【岸田首相】:「所得税減税」の本気度…過去の国会審議で自ら「効果に疑問」と発言していた
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【岸田首相】:「所得税減税」の本気度…過去の国会審議で自ら「効果に疑問」と発言していた
「経済、経済、経済」──。23日に衆参両院で所信表明演説を行った岸田文雄首相(66)。物価高の負担を緩和するための一時的な措置として、税収の増加分の一部を国民に還元すると強調。所得税減税を念頭に具体策の検討を進める意向を示した。
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衆院本会議で所信表明をおこなう岸田文雄首相(C)日刊ゲンダイ
今のところ、政府が11月上旬にもまとめる経済対策で、所得税を定額で4万円減税することや、住民税が課税されない低所得者世帯に7万円を給付する案が浮上していると報じられている。
SNS上では《たった4万円!それも実施されたとして来春以降!意味あるのか》《政策の効果がよく分からない。それも一時的な措置でしょ》《また検討するだけでヤル気ないのでは》といった疑問や懐疑的な声が飛び交っているが、それも当然だろう。
そもそも、所得税の減税について否定的な見方を示していたのは、岸田首相自身だったからだ。
2021年10月の参院本会議。立憲民主党の森裕子議員(当時)が岸田首相に対し、「総理、分配を重視するというなら、なぜ庶民減税を行わないんですか。立憲民主党は、消費税5%への時限的減税、所得税の減税を提案しています。分配のために減税をすべきではないですか。なぜ減税を行わないのですか。理由をお答えください」と迫ると、岸田首相はこう答弁していた。
「所得税の減税については、所得税を負担されていない低所得者の方には効果が及ばない等の課題があると考えております」
この時、ハッキリと「課題がある」として野党提案を一蹴したにもかかわらず、なぜ、今回は所得税減税に舵を切ったのか。訴えていた「課題」はどうなったのか。
■岸田首相は過去の国会質疑でも所得税減税について慎重姿勢
さらに言えば、岸田首相は過去の国会質疑を振り返っても所得税減税については慎重姿勢だった。
1990年代初めの細川内閣から羽田内閣にかけて編成、成立した税制改正で、所得税と個人住民税で約6兆円の減税を1年限りの措置として実行することが国会で審議された時だ。岸田首相は当時、この政府方針に対して国会で繰り返し、こう持論を述べていた。
「所得税減税にせよ、(略)その他の減税にせよ、これから実施されだとしても効果としてはやはり来年度以降ということになるかと思うわけでございます。そういった中でも、現在の状況は本当に厳しいものを感じておりまして、より即効性のある対策、何か考えられないものかなというふうに思っております」(93年11月の衆院大蔵委員会)
「この所得税減税につきまして、そもそも、この6兆円という規模の問題、また、一応現時点では1年限りということになっておるということ等から、その効果のほどを疑問視する声が朝からもたびたび出ておったわけであります。この点については、私は、規模それから1年限り、こういったあたりの効果が十分かという部分ももちろん疑問に感じるわけでありますが…」(94年3月の衆院大蔵委員会)
「所得税減税を実施しても効果は来年度以降だから即効性のある対策が必要」「時限付きで所得税減税をやって効果はあるのか」──。まさに今、野党や国民が疑問に感じている点ではないか。
30年前に岸田氏が疑問に感じていたことを踏まえれば、時限付きの所得税減税を行ったところで効果は望めない。その後に控えた5年で43兆円という防衛費の負担増を考えればなおさらだ。
岸田首相が国民生活を守るために「経済」を重視するのであれば、効果がある有効策として、やるべきことは消費税率引き下げや、自動車団体が求めている通り、ガソリン代への影響が大きいトリガー条項を発動することだろう。
《政策のピントがずれている。おそらく眼鏡メガネのピントも》
《やらないと言ったことをやる。やると言ったことをやらない。二転三転どころじゃない》
SNS上でも一向に批判がやまない岸田首相には、過去の自身の発言をよく思い出してほしい。
元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・政局・岸田政権】 2023年10月24日 15:35:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。