人生論:「生涯発展途上」を目指して

消化器内科医になった起業家・弁護士・会計士、岡本武士による人生論や新たな視点の提供、身の回りの出来事に対するコメント等。

ビジネスの不作為犯

2004-05-19 02:13:06 | Afia
刑法上の不作為犯とは、簡単に言うとしなくてはならないことをしないことが犯罪になるというケースです。たとえば、溺れている子供を助けない親や、人の家に入って「出て行け」といわれたのに強引に居座っている人などがこれに該当します。

不作為犯というものは、何もしてないを罰する刑法の特例と言えます。これが、たとえば「今日ピアノの練習しなかった」ということだけで刑務所行きになってしまっては敵いません。そこで、刑法ではかなり厳しい条件を設定しているので、たとえば溺れている子を助けない親は不作為犯ですが、親が泳げなかったり、それが隣の子だと思っていたり(これを事実の錯誤といいます・・・どうでもいいのですが)、実際隣の子であった場合などは、殺人にはならないとされています。

結局ビジネス上、かなりひどいことをしないと不作為犯にはならないのですが、不作為によって交渉相手や顧客に損害を与えるケースが多いように思えます。

つまり、こうなるのです:
「あー、あれをお客さんのために確認して伝えておかないと。面倒だ・・・。でも、ばれないよな、やんなくても。別に契約には書かれてないし、何か言われたらあのすばらしい言い訳があるじゃないか!やっぱ飲みに行こう。」

これは極端に無責任な人ですが似たケースは身の回りにあるのでは?

少し話しが変わりますが、刑法には偽証罪というものがあります。これは、宣誓したのに法廷で嘘をついたりすることです。日本の宣誓は多少違ってくるのですが、アメリカの宣誓は3つのことを誓います。(神に誓うので、この意味では米国憲法に反しているのですが・・・まあ、これは置いといて。)その3要素とは:

To tell the truth. (真実を語る)
the whole truth. (真実のすべてを語る)
and nothing but the truth. (真実だけを語る)

である。ビジネスでよくある、相手に失敗などを伝えないというケースは、「真実のすべてを語る」ということをしていない。もちろん宣誓しているわけではなく、罪ではない。プライドとブランドを守るためには仕方ないと思うのであろう。これでいいのでしょうか。

特にコンサルタントなどで、知らないものを知ったふりをしたりするのは、知らないということを言わないというのはひどいと思います。「コンサルタントは、どんな状況であっても「わからない」と言ってはいけない」という格言がありますが、私はこれを提唱した人に猛反対したいです。確かに私自身も、過去にこのように知ったふりをしたことがありますが、「ビジネス上の不作為犯」にならなくとも「わからない」といわなくて済むよう、仕事や学問に励みたいと思いますし、他のサービス業の方にも同じような意識を持ってほしいと心から願います。

(注:筆者は弁護士ではありません。このブログに記載されている内容は法的アドバイスではありません。法的アドバイスが必要な方は資格を持つ弁護士に相談してください。)

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