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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

映画 エミリア・ペレス:奇想天外でユニークな発想

2025年04月16日 | 【映画・ドラマ・演劇】

本日の映画レビューは、ジャック・オーディアール監督のミュージカルエンターテーメント「エミリア・ペレス」です。

本年度アカデミー賞で最多12部門13ノミネートされた本作。主演を務めたトランスジェンダー女優カルラ・ソフィア・ガスコンの初のオスカー受賞となるか期待が高まりましたが残念ながら助演女優賞1冠で終わりました。しかし、今までにない着想で見応えのあるエンターテーメント映画でした。

メキシコの麻薬王マニタスから女性として人生を用意してほしい依頼された弁護士リタ。彼女は極秘裏に計画をすすめ成功します。数年後、イギリスに移住したリタに再びエミリア・ペレスとして現れたマニタス。二人の新しい人生が再び動きます。

世界を震撼させるメキシコの麻薬カルテル。様々なメディアで取り上げられ知られるようになりましたが、オーディアル監督は麻薬王を女性として生まれ変わるという奇想天外な着想でドラマをミステリアスに展開させます。さらに、その残忍な所業をミュージカルに仕立てることで、目を背けることなく趣向を和らげながら歌という熱量で訴えかけます。

中心はメキシコ社会にあるカルテルが操る社会ですが、大なり小なり社会の持つ悪にかつては悪の権化であった主人公を清濁併せ持つ善の存在に惹きつけられます。カンヌでは絶賛の本作ですが、まだまだ現在のアメリカでは受け入れられない状況にあるのは、今の状況を考えると理解はできますが、監督の着想と主張、主演のリアルな存在感は今年一、二を争う問題作なのは確かと思います。

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映画 教皇選挙:巨大な密室で展開する最上級ミステリー

2025年03月23日 | 【映画・ドラマ・演劇】

本日の映画レビューは、エドワード・ベルガー監督のバチカンを舞台にしたミステリー「教皇選挙」です。

アカデミー賞8部門にノミネートされ、作品賞最有力と予想されていた本作。残念ながら脚色賞のみの受賞でしたが、かなりの見応えを感じる内容でした。

内容は現ローマ教皇の死により、次の法王を決める教皇選挙における選挙の内幕を描くミステリー。フィクションではありますが、過去のカトリック神父のスキャンダルや保守派と革新派の対立などを踏まえながら選挙の詳細が描かれていきます。

教皇選挙については、ネットフリックスオリジナルで話題となった映画「2人の教皇」を観ていたので理解できたのですが、100人を超える各国の枢機卿による候補者選びの暗躍に亡き教皇が記したメモの秘密など、選挙を取りしきる清廉潔白のローレンス枢機卿の選挙戦における苦悩を中心に据えながら、カトリックのタブーともいえるテーマをミステリーの結末に添えた至極のミステリーとなっています。

宗教の本来もつ使命と人間の本質の両面に鋭く突いた作品だと感じます。この作品がアカデミー賞の脚色賞のみだとは、アカデミー賞の行く末がわからなくなりました。ともあれ、教皇選挙は今年必見の映画だと思います。

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映画 名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN:映画史に残る音楽映画

2025年03月20日 | 【映画・ドラマ・演劇】

アカデミー賞の主要8部門にノミネートされながら無冠に終わった本作。しかしながら、絶大な人気を経て今なおロングランヒットを続けています。僕もディランのデビューから音楽の転換期となったニューポート・フォーク・フェスティバルまでの若きディランの熱狂の時代が描かれ、IMAXで臨場感を味わいました。

主演のティモシー・シャラメは21世紀を代表する美少年で本作も含め二作でノミネート作品に出演。主演男優賞のノミネートされましたが、ブルータリストでオスカーに輝いたエイドリアン・ブロディに引けを取らぬ演技でした。また、世界的なパンデミックにより撮影が遅れたことが功を奏してブルースハープやギターの腕を磨き、さらに歌唱を若きディランの声とは実際は異なるものも、ティモシー・ディランとも言うべき歌声を披露していました。まさに彼の代表作となるべく名演です。

作品の構成も素晴らしく、片田舎の町から、フォークのカリスマ・ウッディガスリーの出会いからデビュー。彼に影響を与え続けた二人の女性の存在など、若きディランが、いかにして時代のカリスマとなっていったかを今の若者たちへもわかりやすく、また共感できる仕上がりであったと思っています。

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映画 ANORAアノーラ:ハチャメチャなシンデレラストーリー

2025年03月08日 | 【映画・ドラマ・演劇】

今年のアカデミー賞は、どの評論家も予想が外れたのではないでしょうか。そして、今回のアノーラがオスカー5冠とは予測不可能な事態だったと思います。とは言え、カンヌでパルムドールを受賞もだてではなかった。

インディペンデント作品で低予算で制作された本作。古典的なシンデレラストーリーを今風に解釈した作品でR18指定からもわかる通りか、かなりお下劣な内容です。

ロシア系アメリカ人のストリッパー、アニー(アノーラ)が、店に来たロシア人御曹司のイヴァンに見初められヴェガスの教会で結婚しシンデレラストーリーが結実。しかし、イヴァンの両親から猛反対を喰らい婚約破棄を迫られ、挙句の果てにイヴァンは失踪。イヴァンの部下とボディガードと一緒に捜しだしに行くという内容です。

乱痴気騒ぎの豪遊とはハチャメチャ捜索劇の構成ですが、F○○Kの連発さえなければ、コメディとしては楽しめます。主演女優賞に輝いたマイキィー・マディソンの体当たりの演技は見応え十分ですが、作品賞、脚本賞、編集、監督と4つのオスカーを獲得したショーン・ベイカー自身がスピーチで信じられないを連発するほどです。

劇場公開が少ない作品でしかも成人映画が受賞したことは、映画館に足を運ぶことが少なくなってきた昨今のシネマ事情の中でアノーラのシンデレラストーリーは続いてほしいものです。

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映画 ブルータリスト:壮大かつ残酷な自己史

2025年03月04日 | 【映画・ドラマ・演劇】

先ずは、今回の作品でユダヤ人建築家を演じたエイドリアン・ブロディのアカデミー賞主演男優賞受賞を祝したいと思います。今回は主演男優賞1部門の受賞でしたが、作品としては、個人的に評価の高い作品です。

物語は、ハンガリー出身の建築家ラースロー・トートという架空の人物のの半生を描いたものですが、強制収容所に数年を過ごし、妻と姪を残してアメリカに亡命したラースローのアメリカでの波乱万丈の人生を描いています。戦後のアメリカでムーブメントを巻き起こしたブルータリズム建築がベースにあり、その建築家の総称としてタイトルのブルータリストがあるようです。

かつてドイツでも新進気鋭の建築家と知られたラースロ無一文の労働者から、ある富豪の部屋をデザインしたことを契機に彼の代表作であるマーガレット・ヴァン・ビューレンコミュニティセンター建設までの苦悩と悲劇を描いた壮大な作品です。

休憩をはさみ、4時間に及ぶ作品ですが、その長さを感じさせない壮大で残酷な反省が描かれて飽きるさせない作品で、施主や建設家などとの衝突や予想だにしない事故、妻との不協和音に麻薬依存など人間の強さと弱さを叩きつけるように描ききり臨場感が半端ないです。

バウハウスの思想を背景に設計されたコミュニティセンターは、一目で現在の建築家に多大な影響を与えてる象徴と感じるでしょう。無機質なコンクリート建築に降り注ぐ自然光。配布されたパンフレットからも現実であるような錯覚を与えています。まさに映画が作り出す新たなる創造が、そこにありました。

配布されたパンフレット

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映画 セプテンバー5:緊迫感あふれる中継劇

2025年03月01日 | 【映画・ドラマ・演劇】

平和の祭典のオリンピックで起こったパレスチナ武装組織によるテロ事件。当時中学生だった僕にとっても衝撃的な事件として記憶に残ってます。今回の映画は、そのテロ事件を中継したアメリカのスポーツクルーによる中継で事件を追った9月5日が描かれています。

緊張感あふれる中継は、報道の経験のないスポーツ担当クルーにより行われ、オリンピックの最中にイスラエル選手団とコーチが人質となりスポーツかテロかの中継選択が迫る中でテロの中継を決断、世界中に映像が流れる衝撃的なものでしたが、その中継を95分間に凝縮してリアルに再現され、局内から流れる生の映像と演じるスタッフたちの臨場感と見事としか言いようがありません。

錯綜する情報に二転三転するスタッフの歓喜と失望、そして使命感に支えられた情熱も感じられる作品でした。

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映画 侍タイムスリッパー:シンプルな笑い話が心地よい

2025年02月27日 | 【映画・ドラマ・演劇】

映画館で映画を観る人が減ってきている昨今。洋画全盛から日本映画中心の時代となったとは言え、ほとんどの作品が若者向け恋愛映画にアニメが人気です。そんな時代に牙を向いているのが、時折上映される時代劇ですが、過去のチャンバラ活劇と違ってシリアスなドラマ仕立てが多いように思います。

そんな時代に逆行するがごとく生まれた本作。自主映画ながら、東映京都撮影所の粋な計らいで実現した作品です。

物語は、長州藩士を打とうとした会津藩主の侍が刃を交えた瞬間、落雷に合い京都太秦撮影所にタイムスリップ。斬られ役として生計を立てようと悪戦苦闘するもの。大役を得るまでに成長した彼に思わぬ展開が待ち受けます。

キャストも時代劇にふさわしい面々で、主人公の会津藩士にはテレビでもおなじみの脇役、山口馬木也に個性的な俳優陣が顔を揃え、さらに斬られ役のベテラン、峰蘭太郎が出演、殺陣に一段とリアリティが増してます。内容はとてもシンプルな人情笑いで、笑いとちょっぴり涙を誘うシーンもあって飽きさせない演出でした。

3月21日にはアマゾンプライムで見放題配信されますが、待ちきれない方は、ぜひ劇場で時代劇の臨場感を味わってみてください。

いや、いいもの見せてくれました。

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映画 Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり:心打つ衝撃のラスト

2025年02月19日 | 【映画・ドラマ・演劇】

たまたまNHKの映画紹介で知った本作。台湾の金場奨や海外の映画祭でも数々の賞を取り、マレーシア、台湾で100万人の動員の大ヒットなり、今回オスカーの国際長編映画マレーシア代表作品(残念ながらノミネートされず)に選ばれています。

現代は富都兄弟。マレーシアのスラム街で暮らす不法移民の兄と身分証明書のない弟。兄は警察から逃れながら真面目に働く聾者で弟は裏社会と繋がり、その日暮らしの生活をする正反対の兄弟ですが、心の奥底で固い絆を感じます。そんな中で二人の絆を揺るがす事件が発生します。

事件のカギを握るのは弟の元に届けられた出生証明書。事件を境に兄弟の過去が少しずつ明らかになり、事件の真相も二転三転していきます。そしてラストに控える衝撃。貧しくも明るく過ごす兄弟の絆を象徴するゆで卵に兄弟の性格がもたらす紆余曲折する人生、ヒューマンドラマとサスペンスと国内事情も相まって、興味をそそる作り方となっています。

機会があればぜひ鑑賞してみてください。衝撃のラストに心打たれることと思います。

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映画 バグダッド・カフェ 4Kレストア:蘇る希望の架け橋

2025年02月14日 | 【映画・ドラマ・演劇】

※写真よりも美しい映像で蘇ってます。

今回の映画レビューは、公開から35年。4Kでスクリーンで蘇ったロードムービーの傑作「バグダッド・カフェ」です。

ミニシアターの火付け役として知られ、リバイバル上映やDVDでの鑑賞でファンの多い名作バグダッド・カフェ。僕もずいぶん前にDVDで鑑賞してたのですが、すっかり記憶の片隅に追いやられてました。そんな矢先のタイミングで鑑賞できたのが4Kでレストアされ未公開部分も含めた本作です。

舞台はアメリカ西部の砂漠地帯に佇む寂れたカフェに場違いのドイツ人旅行者が訪れます。彼女の名はヤスミン(ジャスミン)夫婦喧嘩の末に置き去りにされた彼女の登場でカフェは活気付いていきます。

常に家族の行動や態度に不機嫌な女主人ブレンダ。やる気のない従業員、ボーイハントで遊びほうけている娘に幼い子を抱えながらピアノに夢中な息子、トレラーハウスに住む正体不明の老画家、カフェの私有地に住み着いたバックパッカーに、無口なタトゥーイストなど個性的な面々ときれい好きで朗らかなヤスミンとのふれあいがユーモラスに展開され、ほのぼのとする作品です。

また、原色が巧みに使われた映像美に数多くのアーチストがカバーする「コーリング・ユー」の名曲が流れ乾燥無味な舞台に独特な色味にメロディーを奏でています。

昨年3月に亡くなったパーシー・アドロン監督はより美しさを加えた本作を「あらゆる肌の色、バックグラウンド、信条の違いを理解し受け入れる温かさを描いた。この物語は、現代における癒しの源になるのだと感じたんだ」とメッセージを残しています。

どこか殺伐として未来の見えない世界にこの一石を投じるような希望の映画ではないかと僕は思うのです。

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映画 アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方:世界を呑み込むビジネスマン

2025年02月07日 | 【映画・ドラマ・演劇】

今回の映画レビューは、アメリカ大統領になったトランプのルーツ的映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」です。

再び大統領となったドナルド・トランプ。今トランプ大統領の一挙手一投足に注目が集まっています。巨大な権力を持つアメリカ大統領の中でも類まれな存在であることは誰もが認めるところでしょう。それは、これほどまでに予測不能な大統領はいなかったと思います。そして、今回の映画は大統領就任を予測するように作られ、公開された事実に、本人は当然ながら批判してますが、アメリカの懐の深さを感じます。

物語は、人種差別により政府から訴えられ不動産業を営む父の会社が倒産の危機にさらされる二十代のトランプからスタートします。父から受け継いだ仕事をまじめにこなすトランプに高級クラブの会員である悪名高い辣腕弁護士、ロイ・コーンが手を差し伸べます。酒も呑めないナイーブで金持ちお坊ちゃまが、ロイにより仕立て上げられ、やがてロイが手に負えないほどの怪物へと成長する過程を描いてます。

前半はロイを中心に描かれるのですが、当時のニューヨークを中心にした時代背景とロイとトランプの性的嗜好や元夫人イヴァナとの出会いと関係など、かなり詳細に描かれ、しかも反トランプ、親トランプ両方にも共感を得られそうな作りに仕上がっていて、なかなか面白い作品でした。

世界が戦々恐々となっている今、この映画はある意味でトランプと付き合う上でひょっとしたら良いヒントなるのではないかと思います

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映画 トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦:復活の香港カンフーアクション

2025年02月04日 | 【映画・ドラマ・演劇】

かつてカンフーアクションや香港ノワールで栄華を極めた香港アクション。ジャキー・チェンをはじめ国際的に活躍する時代がありました。今やアクション作品も減り、日本でも上映館が少なくなる中で今密かに注目を集めているのが本作です。しかも舞台が、かつて香港象徴の存在だった九龍城砦ですから、香港アクションファンなら見逃せない作品です。

物語は香港に密入国してきた若者チャン・ログワンが黒社会の掟に逆らったことで組織に追われ、九龍城砦に逃げ込みます。そこには訳ありの住人たちに城砦を仕切るボスと訳ありの住人達。彼らと絆を深め同世代の仲間もでき平穏な日々を過ごすなか、中国返還に絡む城砦取り壊しの利権抗争が勃発します。

サモハン・キンポーにルイス・クー、アーロン・クォックなどベテラン俳優陣と若手俳優陣が集結、ドラゴンマッハのソイ・チェン監督がメガホンを取り巨大な九龍城砦を9億円をかけ制作、また、るろうに剣心の谷垣健治がアクション監督に音楽をイップマンシリーズの川井憲次が担当となれば、香港だけでなく日本でもヒットさせるしかないでしょう。

香港アクションと香港ノワールが融合するアクションと香港ならではの暗黒史も加えた痛快かつ壮大な香港アクションを復活劇を作りあげていきましょう。

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映画 敵:平穏の日常を脅かす突然のなにか

2025年01月31日 | 【映画・ドラマ・演劇】

本作は、東京国際映画祭でグランプリを獲得し口コミで評判となった映画で1月17日から全国公開され、全編モノクロで映画として撮られています。

主人公は妻に先立たれたフランス文学者の元教授、渡辺儀助。代々続く日本家屋に住み毎日の食事を自らが調理して暮らす生活を淡々と描いていきます。そんな暮らしの中で登場する人々との関係が描かれ静かな日常の中突然現れる敵が描かれています。

先ずこの映画の特色として描かれるのが長塚演じる主人公の食卓シーン。日常の食卓は素朴でありながら手の込んだ調理で、元教え子が訪れると手の込んだフランス料理とワインが用意されます。その食事がモノクロながら食欲を注がれます。また、彼とかかわる女性たちの配役も亡き妻に黒沢あすか、元教え子の瀧内公美、行きつけのBARで出会う大学生に河合優美と三様の色気があり、老人の性を掻き立て、日常に狂おしさを与えていて飽きさせません。

映画の終盤で現れる敵には、日常の生活の中で関係する人々との接触がカギとなっているように感じました。また、原作と映画の設定は大きく異なっているように感じたのはモノクロの作中の中にある家電製品で、古い日本家屋と新旧の家電製品、そして敵を予告するパソコンなどです。しかしながら、むしろ近い過去の方がむしろ敵に対するリアリティを色濃くさせてのではないかと思っています。

男というものは、孤独を楽しむ人生を送っていても、どこか寂しさと欲への渇望があるものです。そこが男だなと思わせる作品でした。

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映画 室井慎次 敗れざる&室井慎次 生き続ける者:心に生き続ける名作シリーズ

2024年12月13日 | 【映画・ドラマ・演劇】


本日の映画レビューは、先日連続して鑑賞してきました。室井慎次シリーズの「敗れざる者」と「生き続ける者」前後半です。
 
踊るシリーズは、僕にとってはドラマから欠かすことないシリーズ。ドラマと劇場版を組み合わせたヒット作で確か初めての試みあったのでは思います。そして、織田裕二演じる青島刑事と共に事件の捜査にあたった室井検事の存在は主人公の青島と人気を二分する存在であったと思ってます。青島が陽の存在なら陰の存在は室井。彼の存在があればこそ、青島が光り輝く。太陽と月の存在です。
 
今回の室井シリーズの最後にして全てが月のように感じるものでした。警察改革に敗れ故郷秋田で暮らす室井は、被害者家族・加害者家族の子供と一緒に暮らすなか、家の近くで他殺死体が発見され、さらに猟奇殺人犯として服役中の日向真奈美の娘、杏が現れたことで平穏な暮らしが脅かされます。
 
事件解決の協力を依頼された室井は、村の人々との確執や面倒を見る子供や杏などの心の解決に奔走する姿に心が揺さぶられます。また、随所に組み込まれたかつての名場面と事件との関連性もつながり、徐々にワクワク感も出てきます。室井演じる柳葉敏郎は、室井の渋さにピッタリとはまり経験の豊かさにおいては誰もかないません。普段の姿とは逆にスクリーンの室井の姿の方が、僕にはとてもカッコよく思えます。
 
みなさんも、ご存知の通り室井は死に、彼と関わったすべての人々に生き続ける感動のラストと共に、青島の復活が宣言されました。生き続ける者としての青島にも注目です。
 
今なら、連続して鑑賞可能な時間帯の上映も数多くあると思います。ぜひ、劇場で楽しんでもらいたい娯楽感動ドラマです。
 
 

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映画 海の沈黙:倉本脚本の集大成

2024年11月25日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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久しぶりの映画レビューは、倉本聰が描く渾身の脚本の映画化「海の沈黙」です。

青春時代に影響されたドラマの脚本家、倉本聰さんのその集大成となる脚本が映画化されました。また、その脚本が芸術の世界を中心にしたミステリーとなればアートの仕事に携わる者としては観らずにえません。

主演は本木雅弘でかつての恋人役には小泉今日子。かつて天才と騒がれた本木演じる孤高の画家、津山竜次。恋人だった安奈は、竜次の芸大時代の恩師、田村と夫婦の関係に。田村の展覧会に並べられた作品の中に贋作があり、その贋作を描いた人物は誰か?そして北海道で入墨の女性の遺体が発見され、二つの事件の容疑者として竜次が浮かび上がる。

女性の遺体と贋作の真相が徐々に浮かびあがっていくミステリーとして、倉本聰らしい心象風景とての物語が展開されていきます。本木雅弘は、孤高の画家である津山竜次を演じ、画家本来が持つ芸術に対する狂気と執念を時に静かに、時に荒々しく演じており、時代と共に変化する絵画ビジネスと普遍的な絵画の本質を倉本聰の視点として語っています。また、若松節朗監督も、地味な作品ではあるけど、極寒の地と消息不明となった画家の描く作品と半生をうまく具現化しています。

なぜか、鑑賞者は高齢者が多く、僕のような中高年は少なかったのは、最近、話題となったドラマ「やすらぎの郷」の影響なのかと揶揄してしまいますが、北の国から世代の人に贈られた作品に思えてなりません。アート好きにも、ぜひ観てほしい作品です。

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映画 ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ:賛否両論の意欲作

2024年10月24日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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今回は、ジョーカーの続編「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」のレビューです。

賛否両論となった本作。ジョーカーの続編としてトッド・フィリップス監督と主演のホアキン・フェニックスが再タッグを組み、ジョーカーが出会う謎の女リー役でレディー・ガガが参加して服役した悪のヒーロージョーカー、アーサーと彼に恋い焦がれる謎の女性リーと恋愛模様を描いている内容です。

と、簡単に言うとDCコミックのカリスマ、ジョーカーファンにとってはふざけた作品で更にミュージカル手法で、こき下ろしたと批判の真っただ中にさらし、更には前作で世界を席巻し最高傑作と言わしめたコアな映画ファンの怒りも買ったことで批判の渦に晒されました。

当初期待を持っていち早く鑑賞するつもりが数々の否定派のレビューにより、心が折れかけたのは事実で今回のレビューとなりました。

僕の結論としては、前作には及ばないもののフィリップス監督の実験的ミュージカル手法は決して嫌いではありません。リーとの愛の妄想に浸る世界をホアキンはジョーカーとして演じているし、郷愁を誘うナンバーの詩を観ながらジョーカーとアーサーの真実の顔を浮かんできました。ガガが演じたリーをジョーカーのDCでの恋人ハーレークインと重ねるにはいささか軽率だと思うし、フィリップの描きたかったのは最愛の女性リーと出会ったことで強さの象徴としてのジョーカーを演じるアーサーの本当の自分を描きたかったのでは思います。

そしてラストでは運命的な結末を迎えます。前作と本作は明らかにジョーカーと言う稀代のダークヒーローの姿を借りたアーサーの物語であることは間違いないです。だからこそ、ホアキン・フェニックスが光っていると感じます。

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