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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

映画 朝が来る

2020年10月30日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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養子縁組をテーマにした河瀨直美監督、永作博美&井浦新共演の映画「朝が来る」を鑑賞

日本での女性監督ナンバー1の存在と言える河瀨直美と直木賞、本屋大賞受賞の辻村深月の原作による今回の映画、子供に恵まれず特別養子縁組により男の子を迎え入れた夫婦に井浦新と永作博美が、その子供を育てられず手放した14歳の少女を蒔田歩夢が、養子縁組サポートする団体の代表に浅田美代子と中堅、新人、ベテランの実力派俳優が多数出演し、カンヌではカンヌレーベルに選出され、先日アカデミー賞が長編外国映画の日本代表に選出された話題作です。

映画は、栗原清和と聡子が朝斗との出会いから生活、そして産みの親の片倉ひかりの朝斗誕生までの生活を過去と現在を取り混ぜながら進んでいきます。朝斗との親子関係を着実に築きあげていく清和と聡子、朝斗の手放したことで、幼き母に降りかかる様々な試練、理不尽な社会に絶望と怒りを感じながら物語は育ての親と産みの親の再会によりクライマックスへと進んでいきます。

河瀨直美監督のノンフィクションと錯覚するほどリアリティーの追及が、主役も脇役もそのリアリティーを魂で表現しているようで、それぞれの役割が強く印象付けられ、すごいドラマを観させてもらったと感じる作品でした。

主題歌のアサトヒカリの言葉とメロディーに浸りながら、朝斗がつないだ清和と聡子、ひかりに注ぐ一筋の希望の光を見つけてみてください。

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映画 スパイの妻

2020年10月28日 | 【映画・ドラマ・演劇】

スパイの妻<劇場版>

黒沢清監督、蒼井優と高橋一生が共演の映画「スパイの妻」を鑑賞してきました。

ただいま、映画館で鬼滅の刃の熱気でムンムンですが、そんな中で静かに人気をあげている作品が今回のスパイの女。黒沢清監督が8K撮影に挑みNHKのBS8Kで6月にテレビ放送され、その後第77回のヴェネチア映画祭で銀獅子賞を受賞し、現在劇場公開されています。

1940年太平洋戦争前夜の神戸。商社の社長の高橋一生演じる福原優作は仕事で満州に赴いていたが、帰国後に彼が連れてきた女が殺害されたことを幼なじみで憲兵の東出演じる津森から知らされる。嫉妬と犯人の疑念を持つ妻の蒼井優演じる聡子。実はそこには、日本軍が秘密裡に行っていた細菌兵器の人体実験は絡んでいた。優作は入手した機密文書と現地で撮影されたフィルムをもってアメリカに向け告発しようと計画していた。

今回の作品は、僕も過去に読んだ森村誠一の731部隊の歴史的な背景がベースにあるようです。戦争で今なお禁止されている細菌兵器。その悪魔の所業に手を染めようとした日本軍の事実が衝撃でした。現在でもそのことはタブー視され一部の告発証言はあっても、関係者は口を閉ざしています。そうした部分にあえて挑んだ意義は大きいです。エンドロールでは、優作と聡子が実在の人物のように紹介されていますが、おそらくは構成上のフィクションだと思います。しかしながら、もし優作と聡子のような夫婦がいたなら、その後の日本の悲惨な状況も回避できたかもしれません。

戦争に突入し、敵国外国人との取引の商社の社長として憲兵に監視されるなかで自由と平等を謳歌する優作、妻として一途に優作を愛する聡子、聡子に慕い自らの立場で彼女を守ろうとする津森。三者の異なる思いが交錯する恋模様も作品の中にうまくいかされていて、それぞれの異なる信念が戦争に翻弄される人々の象徴となって強く印象つけられました。

この作品は、戦争へのアンティテーゼや夫婦愛、自由な社会と統制された社会など様々な側面で楽しむことができる映画です。大人が楽しめるスパイの妻を鑑賞してみませんか。

スパイの妻<劇場版>

スパイの妻<劇場版>


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映画 シカゴ7裁判

2020年10月23日 | 【映画・ドラマ・演劇】

ベトナム戦争の反対デモに端を発し不当な法廷劇を描いた事実に基づく映画「シカゴ7裁判」を鑑賞

今回の作品は、主演のエディ・レッドメインやサシャ・バロン・コーエンなどアカデミー俳優が集結し監督はマネーボール、ソーシャルネットワークのアーロン・ソーキンでアカデミー賞最有力作品として注目され現在日本でも公開中です。僕は16日から送信されたNetflixで視聴しました。

舞台は1968年の民主党全国大会。ベトナム戦争反対抗議デモに集結した市民や活動家が、あることがきっかけに暴発、警察と激しく衝突しデモを扇動した罪で7人の活動家が逮捕され裁判となった状況を克明に描いた法廷劇です。

先ずは、思想信条の異なるシカゴ7と言われるデモ首謀者の個性的な面々が裁判に臨む姿勢が面白い。エディ演じるトム・ヘイデンは冷静沈着に事を進める頭脳派、一方サシャ・バロン・コーエン演じるアビー・ホフマンは宗教的指導者の雰囲気を持つ情熱派、さらに過激な黒人組織として有名なブラックパンサー党のヤーヤ・アドヴル・マテ演じるボビー・シールは暴動での殺人容疑もあり、さらに弁護士がついていない状況、その相棒もそれぞれの信念を持ち、有罪を前提に裁判を操る判事に激しく抵抗する。さらに、検察側は、捜査官を潜入させ証言台に立たせることで、裁判を有利に働かせている。

この時代、ベトナム戦争で多くの若者が亡くなり、若者のエナルギーが暴発し常に権力と対峙していた。そんなエネルギーが当時のフィルムを組み合わせながら、うまく表現されていてスクリーンに熱を帯びているようです。ラストでは、そんな情熱が仇となる新しい事実が明らかになるのですが、そこを逆手にとるような奇策で信念を通そうとする姿に感動で締めくくられます。

今なお続くアメリカでの暴力がもたらし悲劇。その悲劇から生まれるデモ行為。そんなアメリカの民主主義の原点がここにあります。


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映画 The Witch/魔女 Netflix

2020年10月21日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は2018年韓国公開作品でNetflixからの視聴「The Witch/魔女」です。

今回の作品は、韓国ドラマ「梨泰院クラス」主人公を助ける頭脳明晰な少女役で人気を博したキム・ダミが主演した出世作で韓国ノワールの旗手として知られるパク・フンジョン監督によるバイオレンスサイキックアクションです。

ある特殊施設から8歳の時に逃げ出したジャユン。記憶を失くした彼女は酪農家の夫婦に助けられ10年の歳月が流れます。ある日友人の誘いで出たテレビオーディションの出演を境に何者かにつけ狙われることに。謎の集団が家に忍び込んできたことでジャユンの記憶が蘇り彼女に異変が起こります。

壮絶なバイオレンスアクションに、覚醒したジャユンの最強アサシン少女とのギャップと共に明らかになる新たな推理。彼女の中にあるものが一気に噴出すると共にラストへと突き進むスリリングでスピーディーな展開と想定された続編のラストと、最後まで飽きさせません。

悪役に嘆きのピエタのチョ・ミンスや韓国時代劇での名優パク・ヒスンのベテラン陣に、パラサイト半地下の家族のチェ・ウシクなど若手陣がキム・ダミと対峙、一人で戦うキム・ダミのアクションも見もの、韓国のバイオレンスアクションの底力をまじまじと感じる観る人に大満足を与える作品です。


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映画 #生きている Netflix

2020年10月20日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、Netflixから新感染ファイナルエクスプレスに続く話題の韓国ゾンビ作品「#生きている」です。

新感染ファイナルエクスプレスでは、新幹線の車内で、ゾンビから生き残るサバイバルでしたが、今回はマンション(僕には巨大団地のように思えるので以後は団地と表現します)でデジタル派の男子とアナログ派の女子がそれぞれの特技を生かしてゾンビ団地から脱出を図るという内容です。

新感染では、先ずゾンビのクオリティーの高さを感じてましたが、僕が観たゾンビ作品は、次第にゾンビ化していく内容が多いのですが、今回は初っ端なから巨大な団地の住人がゾンビ化していきます。様々なキャラクターの住人を登場させ、出動した警察や消防隊員もゾンビの餌食になりゾンビ化。その光景を一室の窓からのぞき込む主人公のユ・アイン演じるオ・ジュヌが、出かけている家族の無事を案じながら、「#生きている」のメッセージをSNSに発信、そこからデジタル機材を駆使しながら危機を乗り越えようとします。そこに、偶然反対の棟からシグナルを送るパク・シネ演じるキム・ユビンと遭遇、こちらは、登山を趣味とするアナログな女子でキャンプ道具を武器に、部屋に襲い来るゾンビから身を守っています。

互いを励ましながら、お互いの武器を駆使して生き残ろうとするサバイバル劇で進む展開がとても面白いです。そして、緊急時に必要なものが物語の中で指し示されていて新旧共存の生活の必要性を感じます。当初はゾンビVS男女の展開だけで進むので、どこか物足りなさを感じますが、ラストでは、新たな生存者と脱出劇へと突入していくことで一気にアクセントが加わったように思います。

個人的には、ドラマ性の上で新感染ファイナルエクスプレスを超えることはないですが、コロナ禍で韓国で6月に公開されとものの日本では上映に至らなかった点を踏まえてもこの映画でのタイムリーな展開に注目するのも楽しめる部分でもあります。


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映画 浅田家!

2020年10月13日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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中野量太監督が二宮和也主演で写真家の浅田政志の半生を描いた映画「浅田家!」を鑑賞しました。

僕自身、アートに携わる仕事をしていることで写真家の浅田政志の存在は知っていましたし、その作品も美術館で目にしたこともあります。また、僕がよく行く三重県立美術館のある津市の出身であることもあり、さらに「湯を沸かすほどの熱い愛」で号泣した中野監督が手掛けたことで、彼の写真家としてのルーツを知りたいと興味を持って鑑賞しました。

兄弟の写真を年賀状に写真好きで主夫業で看護士の母親をバックアップする父親の影響で写真に興味を持った少年時代、写真専門学校を卒業後にモチーフが見つからずプー太郎生活を送る中で、家族のコスプレ写真を撮り続け、出版社の目に留まり写真集を出版、その写真集が写真界の芥川賞と言われる木村伊兵衛写真賞を受賞、ちなみに直木賞といわれる土門拳賞と並ぶ写真家としての登竜門と言われています。その後に、家族写真を生業にしながら、写真家としての道を歩む、主人公と家族の愛の記録的作品です。

政志役の二宮に、父の平田満、母の風吹ジュン、兄の妻夫木聡、恋人役の黒木華と個性豊かな面々が、この一風変わった家族を熱演していますが、劇中の家族写真の再現を浅田政志自らが撮り写真集の浅田家!と瓜二つな作品に驚きました。

弟の無理難題を文句を言いながらも答えていく兄、自由奔放に生きる息子に対して大らかに受け入れる父と母。才能を信じ陰で支える幼なじみの恋人、そんな家族の自然な支えで才能を開花していく浅田の半生をユーモアたっぷりに描かれる新しい形の人情ドラマです。

僕の住む東海地方は、近年日本映画の聖地として話題となっていますが、今回も浅田家のヒットで津の撮影地が聖地となっています。映画を観た後は、ロケ地の津を訪れてみてはどうでしょう。意外とこの町に惹かれるのではと思います。


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映画 82年生まれ、キム・ジヨン

2020年10月12日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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チョン・ユミとコン・ユ共演で韓国で130万部のベストセラー小説の映画化作品「82年生まれ、キム・ジヨン」を鑑賞

今回の作品は、小説と共に女性に共感を得た作品として韓国でのヒットから日本でも公開直後に絶賛されている映画です。僕の周りの人たちも奥様が観たい作品として注目されています。

物語は、コン・ユ演じる夫のデヒョンが妻ジヨンに度々起こる他人の人格が現れる異変を精神科医に相談する場面から始まります。その相談内容が幼子を抱えたジヨンの子育て生活から彼女の過去と現在を繰り返しながら進んでいきます。ヒューマンドラマの主人公を演じることが多いコン・ユの暖かな眼差し、常に一点を見つめ、心の内を出すことにためらうジヨン演じるチョン・ユミの深い眼差し。二人の眼の先を追うように、二人の一挙手一投足から目が離せません。また、ジヨンに影響を与えた女性たちの彼女への慈愛も、ドラマの大切な視点のように感じます。

子育て中の妻が抱える様々な問題が徐々に明らかになり、それが要因となって現れる人格、その人格が彼女の心の内の叫びとなり、夫やジヨンの母や家族の支えとなって立ち直っていく再生のドラマが詳細に描かれていることで共感を呼んでいることが家族を作り上げていくことが出来なかった僕の心にも突き刺さりました。

今回の映画は、国を越えて家族の在り方や夫婦の在り方を見つめ直せるいい機会を与えてくれる作品ではないかと思います。

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丸木位里の宇宙展 一宮市三岸節子記念美術館

2020年10月08日 | 【映画・ドラマ・演劇】

先日、原爆の図で有名な丸木位里の美術展が三岸節子記念美術館で開催されて鑑賞してきました。
 
僕の画家、丸木位里の印象は、妻俊との共作「原爆の図」が真っ先に思い浮かびます。美術ファンにとっても丸木と言えば「原爆の図」が強烈なインパクトで印象付けられたのでは思います。
あの、広島の原爆投下での惨状を描いた黒色の世界は、原爆の脅威を観る者の心に刻みました。
 
今回の展覧会は、原爆の図にとどまらず水墨画家として、また前衛芸術家としての丸木の全体像を紹介するものとなっています。その全体像の大きな要因となっているのが本展のテーマである墨は流すものーの言葉に秘められた丸木の多彩な墨表現です。
 
伝統的な水墨画表現の初期作品から次第な変化を遂げていく現代的な具象表現へと変化する丸木の水墨表現の追及が、どの作品にも力強く感じられ、その集大成として妻俊との原爆の図をはじめとする悲惨な戦争への怒りの表現となって繋がっているように感じます。
 
丸木位里の没後25年となる本年、その画業の全貌を紹介する過去最大の展覧会は10月11日まで。平和への祈りと叫びを感じる位里の世界をぜひ鑑賞してみてください。
 

DVD タクシー運転手 ~約束は海を越えて~

2020年10月01日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、ソン・ガンホ主演の2018年作品「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」です。

今回の作品は、光州事件を題材に外国人記者とタクシー運転手の事件の関係者の絆を描いた実話に基づいたものです。

ここで光州事件について、簡単におさらいしたいと思います。光州事件は、韓国軍事政権下の1980年の5月18日に光州で起こった民主化運動に端を発した民主蜂起で死者170人その内144人が民間人、負傷者380人にも及ぶ後に民主化運動のつながる大事件です。

物語は、ソン・ガンホ演じるシングルファーザーのタクシー運転手マンソプは、お金目当てでビジネスマンのドイツ人ピーターを光州まで乗せることに現地に近づくにつれ軍による道路封鎖など不穏な空気を感じつつ何とか辿り着くが、そこには、暴動化した町の姿があった。実はピーターは、この惨状を世界に伝えるために取材に来た記者だったのだ。

学生デモから始まった運動は、武器を持たない学生に容赦ない鎮圧を繰り返す軍部に対して住民も加わり抵抗を繰り返す。その状況を無関係のタクシー運転手とドイツ人記者の目を通して詳細に描いていきます。当初はユーモアを交え戒厳令下の中で懸命に生きる人々の姿を生き生きと描きますが、終盤では一人娘を心配しながらも、事実を伝えるために記者と共に行動するマンソプと彼らを守るために奔走するタクシー運転手たちの命がけの行動が心を打ちます。

1980年前後の大統領暗殺からの軍事クーデター、野党指導者の逮捕、軟禁。全斗煥政権における経済発展やソウルオリンピック誘致など長期政権での功罪、そして民主化への道と歴史的な背景を知るとますますこの作品の重要さがわかります。

そして、何より一人の記者と名もなきタクシー運転手が国をも変えた行動に心震える名作です。

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