
東京アート巡りパート2今回は、東京都美術館で開催中のハマスホイとデンマーク絵画です。あまり彼の存在が頭の中になかった僕ですが、今回の東京都美術館のレストランランチが良かったのとポスターの作品がとても印象に残ったので鑑賞することにしました。


1966年アトランタでの爆弾テロ事件を描いた実話に基づく作品でクリント・イーストウッド監督の「リチャード・ジュエル」を鑑賞
1996年オリンピックで賑わうアトランタ。あるコンサート会場で警備員として働いているリチャード・ジュエルは、ベンチの下に置かれたリュックを見つける。その中身は、釘の入ったパイプ爆弾だった。避難指示を出し奮闘するジュエルによって爆発はしたが、多くの人命を救うこととなり、ジュエルは英雄視される。しかし、FBIの捜査が開始されるとジュエルは容疑者となり、FBI捜査官のリークによりメディアの過熱報道により、ジュエルは英雄から容疑者として集中砲火を浴びることに。ジュエルは、知人の弁護士に助けを求め、FBIとメディア、国民を敵に回して闘いを開始する。
実在の人物リチャード・ジュエルを演じるのはポール・ウォルター・ハウザー。その個性的などちらかと言えばオタク的なキャラクターで注目を浴びている俳優、今回は実在の人物と瓜二つで、彼の性格や趣味、権力への従順さが災いして、容疑者に仕立て上げられていく様を見事に演じています。また、彼を助ける弁護士ワトソンを演じるのがサム・ロックウエル。元エリートが、やさぐれ感もとても良いです。そして、名脇役女優キャシー・ベイツがジュエルの母親役として彼を救うための大きなミッションを担ってます。
SNSによる拡散が良くも悪くも大きく影響する時代、そして権力者の正義が疑われる事象が多い世の中で、今回の実話をクリント・イーストウッド監督が取り上げたことはとても意義のあること。さらに、見た目重視の善悪が安易に判断される普遍的ともいえる世の中の常識の中で、ジュエルとワトソンの風貌はそんな世の中に反旗を翻して戦うところの面白いです。
90歳になる監督は、年齢を重ねるごとに世の中に叩きつけるものが、どんどん強くなってエネルギッシュになっています。アメリカのみならず、社会の深い闇に照らし出される小さな光が長く指しこみ救いの手となっていくような、そんな作品だと思っています。
アカデミー賞6部門にノミネート、タイカ・ワイティティ監督の戦争コメディー「ジョジョ・ラビット」を鑑賞
マイティー・ソー バトルロイヤルの監督として知られてるタイカ・ワイティティ監督ですが、僕の印象としては、2014年のシュールでコミカルな作風が面白かった「シェアハウス・ウイズ・ヴァンパイア」の印象が強く、今回の作品は、そんな監督に期待して鑑賞しました。
物語は、第二次世界大戦終盤のドイツ。空想上のアドルフのアドバイスのもとで青年集団「ヒトラーユーゲント」の兵士を目指してキャンプに参加、ウサギを殺せなかったことでジョジョラビットのあだ名をつけられ、からかいの対象となってしまいます。ある日、自宅の隠し扉から母親ロージーが匿っていたユダヤ人の少女エルサを発見するのですが、彼女に逆に脅されてしまいます。
ジョジョを演じるのは、映画初出演で初主演となったノーマン・グリフィン・デイビス。ジョジョの母親役にはスカーレット・ヨハンソン、ユダヤ人の少女にトーマシー・マッケンジー、空想の友達アドルフは監督自身が演じています。
前半はキャンプシーンで始まり戦争の悲惨さは微塵もなくナチスの実態を風刺的にコメディーとして演出、中盤からユダヤ狩りと反政府軍捜しで徐々に戦争の恐怖を演出しながら、ジョジョと言う少年の目線で戦争を描いています。この作品の面白さは、ジョジョとかかわる人々の会話のやり取り、アドルフのジョジョに浴びせるセリフに注目すると作品の深みがまします。また、今回の作品で目を引いたのはスカーレット・ヨハンソン、彼女の役柄が物語に大きくかかわって来るのですが作品の空気感に彼女がピタリとはまってました。
また作中に流れるビートルズやデビッドボウイの曲もすごく良かったです。今回は話題作あってかジョジョを中心に予告編で数々の劇中シーンが流れていました。そんなシーンを振り返るのもまた楽しい作品です。
渦巻く熱狂は、時にして巨大な悪魔を生む。戦争というものの本質をこの作品は平易な会話と笑いで語ってくれました。勇敢なウサギに拍手です。
マット・デイモンとクリスチャン・ベイルが共演した実話に基づくモータースポーツ作品「フォードvsフェラーリ」を鑑賞
1960年代当時絶対王者といわれたフェラーリに挑んだアメリカのフォードがル・マン24時間レースに挑んだエンジニアとドライバー。1959年のル・マンでアメリカ人ドライバーとして優勝したデイモン演じるシェルビー。彼はその後、心臓病を患い引退、スポーツカーを作る会社を作り、新しいドライバーのもとで再びル・マンに参戦することを夢見ていました。1966年シェルビーの会社がフォードのエンジンを積んだスポーツカーを作っていたことから、フォードのエンジニアとしてル・マンに参戦する機会を得ます。一方ベール演じるイギリス人のケン・マイルズは、除隊後に修理工場を営む傍ら、レースに参戦していましたが、あるレースで二人が出会い、フォードのドライバーとして1966年のル・マンに挑むこととなります。
今でもF1ドライバーをパイロット呼び、戦争の最前線飛行士として活躍していたヨーロッパの貴族たち。モータースポーツは貴族のスポーツとして親しまれ彼らにとっては、その聖域をアメリカにおかされることは彼らのプライドが許さない。さらに、大衆車で急成長したフォードとは、因縁の間柄で、今回の闘いはエリート対成り上がりの対決です。また、当時は4人に一人が命を落とす過酷なレースで、ドライバーにとっても命がけの戦いです。
前半は二人の出会いと対立やマイルズ家の家族愛が描かれ二人の熱い友情に涙者です。そんな、プライドとプライドをかけた人間模様とクラッシュ続出のレースが現況の車に当時の車体を組み替えた車でCGなしの迫力満点のリアルレースが展開されています。
モータースポーツはさほど詳しくない僕でも、男たちの命がけの闘いと国民性の出る人間模様や企業間の駆け引きなど、単なるカーアクションの世界を超えた魅力が満載です。そして何よりレースの臨場感を味わいたいなら是非劇場に足を運んでみてください。きっと満足いく結果が待っているでしょう。
2019年度カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞した、ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」を初日に鑑賞していきました。
韓国映画好きで、ポン・ジュノ監督は好きです。印象に残る作品は、殺人の追憶、母なる証明、グエムル漢江の怪物、スノーピアザーなど、多種多様な内容が魅力的です。中でも、重厚感のある韓国社会と家族の関係を描いた作品は重厚感があり、圧倒されることが多いです。
今回の作品は、殺人の追憶でもおなじみの名優ソン・ガンホが出演、韓国の格差社会の中で暮らす家族を背景にしたサスペンス作品ですが、ブラックコメディーからスリラーへと変化する流れがパラサイトのタイトルと相まって予想を超えるスリリングさも持った作品でした。
物語は、半地下に住む全員無職の家族が、友人に代わり上流階級の家庭に家庭教師として入り込んだことで、長女、父、母と上流階級の家庭に寄生していくというものです。すべてが虚飾化された家族が、長年にわたり家政婦として働いていた女性を母親の代わりにやめさせる企みと上流階級の家庭の息子が経験した現象を契機に、事態は思わぬ方向へと転換していきます。
教育格差が激しい韓国社会をベースにそれぞれの家族の肖像、地上と半地下と地下とを線で結び付く格差社会がもたらすものは何か、ユーモアの包まれた時間が突然変化する落差を十二分に楽しんでほしいです。
2018年、是枝監督の「万引家族」2019年、ポン・ジュノ監督の「半地下の家族」世界を驚嘆の渦に巻き込むアジアの両雄が描く家族の肖像。アジアの風が世界に吹き込んでいく予感を持ちました。
映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、2018年公開の韓国映画のサイコパスサスペンス作品「殺人者の記憶法」と後に公開されたもうひとつのストーリー「新しい記憶」です。
今回の作品2本は、現在アマゾンプライムビデオでも視聴でき、今回はこちらで鑑賞しました。
元々僕は、韓国映画のファンでもあり、とりわけサスペンス作品はよく観ます。中でも犯罪サスペンスは、日本映画のそれとは比ではなく韓国社会の中で起こる犯罪をベースにした作品は見ごたえがあります。今回の作品は、本国でも興収入を記録し、主人公を演じたソル・ギョングの演技を観るだけでも価値がある作品です。
物語は、元連続殺人鬼の獣医ビョンスがアルツハイマーを患ったことをきっかけに起こるある事故により、新たな連続殺人鬼と遭遇、娘に近づく殺人鬼と対峙する内容です。自分と同じ臭いを感じ取ったビョンスが、薄らいでいく過去と自らが犯した罪と葛藤しながら一人娘を守ろうと必死に戦う姿と起こっている事象が真実か否かが倒錯するストーリー展開が、観る者を推理の渦の中に巻き込まれていくスリリングな展開が魅力的です。
そして、始まる新しい記憶は、ラストの30分で結末が変わるもので、オムニバス的な展開ではなく正攻法で築かれ、物語の表面的な共通項がヒントとなり二股に分かれる道程となっています。日本の作品は、良質なサスペンスとして十分成立し、さらに見比べると楽しみが倍増する韓国映画史上最高の必見作品です。今までに感じたことのない感覚が味わえることは間違いありません。
新年最初の映画館での鑑賞に、シャーリーズ・セロン&セス・ローゲンのラブコメ「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」を選びました。
今回のラブコメは、監督はウォームボディーズやフィフティ・フィフティのジョナサン・レビンで、シャーリーズ演じる才色兼備の国務長官シャーロットとうだつの上がらない過激な三流ジャーナリストで幼馴染のセス演じるフレッドの恋物語をコミカルに描いてます。
アメリカが舞台で、女性大統領候補としてチャンスを掴もうとする国務長官と頭はいいのですが、正義感が強く暴走気味のジャーナリスト。好対照の二人が実は両想いであったというのが本作の肝です。また、無能な大統領や金銭欲だけの実業家など、今のアメリカをブラックユーモアに下ネタまで駆使して風刺と爆笑の渦に巻き込んでいく、テンポの良いラブコメです。
映画ファンの中には、ラブコメを否定的に観る人も多いですが、ラブコメって行き着く先が決まってるから面白くないとの意見もあるかと思います。しかし、僕にとってはラブコメは欠かせないジャンルで、カットやセリフで笑いを誘うコメディーの中に、ホンワカな恋模様が加わることで、心がとっても温まるのです。
今回の作品は、そんな要素がつまりに詰まったお腹がいっぱいにあるラブコメでした。
映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、新感染エクスプレスのマ・ドンソク主演のアクション作品「無双の鉄拳」です。
今回の作品は、かつての日本の昭和のアクション映画を彷彿とさせる韓国のアクション映画です。マ・ドンソクは、韓国を代表する俳優ですが、そのスタイルと風貌は、現在の日本ではあまりお目にかからない俳優かと思います。しいて言えば、日活の時代の勝新や宍戸錠って感じでしょうか。今回の作品は、マ・ドンソクのためにできたようなアクション映画。監督のキム・ミンホは5年の間ドンソクと話し合いながら作り上げているそうで、初監督作品となっています。
物語は、かつては闇社会で雄牛と恐れられた男ドンチョル、今は闇社会から抜け出してくれた妻とつつまじく生活をしていたが、あるビジネスのトラブルで妻が誘拐されてしまう。ドンチョルは、妻を救い出すために、仲間の力を借りながら、素手の鉄拳ひとつで立ち向かうという内容です。
内容はいたってシンプルですが、この作品の肝はドンソクのアクション。最初から最後まで武器を持たずおのれの肉体だけで立ち向かう潔さ。そこのところノワールアクションとは異なるところで表題の無双の鉄拳のタイトル通り、技なしの拳で戦っているところが、痛快さにつながっています。
新感染エクスプレスでも身重の妻をゾンビから素手で立ち向かうアクションでしたが、今回は、誘拐事件とあってアクションに重きがおかれています。ハリウッドでも、そのキャラクターが注目されていてポスト・ドウエイン・ジョンソンの呼び声も高いドンソクの今後の活躍にも注目です。
映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回はクリムトやエゴンシーレなどのウイーン世紀末美術にスポットをあてたドキュメンタリー。「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」です。
今回の作品は、昨年に東京都美術館で開催された「クリムト展 ウィーンと日本 1900」の特別タイアップ企画で、クリムトとエゴンシーレのみならず、当時のウイーンの芸術全般にスポットをあてた美術ドキュメンタリーで、この種のドキュメンタリーとしては、かなり異色な作品であり、とてもおもしろい作品でした。
エロスと退廃的な芸術作品を生み出したクリムトとシーレ。その作品からも彼らのテーマ性は明確ですが、今回の作品で二人の芸術家の人間像をかなり具体的な解き明かしています。その分析は当時の生活や風俗、さらに女性関係や性愛などの画家の性癖にまで切り込んでいます。
例えば、クリムトは多数の女性をモデルとして描き、上流階級の女性と肉体関係を持ちながら彼女らをパトロンとして制作の資金の糧とするなど、物心両面で彼の作品を支えてきた事実やシーレの作品の大半をなすスケッチのような作品は、エロスの追及する上で欠かすことのない芸術手法であり、そうした行為が誤解をまねき早世していった事実、さらにヨーロッパの芸術文化取り入れて発展していったウイーンにおいて、世紀末のい芸術家は、エロスをキーワードに新しい芸術運動を興していったことなどが、評論家や研究者の証言を通じて紹介されています。
ともすると作品と言うフィルターでしか芸術を観ていない側面がある絵画芸術の世界。今回の作品は芸術家の人生や当時の文化風習など詳細に調査分析することで、当時のウイーン世紀末芸術がどのような芸術であったかが理解でき魅力的なものに感じられました。
様々な芸術ドキュメンタリー作品を観てきましたが、今回に作品は上位に位置する作品で美術ファンには必見のドキュメンタリー作品です。