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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説②・05.02】:中国の渡航情報 反発前に自国の姿見よ

2025-05-03 07:07:30 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説②・05.02】:中国の渡航情報 反発前に自国の姿見よ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・05.02】:中国の渡航情報 反発前に自国の姿見よ

 中国への修学旅行の渡航是非を巡り、日本の外務省が海外安全ホームページに掲載した内容に、中国が猛反発した。ただ、内容は市民への襲撃事件続発を受けた一般的な注意喚起だ。冷静さを欠く中国の反応と言わざるを得ない。
 
 日本外務省は4月、中国各地で刃物による市民襲撃事件が発生しているとして、学校関係者らに対し「海外安全ホームページを参照して、渡航是非を判断」するよう呼びかけた。渡航の自粛などを求めるものではなく、安全確保や警備強化についての外務省の支援、修学旅行出発15日前までの旅行届の提出など、一般的な注意喚起が主な内容だった。
 
 これに対し、4月22日の中国外務省の定例記者会見で、郭嘉昆(かくかこん)報道局長は「明らかに政治的な意図を持っており、中国の『安全保障上のリスク』を悪意をもって誇張している」とし「強烈な不満と断固たる反対」を表明。さらに「日本は即座に誤った方法を改め、人の往来に前向きな雰囲気をつくり出すよう求める」と述べた。
 
 しかし、2024年9月に深圳(しんせん)で起きた日本人学校男児刺殺事件を受けて、日本の国会議員などからは危険情報のレベル引き上げを求める声が上がるほど、中国の治安が悪化しているのは事実だ。
 
 しかも、米国や韓国、オーストラリアなど環太平洋の先進国・地域で、中国本土への渡航や滞在の「危険情報」を「レベルゼロ」としているのは日本だけ。「中国国内で、不当な拘束の危険が存在する」と認定する国さえある。むしろ抑制的に対応する日本の姿勢を「悪意をもって」とまで述べて批判する態度は理解に苦しむ。
 
 最近の治安悪化のみならず、反スパイ法による恣意(しい)的な外国人拘束が相次いだことなどにより、国際社会は、もはや中国を「安全な国」とは見なしていない。怒りの矛先を日本に向ける前に、その現実に目を向け、率直に等身大の自国の姿を見つめるべきだろう。
 
 習近平国家主席は21年に党内会議で「愛される国を目指せ」と発言したという。ならば、一歩でも近づくため、治安回復に努め、司法の透明化を進めることが重要なのは自明の理だ。当然、大国らしい冷静な外交姿勢も求められる。まずは「安心して行ける国」と認められるよう、あらゆる努力をしてほしい。それなくして「愛される国」への道は開けない。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年05月02日  07:29:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・04.27】:週のはじめに考える 習さん、チャンスですよ

2025-04-27 07:35:55 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説①・04.27】:週のはじめに考える 習さん、チャンスですよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.27】:週のはじめに考える 習さん、チャンスですよ 

 トランプ米大統領を褒める、というのは結構な難題ですが、あえて一つ、考えてみました。世界中から反論が飛んできそうで躊躇(ちゅうちょ)しますが、例えば、「誠実」というのはどうでしょう。
 
 一般に政治家というものは、人々が「公約したことは実行してくれ」と望んでも反故(ほご)にしがち。でも、彼は違いました。むしろ、多くの人が「頼むから実行しないでくれ」と願っていたにもかかわらず、本当に「公約したこと」を実行している。どうですか。公約に対して「誠実」でしょ? 

 ◆トランプ氏が「誠実」?

 例の「関税」も選挙中から「やる」と宣言していました。対中国の目の飛び出るような高率ではないにしろ、日本や欧州の同盟国も標的になっています。
 各国が大混乱に陥りましたが、その慌てぶりに、大統領はご満悦だったようで、ロイター通信(サイト)の記事によると、今月8日の夕食会では、こう言ったそうです。「世界中の国々が電話をかけてきて私に媚(こ)びへつらっている」「『お願いです、お願いです、大統領。取引してください。何でもしますから』ってね」
 この「媚びへつらっている」の部分、実際の英語は、かなり品のない言葉でした。
 公約への「誠実さ」は「司法」も同様で、公言していた通り、1月の就任直後には、あの連邦議会襲撃事件で訴追された被告ら約1500人に恩赦を与えています。
 3月には、ベネズエラ犯罪組織のメンバーを「敵性外国人法」を根拠に強制送還。ワシントン連邦地裁が同法適用を問題視して差し止め命令を出したのに、送還は実行されたばかりか、トランプ氏は地裁判事を「弾劾すべきだ」などと激しく攻撃しました。
 議会襲撃犯の恩赦を「法の支配への挑戦」と評した欧州の政治調査機関の見識はもっともですが、欧米メディアによれば、トランプ氏は米テレビで「悪い判事がいる場合にどうするかを、ある時点で考えなければならない」と語ったそう。もとより、彼の頭の中には「法の支配」なんて概念はない、あるのは「自分の支配」だけだ、ということがよく分かります。
 「メディア」対応でも、一貫して自身を後押ししてくれる姿勢に対し、「誠実に」報いているのでしょう。保守系メディアや右派サイトを露骨に優遇しているといいます。逆に、自分に批判的なリベラル、伝統的メディアへの冷遇も鮮明だとか。怖いのは、大統領が批判的報道への威圧を強める中、「メディアの萎縮」が目立っている、とする専門家の指摘です。

 ◆米大統領は、「寛大」?

 もう一つ、大統領の褒め言葉を思いつきました。「寛大」です。なぜって、あれだけ敵視しながら気前よく中国を利することをやっていますから。すぐ、「見当違いだ。大統領は中国を弱体化させようと懸命なのに」と反論されそうです。確かに、世界秩序の主導権を狙う中国の野心にトランプ氏が業を煮やしているというのは、その通りだと思います。
 そもそも、少なからぬ国がこれまで、中国より米国をリーダーとして頼みにしてきたのは、二大国の「差異」が大だったからでしょう。米国と違って、中国には「法の支配」も「報道の自由」もないし、経済力や軍事力を笠(かさ)に着た横暴、他国への敬意を欠く振る舞いには目に余るものがあります。
 でも今、「トランプ氏の米国」をご覧あれ。「法の支配」は崩れかかり、「報道の自由」は脅かされています。おまけに、経済力や軍事力を笠に着て「関税」を武器に同盟国さえ恫喝(どうかつ)する横暴ぶり。剰(あまつさ)え、うろたえる国々をせせら笑うのですから、「他国への敬意」を感じとれという方が無理です。
 結局、トランプ氏は、他国がリーダーとして中国でなく米国を選んできた理由を一つずつ潰(つぶ)すことで、寛大にも、中国に支持を広げる好機を与えているわけです。

 ◆変わるなら「今でしょ」

 習近平国家主席には、ぜひ、この好機を「中国が変わる好機」ととらえてほしいものです。でないと、真の支持は広がりません。
 無論、即、「民主化」の大変革は無理でしょう。まずは、秘密のベールの中で外国人をスパイ罪で処罰するようなことはやめ、徐々に「法の支配」を実現していくことから始めては? 併せて、軍事力や経済力で他国を威圧する姿勢も改めれば、米国とのコントラストが効果的かも。とにかく、他国が中国に抱いている「恐怖心」の払拭に腐心することです。
 そうした変身ができるなら、中国経済の苦境打破にも好影響なのは間違いない。さて、自国の美点を潰してライバルを利するトランプさんの「寛大さ」に、中国はこたえられるのでしょうか。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月27日  07:35:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大谷昭宏のフラッシュアップ・04.07】:中国残留孤児の自立に奔走した「竹川お兄さん」お別れ会

2025-04-22 08:01:40 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【大谷昭宏のフラッシュアップ・04.07】:中国残留孤児の自立に奔走した「竹川お兄さん」お別れ会

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・04.07】:中国残留孤児の自立に奔走した「竹川お兄さん」お別れ会 

 先日のコラムに「春は別れの季節」と書いたが、3月半ば、大阪中国帰国者センターで長らくこのセンターの理事長をされ、昨年秋に91歳で亡くなった竹川英幸さんのお別れ会があった。

 中国残留孤児の肉親捜しに奔走された故・山本慈昭さんが孤児の父だとしたら、竹川さんは孤児たちのお兄さんといった存在だった。自身、旧満州の開拓団で12歳の時に孤児になり、30歳になってやっと日本の実父母に会えたという。私は記者時代に2度、そんな竹川さんと一緒に残留孤児に会いに中国を訪ねた。

 だが、年とともに人々の記憶は薄れ、日本に永住を希望しながら肉親にめぐり会えない孤児が多数となった。そんな孤児のために竹川さんは「多すぎて数えるのをやめた」というほど、身元保証人を引き受けていた。

 だけど国も自治体も、やっと帰国した孤児の自立に向けて腰を上げようとしない。そうした役所との交渉の場で怒りを爆発させた竹川さんは、まるで瞬間湯沸かし器。「国はこの子らを2度も捨てるのかっ」。だが、その目にはうっすらと涙が浮かんでいたという。

 お別れの会でのみなさんの言葉。その中に私が竹川さんに抱いていた疑問を氷解させてくれる話もあった。2000年初め、孤児が文書連絡費1万円を持ち寄って原告団を結成、国に1人3000万円の賠償を求めて集団提訴したが、その弁護団も私と同様、竹川さんは、あんなに国に怒っていたのに、この訴訟には「冷ややかだな」と感じたという。

 あるとき弁護団が説明にうかがうと、竹川さんは話を聞いたあと「孤児の中には1万円払えば3000万円入ってくる。もう働かなくていいと言ってる子がいる。まずその誤解を解いてください」。

 すべては孤児の自立のために-。外は冷たい早春の雨。だが、お別れ会はいつの間にか中国語、日本語が飛び交うにぎやかな懇親の場に。遺影の竹川さんは、そんなこの子らをにこやかに見守っているようだった。

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「ニュース ONE」などに出演中。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2025年04月07日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・04.14】:先島の住民避難 綿密な計画で離島の安全守れ

2025-04-14 05:00:55 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説①・04.14】:先島の住民避難 綿密な計画で離島の安全守れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.14】:先島の住民避難 綿密な計画で離島の安全守れ

 中国は台湾への軍事的な威圧を強めている。万一、有事となれば、先島諸島にまで被害が及ぶ危険性は高い。 

 官民が協力し、離島の人々を守るための綿密な避難体制を整えねばならない。

 政府が、台湾有事を念頭に、先島諸島の住民を九州などに避難させる計画を発表した。日本への武力攻撃が発生した「武力攻撃事態」や、その可能性が高い「武力攻撃予測事態」に適用される、国民保護法に基づいた計画だ。

 計画は、宮古島や石垣島、与那国島などの住民11万人と、観光客1万人の計12万人を、民間の航空機と船舶を活用して6日間で九州に運ぶ想定だ。避難した住民は、九州の全7県と山口県の計32市町のホテルや旅館が受け入れる。

 政府と各県は、航空・海運会社の協力を取り付けた。宿泊施設に対しては、避難住民の受け入れを要請している。

 有事の際、国民を保護することは国と自治体の責務だ。双方が協力し、初めて避難計画をまとめたことは評価したい。

 南西地域の安全保障環境が急速に悪化し、地元住民の危機意識が高まったことも、今回の計画策定につながったのだろう。

 ただ、解決すべき課題は、なお残っている。

 住民の避難は武力攻撃予測事態の段階で始めるというが、事態が悪化し、航空・海運会社の協力を得られない状況も生じうる。その場合、自衛隊と海上保安庁が避難に携わることになる。

 自衛隊は武力攻撃に対処しつつ、住民避難まで手が回るのか。様々な状況を想定して作戦計画を検討しておくことが重要だ。

 先島諸島には、要介護者や障害者ら「要配慮者」が8000人近くいるという。こうした人たちの移動手段や、付き添う医療従事者らの確保も重い課題だ。

 政府は来年度に、細部を詰めた最終的な避難計画をまとめる予定だ。計画を「絵に描いた餅」に終わらせないためには、住民への周知を徹底するとともに、できるだけ多くの人が参加する実動訓練を重ねていくことが大切だ。

 石垣市や与那国町は、緊急時に自衛隊が地元の空港を活用できるよう、滑走路の延長などを求めているが、空港管理者の沖縄県は「攻撃目標になる恐れがある」として認めようとしていない。

 旧態依然とした「巻き込まれ論」にとらわれていて、住民の安全を確保できるのか。県は現実の厳しい安保環境を直視すべきだ。

  元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月14日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・04.11》:中国が対抗措置発動 反保護主義の言行一致を

2025-04-14 02:02:40 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

《社説②・04.11》:中国が対抗措置発動 反保護主義の言行一致を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・04.11》:中国が対抗措置発動 反保護主義の言行一致を

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月11日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・04.13】:週のはじめに考える 習氏「毛流統治」の誤算

2025-04-13 07:49:50 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説①・04.13】:週のはじめに考える 習氏「毛流統治」の誤算

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.13】:週のはじめに考える 習氏「毛流統治」の誤算 

 中国に対する国際社会からの脅威論や不信感が近年強まるばかりです。その最大の原因は「中華民族の偉大な復興」を政治スローガンに掲げる習近平国家主席(共産党総書記)が「1強体制」を確立し、誰も異を唱えることのできない「異形の国」にしてしまったからです。

 ◆毛氏信奉者からの批判

 習氏は、2013年に党と国家の全トップの座に就いて以降「反腐敗闘争」で次々に政敵を失脚させたうえ、「建国の父」と今でも崇拝される毛沢東流の独裁的な統治手法をまねて、自らの権力基盤を固めてきました。
 ところが、近年、習氏が自らを毛氏に比肩する指導者だと喧伝(けんでん)する政治手法が毛氏信奉者らから批判を浴びたほか、習氏自身が、国有企業ではなく民営企業の持続的発展を支持すると表明。成長よりも分配に主眼を置く社会主義色の濃い毛流の政策からの転換を余儀なくされています。総書記3期目も折り返し点に近くなり、強権的な習氏の「毛沢東流」統治の誤算が露(あら)わになってきたようです。
 習体制になってから、毛沢東独裁時代を彷彿(ほうふつ)とさせる政治的変化はいくつもあります。
 まずは、18年に憲法を改正して「2期10年」の国家主席任期を撤廃し、自らの長期政権へ道筋をつけました。さらに、党、軍、政府を含む国家統治のすべての機関を習氏個人の指導下に置き、中国共産党の「集団指導体制」を事実上終わらせました。仕上げに、慣例を破って22年に総書記3期目に踏み出し、党の最高指導部である中央政治局を全員、自身に忠誠を誓う人物で固めました。
 その体制は盤石にも見えましたが、23年の毛沢東生誕130年を機に、毛氏の信奉者から強い反発が噴出します。
 それは、毛賛歌ともいえる「東方紅」という歌の詞を習賛歌に書き換えた「新東方紅」批判として表面化。東方紅には「中国出了個毛沢東」(中国は毛沢東を生んだ)をはじめ毛氏の名前が数度登場します。一方、18年ごろ国営テレビで紹介された新東方紅には毛氏の名前がないばかりか、「中国夢」「一帯一路」などの習氏の政治理念を代表するキーワードが随所に盛り込まれていたのです。
 これに、ネット上で「(毛氏が指導した)新中国前半の30年を否定するのか」「毛主席を汚すものだ」などの批判が続出しました。

 ◆演出「やり過ぎ」で批判

 毛氏の権威を借りて求心力を高めようとした習氏の戦略は、いったんは奏功したといえます。しかし、「習近平思想」を「毛沢東思想」と同格の党や国の指導思想とし、学校でもその学習を義務付けるなど、習氏を、「半植民地状態の中国を救った英雄」とまでたたえられる毛氏と肩を並べる指導者とする演出は国民に「やり過ぎ」と受け止められたのでしょう。
 実は22年の「ゼロコロナ政策」反対の抗議デモの際には既に、習氏の下野を求める横断幕まで北京の街頭に掲げられる始末でした。毛沢東の権威を利用した強権統治のほころびの兆候だったと言えるかもしれません。
 さらに、習氏は毛流の社会主義的な政策転換にも追い込まれました。象徴的なのが、習指導部が今年2月中旬に、習政権批判で表舞台から一時、姿を消していたIT大手アリババグループの創業者、馬雲氏を含む企業幹部らを集めた会合です。新華社通信は習氏が民営企業の持続的発展を支持し、中国の現代化に向けて貢献することに期待を示したと報じました。
 中国には国有企業が発展し、民間企業が衰退する「国進民退」という言葉があります。倒産して当然の非効率な国有企業が政府の保護で生き残り、民業を圧迫する不合理を揶揄(やゆ)する表現でもあります。全国人民代表大会(国会)でも国有企業改革と「民進国退」への転換が唱えられてきました。
 しかし、毛流の「共産党支配」を重視する習氏は、時代に逆行するように「国進民退」路線を推し進めてきました。その修正を迫られたわけです。今や技術革新をリードし、国内総生産(GDP)の6割余を占める民営企業の力なしでは景気減速や対米貿易戦争に対処できないと痛感したのでしょう。

 ◆「鄧小平路線」への回帰

 それは、いわば「改革開放の総設計師」と呼ばれた鄧小平氏の路線への回帰。鄧氏と言えば、毛独裁時代を教訓に個人崇拝を禁止し集団指導体制を確立した偉大な先達のはずですが、21年に習氏が主導した党の「第三の歴史決議」を採択した会議では、鄧氏の評価を「その他」の歴代総書記と同レベルに格下げした経緯があります。その鄧氏の路線に沿うのですから、習氏の立場の揺らぎとも受け取れそうです。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月13日  07:49:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・04.12】:中国軍の演習 地域の安定を脅かす台湾威嚇

2025-04-13 05:00:45 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説②・04.12】:中国軍の演習 地域の安定を脅かす台湾威嚇

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.12】:中国軍の演習 地域の安定を脅かす台湾威嚇

 中国の習近平政権が、台湾への軍事的な威嚇を繰り返している。東アジアの安定を揺るがす危険な行動であり、断じて容認できない。 

 中国軍が今月初め、台湾周辺で2日間にわたって軍事演習を行った。台湾海峡で「封鎖能力」を検証したほか、東シナ海で長距離実弾射撃訓練を行い、「主要な港湾やエネルギー施設を模擬目標として精密攻撃した」としている。

 中国の空母「山東」も台湾東方海域に展開し、制空権確保に向けた訓練を実施したという。

 台湾を包囲し、孤立化させる想定であることは明らかだ。台湾に軍事侵攻する際には、海外から台湾への補給ルートを遮断し、空母の展開で米国などの介入を阻止するシナリオがあるのだろう。

 中国軍は昨年5月と10月にも台湾を取り囲む形で大規模な軍事演習を行っているが、今回は、第2次トランプ米政権が発足して以降で最大規模となった。トランプ政権の出方を見極める狙いがあったのは間違いない。

 一方、中国軍は演習について、「『台湾独立』分裂勢力への厳重な警告」だと主張している。

 台湾の頼清徳総統が3月の記者会見で、中国は非平和的手段で台湾に危害を加える「敵対勢力」だと定義したことを指している。だが、批判を武力で 恫喝 どうかつ するのは、明らかに行きすぎだ。

 頼氏の発言を口実にした演習は、台湾の民心を揺さぶる心理戦との見方も出ている。頼氏の下では台湾の安定は望めず、米国の支援も期待できない、という世論を形成し、政権を交代させようという思惑があるのではないか。

 だが、頼氏の支持率は発言後、むしろ高まっている。中国の威嚇は台湾の中国離れを加速させ、国際社会における中国の評判を落とすだけである。

 演習に対し、日米韓3か国や先進7か国(G7)がそれぞれ外相による共同声明を出し、懸念を表明したのは当然だ。米大統領報道官も「大統領は、力や威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも反対している」と述べた。

 中国が台湾に侵攻すれば、日本の南西諸島にも危険が及ぶのは避けられない。すでに沖縄県・尖閣諸島周辺では、日本の領海に中国海警局の船舶が繰り返し侵入するなど、力による現状変更の試みを常態化させつつある。

 日本と米国は連携して中国軍の演習内容や動向を分析し、自衛隊と在日米軍の共同対処能力の向上に生かさねばならない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月12日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ディープシークのAI】:火炎瓶の作り方やウイルス設計図も回答…安全対策ないがしろか

2025-04-06 05:00:30 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【ディープシークのAI】:火炎瓶の作り方やウイルス設計図も回答…安全対策ないがしろか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ディープシークのAI】:火炎瓶の作り方やウイルス設計図も回答…安全対策ないがしろか 

 中国の新興企業ディープシークが1月に公開した生成AI(人工知能)について、マルウェア(悪意あるプログラム)や火炎瓶の作成など、犯罪に悪用可能な情報を回答することが日米のセキュリティー会社の分析でわかった。悪用防止機能が不十分なまま公開されたとみられる。専門家は「開発企業は安全対策に注力すべきだ」と訴える。

「ディープシーク」のロゴ=ロイター
「ディープシーク」のロゴ=ロイター

 問題のAIはディープシークの「R1」。セキュリティー会社「三井物産セキュアディレクション」(東京)の上級マルウェア解析技術者・吉川孝志氏が悪用リスクを検証するため、不正な回答を引き出す指示文を入力したところ、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)のソースコード(設計図)が出力された。回答には「悪意のある目的には使用しないでください」とのメッセージが付いていた。

ディープシーク本社が入居するビル
ディープシーク本社が入居するビル

 チャットGPTなど他の生成AIにも同じ指示文を入力したが、回答を拒否されたという。

 吉川氏は「悪用リスクが高いAIが増えると、犯罪への流用につながる恐れがある。業界全体で対策を強化する必要がある」と指摘する。

 米セキュリティー会社「パロアルトネットワークス」の調査チームも、不正な回答を引き出せることを確認したと読売新聞の取材に明らかにした。ログイン時の入力情報を盗み取るプログラムや火炎瓶の製造法などで、「指示文に専門的な知識は必要なく、回答の内容はすぐに実行可能なものだった」という。

 同チームは「市場投入を急いだため、安全対策の実装に力を入れていなかった可能性が高い」とみる。

 ディープシークのAIを巡っては、チャットGPTに匹敵する性能や安価な利用料金が注目されているが、個人情報を含むデータが中国国内のサーバーに保存されるため、日本の自治体や企業では業務利用を禁じる動きが広がっている。

 桜美林大の平和博教授(メディア論)は「ディープシークのAIを利用する際は、性能面やコスト面だけでなく、安全面も十分考慮する必要がある」と話す。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【話題・中国の新興企業ディープシークが1月に公開した生成AI(人工知能)・マルウェア(悪意あるプログラム)や火炎瓶の作成など、犯罪に悪用可能な情報を回答すること】  2025年04月06日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【中国】:米全製品に報復関税 全ての輸入品のに米相互関税と同じ34%

2025-04-05 00:18:30 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【中国】:米全製品に報復関税 全ての輸入品のに米相互関税と同じ34%

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中国】:米全製品に報復関税 全ての輸入品のに米相互関税と同じ34% 

 中国政府は4日、米国からの全ての輸入品に34%の追加関税を課すと発表した。トランプ米政権の「相互関税」に対抗し、上乗せ幅も米国と同等にした。10日に発動する。米中の両大国間で報復の連鎖に歯止めがかからず、貿易摩擦が一段とエスカレートしてきた。世界経済に打撃を与えるのは確実だ。

 中国政府はまた、ジスプロシウムなど7種類のレアアース(希土類)を輸出規制の対象に加えると発表。米国への報復措置とみられる。即日発効する。トランプ政権の相互関税は国際貿易ルールに違反しているとして、米国を世界貿易機関(WTO)に提訴したことも明らかにした。

 中国商務省は、米国の相互関税は「WTO加盟国の正当な利益を損ない、多国間貿易システムを破壊するものだ。断固として反対する」との報道官談話を出した。輸出規制の対象としたレアアースは軍民両用(デュアルユース)の性質があり「国家の安全や利益を守るためだ」と説明した。

 またドローン製造など米国の11企業を、台湾との軍事技術協力に関わったとして制裁対象となる「信頼できないエンティティーリスト」に加えた。米化学大手デュポンの中国法人を独禁法違反の疑いで調査することも決めた。

 トランプ米大統領は中国の発表後、交流サイト(SNS)に「中国は誤った行動を取った」と投稿した。

 中国は既に米国から輸入する液化天然ガス(LNG)や農産物などに対する最大15%の報復関税を発動しており、今回の関税について「現行の適用税率に上乗せする」と説明している。これまでは報復対象を一部の品目にとどめていたが、今回は全輸入品に広げた。

 トランプ氏は2日、世界全体を対象にした相互関税の中で、中国に34%を課すと発表した。3月までに発動した中国からの全輸入品に対する20%の追加関税と合わせた上乗せ幅は計54%となる。(共同) 

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・中国・米国からの全ての輸入品に34%の追加関税を課すと発表した】  2025年04月05日 00:18:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・04.04】:要人の発言記録 中国の都合で変えるな

2025-04-04 07:45:40 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説②・04.04】:要人の発言記録 中国の都合で変えるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.04】:要人の発言記録 中国の都合で変えるな 

 石破茂首相=写真(左)=が中国の王毅(おうき)外相=同(右)=との面会で発言した内容を巡り、中国外務省が事実に基づかない発表をしたとして日本側が抗議し、削除を求めた。
 
 しかし、同省ホームページを見る限り訂正されていない。相手国の発言を自国に都合よく修正、発表することは断じて許されない。中国側は速やかに削除すべきだ。
 王氏は3月21日、石破氏との面会で、1972年の日中共同声明など四つの政治文書を堅持して、日本側が歴史と台湾問題の政治的な約束を守るよう要望した。
 これに対し、石破氏は発言しなかったにもかかわらず、中国側は石破氏が「中国側が詳しく説明した立場を尊重する」と是認したように発表した。
 日本側の抗議に対し、中国外務省の郭嘉昆(かくかこん)副報道局長は24日の記者会見で「国家間の交流で互いの立場を尊重するのは正常なことではないか」と開き直った。
 中国側が日本政府高官らの発言内容を修正して発表することは、これまでにもたびたびあった。
 昨年12月、北京で開かれた日中外相会談で岩屋毅外相が「(『村山談話』を引き継ぎ)深い反省と心からの謝罪を表明すると述べた」と中国側が発表。岩屋氏は「正確ではない」と抗議したが、中国側は訂正に応じなかった。
 同7月、当時の上川陽子外相と王氏との会談でも、台湾問題を巡る発言で発表内容が食い違い、日本側は訂正を申し入れた。
 日中韓外相会談出席のため4年4カ月ぶりに来日した王氏は、歴史と台湾問題を絡めた発言を繰り返し、日本側をけん制した。
 今年は「抗日戦争勝利80年」に当たる。9月3日には北京で記念式典が開かれ、反日世論の高まりで緊張が広がる恐れがある。
 習近平(しゅうきんぺい)政権は米中対立が深刻化する中、対日関係を改善したいと考えており、日本の政治家や世論が中国に融和的であることを国内向けに宣伝するために、首相発言を修正したのかもしれない。
 しかし相手の言い分を正しく記録することが外交交渉の原則だ。「歴史認識」の違いを封印してもいずれ関係改善の妨げになる。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月04日  07:45:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《主張②・03.30》:中国外務省 会談内容の改竄許されぬ

2025-03-31 05:03:35 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

《主張②・03.30》:中国外務省 会談内容の改竄許されぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《主張②・03.30》:中国外務省 会談内容の改竄許されぬ 

  これでは「戦略的互恵関係」どころか、国家間の通常の信頼関係を築くことも困難なのではないか。

  石破茂首相と中国の王毅共産党政治局員兼外相の21日の会談を巡り、日本政府は、中国外務省の発表内容に事実と異なる記述があるとして抗議した。間違っている箇所の削除を求めたが、中国側は応じていない。

日中外相会談冒頭であいさつする中国の王毅外相(左)=22日、東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)

  中国外務省はホームページ上の石破首相の発言を改めてもらいたい。それが確認できるまで石破首相や岩屋毅外相は王氏と会談してはならない。

  中国外務省ホームページは王氏と会談した石破首相が「中国側が詳述した立場を尊重する」と述べたと記載している。

  日本側は「そのような発言をした事実はない」とするが、中国外務省報道官は「国家間の交流で互いの立場を尊重するのは正常なことではないだろうか」と開き直った。

  牽強付会(けんきょうふかい)の説である。

  日中両国には在中邦人の拘束や尖閣諸島、台湾を巡る問題などについて、立場や見解に隔たりがある。

  「中国側が詳述した立場を尊重する」との文言が日本の首相の言葉として残れば、日本が中国の言い分に従っている印象を与える。これでは日本の立場と国益が損なわれる。

  会談内容の改竄(かいざん)は自国にとっても不利益だと中国外務省は知るべきだ。各国も中国要人との会談を警戒するだろう。

  中国はトランプ米政権の対中圧力に直面し、日本との関係を改善したいそぶりをみせてきた。その最中に、会談内容を改竄し放置するのは不可解だ。まさか日本側の中国への反発を強め、対日関係をぎくしゃくさせたいわけではあるまい。

  王氏は石破首相との会談で、「歴史問題と台湾問題で交わされた重要な政治的約束を(日本は)確実に果たさなければならない」と迫った。この「政治的約束」という言葉も一方的な牽制(けんせい)といえる。

  戦後80年の年に歴史問題を持ち出し、日本に対して優位を占めたい底意があるのだろう。

  日本政府は習近平中国国家主席の年内訪日を計画しているとされる。

  だが、改竄の削除をはじめ中国側の実際の行動に大幅な改善がない限り、中国との関係強化は難しい。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年03月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・03.27】:国安条例1年 香港の自由後退を憂う

2025-03-27 16:05:40 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説②・03.27】:国安条例1年 香港の自由後退を憂う

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・03.27】:国安条例1年 香港の自由後退を憂う 

 香港でスパイ活動や国家への反逆行為の防止を掲げた国家安全条例が施行されて1年となった。

 条例違反が適用されたのは民主派ばかりで、市民の抗議活動や言論を徹底的に封じる意図は明らかだ。

 社会統制が強まり、自由で開かれた国際都市としての香港のさらなる変質、後退を危惧する。

 香港での2019年の大規模民主化デモを受け、中国指導部の主導で翌年、香港国家安全維持法(国安法)が施行された。多くの民主活動家が起訴され、メディアなどの言論規制が強められた。

 さらに昨年、香港立法会(議会)は国家機密の窃取など国安法より対象に広げた国家安全条例を可決した。民主派を排除し、親中派だけで提案からわずか11日後の採決だった。独裁色を増す習近平政権の意向が反映された。

 香港政府によると、施行後、条例違反で起訴されたのは香港市民5人。民主化デモのスローガンが印字されたTシャツを着て歩いた男性と、インターネットに「中国共産党は下野せよ」と書き込んだ男性らで、2人は実刑判決を受けた。

 条例が「抑圧の道具」として利用されている実態が、浮き彫りになっている。

 犯罪行為の定義はあいまいだ。国家機密の範囲は政府判断で決められ、恣意(しい)的な解釈で運用されているのは否めない。

 統制強化が進む中、先月、民主派の最大政党、民主党が解散に向けた手続きを始めた。党員が、中国と関係の深い人物から脅しのような警告を受けたという。比較的穏健とされてきた同党ですら活動できなくなっており、議会に民意は届かない。

 社会に広がる萎縮の空気が心配だ。自由な文化空間を象徴していた独立系書店が閉鎖に追い込まれ、民主化問題などに関する世論調査を行ってきた団体も活動停止を余儀なくされた。

 人口750万人の香港で、19年から5年間で約30万人が海外へ移住したとされる。言論の自由や権利が制約された香港を見限っての流出に他なるまい。

 条例は外国人への適用の懸念から経済活動にも影を落とす。外国企業離れの加速が指摘される。

 投資やビジネスの結節点となり、国際金融センターとしての発展は、高度な自治を認める「一国二制度」があってこそだった。自由への締め付けは、香港の活力を奪うばかりである。 

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月27日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・03.21】:中国全人代/大国の責務今こそ自覚を

2025-03-22 06:00:40 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説①・03.21】:中国全人代/大国の責務今こそ自覚を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.21】:中国全人代/大国の責務今こそ自覚を 

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が、政府活動報告や2025年予算を採択・承認して閉幕した。トランプ米大統領が関税引き上げなど対中強硬路線を貫く中、25年の経済成長目標を3年連続で5・0%前後と設定し、米国に対峙(たいじ)する姿勢を示した。

 13年に就任した習近平国家主席は3期目の任期の折り返しを迎える。全人代では政策についての議論が少なく、閉幕後の首相会見も昨年に続き開かなかった。習氏への権力集中を改めてアピールする場となった感が否めない。

 米国第一主義を掲げるトランプ政権は、国際秩序に挑発的な言動を繰り返す。ロシアは、国連常任理事国としての責任を無視するかのようにウクライナ侵攻を止めない。

 中国は25年の国防費を前年から7・2%増やし日本の防衛費の4倍超としたほか、米軍に対抗して軍備のハイテク化も推し進める。米中ロの覇権争いがさらに過熱しないか危惧する。

 内政を安定させて国内需要を高め、世界経済の活性化と国際社会の平和に貢献する大国の責務を、中国は今こそ自覚してもらいたい。

 24年の中国の経済成長率は政府目標の5・0%を達成した。しかし地方政府による巨額の不動産開発が各地で頓挫し、日本のバブル崩壊と同様に消費不振に陥っているのが実情だ。国内でさばき切れない鉄鋼や電気自動車で輸出攻勢をかけた結果、価格急落など世界市場にも影響を及ぼしている。

 日本人学校に通学途中の小学生が犠牲になるなど無差別殺傷事件が相次ぐのは、景気低迷で社会全体の閉塞(へいそく)感が高まっている証しといえる。全人代では暴力犯罪を「厳しく処罰する」と強調したが、対症療法に過ぎない。農村と都市部で広がる一方の経済格差を解消し、若者の働き口を増やすなど、内需の拡大にも結びつくような国民生活の安定策を講じるべきだ。

 全人代に合わせて会見した王毅外相は、日中関係が「改善と発展の前向きな勢い」を示していると述べた。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に対する強硬な姿勢を一部見直すなど、最近になって日本との距離を縮めようとしているのはトランプ政権への対抗策の一環だろう。

 一方で王氏は台湾について「必ず統一する」とし、「面倒を起こせば日本に問題をもたらす」と日本が関与しないよう警告した。力で台湾を抑え込もうとすればアジアの安全保障にとどまらず、法の支配に基づく国際秩序が揺さぶられる。台湾問題は日本として重大な関心事であると改めて強調しておきたい。

 元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月21日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・03.12》:中国全人代閉幕 協調語るなら強権改めよ

2025-03-16 09:31:10 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

《社説②・03.12》:中国全人代閉幕 協調語るなら強権改めよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・03.12》:中国全人代閉幕 協調語るなら強権改めよ 

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が閉幕した。

 習近平指導部は、今年の国内総生産(GDP)成長率目標を前年と同じ「5%前後」に

設定すると表明。外交政策では「一国主義や保護主義に反対する」として、国際協調を重視する方針を打ち出している。

 「米国第一」を掲げて各国と亀裂を深める米トランプ政権に対抗し、世界で求心力を高める意図を鮮明にした。

 それならば、世界第2位の経済大国として景気を確実に回復させるとともに、自らの強権的な手法を改めなければならない。

 不動産不況が続き、個人消費は伸び悩む。トランプ政権の対中関税で貿易摩擦が激化すれば、外需頼みの成長も見込めない。

 昨年は海外から中国への直接投資が8年ぶりの低水準となった。外資企業は中国市場の成長力に悲観的な見方を強めている。対策として積極的な財政出動で内需拡大を図る方針を示したが、昨年来の補助金支給による消費刺激策だけでは需要の先食いに終わる。

 中国では若者の高失業率が社会問題化する。市民が消費をためらうのは、将来不安が拭えないからではないか。脆弱(ぜいじゃく)とされる社会保障制度の拡充や格差是正にも本腰を入れるべきだ。

 米国や欧州連合(EU)は、中国製品が政府の補助金の下支えで過剰生産され、不当な安値で輸出されていると警戒する。内需の不振を補うため海外市場での不公正な通商政策を押し通すなら、米国の保護主義を批判できない。

 景気低迷の中でも軍拡路線は継続する。全人代で承認した予算の国防費は4年連続で伸び率が7%を超えた。具体的な装備の調達目標などには触れず、各国が懸念する不透明感を拭えていない。

 全人代に合わせて記者会見した王毅外相は、トランプ政権について「強権や覇権に断固反対する」とし、「大国は大国の責任を果たすべきだ」と非難した。

 それでいて中国は台湾を武力統一する可能性も排除せず、周辺で軍事演習を重ねて威圧を強める。南シナ海では領有権を争うフィリピンと衝突を繰り返す。

 力で現状変更を試みる覇権主義的な行動は、中国こそ自制すべきだ。ウクライナ戦争を巡ってロシアをいさめることなく、国際法を無視した侵攻を許容してきた姿勢にも問題がある。

 国際協調を口にして信頼を得ようとするなら、大国としての責任を果たしてもらいたい。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月12日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・03.07】:中国の全人代 強気の目標に潜むほころび

2025-03-07 05:00:50 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、残留孤児、国家による抑圧統治】

【社説①・03.07】:中国の全人代 強気の目標に潜むほころび

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.07】:中国の全人代 強気の目標に潜むほころび

 米国のトランプ政権からの圧力をかわしつつ、経済と軍事の両面で足場固めを急ぎ、国際的な影響力の向上を図る、というのが中国の習近平政権の戦略なのだろう。 

 中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)で、李強首相が政府活動報告を行った。今年の国内総生産(GDP)の成長率目標を「5%前後」とし、3年連続で据え置いた。

 長引く不動産不況に加え、トランプ政権が1か月半に2度、計20%の追加関税を発動するなど米側の圧力が強まる中で、強気の目標設定と言える。

 米国との貿易摩擦が激化すれば、中国経済を 牽引 けんいん してきた外需が深刻な打撃を受けるのは避けられない。こうした状況下で、李氏は内需拡大を最重要視し、消費を喚起していく姿勢を強調した。

 償還までの期間が長い超長期特別国債の規模を拡大し、一部を自動車や家電などの買い替え支援にあてる方針という。

 だが、景気の停滞で、消費者の節約志向は高まっている。治安も悪化し、各地で無差別殺傷事件が起きている。

 経済の発展と社会の安定の両立という目標を達成するには、目先の景気刺激策だけでなく、医療や年金など社会保障制度を充実させることが不可欠ではないか。

 しかし、軍事予算案には過去最高の約36兆7600億円が計上され、成長率目標を上回る前年比7・2%増の伸び率となった。人工知能(AI)などを利用した「新たな質の戦闘力」を強化する。

 一方、中国軍内では汚職が 蔓延 まんえん し、高官の摘発が相次いでいる。軍拡路線の内部で一体何が起きているのか。日本周辺の安全保障環境に影響を与える中国軍の動向に引き続き注視が欠かせない。

 活動報告では、中国外交の成果として「真の多国間主義を堅持し、地球規模の課題への対応と地域紛争の解決に役割を果たした」と主張した。中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」を通じ、対外協力を推進する方針も示した。

 「米国第一」を掲げ、新興・途上国への経済援助の停止を表明したトランプ政権との違いを際立たせ、国際社会における求心力を高めようとする狙いは明らかだ。

 報告では、米国を念頭に「覇権主義・強権政治」に反対すると明記した。だが、中国が台湾を軍事的に威嚇していることや、ウクライナを侵略するロシアを非難しないことについても、多くの国が強権的だと受け止めている。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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