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2005.11.25環境

 ああなるほど、というか己の想像力の減退を思い知らされた記事。

中国東北部の河川汚染が深刻、露側も非常事態宣言へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051124-00000012-yom-int
化学工場爆発による松花江流域の水質汚染物質、流水過程で濃度低下
http://www.xinhua.jp/news/topics/10040249.html

 今月13日の事件

化学工場爆発で70人負傷 中国吉林省、数万人避難
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051114-00000005-kyodo-int

 認識はしていたのですが中国地方ニュースとして脳内処理していました。H5N1やらAPECやら胡耀邦再評価の方が面白かったせいもあります。
 実は筆者、一時期RoHSというかSONY SS-00259にかかずらわせられた事があり、環境関係も一応守備範囲に入れていたのでした。

ポイント:(新華社日本版)
1.ニトロベンゼン、ベンゼンによる汚染である。
2.MAX、環境基準の29.9倍濃度のニトロベンゼン、同じく2.6倍のベンゼンを観測(黒龍江省肇源観測点、11/20~22)


 まず汚染物質がどのようなものか、から。神奈川県環境科学センターのkis-netによると(http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp/kisnet/menu.asp

ニトロベンゼン:
毒性症状:皮下、静脈内、腹腔内投与などで毒性を示す。経口摂取、皮膚接触で中程度の毒性を示す。眼、皮膚の汚染物。メトロヘモグロビンの生成によるチアノーゼを起こす。皮膚を通して速やかに吸収。蒸気を吸入するとめまい、頭痛などを起こす。
急性毒性:マウス 経口 LD50  59mg/kg
       ラット 経口 LD50 780mg/kg

ベンゼン:
毒性症状:人に対するがん原性を有する恐れあり。静脈内投与、その他の経路での投与により中毒を起こす。吸入、経口、経皮摂取で中枢神経系や血液系に影響あり。ヒトに対する発がん性(骨髄性白血病)が認められる。動物試験で催奇性と催腫瘍性が認められる。麻酔作用あり。吸入による慢性毒性あり。Ames試験は陰性、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換は陰性。
急性毒性:マウス 経口 LD50 4700mg/kg
       マウス 経皮 LD50    48mg/kg.52W
       ラット 経口 LD50  930mg/kg

 とまあ、このような物質。

 では、ニトロベンゼン/ベンゼンに関する中国の環境基準はどのくらいか。
 まずはニトロベンゼン財団法人 国際環境技術移転研究センター(http://www.icett.or.jp/)によると

工場排水に対する汚水総合排出基準 (GB8978-88)1989年施行
http://www.icett.or.jp/controlj.nsf/6cbbbcaa73014180492569510009676d/aac8a715d055ef54492567ca001c668f

1~3級の基準に分かれていて、どれが適用されるかよくわからないのだが一番厳しい5mg/Lを使ってみるとして。

5mg/L×29.9=149.5mg/L
780mg/kg÷149.5mg/L=5.2L/kg

 体重1kgのラットに汚染水を5.2リットル飲ませたら半分死ぬという数値。問題外、ニトロベンゼンの毒性よりも先に破裂して全数が死ぬ。

 次にベンゼンなのだがネットを探っても、ベンゼンに関する中国の水質基準値が分からなかった、地表水環境基準特定項目物質というものには含まれているようなのだが(http://sjc.zhb.gov.cn/japan/env_info/3_3-06.htm)仕方がないので、日本の基準値(http://www.env.go.jp/chemi/communication/factsheet/data/1-299.html)を援用しよう、排水基準(水質汚濁防止法):0.1mg/L

0.1mg/L×2.6=0.26mg/L
930mg/kg÷0.26mg/L=3,577L/kg

 体重1kgのラットに汚染水を3,577リットル飲ませたら半分死ぬという数値。問題にならない、ベンゼンよりも破裂して確実に全部死ぬ。

 結論:ラットにとっては、騒ぐような環境汚染ではない

 とはいえ、恐らく松花江とアムール川ではさぞかし魚がプカプカ浮いている事でしょう、これまで100トンのベンゼン/ニトロベンゼンを川にぶちまけるような事故は発生した事がないので、是非貴重な実例として観察したところです。

 そりゃ、環境汚染に国境はない事は理解してますが、現にアムール川は間宮海峡に流れ込んでいるわけですし。今更中国で環境つってもねえ~と思うのが本心、鼻ほじりながら。
 あーそうだ、アスベストやらダイオキシンやらメチル水銀やらBSEやらで、マイナスイオンやら遠赤外線やら波動水やらと過剰かつ狂ったように騒ぎ出す日本のマスコミや反公害団体、ああ、今は環境団体っつーのか?は何故にこの件に関して静かなのでしょうか?もしかして、一部で言われているように「中国の環境汚染はきれいな環境汚染」という認識なのかな?今回は騒ぐもんでもないと思うが。

↓少なくともマスコミはこういう認識のようだ。

マスコミ名:汚染物質の表現
時事通信:有害物質、汚染物質
産経新聞:汚染物質
共同通信:汚染物質
読売新聞:化学薬品、化学物質、有害物質
東京新聞:化学物質、有害物質、汚染物質
朝日新聞:化学物質
サーチナ:汚染物質との表現なし

化学薬品→化学物質→汚染物質→有害物質

の順で汚くなるのねきっと。
番外:表現しない

 実をいうと新華社.jpが「汚染物質」と書いてしまっているので「ええ~化学物質じゃないの、汚染物質なんて書いちゃっていいの?」と文字通り右往左往している様が目に浮かぶような。
 特に東京新聞にその傾向が顕著で、同じ記事の中で上記の三つの表記が混在しています、書いてる途中で新華社電が入ってきたんでしょうな。
 朝日は化学物質でもう充分興奮してしまい、汚染物質まで誰も書けなかったのだろう。ちなみに右とか左とか筆者は知りません。
 読売が意外、右か左か腹ぁくくれや!サーチナがいっそ清々しい。
 くどいようですが、右とか左とか筆者に言われても困ります。

 それはそうとして、筆者がフォン・マンシュタインの次に尊敬している大御所、安井副学長のHP(http://www.yasuienv.net/)ではまだ取り上げていない。筆者と同じ結論だったらちょっと嬉しい。

12/02:一部激しい計算間違いがありましたので、修正しました。

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