューはブラッド・ピット主演で伊坂幸太郎原作の「ブレット・トレイン」です。

伊坂幸太郎原作の映画化作品はほぼ観ています。中でも堺雅人主演のゴールデンスランバーは傑作だと思っています。また伊坂原作映画で出演した俳優は後に人気俳優になっていますし伊坂作品の魅力が俳優たちの演技を光輝かせていると感じてます。今回は何とブラッド・ピッド主演のハリウッド作品とあってどんな感じになるか楽しみでした。

今回の映画は、マリアビートルが原作になっています。新幹線に乗り込んだ殺し屋同士が現金の入ったジュラルミンケースを奪いあう殺し屋の群像劇となっています。主演のブラッド・ピットはいつも他の事件に巻き込まれているレディ・ハグという殺し屋を演じているのですが、個性的な殺し屋が違う目的で乗り込んで新幹線の密室の中で殺しあうというものです。

監督はアトミック・ブロンドやデッドプール2のデビッド・リーチですが、どこかタランティーノ映画のようなキャラクターとアクション、映像美がりアトミック・ブロンドのようなシリアスな展開はなく、エンターテーメントの要素を前面に打ち出した感じがします。

ただ、殺し屋のキャラクターと展開が進むにつけて伏線的に拾われる関係性などが楽しめる内容でした。ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、バッド・バニー、真田広之と個性豊かです。また、およそ想像できないド派手な新幹線車内とラストのパニックシーンはハリウッド映画らしい演出でした。

原作とは色合いがかなり違うのですが、伊坂氏本人がブラピとの対談で高評価してるので伊坂ファンの方は映画との違いを楽しんでもらえたら幸いです。


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国際芸術祭あいち2022 総評

2022年09月26日 | 【美術鑑賞・イベント】
尾西エリア・塩田千春作品
 
 
2010年から3年ごとに開催されたあいちトリエンナーレが前回の「表現の不自由展」が契機となってか、今回から名称を変え「国際芸術祭あいち」となりました。負のイメージを払拭したい思いがあるかと思うのですが、僕はあいちトリエンナーレで良いと思ってます。
 
あいちトリエンナーレは、過去には芸術監督(総合プロジューサー)として芸術分野での監督が2010年、13年、16年と担ってきました。19年にジャーナリストの津田大介氏が監督になり良くも悪くも、あいちトリエンナーレを世間に広めました。しかしながら、表現の不自由展ひとつに矛先が向けられ、他の展示に目が向けられなかったことは個人的には残念でした。
 
そして今回の国際芸術祭あいち2022は、芸術監督に森美術館館長の片岡真実氏を迎えたことで、現代美術のイベントして美術ファンは注目したのではないでしょうか。僕は氏の起用が全般的は功を奏していたと感じています。また、荒川修作や河原温、塩田千春や奈良美智など日本を代表する新旧のアーチストが顔を揃えたことだけも、氏らしい演出を感じます。
 
また、愛知県美術館を核に一宮、尾西エリアと有松絞で有名な有松地区、製陶業と中部国際空港を構える常滑市の各エリアの展示の地域の特色を生かした展示となっており個性の際立つものでした。2025年の開催は、今回をモデルとして新たな歴史を刻んでほしいと思いますし、新しいエリアでの開催による地域一体となったイベントになってほしいと思います。アートが持つ社会的な貢献と意義を期待します。
 

愛知県美術館・ローマン・オンダックの作品


愛知県美術館・荒川修作作品

一宮エリア・奈良美智作品


 

有松エリアより




常滑エリアより


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映画 NOPE/ノープ

2022年09月17日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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今回の映画レビューは、ジョーダン・ピール監督の三作目の長編映画「NOPE/ノープ」です。

ゲットアウトでは白人家族が黒人の脳を移植し、アスではクローン人間と人間が地上と地下で交錯するという摩訶不思議で斬新なホラーを展開して話題となりました。三作目のノープでは、どんな展開が待ち受けるか恐る恐る鑑賞しました。

テーマは空を見てはいけない。牧場を経営し映画に馬を提供しているヘイウッド一家。ある日空から異物が降り注ぐ現象の中で父が謎の事故死を遂げます。息子のOJは死の直前に空に謎の飛行物体を目撃したと妹に打ち明け妹は飛行物体を映像に収め一儲けしようと企てます。

口八丁の妹と撮影機材を購入したホームセンターのオタク従業員に、ドキュメンタリー映画のプロカメラマンが加わって飛行物体をカメラに収めようとするまでの過程にいたるストーリーも独特で面白く、前二作に比べてゾクゾクさせるホラーではないですが、スケールの大きさと飛行物体の美しさに魅力を感じる作品でした。

今回のような未確認飛行物体が出てくる作品は、対決ムードや宇宙人の登場が中心ですがノープでは目的はあくまでも映像に収めること。この主題があってこその映画だと感じました。そこが今の時代らしいし、ピールらしいなと思います。


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ボテロ展 名古屋市美術館

2022年09月08日 | 【美術鑑賞・イベント】


先日の休日に、名古屋市美術館で開催中のボテロ展と名称を変え新たなスタートを切った国際芸術祭あいち2022にアート巡りをしてきましたのでレビューしていきます。
 
東京では大盛況だったボテロ展、フェルナンド・ボテロは南米コロンビアを代表する画家で彼が描く対象が丸くふくよかなのが特徴です。その作風は、どこか馴染みのあるもので親しみがあるのですが、彼の描く世界はどこか皮肉めいたユーモアを持っています。
 
例えば守護天使やキリスト、神父などの聖職者の姿にも独特なユーモアがあり、人間臭さがあります。また、色使いもメリハリがあり原色と中間色を融合させながら親しみのあるふくよかなりリテールを際立たせています。
 
また、作品のモデルとして何度も描かれた「モナ・リザ」はダヴィンチのモナ・リザを踏襲しながら描き本物では見逃しがちな風景やひじ掛け椅子などを細部にわたって描かれています。また、陰影や遠近を極力抑えながら無表情な人物の顔と対照的な動きが強く印象付けられています。
 
ふくよかな女性を描いた画家としてはルノアールが浮かびますが、ルノアールの場合は個人的な趣味があると言われています。ボテロの場合は、老若男女から静物、生き物にいたるまですべてが丸くふくよかです。ふくよかな魔法と題したタイトル通り、彼のマジックにより誰もが穏やかな気持ちになり忘れられないものとなるでしょう。
 
会期は9月25日まで。あなたも、ボテロマジックにかかってみませんか。


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映画 ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

2022年08月31日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、シリーズ最終作の「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」です。

実は8月16日に鑑賞しましたが、雑用に追われてブログでのレビューが遅くなりました。ジェラシックパークから始まりシリーズ最終作となる本作、スピルバーグへのリスペクトを込めて気合をいれてレビューしたいと思います。

先ずは、ジェラシックパーク(ワールド)シリーズの前5作をかんたんに解説したいと思います。

ジェラシックシリーズは、パーク3部作(1993年・97年・2001年)とワールド3部作(2015年・2018年・2022年)に分かれます。

パークシリーズでは、クローン技術により現代に甦った恐竜たちのパーク建設に絡む策略と失敗がテーマで、学者と実業家との対立により物語が構成されています。パークでは、アラン、エリー、イアンの三人の科学者が主人公になっています。

ワールドシリーズでは、パーク建設が実現しジェラシックワールドとして人気テーマパークとして人気を集めるも、施設から恐竜が逃げ出し恐竜たちが自然界に解き放たれた状態から生まれるパニックで構成されています。ワールドでは、パークの管理者であるオーウェンとクレアを主人公になっています。

最終作の新たなる支配者では、三人の科学者が再登場し、オーウェンとクレア、二人と暮らす実業家のロックウッドの孫娘メイジーと共にかつてパークを作り上げたインジェン社のライベル会社のバイオシン社の陰謀を暴き人類の危機を救う内容になっています。

ジェラシックシリーズの魅力は、古代生物である恐竜の復活により人間と自然の共存という大きなテーマだと思いますが、リアルな恐竜たちと先端科学を組み合わせアドベンチャーワールドして作り上げたところが魅力です。現在ではシリーズものの持続は部分的な掘り下げしか継続は難しく、ジェラシックシリーズの完結はごく自然の流れだと思います。

今回の作品を観てジェラシックパーク/ワールドシリーズは、単体でも時間軸で観ても楽しめる究極の娯楽映画だと感じます。


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ピカソひらめきの原点 佐川美術館

2022年08月24日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
夏季休業期間を利用して、先日佐川美術館で開催中の「ピカソーひらめきの原点」を鑑賞してきました。
感染対策のため、ウエッブでのチケット予約をしたことでスムーズに入場できましたが、スマホでのQRコード入場が美術館でも普及していくと思います。
 
さて目的の展覧会は、イスラエル博物館所蔵のピカソ作品によるものです。ピカソはご存知の通りユダヤ人で平和主義者でもありました。また、セルフプロデュースにもたけており、その時代の最先端アートを意識しながら作風を変えたことでも知られます。実はピカソは、作風においては産みの親ではありませんが、時代のアートを嗅ぎ取り独自化する天才と言えます。
 
また、ピカソは若い頃からプレーボーイとしての資質を持っていて、まあ、あの時代の画家たちはプレーボーイばかりですが、何せピカソは生涯浮名を流し、出会い愛した女性から芸術へのインスピレーションを得て意欲的に作品をは発表し続けました。
 
今回の構成はイスラエル博物館が所蔵するグラフィック作品800点の中から、版画作品を中心に油彩画、ドローイングの選りすぐりの作品によりもので、初期の夜のキャバレーのパステル画に村の闘牛の油彩画、青の時代とバラ色の時代の銅版画作品にキュビズムの時代、原点回帰の新古典主義作品と続くピカソが愛した女性たちを通じてピカソ絵画の変遷の歴史を辿る「愛の作品史」となっています。
 
佐川美術館での展示は9月4日まで、その後11月11日より長崎県美術館の展示が巡回の最後となります。琵琶湖畔に建つ水面に囲まれた美しい美術館でピカソの愛を感じながら夏の暑さを忘れさせてくれる空間で癒されてみませんか。


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映画 わたしは最悪。

2022年07月30日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、ヨアキム・トリアー監督新作でカンヌコンペティション出品作「わたしは最悪。」です。

今回の作品は、デンマーク出身のヨアキム・トリアー監督脚本のノルウェー・フランス・スウェーデン・デンマーク合作作品でアカデミー賞の脚本賞、国際長編映画賞にノミネート、カンヌでは主人公のユリアを演じたレナーテ・レインスベが女優賞に輝いた話題作です。

仕事に恋愛に移り気な主人公のユリアが自分探しの旅的な内容ですが、女性を中心に共感を得ているそうです。男性の立場でも異性に対する恋愛観の違いや仕事に対する悩みなど理解できるものでした。

物語は12章から構成され、それぞれの章にタイトルにそって物語が展開されています。主人公のユリアはシングルマザーと祖母に育てられた才女で医学部に進学し、外科を専攻するも人間に興味があり心理学を学ぶために編入、しかし彼女の性格から突如カメラマンを目指します。その間に自由奔放に男女関係を楽しみつつ年上の漫画家と同棲、浮気、別れの中で自立していきます。

内容から見ると複雑に見えるのですが、実は誰もが持つ普段の日常が緩やか詳細に描かれていて原体験に近い形です。それは、北欧の白夜の夏を舞台にしているので情景の美しさとシーンのごとの繊細さやナチュラルな演技が相まってどの章も飽きさせない演出ですべての章がラストに上手くかみ合ってます。

僕自身、自分探しの旅を口にする人はあまり好きではありませんし、最近のSNSの影響かファッションのように語れていて違和感を持ってました。おそらくは、人生をおいて真面目に考えながらも答えを出せないことに悩んでる女性に共感を得てるのかなと思います。トリアー監督は、男性監督ですが女性視点でうまく描いていると思います。

女性には共感を男性には理解を感じられるヨーロッパらしい作品だと思います。


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フェルメール 窓辺で手紙を読む女の私的考察

2022年07月23日 | 【美術鑑賞・イベント】

先日の大阪市立美術館で開催中のドレスデン国立古典絵画館所蔵のヨハネス・フェルメール作「窓辺で手紙を読む女」の作品解説や修復作業などを知って僕なりの考察をしてみました。


皆さん御存知の通り、この作品はX線検査によって1979年に壁に塗られた奥にキューピットの画中画が発見され2017年から塗られた壁の絵具を取り除く作業が行われ2019年当初の姿が蘇りました。そしてドレスデン国立古典絵画館に次いで世界で初めて日本でお披露目となりました。このことは、世界の中でもっともフェルメールファンが多いからではと勝手に推測してます。

僕もフェルメールファンの一人ですが、この絵画の不思議な巡り合いを知るにつけて、ますますこの作品が魅力的になりその経緯から想像力を掻き立てられました。

先ずは修復前の作品の塗られた壁についてですが、この作品の来歴から明らかになっています。この作品はザクセン選帝侯のコレクションであり当館に収蔵されることになるのですが、数多いコレクションの中の一枚に過ぎず、後に鑑定家によりレンブラント作とされました。後にピーテル・デ・ホーホ作となり、1860年に初期のフェルメール作として真贋されます。塗られた経緯は定かではないですが、おそらくレンブラントの作品としてはキューピットの存在に違和感があり、よりレンブラント作に近づけるために塗りふさいだのではないかと思います。

この作品のフェルメールの特徴として挙げられるのは、フェルメールがしばし用いるレンズの凹面のような光の表現と初期に観られる点描技法ですが、もうひとつ前面の右にある緑色のカーテンです。このカーテンはルプソワールと言われる絵画技法で作品に奥行きを与えるものですが、現実にはありえない存在です。このカーテンが僕の想像を掻き立てました。

これは僕の想像ですが、ベッドの上に散在する果実、キューピットにより踏みつけられた仮面と握り潰された蛇、そしてもの悲しげに見える女性が読む手紙、これらから想像できるのは道ならぬ恋に落ちた女性の情事の後に、置いていった別れの手紙のように思えます。そして、その物語は緑のカーテンにより静かに幕を閉じていくように感じます。

フェルメール作品にはそれぞれに想像を掻き立てる物語が潜んでいるのが魅力ですが、かつてない想像力は掻き立てられたのは、現在に技術により明かされた真実の姿に他なりません。むろん塗られたかつての作品にも魅力がありましたが、さらに奇跡ともいえる一枚によってフェルメールの魅力が深まりました。


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フェルメールと17世紀オランダ絵画展 大阪市立美術館

2022年07月22日 | 【美術鑑賞・イベント】

神戸、大阪アート旅のレビュー2件目は大阪市立美術館で開催中の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」です。

※動画は東京都美術館のものが見やすいので参照しています。

今回の展覧会は、ドイツのドレスデン国立古典絵画館所蔵作品展ですが、なんと言ってもヨハネス・フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」でしょう。1979年のX線調査で壁面にキューピットの画中画が発見され、2019年からの修復プロジェクトによりキューピットが蘇った作品が世界初出展となります。日本でのコロナ禍により、一時は幻に終わると思えた巡回展覧会が開催されていることは美術ファンにとっては朗報です。

今回は、いつもはあまり使わない音声ガイドを聴きながら展覧会をゆっくり鑑賞しました。音声ガイドは主にオランダ絵画についての作品解説で知名度が低い作品について解説してますので今回は良かったなと思います。中でも「窓辺で手紙を読む女」の詳細な解説もあり、消されたキューピットについて私的考察も後日したいと思います。

展覧会は7章から構成されており、第1章では17世紀のザクセン選帝公爵たちが愛した作品で構成され当時の社会風俗を反映した風俗画が並びます。最初に登場するのはレンブラントの弟子ヘラルド・ダウの「老齢の教師」と「歯医者」石作りの窓からのぞく老齢な男、年老いたぎこちない男から当時の風刺が漂います。レンブラント弟子らしい光の演出も見事です。当時の生活が如実に伝わる風俗画は観ていても楽しいです。また、神戸での展覧会に続き印象に残った画家フランス・ファン・ミーリアスの「化粧をする若い女」出会えたのは幸運でした。

第2章はレンブラントとオランダ肖像画作品が、レンブラントの「若きサスキアの肖像」はレンブラントの妻の21才の頃のもので、その謎めいた微笑みがレンブラントの運命を握っているかのように感じます。第3章では当時のオランダでブームを呼んだ風景画の名品が、第4章では聖書の登場人物と市井のヤン・ステーンの宗教画に始まり農民などの生活が生き生きと描かれているのですが、火災で娘を亡くしてから火事の現場を描いた「村の夜の大火」は燃え盛る炎に対する憎しみと怒りを感じます。他にも静物画や当時流行した複製版画などが展示されています。

オランダ絵画の詳細がわかる魅力的な展覧会ですので、お近くの方はぜひ訪れてみてはどうでしょう。


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スコットランド国立美術館 美の巨匠たち展 神戸市立博物館

2022年07月21日 | 【美術鑑賞・イベント】

※スコットランド国立美術館を代表する「アメリカ側から見たナイアガラの滝」と「エディンバラの三美神」

先日、神戸と大阪にて東京からの巡回展となるスコットランド国立美術館展とドレスデン国立古典絵画館所蔵品展とリニューアルとなった藤田美術館に出かけてきましたので順次レビューしたいと思います。

今回の絵画レビューは神戸市立博物館で開催中の「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」です。

ヨーロッパ屈指の規模を誇るスコットランド国立美術館、西洋美術史の歴史を飾る巨匠たちや地元スコットランドやイギリスの画家たちを作品も広く所蔵しています。今回はルネサンス、バロック、グランドツアーの時代、19世紀の開拓者の四つのパートで展開されています。ルネサンスでは、何といってもエル・グレコのサルバトール・ムンディの図像、最近謎が深まるダ・ヴィンチのそれが思い浮かびますが、こちらは紛れもなくエル・グレコ作、タッチやキリスト像の容姿もまさに特徴を如実に表しています。

会場に入ると先ずフレデリック・エドウイン・チャーチの「ナイアガラの滝」の大作がお出迎え、この作品はアメリカで財をなしたスコットランド人による寄贈で当館を象徴する作品だそうです。流れ落ちる滝の豪快な水しぶきと光により作られた虹、美しさと壮大さを感じる作品です。

バロックでは、若きベラスケスの傑作「卵を料理する老婆」が初来日、宮廷画家で知られるベラスケスは若い頃には厨房画をよく描いているそうで、この作品はなんと18才の作品です。料理をする老婆の顔に当たる光と少年の背中こし差し込む光が印象的で18才にして天才の片鱗を表してます。

また、僕が印象に残ったのはレンブラントの「ベッドの中の女性」悪魔によって夫を次々と亡くした彼女の見つめる先には8人目の夫が。夫の姿は描かれていませんが彼女の瞳の奥に観る人は何を感じるでしょうか。また、フランス・ファン・三―リアスのリュートを弾く女性は、フェルメール作品と比べても劣らない美しさがありました。

グランドツアーの時代では、17世紀から19世紀初頭にかけて貴族の裕福な子弟が卒業旅行にフランスやイタリアを訪れたことに由来し、ヨーロッパの美しい自然と優美な世界を描かれたフランソワ・ブーシュの作品が並びます。

19世紀の開拓者たちでは、美術史の変化とは異なり、伝統的な絵画が根差し、そこから生まれたエジンバラやイングランド画家たちの肖像画や風景が展示されています。なかでもジョン・エヴァレット・ミレイの「古来比類なき甘美な瞳」であの名作「オフィーリア」とは異なる強い眼差しに惹かれました。


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映画 ベイビー・ブローカー

2022年07月17日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、韓国の実力派人気俳優と是枝裕和監督がタッグを組んだ最新作「ベイビー・ブローカー」です。

万引き家族、海街diary、そして父になるなど家族をテーマにした作品で評価が高い是枝監督、万引家族では血の繋がらない者たちの異色の家族像を描きカンヌで最高賞を受賞し、今回はベイビーブロカーと言う裏稼業を介して家族を形成していく人々の姿を描いています。この作品では、ソン・ガンホが韓国人初のカンヌ主演男優賞を受賞ました。

物語はクリーニング店を営むソン・ガンホ演じるハン・サンヒョとカン・ドンウォン演じる孤児院育ちの赤ちゃんポストのスタッフ、ユン・ドンスが裏稼業のベイビーブロカーで捨てられた赤ちゃんと母親と共に養子探しをする中で、家族的な絆を築いていくロード―ムービーです。

そこに、取引による現行犯逮捕を目論むペ・ドゥナとイ・ジュヨン演じる女性刑事が関わり、それぞれの心の変化が赤ちゃんを介して描かれていてサスペンス的な要素を加わり個人的に重いテーマを扱いながら随所にユーモアもあって、レビューでは決して高い評価ではないですが万引き家族より楽しめました。

登場人物の相関図は定かではないですが、ハン・サンヒョ、ユン・ドンス、子供を捨てた母親のソヨン、スジン刑事の隠された過去が徐々に浮き彫りになり、その後の赤ちゃんの行方が明らかになっていきます。過去を背負った登場人物を当代きっての韓国俳優が演じている点でも流石だなと思います。赤ちゃんや度々作品の中で生かされる子役たちも含め、日本人キャストでは演じられない差を感じました。

是枝監督が描く血の繋がりのない者たちの家族愛から見ると「そして父になる」「万引き家族」そして「ベイビーブローカー」が三部作の最終章のように思えます。本作はふたつの作品の持つ社会的な背景をより明確にしながら、その是非は別にして改めて家族の重みを感じる作品でした。

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映画 エルヴィス

2022年07月09日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、バズ・ラーマン監督によるキング・オブ・ロックンロール、エルヴィズ・プレスリーの伝記映画「エルヴィス」です。

僕にとって洋楽、ロックの世界に導いてくれたアーティストのひとりエルヴィス・プレスリー。戦後アメリカを代表するマリリン・モンローと並ぶ二大スターの彼が42歳でこの世を去り45年の歳月をえ経て映画で蘇ったのはとてもうれしいです。

映画「ボヘミアンラブソディ」のヒットでエルヴィスを知らない人は二番煎じかと思われている人も多いと思いますが、さすが、音楽映画を数多く手がけたバズ・ラーマン監督、エルヴィスの誕生から栄光、挫折と破滅の人生を見事に描いています。

エルヴィスの死因は心臓発作による突然死ですが、当時はドーナツなどの甘いものによる糖尿病などとまことしやかに囁かれていました。後に彼の敏腕マネージャー、トム・パーカー大佐によるギャンブルが原因で必要以上に働かされた過労が明らかになります。その点もこの映画で明かされていますが、トム・パーカー大佐をトム・ハンクスが演じ悪役ぶりを十二分に発揮しています。ただ、カントリーミュージシャンであったエルヴィスを、ロックンロールの申し子として誕生させたのは事実です。

そして、この映画を光り輝く存在にしたのは、エルヴィスを演じたオースティン・バトラー、映画の予告編でも紹介されたピンクの衣装で腰を振り歌う姿は若い日のエルヴィスそのものです。デビューからハリウッド映画出演、ラスベガスでの公演と個性的な衣装を身にまとい見事に演じています。ちなみに彼の声と共に生前のエルヴィスの歌声をミックスされてるところも、とても魅力的でした。

エルヴィスの凄さは、ゴスペルやブルースをベースに当時のR&Bの黒人音楽を白人として初めて歌い、黒人たちにも愛されていること。その部分もB・Bキングやリトルリチャードにより紹介され彼のバックボーンも詳細に楽しく描かれています。

2時間40分に及ぶ長編映画ですが、どの部分も飽きさせない全編音楽愛に満ち溢れている「エルヴィス」ぜひ彼を知らない世代にも観てほしい傑作伝記映画です。


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映画 リコリス・ピザ

2022年07月05日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、アカデミー賞3部門ノミネートのポール・アンダーソン監督最新作「リコリス・ピザ」です。

ようやく日本でも公開となった本作、1970年代のカリフォルニア・サン・バレーを舞台にした青春群像劇です。雰囲気としては1970年代のロスを舞台にしたホアキン・フェニックス主演の「インヒアレント・ヴァイス」ですが、こちらは子役出身の高校生が学校の写真撮影のスタッフの年上女性に恋をして猛アタックを繰り返すシンプルな内容です。

主演の二人はクーパー・ホフマンとアラナ・ハイムは、決して美男美女ではなく、どちらかと言えば容姿が特徴的な二人です。ホフマンはオスカー俳優と父と衣装デザイナーの母を持ち、亡き父と関係の深い監督が今回の主役に抜擢し、アラナ・ハイムは、三姉妹バンドで末っ子で監督がMVを手掛けた縁で家族出演でユダヤ人家族を演じてます。

ティーンの男子ならたぶん経験がる少し年上の女性に対する恋心、こういう男女の関係って微妙に心理状態があってくっついたり離れたりを繰り返すのですが、そんなシーンが70年代のヒット曲に乗って繰り広げられ、とても楽しいい気分にしてくれます。

しかも、登場する大人たちが、異なるシチュエーションで大活躍し、二人に関わります。たとえば渋くてハチャメチャな俳優にショーン・ペンやトム・ウエイツがスター誕生のバーブラ・ストライザンドの豪邸に住む恋人役にブラッドリー・クーパーが。なんかレディ・ガガとアラナ・ハイムが重なってパロディーかと思えて勝手にほくそ笑んでました。他にもディカプリオのお父さんが、二人を親密な関係に近づける役で出てます。ヒントは当時流行ったベッドです。

カルフォルニアの日差しとカラフルなネオン輝く夜の街を舞台に暑い夏にふさわしい、ホットな青春グラフィティーを楽しんでみてください。


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ミロ展 愛知県美術館7月3日まで

2022年06月20日 | 【美術鑑賞・イベント】

ミロ展―日本を夢みて | Bunkamura ザ・ミュージアム | 美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ

今回の美術展レビューは、愛知県美術館で7月3日まで開催中の「日本を夢みてミロ展」です。

先日アート好きな友人たちと人込みをさけ金曜日の夜間延長を利用して鑑賞しました。美術館の金曜日は大半の美術館が夜8時まで開館延長してますので、週末の美術鑑賞には最適ですぜ。ぜひご利用してみください。

さて、ジョアン・ミロはピカソやダリと並ぶスペインを代表する画家の一人で、一般的にはその画風から抽象画のイメージがあると思いますが日本で初めて紹介した美術評論家で詩人の瀧口修造氏によるとダリの属するシュールレアリスムの画家と言われています。しかしながら、その画風は多岐にわたり、抽象画のような作品も暗号的な記号や数字、線描による人物か静物の表現の中にシュールレアリスムの表現が隠されています。

また、今回の展覧会のテーマである日本文化への憧れが少年時代からあり、スペインで行われた万博にがその憧れの発端となっています。また、そのテーマからか日本全国でコレクションされている美術館や個人により収集された作品や日本文化に影響された作品やミロ自らがコレクションした民藝作品が展示されています。

会場に入ると先ず目を惹くのはニューヨーク近代美術館の「アンリク・クリストフル・リカルの肖像」黒く太い描線で描かれた肖像画の横にはコラージュされた錦絵が張り込まれ平面的な画面とぼかしを加えたカラフルな人物と相まって浮世絵の描法を意識しているように思えます。また、シュールレアリスムの表現が色濃く残る「花と蝶」や線描とカラフルな色彩にフォービズムの技法を感じる「シウラナ村」など初期の作品にはミロのイメージとは異なる表現の多彩に魅了されます。

ミロ展―日本を夢みて | Bunkamura ザ・ミュージアム | 美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ

晩年に向かうとミロの多彩さはジャンルを広げ、絵画の枠を越え、彫刻や陶芸、書など日本文化への影響が色濃くあらわれます。ミロ作品には黒や灰などの色彩や筆使いに書の表現はその代表格をいえます。

ミロ展 ―日本を夢みて | ザ・ミュージアム | Bunkamura

先日のメディアで、ミロ展を記念したレストランメニューや展覧会グッズが紹介されていました。品ぞろえも過去最大の種類で楽しいグッズが豊富です。過去最大規模ともいえるミロの展覧会。愛知での開催後は、7月16日から富山県美術館での開催が予定されています。富山は瀧口修造の出身地で、氏のコレクションも常設されており風光明媚でモダンな美術館でミロ展のイメージに一番合う美術館ではないでしょうか。ぜひこちらにも訪れてみてはどうでしょう。


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