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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

福田美蘭展 名古屋市美術館

2023年10月28日 | 【美術鑑賞・イベント】

今回の展覧会レビューは、名古屋市美術館で開催中の「福田美蘭展」です。

一般的に日本の現代美術を語る上で思い浮かぶアーティストは誰でしょうか。今なら村上隆を筆頭に草間彌生、奈良美智などではないでしょうか。今回の展覧会の主人公である福田美蘭(ふくだみらん)は村上隆と同年代であり東京藝大時代にも重なります。僕にとって画壇での知名度は福田美蘭の方が強く今でも現代美術を平易な形で表現できる唯一無二の存在だと思っています。

福田美蘭は現在60歳。東京藝大油画専攻を卒業後、画壇の芥川賞と言われる安井賞を史上最年少の26歳で受賞、具象画から古典絵画などの名画をモチーフに彼女独自の解釈で発表する作品で注目される国際的に評価の高い画家で、今回の展覧会は彼女の画業の集大成ともいえる展覧会であり、現代美術を知る上でたいへん有意義な展覧会でした。

展覧会のポスターとなった松竹梅は、うな重のランクを松竹梅の言葉に替えバックには職人が使う手ぬぐいの豆絞りの柄を使うことで日本独自の文化が表現されています。

また、見返り美人やポーズの途中で休憩するモデルは古典絵画を多面的にとられたり、ダヴィンチのモデルとなったモナリザがポーズの途中で休憩する姿を想像して描かれています。他にも古今東西の名画を画家独自の視点でとらえることで、名画の持つ魅力を現代に問うているように感じます。




他にも初期の具象画作品にも現代美術家としての思考があり、近作には絵画芸術を通じて現代を写し取る彼女自身の役割を感じさせる作品など、個展を通じて現代美術とは何かを誰もが理解できる。福田美蘭のたおやかさを感じる展覧会です。


会期は11月19日まで。本年度必見の展覧会ですので、ぜひご鑑賞ください。

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映画 バーナデット ママは行方不明

2023年10月13日 | 【映画・ドラマ・演劇】

ポスター画像

本日の映画レビューは、ケイト・ブランシェット主演でリチャード・リンクレイター監督の「バーナデット ママは行方不明」です。

TARでの孤高の女性指揮者の演技が今も強く残るケイト・ブランシェットですが、今回の役どころは打って変わって元天才建築士で今は主婦で周囲になじめない女性を好演しています。

バーナデットはIT企業に勤める夫と親友のような娘ビーとシアトルに暮らす主婦。彼女は極度の人間嫌いで娘の学校への送り迎え以外は古い城のような邸宅に引きこもっています。そんな彼女もかつては天才建築士と名をはせ仕事に意欲的に取り組んでいた。そんなある日、娘の同級生とのトラブルが重なりある事件をきっかけに突然行方不明に。彼女の向かった先はなんと南極だった。

前半は彼女の人間嫌いの行動がコミカルに描かれ、やがて天才建築士として華々しい活躍から一転、夫の出会い機に主婦となった経緯が徐々に明かされていきます。そして引きこもりだった彼女が事件をきっかけに南極へ。そして再び生きがいと家族との絆を掴むヒューマンドラマになっています。ストーリー展開も緻密でありながらテンポもよく明快で演者の絡みも楽しいです。

セクシーさと優美さを兼ね備えた女性を演じたら抜きんでる演技力を持つケイト・ブランシェットからは想像できないくらいな感傷的でキュートな彼女がとても新鮮でした。また、娘ビーを演じたオフブロードウエーで子役時代から腕を磨いたエマ・ネルソンもケイトに匹敵するくらいの名演でした。

笑いの中で育まれる愛情と離れたことでわかる家族愛にほろりと涙する秀作です。

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和田誠展 刈谷市美術館

2023年10月06日 | 【美術鑑賞・イベント】

本日の美術展レビューは、刈谷市美術館で開催中の日本を代表するイラストレーター「和田誠展」です。

僕がアートの仕事に興味を抱き、現在の美術商の仕事をするきっかけになったのは、学生時代に目に触れることが多かったイラストレーターの世界でした。当時は昭和後期の70年代から80年代、雑誌を通じてイラストレーターを知り、空山基、横尾忠則、宇野亜紀良、及川正通、安西水丸さんなど、個性的な作風で雑誌や本の表紙を飾っていました。中でも東京イラストレーターズクラブの創設者のひとりとして黎明期から活躍し、イラストのみならず装丁やエッセイ、アニメ、作曲、映画監督など幅広く活躍されたのが今回の展覧会の主役、和田誠です。

和田誠は1936年大阪生まれ。世田谷の小学校に転入後、漫画や映画の世界に没頭、武蔵野美大図案科に入り学生時代から才能を発揮し、広告の世界で活躍、当時シャンソン歌手であった料理家の平野レミと結婚した頃からクリエーターとしての幅を広げていきます。若い世代にはトレイセラトップスの和田唱やその妻の上野樹里、二男の嫁で料理家の和田明日香などの父で知られてます。

今回の展覧会は、20代の学生時代から2019年にこの世を去ってからの60年に及ぶ活動を網羅した回顧展となっています。ハイライトのデザインから映画や演劇のポスターに絵本、白石和彌監督もリスペクトした作品「麻雀放浪記」の資料や映像、ライフワークと言える週刊文春の表紙絵など壁面いっぱいに飾られ、柱を使った制作エピソードや親交のある人々の証言など、どこを切り取っても楽しめる空間となっています。あらためて、氏のクリエーターとしての幅広さと深さに感嘆しました。

僕自身、今の昭和ブームには少々疑問を持っていますが、デザインにおいては当時のクリエーターの仕事の先進性と個性的な表現は現在にアートの世界に影響を与えているように思います。その意味でも昭和に活躍したイラストレーター」やクリエーターの仕事を直に観る絶好の機会が今回の和田誠展です。

今回の展覧会がここ刈谷市美術館が最終展です。イラストやデザインの世界に興味がある方はぜひ見逃すことなく足を運んでください。

 「和田誠展 WADA Makoto」展示風景(東京シティオペラギャラリー)

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