人生論:「生涯発展途上」を目指して

消化器内科医になった起業家・弁護士・会計士、岡本武士による人生論や新たな視点の提供、身の回りの出来事に対するコメント等。

詐病

2007-09-24 03:31:24 | 医学
患者さんが病院に来るとき、当然ながら「わたし腹膜炎を併発した腎盂腎炎なんです」などと病名を言ってくれません(万一言ってくれても、医者は自分で診断をしなければいけません)。そこで自覚症状などを聞き、疑われる疾患を考え、必要に応じて検査を行いながら確定診断を出します。

そこで内科学などの教科書では、「吐血」があったら「胃潰瘍」、「無月経」があったら「高プロラクチン血症」など疑われる疾患をリストアップしたものがあります。

そのリストの中に、不思議なものが幾つかあります。それは、疾患ではないもの。たとえば、上記の「無月経」だったら「妊娠」の可能性もあるわけです。そして、腹痛のリストを見ると、「詐病」とあります。

詐病とは病気詐欺・・・いわゆる仮病です。こんなことが教科書に書いてあるということは、それを使う人がある程度いるということ。目的は、学校を休みたいということから、病院に薬を出させて医療訴訟を起こそうという悪質なものまで様々でしょう。

肝硬変になってもお酒をやめてくれない患者さんなどはどこにでもいますし、患者が疾患の味方、医師や患者自身の敵となっている場合もあるということです。これは、警察の捜査隊の中に共犯者がいるようなもの、もしくはそれ以上に大変な仕事かもしれません。

しかし教科書の記述を見て、詐病を見抜けるようになりたいと強く思いました。病気なのに詐病と思ってしまったらそれこそ裁判沙汰になりますが、逆にそういった診断が出せるのは自信の表れでもあるし、精神面を含めた全人的医療への一歩目となると思います。

営業に行かずとも仕事を取れるのが一流のセールスマン。裁判に立たずとも紛争を解決するのが一流の弁護士。治療をしないで患者を治すのはこの2つより飛躍的に難しいと思いますが、それが超一流の医師なのかもしれません。

コメントを投稿