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2月美術展レビュー:円空大賞展・加藤孝造展・中谷ミユキ展

2025年02月25日 | 【美術鑑賞・イベント】


今回は、2月に鑑賞した展覧会3件のレビューをお届けします。

先ずは岐阜県美術展で3月6日まで開催中の「円空大賞展」を。円空大賞展は、岐阜県ゆかりの円空の独創性と慈愛に注目し、幅広い芸術分野の著名人などの推薦を経て選出される展覧会で、今回が12回目となり円空大賞1名、円空賞4名が選出されました。

今回の展覧会は布と映像を用いた女性作家、マレーシアのイー・イランが大賞を受賞。土着性の高い色彩豊かな作品が印象的でした。円空賞の坂茂は段ボールなどの再生品を住宅にした建築のパネル写真でで紹介され紙の可能性を感じる展示でした。鴨池朋子は、刺繍された布による郷愁漂う作品が、どこか懐かしくまた造形物が自然と同化するように思えます。陶芸作品が並べられた吉田善彦は並べれた陶器に土の香りを感じ、こうした展示から陶芸の新たな可能性を感じます。これらの作品は撮影可能でしたが、唯一撮影不可となっていたのは池内晶子作品、会場に張り詰められた赤い絹糸は円空仏から着想されたもので、作家の意図が当世のSNS発信から歪められることを恐れてのことだとか。このことについては賛否がありますが、個人的には意図を理解し写真と共に発信許可を出した方が良かったのではと思います。

次は岐阜県現代陶芸美術館で3月16日まで開催中の「加藤孝造・追悼展」は2023年に亡くなられた人間国宝で志野や黄瀬戸でなどの作品で知られています。

今回は陶芸の世界に入る以前に18歳で日展入選の快挙を成し遂げた油彩画の作品などが紹介され、加藤幸兵衛の助言で陶芸の道に転向した氏が、師である荒川豊蔵の出会いにより瀬戸黒や志野、黄瀬戸を追求した作品がずらりを並ぶ追悼展にふさわしい展示と代表作はもとより画家としての片鱗を感じさせる作品など多彩な一面を感じさせる展覧会でした。

最後は、一宮市三岸節子記念美術館で3月16日まで開催中の「中谷ミユキ展」は、三岸節子と共に、戦中の女流美術家奉公隊や戦後の女流画家協会の創設など戦後の洋画界で活躍した女性画家の展覧会で、三岸の鮮やかな色彩と力強い表現とは異なり、マチエールに共通項がみられるものの繊細で抽象的な表現と淡い色調に違いを感じ、普段から常設展示で三岸節子作品を鑑賞している方には、同時代を生きた中谷ミユキに新鮮な気持ちを持つと思います。

まだまだ寒さが強いですが、徐々に穏やかな時期が近付いてくる3月。お近くの方はぜひ鑑賞してみてください。

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パウル・クレー展 愛知県美術館

2025年02月20日 | 【美術鑑賞・イベント】

現在、愛知県美術館で「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」が開催中です。

1879年音楽一家の子としてスイスで生まれたパウル・クレー。画家になるべくドイツに・ミュンヘンに移り、カンディンスキーらの青騎士会に参加、後にバウハウスの教官となり第二次大戦下ではナチス政権の退廃芸術展の中心人物とされ迫害を受けた画家。しかしながら、クレーの芸術に対し、あまり知識がない美術ファンも多いかと思います。


僕自身も親交のあったカンディンスキーと同じく、抽象画のイメージが強く作品に対する印象も薄かったのですが、今回の展覧会でその印象は一気に覆ることとなりました。その作品は多岐にわたり、写実的な表現から、音楽一家で育ったルーツを感じるメロディあすな表現。ピカソやブラックなどのキュビスムをクレーらしい色彩とキューブで表現した作品、さらに戦争の悲劇や破壊、そして希望へと向かう作品に、シュルレアリスムの先駆者として作品など実に多彩です。

ナチスから敵視され、退廃芸術展で一番多く展示されたクレー作品。孤高の画家の描く多彩な作品は生と死、破壊と希望と過去と未来をつなぐものではないかと感じます。

愛知での開催は3月16日まで、その後3月29日より兵庫県立美術館で開催れます。ぜひ未知なる巨匠の世界をぜひ覗き見て下さい。

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布施知子ORIGAMI紙の鼓動 ヤマザキマザック美術館

2025年02月01日 | 【美術鑑賞・イベント】

日本の伝統的な遊びとして誰もが慣れ親しんだ折り紙。幼少の頃に日本人なら一度は鶴を折った経験があると思います。そんな身近な折り紙の世界を芸術の分野に進化させたユニット折り紙の女王が布施知子氏です。

今回の展覧会では近年制作している数多くの作品の中から、「ユニット折り」をはじめ、「スパイラル らせん 折り」、「平折り」、「無限折り」、「ノット(結び目)による造形」など、多種多様な折り方によって無限の形と美しさを見せる折り紙の数々が展示されています。

先ず会場入り口から白い折り紙の枯山水の紙の庭がお迎え、ガラスケースには一枚の紙を巧みに折りながら作られた立体作品の数々が展示され、美術館が誇るアールヌーボ期の調度品の床を赤や金銀のジャバラに折られた蛇が床を覆うように這い、巳年の今を祝福しています。世紀末美術の中に点在する折り紙の数々は、時空を超えた無限の時間を感じさせます。

壮大な創造力を駆使して巧みな計算で折られる作品を目にすると氏の頭の中を覗いてみたい衝動に駆られます。明治の名工により世界に広まった超絶技巧のDNAを持ちながら、未来に続く豊かな発想力を兼ね備えた氏の作品にただただ感嘆した展覧会でした。

会期は3月23日まで、無限の形と美しさを見せる折り紙の世界をぜひ鑑賞してみてください。

 

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夢を追いかけた前衛の鼓動 碧南市藤井達吉現代美術館

2025年01月29日 | 【美術鑑賞・イベント】


今回の美術展レビューは、碧南市にある藤井達吉現代美術館で開催中の「夢を追いかけた前衛の鼓動」展をお届けします。前衛芸術と言うと何を浮かべるでしょうか?おそらくは現代美術を思い浮かぶかと思います。
前衛美術とは、本来は第一次大戦後のシュルレアリスムや抽象絵画をさしますが、日本においては第二次大戦後に新しく生まれた芸術を指すのではないでしょうか。今盛んに呼ばれている現代美術の源流に今回の展覧会があります。今や誰もが知る岡本太郎や草間彌生もこの時代に登場します。
 
今回の展覧会は、足利市立美術館に寄贈された浅川邦夫氏のコレクションにより構成された日本における現代美術の潮流となるものです。また、コレクターでもあった画商・浅川氏の作家との親密な関係や現代美術への愛情も伺えるでしょう。
 
展覧会は、浅川氏が在籍し、志水楠男氏が設立した現代美術画廊「南画廊」が取り上げた中西夏之、三木富雄、加納光於、今井俊満など海外でも評価の高い現代美術家の作品が浅川氏による出会いと解説で平易に展示紹介されています。
 
ともすると難解な現代美術の世界をより深く理解するのには、とても良い展覧会で、戦後の前衛芸術を担った作家たちの存在があったからこそ、今日の日本の現代美術の系譜が続いていることを感じれると思います。
 
本展は2月24日まで。吹き抜けのガラス張りのカフェが併設されたモダンなリフォーム美術館で日本の現代美術の誕生を感じてみてはどうでしょう。

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ジャン=ミッシェル・フォロン展 名古屋市美術館

2025年01月24日 | 【美術鑑賞・イベント】
今回の美術展レビューは、名古屋市美術館で開催中のジャン=ミッシェル・フォロン展をお届けします。
ジャン=ミッシェル・フォロンは、ベルギーを代表するアーティストで多彩な表現方法で20世紀後半に活躍したアーティストです。
 
僕も20代の頃からフォロンのグラデーションを生かしたやわらかい水彩画好きで、楽しみに没後20年、日本では30年ぶりの展覧会を楽しみしていました。
フォロンは、アメリカの雑誌「ザ・ニューヨーカー」で挿絵が掲載されたことで一躍人気者となります。
 
フォロンの作品の特徴は透明水彩を用いてグラデーションで表現される幻想的な画風や鮮やかな色彩で制作されたシルクスクリーン版画による空想的な世界。一方でアムネスティ・インターナショナルのポスターデザインに代表される社会問題や社会風刺をテーマにした作風もあるのですが、すべての作品にフォロン独特のウイットに富んでいて、誰もが彼の世界にスーッと入り込む魅力があります。
 
今回の展覧会は、彼の集大成的な回顧展となっており、ドローイング、水彩画、版画、ポスター、彫刻にオブジェ、写真にアニメーションと多彩な世界が一挙に紹介されています。自らを空想旅行の案内人と名乗っていたフォロン。訪れた人を夢の世界に誘ってくれます。
 
会期は3月23日まで。4月5日からはあべのハルカス美術館で開催されます。ぜひフォロン共に空想旅行を楽しんでみてください。
 

安野光雅展 稲沢市荻須記念美術館

2024年11月30日 | 【美術鑑賞・イベント】

先日の11月23日と24日の連休を利用して、東海地区の美術展を巡ってきました。

美術展は四ケ所で岐阜県美術館での山本芳翠オディロン・ルドン展名都美術館の平山郁夫展碧南市藤井達吉現代美術館の富岡鉄斎展と今回紹介する稲沢市荻須記念美術館の安野光雅展です。

先ずは三館での美術展を簡単ですが紹介したいと思います。

山本芳翠とオディロン・ルドン展ですが、岐阜県美術館が誇る日本とフランスを代表する近代洋画家の二人を同時に開催する展覧会で、岐阜県美術館の収蔵品に加え国内美術館の名品を網羅したことで注目を浴びました。時の首相、伊藤博文とも親交あった山本芳翠の皇居三の丸尚誠館所蔵の作品など文化庁の全面協力のもと118点の作品が並び、一方のオディロン・ルドン展は油彩画やパステル画、版画など300点の作品が網羅された大規模な展覧会で、双方とも岐阜県美術館所蔵のレベルの高さを再認識できる内容でした。

名都美術館での平山郁夫展は、現代日本画の巨匠の一人、故平山郁夫の没後15年を記念し氏のコレクションとして有名な佐川美術館の協力のもとで展覧されるもので、代表作「仏教伝来」に関連するシルクロードの旅を巡る作品やユネスコ世界遺産関連の作品や延暦寺や法隆寺などを描いた作品など88点が一堂に介する展覧会でした。平山芸術の色彩豊かな日本画の世界が楽しめます。

碧南市藤井達吉現代美術館では、富岡鉄斎展は幕末から明治大正を生き抜いた最後の文人画家として有名な富岡鉄斎の没後100年を記念した展覧会で、儒学・陽明学、国学・神道、仏教等の諸学を広く学び、南宗画、やまと絵等をはじめ多様な流派の絵画も独学した鉄斎の画業に加え、制作に使われた筆や硯、印譜などの資料も網羅されていました。絵に書を加えた画賛作品はユーモラスかつ大胆な表現で今なお人気の一因を感じます。こちらの展覧会は会期を終了しておりますが、他の展覧会は12月8日まで開催中です。

さて、僕がもっとも目を惹いたのが、稲沢市荻須機縁美術館での安野光雅展です。42歳の時に文章のない絵本「ふしぎなえ」を刊行してデビューを果たした遅咲きの絵本作家、安野光雅。数々のベストセラー絵本を生み、小さなノーベル賞とも称される国際アンデルセン賞画家賞など国際的な絵本賞を数多く受賞した氏の代表作の原画が並ぶ絵本で旅するような素敵な展覧会です。

画風の特色である細密で描かれた作品は画面の隅々にアイデアが施されイマジネーション・ワンダーランドの副題そのもので観る人が安野ワールドに没入していきます。シンデレラの古典童話から切り絵による昔話、森と同化する動物たちのかくし絵など観る人に楽しみを演出する作品も魅力的でした。世代を超えて誰もが楽しめる展覧会は12月8日まで開催中ですのでぜひご鑑賞ください。

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相国寺展 愛知県美術館

2024年11月19日 | 【美術鑑賞・イベント】

室町時代、三代将軍・足利義満により創建された相国寺。金閣、銀閣の通称で観光名所としても知られる鹿苑寺、慈照寺を擁する臨済宗相国寺派の大本山と知られてますが、最近では若冲ブームにより相国寺承天閣美術館を訪れる人により広くその名を知られるようになりました。今回の展覧会は承天閣美術館開館40周年を記念した展覧会で、国宝、重要文化財45件を含む大規模な寺跡を辿る展覧会となっています。

残り一週間余りと会期終了近いレビューになりましたが、前期、後期と観覧して感じたのは、相国寺の成り立ちから考えれば、当然のことながら墨蹟の数が多いのは当然としてその歴史的な価値からも重要文化財に指定されているのも多いです。そこに対しては割愛しますが、相国寺高僧の肖像画や中国絵画の名品などを観るにつけ、中国の明時代に五山制度を始まりと大相国寺にならい相国寺が創建された点でもこの時代に南画などの中国絵画への影響が理解できます。

その中国絵画を学び、影響を受けたのが円山応挙であり、伊藤若冲で、なかんづく狩野派の絵師たちにも及んでいます。そうした影響を比較しながら鑑賞するのも面白いです。後期展示として個人的には、やはり円山応挙の「牡丹孔雀図」と長谷川等伯の「萩芒図屏風」で応挙の孔雀牡丹図は背景を描かず牡丹を余白に配し孔雀の絢爛さが際立つ優美な作品でした。また等伯の萩芒屏風は、風に揺らぐ生い茂るススキと控えめで清楚な萩の花々の対比が見事でその姿を墨のみで描く等伯らしい作品で、どちらも時代と共に重要文化財になるでしょう。

また、相国寺といえば若冲作品の数で群をぬきますが、今回は鹿苑寺大書院の襖絵が目玉でしょう。他にも掛軸が数点並びますが、撮影不可ですので関連として愛知県美術館の所蔵品として木村定一コレクションで伊藤若冲、与謝野蕪村などの写真撮影可能な作品が展示されています。

美術ファンにとっては、今のこの時期でも観覧した方が有意義な展覧となっていますので、お見逃しなく神社、仏閣に興味のある方も含め訪れてみてください。また、明年3月29日からは、東京藝術大学美術館での巡回展となっています。関東方面の方はぜひご鑑賞ください。

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田中一村展 奄美の光 魂の絵画 東京都美術館

2024年11月11日 | 【美術鑑賞・イベント】
田中一村展 – NHKプロモーション
 
 
田中一村と言う日本画家を知る人は少ないかと思います。ただし、奄美大島で暮らす孤高の画家と言えば田中一村を思い出す美術ファンも多いのでは。田中一村は1908年に東京に生まれ、1977年に亡くなります。幼少期には神童と呼ばれ、東京美術学校(現東京藝大)に入学しますが、まもなく中退。千葉市に転居後は支援者に依頼品や青龍社や日展に出品しますが落選。中央画壇に失望し鹿児島でのスケッチ旅行を経験する中で50歳に奄美大島に移住。大島紬の工場や漁師などで生計を立てながら画家活動を続け、古希の70才を迎える前の69才にてこの世を去ります。
 
今回の展覧会は、神童ぶりを発揮する幼少期の南画作品や木彫家の父の手伝いを通じた木彫作品、東京美術学校を僅か2か月で父の病気で中退するも、田中米邨の雅号でパトロンも多く一家の生計を支えていた時代の作品は、当時人気を博した南画の手法で幼少期から20代の若さで見事な作品が並びます。
 
戦前戦後の作品は、南画を中心の墨彩画が多いのですが、狩野派の流れを持つ琳派風の作品も多く、鮮やかな芍薬や椿などの花鳥画は絢爛美を感じました。千葉での一村時代には、後に中央画壇への失望となる青龍社で出品の作品が並び、初入選作となる「白い花」や連作となる「秋晴」の落選による「波」の入選辞退は、会場芸術を唱える新しい日本画への期待と絶望の現れではないかと思います。
 
日展や院展に出品するも落選を重ね、皮肉にも東山魁夷や加藤栄三、橋本明治など東京美術学校の同期の活躍と反するように中央画壇から距離を置くも千葉時代の支援者の支えもあって、一村の作品を観ると衰えを知らない力強さを感じました。この時代に花鳥画には、後に続く奄美での斬新な画法の一端を感じました。
 
そして鹿児島でのスケッチの中で出会った蘇鉄により奄美の画家の誕生と繋がるのですが、南国の風土の中にある自然美は一村により世の中に浸透していったのではと感じます。画面いっぱいに描かれる奄美の木々は光に照らされて墨色に染まり、色とりどりの花や蝶と見事なコントラストで魅了します。
 
日本画の手法で描かれながらも西洋の趣さえも漂う作品はまさに一村でしか描けないものだと思います。古希を前に意欲的に作品を発表しようと気概は、図らずも自らの寿命で絶たれますが、終焉の地で育まれ、こうして、その名と作品が広く知れ渡りました。
 
今期、ベスト1の展覧会と誰もが口をそろえる田中一村の奄美の光と魂の絵画をぜひ鑑賞してみください。

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宇野亞喜良展 刈谷市美術館11月9まで

2024年10月28日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
今回の美術展レビューは、刈谷市美術館で開催されている「宇野亞喜良展」です。
 

日本を代表するイラストレーター、グラフィックデザイナーのひとり宇野亞喜良(うのあきら)1934年に愛知県で生まれた御年90才になるレジェンドデザイナーです。宇野さんの妖艶かつ愛らしい女性像を目にした方も多いと思いますが、今やコンピューターグラフィック全盛の時代にあって、1960年代から1970年代のイラスト、グラフィックの世界は、手描き作品が多く当時のデザイナーは個性的で卓越した技術を持っていました。

なかでの宇野氏のイラストレーションは常に進化をし、その時代の流行の先端にマッチした斬新な作品ばかりです。そんな氏の片鱗を感じる幼少時代から作品から現在にいたる作品が一堂に介する全貌展が地元で開催されることはとても誇らしいです。

また、その作品は多岐にわたり、イラストレーションの原画や、ポスター、絵本、書籍、アニメーション映画に絵画や舞台美術など、どの作品も魅力的で宇野カラーがにじみ出ています。デザイナーを志す若者たちやファッションやカルチャー好きの方にも十二分に楽しめる展覧会となっています。

11月3日の文化の日には20時まで開館を延長してナイト☆ミュージアムが開館されますので、秋の夜長にふさわしい宇野亞喜良の世界を楽しんでみてはどうでしょう。

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9月の東海地方美術展レビュー 9月23日まで開催中

2024年09月21日 | 【美術鑑賞・イベント】

暑さもまだまだ続いている昨今。外に出かけるのも億劫な今年の9月ですが、そんな中で地元東海地方で足を運んだ美術展のレビューをしたいと思います。

今回訪れたのは愛知県のメナード美術館、愛知県美術館、名都美術館、豊田市美術館の4館での美術展をレビューします。

先ずは、いつも僕が仕事途中によく訪れるメナード美術館の額縁のむこうのFRANCE


メナード美術館のフランス画家の所蔵品を中心に展示された本展。ポスト印象派やフォービズムやキュビズムの有名画家たちの作品を美術拠点であったモンマルトルとモンパルナスにスポットを当て画家たちの隠れたエピソードも交えながら、構成されていて楽しい展示でした。

愛知県美術館のアブソリュート・チェアーズは椅子本来の機能からとどまらない現代美術家の椅子作品が並ぶユニークな展覧会



現代美術の先駆者であるマルセル・デュシャンや草間彌生、岡本太郎などの有名作家や現代美術を代表する座ることを拒否した作品群は圧巻です。また、ジョン・レノンの妻であるオノ・ヨーコの美術家時代の作品など展示されていて、世代を超えて楽しめる現代美術展でした。

名都美術館の旅する堀文子展は100才の長寿を全うした女性日本画家の作品展


旅を愛した画家のスケッチや旅が困難となりアトリエの庭にある身近な草花を描いた作品など。日本画の新境地を開いた造形的な作品と女史独自の色彩感覚に心和む展示です。女性に人気の高い画家だけに会場には数多くの女性ファンが訪れてました。こちらの展覧会は9月29日まで開催中です。

最後は愛知県での巡回展では最も注目度が高いエッシャー 不思議のヒミツ



だまし絵、トリックアートの元祖として一般的にも知られているエッシャー。幾何学的に構成され、厳密さを追求した作品は、身近なモチーフを用いて解読され現代人にも視覚的に強く問いかける作品が網羅された大規模なエッシャー展です。美術館の敷地内に新設併設された豊田市博物館と共に楽しみが倍増されています。

今回の展覧会レビューは直近での鑑賞となり会期も迫っていますが、予定がない方をぜひ訪れてみてはどうでしょうか。どの展覧会も新しい発見があると思います。

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生誕130年記念 北川民次展にみる大衆芸術

2024年08月08日 | 【美術鑑賞・イベント】

現在名古屋市美術館で「生誕130年記念 北川民次展」が開催されている。北川民次の存在を知ったのは名古屋にある老舗の蕎麦屋に掛けられた干支寅の色紙絵だった。太い線描で描かれた干支は、色紙絵ながら強い印象を付けた。

北川は静岡生まれではあるが、戦後は瀬戸を拠点に制作を続け、愛知にゆかりの深い画家となった。今回の名古屋市美術館にはモディリアーニのおさげ髪の少女を中心にしたエコール・ド・パリの画家作品のスペースと共にオロスコ、リベラなどのメキシコ壁画運動の画家やフリーダ・カーロ、タマヨなどのメキシコ絵画の巨匠の作品を収蔵している。北川は当時の画家たちが渡仏するのに対し、渡米、そして15年にわたりメキシコで画家、美術教育者として活動している。彼にとってはメキシコは芸術と教育のルーツであろう。

愛知県には、今もモザイク壁画の作品が点在するが、メキシコ壁画運動との関係を考えると北川芸術を知る上での重要なアイコンであろう。瀬戸には絵画、版画などの膨大な作品が存在するが、製陶業で栄えた瀬戸とメキシコの労働者に重ねていたのではないか。この地がもたらした芸術への強い欲求が制作に駆り立てたのではないか。

今回の展覧会は約30年ぶりの回顧展で絵画作品70点を含む約180点作品と資料により構成されているが、どの作品も画面からにじみ出てくるような迫力を感じる。そしてデフォルメされた太い線描の人物像は表情豊かで強い意志を持っている。どの作品の権力への抵抗心を感じさせる。

一方で彼の作品は民衆への深い慈愛があり、決して破壊的なものではない。むしろ美術教育者としての愛をもった画家だと思う。そして大衆の中で生きた唯一無二の芸術家であろう。

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女性にオススメの美術展 愛知県

2024年06月24日 | 【美術鑑賞・イベント】

アート店主がおすすめの現在愛知県名古屋市内で開催中の美術展を3展紹介します。

先ずは6月30日と会期終了が迫っている。美術展から紹介します。愛知県近郊の方は、地下鉄東山線沿線ですので、一日かけて鑑賞されても楽しい美術展です。

最初に紹介するのは栄駅下車の愛知県美術館で開催の「コスチュームジュエリー 美の変革者たちーシャネル、ディオール、スキャッパレリ」

 


コスチュームジュエリーとは宝石や貴金属を用いず、ガラスや貝、樹脂などの多種多様な素材を使ってデザインされたファッションジュエリー。「これは、偽りなく美しいニセモノのジュエリー」とシャネルの言葉通り、素材を巧みにデザインすることで生まれるデザインシュエリーは、どれもオリジナリティーにあふれています。そして、このコレクションの全てが日本人女性、小瀧千佐子氏の所有で構成されています。改めて日本人女性の美意識の高さに驚嘆です。

作品のほぼ全てが写真撮影可能。ガラスケースに入っているので少し離れたポジションでズームを使って撮影すると反射もふさげます。ぜひお気に入りの一枚をスマホの待ち受けや個人的なコレクションしてみてはどうでしょうか。

次は新栄駅1番出口から直通のヤマザキマザック美術館で開催中の「記憶の花 藤原更」


愛知県津島市生まれのフォトグラファー。コマーシャルフォトグラフの世界から清里フォトアートミュージアムコレクション、フランスでの企画展後にアートの世界に転身。アクリル板や布などの素材を用いた花のフォトアートが展開される華麗で優美な世界が広がります。

訪れた日も若い女性を中心に作品と一緒に写真におさまる場面に遭遇しました。当館はアールヌーボの調度品やガラス工芸品、ロココから20世紀近代絵画の西洋美術のコレクションでも名高く、女性にクローズアップした企画展が目をひきます。

今回の藤原更氏の作品と共にガレやドーム、ティファニーのガラス工芸がつながるようにうまく展示されていました。もちろん一部作品を除き写真撮影可能で、さらに音声ガイドの無料ですのでゆっくり解説を聴きながら展覧会を楽しんでください。

ここまでは6月30日で会期終了となります。

最後は、池下駅からすぐ、古川美術館と分館爲三郎記念館で開催の「追悼 篠田桃紅(シノダトウコウ) 107年のキセキ」です。

日本を代表する女性書道家で107才で亡くなるまで作品を生み出し続け、墨象という独自の墨による抽象表現で国際的に評価の高い篠田桃紅の追悼展で、初期の草書を用いた具象的な作品から、墨象という独自の墨による抽象表現は時空を超えた漆黒の世界のように感じます。

また、リトグラフ技法の版画作品も数多く手がけ、人気があります。今最も人気のある日本人女性芸術家の草間彌生を動の作家と例えるならば、篠田桃紅は静の芸術家でしょう。美術館では大作を展示、分館の爲三郎記念館では国の登録文化財の数寄屋家屋に版画作品が展示され、独特な趣を醸し出しています。

こちらは7月28日が会期終了。美しい日本庭園を眺めながら茶菓子を味わいながら避暑を楽しんでみてはどうでしょう。

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新潟アート旅 横山蒼鳳さんの書いたことば展 砂丘館

2024年04月27日 | 【美術鑑賞・イベント】
4月20日から21日にかけて新潟車中泊アート旅に行ってきました。今回のアート旅は御縁を頂いた娘さんからのご招待で新潟で活躍された書家・横山蒼鳳(故人)展が目的でした。先ずは「横山蒼鳳さんの書いたことば」展のアートレビューをします。
 
横山蒼鳳氏は、高校時代に江川蒼竹に師事。青年期に会津八一薫陶を受け書の道に進み、病院勤務や福祉関係の要職に就きながら一貫して書の道を究めた異色の書家です。僕が横山蒼鳳さんを知ることとなったのがたまた美術商の交換会で入手した作品をインスタグラムにアップしたことでした。その作品が三女の純さんの目にとまり他の作品を知るところとなり、今回の展覧会に入手した作品を寄贈することにしました。そうしたSNSでの交流の中で、他の作品を直に感じたいと4月21日のギャラリートークに参加することにしました。
 
今回の展覧会は、純さんが経営する美容室での展覧会に続いて二回目の展覧会で昭和の歴史あるお屋敷、旧日本銀行新潟支店長役宅の「砂丘館」をメイン会場に古い町家の企画画廊「新潟絵屋」の二会場にわたる大規模な展覧会で、部屋中に作品があふれ出すような僕にとっては目新しさを感じる展覧会で、権威に立ち向かい、弱者を守る運動家の一面を持つ氏の奥底にある慈愛あふれる言葉の数々と自由奔放な書体に魅了されました。
 
会場入口に掲げられた「出杭人生」と寄贈させて頂いた作品「日本に不足 日本のこころ」福祉活動に従事し運動家でもあった氏の一面を物語る作品
 









自然や家族、日常を断片を切り取ったような言葉の数々に愛を感じる。


ギャラリートーク会場の「げんきでいればま、また会える」は病床の中で静かに息を引きとった父、蒼鳳の会場を訪れたる人々に出会いのメッセージ。
純さんのユーモアあふれるトークは、無邪気な親子関係を感じ心和む時間となった。
 
所感:自由書で有名な書家に「あいだみつを」を思い浮かぶ方も多いかと思う。書家としての一面からは自由書でにわか書家が乱立する世の中ですが、自由書は書家本来の鍛錬と基礎の中で生み出せれるものと確信している。また、書家の多くはその道を究めるのみだが、蒼鳳さんは、現実社会に生きながら社会の不条理や矛盾と戦いながら、書の世界に人生を映し出す鏡のような存在に思える。その意味で、今回の展覧会は意味のあるものでした。
 
ぜひ書に興味のある方、お近くに住まわている方はゴールデンウイーク中までの開催されているので「横山蒼鳳さんの書いたことば」にふれてみてください。

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杉浦非水の世界展 ヤマザキマザック美術館

2024年02月12日 | 【美術鑑賞・イベント】


本日の美術展レビューは、ヤマザキマザック美術館で開催中の日本グラフィック界の先駆者「レトロ・モダン・おしゃれ杉浦非水の世界」展です。
 
杉浦非水は近代洋画の巨匠、黒田清輝がパリ万博で持ち帰った絵ハガキや資料によりアール・ヌーヴォーのデザインを知り、大正時代にヨーロッパ留学によりアール・デコのデザインに触れた日本のグラフィックデザインの先駆者ですが、一般的にはその画業は知られていないと思います。実は彼は、三越に入社後にポスターや広報誌を手掛け戦前から戦中、戦後の日本の商業デザインに深く携わっています。
 
今回の展覧会は、三越の前進である三越呉服店や銀座三越のポスターをはじめ、日本交通公社の機関誌やたばこパッケージや画家非水の画業を示す木版画集「非水百貨譜」など非水のデザインの軌跡をたどる展覧会となっています。
 
タイトル通り非水の世界は、レトロモダンなデザインで時代に違うアールヌーヴォーとアールデコの曲線と直線を巧みな融合させたオリジナリティあふれる作品に今の時代にも通用するセンスの良さを感じます。懐古主義的な風潮やダイレクトに主張する今のデザインの風潮に一石を投じているかのような斬新なデザインにときめくこと間違いないと思います。
また、ヤマザキマザック美術館のアールヌーヴォー期の所蔵品の中に実にマッチしていて優れたデザインの持つ時代を超えた永続性を強く感じました。
 
会期は2月25日(日)まで。無料の音声ガイドを聴きながら、ぜひ非水の世界を堪能してみてください。

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ガウディとサグラダファミリア展&VRでよみがえるガウディ

2024年01月31日 | 【美術鑑賞・イベント】
本日の美術展レビューは、名古屋市美術館で3月10日まで開催中の「ガウディとサグラダファミリア展」です。また、関連企画としてNHK名古屋放送センターで初公開のVRでよみがえるガウディーサグラダファミリアの秘密にもVR体験してきました。ガウディとサグラダファミリア展は昨年早々に鑑賞してきましたが、会場で知ったVRでよみがえるガウディを体験してからレビューしようと本日になりました。
 
アントニ・ガウディ、建築に興味がない人でも天才建築家の名前を知る人は多いかと思います。そして彼の死後未だ未完の建築がスペインバルセロナにある大聖堂サグラダファミリア。また、その建築に主任彫刻家として44年以上携わっている外尾悦郎さんの存在により広く日本に知られています。その大聖堂が140年以上の時を経ていよいよ完成が近づいています。
 
今回の展覧会は、サグラダファミリア聖堂にスポットを当て、100点を超える図面や模型、写真、資料を基に構成され、随所に最新映像を交えながらサグラダファミリアの造形の秘密に迫る内容となっています。ガウディの建築の特色として造形美があり、色とりどりのタイルを砕いて組み合わせるピースや様々な曲線で構成された扉飾り、円錐状の伸びる近未来的な建築物等、そのすべてが誰も無しえない超越した発想力で観る者を魅了します。その創造力はダヴィンチに近い存在に感じます。
会場は若い人が多く、改めてガウディの人気が伺えました。



そんな人間ガウディの魅力を体験できる企画が「VRでよみがえるガウディ~サグラダ・ファミリアの秘密~」先日の28日の10時受付に9時半頃に会場に行きましたが、すでに長蛇の列で各回6名、15回の上映体験に夕方16時の予約が取れました。入場までの間、二つの美術展に出かけたのでこちらのレビューは後日します。
 
係員の説明の後ゴーグルをつけて両手に機材を持ち、複数の人々と自由に動きながらVR体験。15分間の4K画質VR世界は、病床にあるガウディの意志を継ぐ建築の旅でとても素晴らしい体験でした。興味のある方は2月12日まで毎日行われていますので名古屋市美術館の展覧会とセットで体験してみてはどうでしょう。土日は早めに会場で予約することを勧めます。

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