人生論:「生涯発展途上」を目指して

消化器内科医になった起業家・弁護士・会計士、岡本武士による人生論や新たな視点の提供、身の回りの出来事に対するコメント等。

2年後の自分への注意事項

2010-07-04 20:10:29 | 医学
デブで見た目だらしなくて、酒ばっかり飲んでそうで、言うこと聞かなそうで、いびきがうるさそう・・・。

こんなひどいことを人に直接言えるわけはありませんし、それはマナー違反どころか幼稚園児並みの幼稚な行為です。しかし医療従事者は、このように考えなければならないことが多いのです。救命救急部のように、迅速に診断を下して治療に移らなくてはならない場合は特にそうです。

上記の例であれば、肥満(+)、不潔感(+)という所見を基に「お酒は一日どれぐらい飲んでますか?」などと問診をし、「アルコール依存症かも、睡眠時無呼吸症候群かも、処方どおり薬を飲んでないかも」と推察したうえで診察や検査を進めます。

世界中で同じことがされていて、これは患者さんのためになることなので仕方がありません。しかし、このような先入観や偏見で物事を進めるのは医療だけなのではないでしょうか。もちろん、「服、切りますね」「チクッとしますよ」の一言で大バサミで服を切ったり太い針を人様に刺したりするのも救急現場でのみ許されることでしょう。

このような環境に長く置かれると、それが普通ではないことを理解していても、世間でもある程度の先入観や勝手な行為が許されると思ってしまいそうです。

高率のところから攻める医学に対して、商品開発、治験、コンサルティング業などでは先入観にとらわれずあらゆる可能性を考えなければなりません。警察官や裁判官が「あの人はワルそうだからきっと犯人だ」などと考えていたら最悪です。ある意味、先入観を武器としていいのは医療者の特権です。

だから、それを用いる場面をしっかり考える必要があると思います。

日常ではしっかりと先入観を捨て、人間そのものを多面的にみることが必要ですよね。病院外で「デブで見た目だらしなくて、酒ばっかり飲んでそうで、言うこと聞かなそうで、いびきがうるさそう・・・。」と考えるべきではないことは当然のこと、この表現で「男性かな」と考えることすら男女差別で、偏見かもしれません。

病院では可能性が高い、または重大な疾患から疑う医療を行いながらも、世間に一歩出れば広い視野であらゆる可能性を考えれるようになりたいと思います。2年後、5年後、10年後でも、このような線引きがしっかりできるままでいれれば、と思います。

宇宙医学

2009-07-17 07:17:18 | 医学
症例報告会であるはずの会議に参加すると、なぜか症例が発表されることなく宇宙医学のお話しを聞く流れになってしまいました。アメリカならではの流れですね。非常におもしろかったので、覚えている部分を共有したいと思います。

ヒトが宇宙に旅立つようになって半世紀以上の時間が経ちました。今までに宇宙に行った人間は最近200人を超えたそうですが、この人たちが宇宙で時間を過ごし、生きて帰ってきて、しかも帰球(←ききゅう。野球用語ではなく、地球に帰ること。造語ですが100年後は一般用語になっているかも?!)してから地球の環境に順応できることが重要です。これを可能とするのが、宇宙医学。

昔は、ヒトが宇宙に行ったらどうなるかわかりませんでした。窒息するのか?内破するのか?心臓が止まるのか?がんになるのか?うつ病になるのか?長寿になるのか?そして研究が進み、死なない形で人間を宇宙に送り出し、月と往復できるようになったのです。他にも、宇宙でケガしたらどうする?どうやって排尿する?頭がかゆくなったらどうする?と数多くの問題があります。

では、宇宙にいるときの医学的問題はどのようなものがあるのでしょう。まず、重力がないことから来る問題があります。骨が溶けます。筋力が減ります。貧血になります。そして頭に血が昇ります。宇宙では大量の放射線を浴びることにもなります。そのため、がんになりやすくなります(リンパ腫が多いそうです)。そしてやっぱり宇宙は孤独なので、うつになったりします。船酔いのような「宇宙酔い」というのもあるそうです。最後に、地球に戻ってきたときに重力が戻るため血が脚に流れ、脳や心臓への血流が減り、脳虚血で死んでしまったケースもあるそうです。静脈血栓もできやすくなるでしょう。

さて、次なる目標は火星です。現時点で往復に6年間かかりますが、技術的には実現可能であるそうです。では何がボトルネックとなっているかというと、ヒトの体。宇宙医学の発展なくして火星には行けないということです。具体的には、すさまじい強度の骨粗鬆症となり、体が耐えきれず死んでしまうそうです。

とすれば、初じめて火星に舞い降りるのは骨が丈夫な18歳かもしれませんね!

インターニスト

2009-07-09 20:23:39 | 医学
インターニストとは内科のスペシャリスト、日本でいう総合内科医のようなものです。ニューヨークで総合内科一筋で40年間の過ごしてきた先生の知識や思考、そして若手医師や患者との接し方を目の当たりにする貴重な機会を得ました。

医学は奥が深いとはいえ、40年もやっていたら知識が豊富なのは当たり前かもしれません。しかしこの先生の知識は医学に留まらず、どの患者とも一瞬のうちに打ち解けていました。指導するときも相手のレベルを把握し、そのレベルプラスαの質問を常に用意していました。そして何よりユーモアに溢れていて、彼の周りには笑いが絶えない。

何より関心したのは、pearls of wisdom(真珠のように小さく貴重な知識)を会話に混ぜる能力でした。「そうか!」「そうだったのか!」といったアハ体験を継続的に与えられる人など世界で何人いるかわかりません。これは私が目指している形の一つでもあります(6年前にこのブログを開設した理由でもあります)。存在だけで安心させれるのが一流の医師なら、周囲の人の生き方を一瞬で変えうる一言を言えるのは名医と呼ぶに相応しいと思います。

そしてこれは、患者に一番近いといわれるインターニストならではの特技なのかもしれません。誰よりも患者のことを理解し、誰にも相談できない相談事を毎日聞いてきたからこそできることなのでしょう。コンサルタントや弁護士はよく、状況を「総合的に勘案」して(based on the "totality of the circumstances")判断に至ったという表現を使いますが、このような表現は熟練した総合内科医にこそふさわしいのではないかと感じました。

この先生の指導の下に問診を行う場合、一般的な問診リストに従っただけでは相手にもしてくれません。「去年まで犬を飼っていた」と聞き出せただけでもよくやったと思えそうですが、「名前は?」「いつから?」「オス?メス?」「何匹?」「去年までとはどういうこと?死んだのか?そのときどう感じた?」「かまれたことはある?」「犬のトイレはどこ?」「ノミの問題は?」「何を食べさせてた?」「留守のときは誰が面倒みていた?」「もう一度犬を飼いたいと思う?」「写真持ってる?」と質問の嵐となります。特に医大生は時間があるので、どこまでも突っ込んで話を聞くべきとのことでした。

それは、どんな相手に対しても興味を持っているからできることでもあると思います。「誰からでも学ぶことはある」といわれても、「例外はあるだろう・・・」と思ってしまいがちですが、本当に「誰からでも学ぶことはある」のでしょう。それを見つけられないのは自分が未熟だから。そう思うと、次の問診にまた全身全霊で挑みたいという気持ちがわいてきます。

どちらかというと外科系に興味が向いている今日この頃ですが、このようなインターニストに出会えたことでもう少し考えてみようと思いました。

電子カルテと個人情報

2009-06-25 12:30:53 | 医学
「電子カルテ」というと個人情報の保護が心配になるのは自然です。仮に電子化された個人情報がどこでもアクセスできたとしたら、情報漏洩を食い止めるのは難しいでしょう。

しかし、個人情報の保護を徹底しようとするあまりに医療に支障が出てはいけないですよね。

例えば、医療従事者がカルテを持ち帰ってはいけないと考え、カルテの印刷ができないシステムになっている場合。紙ベースで扱った方が効率的の場合もありますが、これができない。

次に研究ですが、情報を匿名化すればデータを使いうる状況でも、データの打ち直しとなっている場合もあるのではないでしょうか。

また、問診や検査などでとる所見は、プライバシーを考慮するものの必要な情報はすべてとります。必要であれば自殺企図から性慣習まで。せっかく患者さんが恥ずかしい思いに耐えて伝えた情報なのに、これが電子カルテであるためにうまく活用されていなかったり、入力すらされない可能性もあります。問診中にパソコンをカタカタ打てない状況がほとんどであることもそうなのですが、穴埋めのような形式が用意されている場合に、どの項目にも当てはまらない情報は失われてしまいます。

電子カルテの利点を理解していても、使っているシステムを絶賛する医師は出会ったことがありません。便利そうで不便な点が多いというのが相場です。

電子カルテと個人情報との関係、もう少し検討する余地があるのではないでしょうか。

確定診断:早口

2009-04-05 14:09:56 | 医学
症例のご紹介
(注:医療系じゃない人にはつまらないと思います。無視してください。)
(注:診断した人(私)は医師ではありません。)
(注:診断された人(私)の承諾を得て掲載しています。)


(1)基本データ

30歳男性。
主訴(CC):早くしゃべりすぎる

症状(Symptoms):
①たまに噛んでしまう。
②緊張するとさらに早く、わかりにくい。
③文面にするとカッコ書きになるような注釈をつけながらしゃべってしまう。
④特に英語で早い。
⑤無視されることが嫌い
⑥くしゃみ
なお、早口を理由にフラれたことはない。(pertinent negative)

病歴(Hx):特になし。
早口歴:10年ぐらい。
アレルギー:スギの花粉
家族歴:家族で同じ症状の人はいない

・・・その他省略。


(2)プロブレムリスト

MASTER PROBLEM LIST
ACTIVE
#1 花粉症(2004) 09.4.5
#2 くしゃみ (due to #1) 09.4.5
#3 一人暮らし      09.4.5
(注:普通なら#2は不要です。練習のために入れているだけです。)

PROVISIONAL PROBLEM LIST
#A 早口 09.4.5
#B 無視されること恐怖症 09.4.5

PLAN
#A 早口
  Dx 1分間で噛んだ回数、相手の理解度検査
  Mx 舌をかまないように常時観察
  Rx 落ち着かせる
  Ex ゆっくりしゃべるよう指導

#B 無視されること恐怖症
  Dx 無視してみて誘発
  Mx 精神状態に注意。自殺するような人じゃないけど、スネるかも。
  Ex 「誰も悪気があって無視してるわけじゃないよ」と優しく伝える。
    その後「ってか甘えてんじゃねーよ」とビンタしながら言う。

#1 花粉症
  Ex いつもマスクしててくれよ。
#2 くしゃみ
  Mx くしゃみ回数をモニター。1日100回を超えたら抗アレルギー薬を検討


(3)経過記録(10分後)

S(自覚的所見):最近早口を改善しようと思っている。今日は花粉がつらい。

O(他覚的所見):特に変化なし。今日はくしゃみが多い。たしかに早口のときはあるかも。バイタルは引き続き安定している。
身体所見:肺野-CTAB 脈拍-整 舌を噛んだ形跡なし。その他省略

A(評価):
#1 花粉症:今日は暖かいし風もあるから仕方ないか
#A 早口:#Bによるものではなく、ただの癖か。検査により確定診断。
#B 無視されること恐怖症:自分で無視しても誘発できない・・・。

P(計画):
#1 花粉症:経過観察
#A 早口:Ex開始!
#B 無視されること恐怖症:他人による誘発検査を行う


(4)プロブレムリスト(上記をうけて修正)

MASTER PROBLEM LIST
ACTIVE
#1 花粉症(2004) 09.4.5
#2 くしゃみ (due to #1) 09.4.5
#3 一人暮らし      09.4.5
#4 早口 09.4.5(10分後)

PROVISIONAL PROBLEM LIST
#A 早口 09.4.5 → #4
#B 無視されること恐怖症 09.4.5

PLAN
#B 無視されること恐怖症
  Dx 他人に無視してもらって誘発
  Mx 精神状態に注意。自殺するような人じゃないけど、スネるかも。
  Ex 「誰も悪気があって無視してるわけじゃないよ」と優しく伝える。
    その後「ってか甘えてんじゃねーよ」とビンタしながら言う。

#1 花粉症
  Ex いつもマスクしててくれよ。
#2 くしゃみ
  Mx くしゃみ回数をモニター。1日100回を超えたら抗アレルギー薬を検討
#4 早口
  Rx 落ち着かせる
  Ex ゆっくりしゃべるよう指導

詐病

2007-09-24 03:31:24 | 医学
患者さんが病院に来るとき、当然ながら「わたし腹膜炎を併発した腎盂腎炎なんです」などと病名を言ってくれません(万一言ってくれても、医者は自分で診断をしなければいけません)。そこで自覚症状などを聞き、疑われる疾患を考え、必要に応じて検査を行いながら確定診断を出します。

そこで内科学などの教科書では、「吐血」があったら「胃潰瘍」、「無月経」があったら「高プロラクチン血症」など疑われる疾患をリストアップしたものがあります。

そのリストの中に、不思議なものが幾つかあります。それは、疾患ではないもの。たとえば、上記の「無月経」だったら「妊娠」の可能性もあるわけです。そして、腹痛のリストを見ると、「詐病」とあります。

詐病とは病気詐欺・・・いわゆる仮病です。こんなことが教科書に書いてあるということは、それを使う人がある程度いるということ。目的は、学校を休みたいということから、病院に薬を出させて医療訴訟を起こそうという悪質なものまで様々でしょう。

肝硬変になってもお酒をやめてくれない患者さんなどはどこにでもいますし、患者が疾患の味方、医師や患者自身の敵となっている場合もあるということです。これは、警察の捜査隊の中に共犯者がいるようなもの、もしくはそれ以上に大変な仕事かもしれません。

しかし教科書の記述を見て、詐病を見抜けるようになりたいと強く思いました。病気なのに詐病と思ってしまったらそれこそ裁判沙汰になりますが、逆にそういった診断が出せるのは自信の表れでもあるし、精神面を含めた全人的医療への一歩目となると思います。

営業に行かずとも仕事を取れるのが一流のセールスマン。裁判に立たずとも紛争を解決するのが一流の弁護士。治療をしないで患者を治すのはこの2つより飛躍的に難しいと思いますが、それが超一流の医師なのかもしれません。

医師不足

2007-07-31 13:13:03 | 医学
地方で医師不足で困っている、などと良く耳にします。普通の業界であれば、需要と供給が釣り合っていないのなら価格(p)が調整されるので、供給が足りないなら給料を上げます。経済学部の大学一年生でも知っていますし、子供でも直感的に知っていそうなことです。

しかし、医療業界ではそう単純なものではありません。

なぜなら、給料を払う方も必死だからです。サービス業では、やはり需要と供給が釣り合っていないのなら価格(p)が調整されるはずですが、病院が勝手に医療報酬を上げることはできません。

美容整形などはともかくとして、医療業界は資本主義の特徴があまりみられません。これには数多くの弊害があることは言うまでもありませんが、だからといって医療を高くしてしまうのも当然、大問題です。

語弊を恐れずにいうと、少しずつ医療機関や製薬会社の首を絞めながら時間を稼ぎ、打開策を考えようというのがこの国の現状なのかもしれません。アメリカのように4000万人の無保険者を作りたくはない・・・そういう強い思いがあるのも事実ですし、批難だけの対象にされるべき方針ではありませんが。

地方に医師が少ないのは、都心に集まっているからだけではないと思います。「医学部を出たら医者になる」というわけではないことも、その大きな理由だと思います。そしてその傾向が、過去より顕著になっているような気がします。

例えば、最近の医学部には女性が増えていますが、60歳まで臨床医を続ける女性は比較的少数でしょう(もちろん男女差別しろとは言っていません)。一生臨床に関わらない研究医も多くいますし、大学病院などにいるとそのほうが偉いというイメージがある場合があります。更に、医学部を卒業したら、証券会社の調査部やコンサルティングファームなどへの道も開けます。かといってこれらを阻止することはできないし、医学部を持つ大学を増やすのもかなり大変なことです。

そんな中、臨床医になるモチベーションを全く考えないのはおかしいと思います。私も医者ではないので、過去には「医者になろうとする人は医者になりたくてしょうがないし、一生やりたいんだろう」と思っていたこともあります。一般的に「医者になれるんだったら俺もなってるわぁ、なったんだったら命をかけてやれよ」という気持ちもあるでしょう。「人として、命を救えるんだったら救うべきだ」と単純に考える人もいるでしょう。医師ほど色んなステレオタイプで判断される職業はないかもしれませんが、医者も人です。アメとムチがしっかり通用する相手です。

臨床医が臨床医のうちは患者さんに「お医者様」といわれ、世間では煽てられるかもしれません。しかし、職場である病院では全員医者かその他医療従事者なので、医者だからといって偉いわけでもそう扱われるわけでもないでしょう。そのような人の「職場」が「世間」に変わったら・・・すなわち一般企業などに勤めるようになったら・・・それはずっと居心地が良い環境におかれることになります。そっちに流れてしまう人が増えてきているのも当然のことです。資本主義ではアメのやり放題・・・病院と一流企業が一人の医師を採用したいと考えた場合、企業の方に分があるとしか思えません。

毎日カップメン食べ、睡眠不足で、月給もあまり高くなく、家族にしかられっぱなしだったり、医療訴訟を恐れたりしながら生きている臨床医が多いと思います。よく、医者が自分を犠牲にしないと患者さんのためのサービスを向上できないといわれています。かなり過酷な労働環境が、(皮肉にも)厚生労働省(の旧労働省の部分)に見過ごされているわけです。これは一部しかたないのですが、だったら他で補うことが必要だと思いませんか。

医者の生活水準を向上すべきだと主張しているわけではありません。ただ、これから増えていく高齢者のためにも、少しでも多くの医師に臨床医として働いてもらうことが望ましいと考えるわけです。

唇が赤い理由

2006-07-25 13:08:25 | 医学
今回は、「へー」と思ったプチ生物学知識を紹介します。

唇が赤い理由についてです。

人間の肌は普通赤くはありません。湿疹があったり、お酒に酔ったり、運動をしたり、「おまえって蘭ちゃんが好きなんだろ」って言われたりすると赤くなりますが、唇の赤さには敵いませんね。

何で赤くなるかというと、人間の身体の中にある赤いものの影響です。そういうものってあまりないですよね。そう、鉄を含む血液の色です。

実は「唇」というと、鼻の下から顎にかけての範囲のことであり、赤いところだけではないのです。そして唇の赤い部分はケラチンが少ないため、皮下に流れる血が外から見えてしまうのです。

そういう意味では、「唇が赤い」というのは語弊があるかもしれませんね。

医学部への編入ってどんなん?

2006-07-20 02:28:27 | 医学
日本の医学部は通常6年制ですが、他の大学で学士(もしくはその途中まで)をやっていれば4年か5年で終わるプログラムに入ることができます。受験方法はかなり異質のものですが、入ってしまえば一般生とあまり変わりません。

差があるとすれば、それは受講しなかった1年 or 2年の授業のキャッチアップが必要ということです。といってもピックアップされた内容をするだけなので、それほどの量ではありません。問題なのは、いきなり基礎生物などの知識を前提として2年生の授業に入っていくので、最初はついていくのがやっとだということです。

それでも意識を高く持ち、集中して勉強すればなんとかなるものだと思います。周りのみんながやっていることだし、刺激しあって楽しく勉強に励むことができます。今のところ、勉強量は確かに他の部と比べ圧倒的に多く週2回テストがあるのが普通になっているものの、勉強地獄といえるほどではなく、しっかり飲みにいったり、バスケしたりする時間はあります。私の場合は、ほとんど仕事ですが・・・。

医学部に編入するという話をすると、何人かに一人は必ず「昔は目指してたんだよね」「いいなー、でも今更大学に戻れないな・・・」などと言われます。夢は諦めるべきではないと思うので、もしそんな人がこのブログを読んでいたら、是非チャレンジしてほしいと思います。私もきっと1年前はまったく同じセリフを吐いてたと思うので。

問題は入試と学費ですが、前者はコツコツやればそう大変なものではなく、面接は社会経験がある人ならある程度のテクが身についているはずなので大丈夫だと思います。学費(そして5年間無収入の可能性があること)は特に私立では確かなハードルですが、この際ローンでも何でもいいと思うのです。日本の7不思議として「医師の給料が低い」ということがありますが、それでもやりたいことなら是非飛び込んでほしいと思います。

アメリカで新米医師として頑張っている友達に、医学部に行くことの機会費用について話したことがあります。周りの友人は都心に家を建てたり、サラリーマンなのに何年間も連続で確定申告したり(注:年収2,000万円以上で該当します)しているわけです。しかしその友達は、瞬きせずこういった。

"...but you will save lives."

ひとつでも無限の価値がある命を日常的に救うことができる。こんな幸せが他にあるのか。ロマネコンティやベントレーやオランダヒルズの一室など、お話にならないということである。

ついでに、私の家系には医師が一人もいませんが、私がなることによって家族や今後生まれてくる子孫のすべてが「家系に医師がいる」ことになります。これは一見以上に重要だと思っていて、例えば子供が「将来医者になりたい!」と思った場合、家系に一人いて、それがどういうものかを理解していてアドバイスができることは大きな価値があるものだと思います。医師になれと強要するのではなく、ひとつでも多くの選択肢を提供してあげたいと思うわけです。そのほか友達が困っていたら、日常的にも気軽にアドバイスをすることで生活の改善のお手伝いができるわけです。

最後に、編入すると同学年のうち年下がほとんどになります。年齢が違う人に抵抗があるのは上にも下にも言えることなので、どちらかが歩み寄ればすぐ仲良くなれると思います。ビジネスの世界で、特に起業などしてしまった場合は年下と接する機会はあまりないのですが、携帯電話を中学生のときから使っているなど異なる環境で育ってきた人たちの常識にもまた新しい発見が多くあります。そして若さも取り戻せます。もしハゲてたら、きっとハゲが治ってしまうぐらいに。(医学部生らしからぬコメントですいません)

ということで、一度大学を卒業して仕事をしている人にでも医学への道は開かれています。ご興味のある方は、是非ご連絡頂くか、ネットなどで調べてみてください。この一生の選択、きっと一生の選択だったと思えると思います。

耳寄り医学(?)情報

2006-07-03 14:11:09 | 医学
医学部は色んな意味で他の学部とは違う経験だと思うのですが、そのひとつとしては卒業後に学生が何するかが大体決まっていることです。そこで、教授方も「君たちが医者になったら・・・」という話をしてくださったり、患者さんに教えてあげたいちょっとした生活面での耳寄り情報を教えてくださったりします。

そこで、皆様にも「へぇ~」と唸って頂こうかと思います。

① 長寿の最大の秘訣は、「腹八分目」である。
② コラーゲンは身体に吸収されにくく、サプリメントで摂取してもあまり意味がない。
③ 肌の角期は、8歳ぐらいである。
④ 酸素はもともと身体に毒であり、今でも毒となりうる(活性酸素)。
⑤ 男は鉄分不足ぐらいで丁度いい。
⑥ ヒトの身体では、細胞分裂しない・できない細胞がほとんどである(90%ぐらい?)。
⑦ 剣道家の方が柔道家より平均寿命が長い(らしい)。
⑧ オゾンがなくなって困るのは、熱くなるからだけではない。短い紫外線にあたることによって遺伝子の突然変異の頻度が何十倍にも膨れ上がってしまうのだ。そして冗談抜きで、地球には生物がいなくなるらしい。ゴミはゴミ箱へ。

他に思い出したり、新しい話を聞いたらまた掲載します。皆様も良い健康情報があったら是非コメントとしてポスティングしてみてくださいね。

新カテゴリー追加

2006-06-01 16:29:38 | 医学
翻訳会社の社長ブログらしからぬ内容をお構いなしに掲載している「人生論」ブログですが、ついに10個目のカテゴリーが登場することになりました。

その名も、「医学」。

医学を語らずして人生論を語れる方がおかしいぐらいなので、このブログの網羅性に貢献するものと考えています。

最近感動した医学関連の内容は数知れませんが、その中に「代謝」の総論的な内容がありました。過去には糖を食べてエネルギーを作る、カルシウムを食べて骨を作る、タンパク質を食べて筋肉を作る、鉄を食べて血を作る、脂肪を食べて太りまくる、などとなんとなく1:1の因果関係をイメージを持っていましたし、そのように理解している方も多いと思います。

でも、生物ってもっとすごいんです。

タンパク質を採りすぎても糖を採りすぎても太ることからも、糖・タンパク・脂質といった3大栄養素が相互に関連性を持っていることがわかると思います。しかしこれだけでなく、すべての臓器が関わり合い、協力体制を築いているといっても過言ではありません。また、身体はありえないほど精密にできた化学工場で、濃度勾配とエネルギー(&酵素、補酵素など)だけで60兆の細胞を生かし、消化したり輸送したり解毒したりと大変です。バナナ1本というわけわからない物質で60兆個の小さな命と、それらが合わさってなぜか1つの生命単位と考えうる「ヒト」を何千秒も保つことができる。そして更にその仕組みを自ら作り、自分の要らない部分は分解して捨てていくわけです。

この永続性、この恒常性、この効率性。それはまるで地球そのもの。

「1モルに6.02×10の23乗」と丸暗記していた10数年前、なぜこの1を0で割るにほぼ等しい無限性に気づけなかったのだろう。昔から知っているのに気づいてない実世界における巨大な可能性に、我々は気づいていけるのだろうか。