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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【政界地獄耳・05.16】:震災と原発事故から14年…今こそかみしめるべき

2025-05-18 07:40:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【政界地獄耳・05.16】:震災と原発事故から14年…今こそかみしめるべき

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【政界地獄耳・05.16】:震災と原発事故から14年…今こそかみしめるべき 

 ★13日、参院議員会館講堂で市民と国会議員の映画上映会実行委員会主催によるドキュメンタリー「決断 運命を変えた3・11 母子避難」が上映され、国会議員、地方議員、秘書、避難に関わる多くの人たちや支援者が集まった。映画は11年の東日本大震災、東京電力福島第1原発事故により、それまでの普通の生活が奪われ、人生最大の「決断」を迫られ日本各地に避難した10の家族のエピソードを7年かけ追いかけている。昨年の春公開されたものだが、震災と原発事故から14年。記憶が薄れている今こそ、風化どころか普通の生活が奪われた多くの人たちの戦いの記録は改めてかみしめるべきだ。監督は安孫子亘。同作は米国「国境なきドキュメンタリー国際映画祭」(2025)を受賞した。

決断~運命を変えた3.11母子避難~
 解説:『霧幻鉄道』を手がけた安孫子亘監督が、東日本大震災で起きた福島第一原発事故で決断を迫られた人々を追ったドキュメンタリー。2011年3月11日を境いに一変した生活と、13年が経過した現在も3万人が避難生活を余儀なくされる原発問題について、10の家族の証言を通して、彼らが迫られた決断を描く。主題歌はDAIJIによる“決断”。

 ★原発から30キロ圏内に住んでいる全住民に避難指示が出る。その区域に入らない人たちは自主避難者となる。映画は彼らを中心に描かれる。国や東電からの情報がない中、子供を守るために安全なものを食べさせたいと福島の地を離れる「決断」をするが、夫は仕事や経済的な理由から土地を離れるわけにはいかないと家族が離れ離れで暮らす様子や、そのために離婚した者、複数の病気を発症した人、新たな土地で原発避難者として地方議会選挙に臨む者。全国の避難者が住む市営住宅や公務員住宅から自治体が追い出しをかける動きが進み、その責任は国と東電にあるという「権利裁判」が全国で行われているが、その原告として活動する人。彼らは多くの「決断」と理不尽な決定に人生を狂わされ、その都度「決断」を強いられる。

 ★当の福島県は言うに及ばず、全国の行政に住まいを追われ、司法が行政に加担し退去判決を出す。そうした彼らの基本的人権を守るのは政治しか残っていない。政府や東電は「復興」ばかり言うが、今でも地元に戻ると激しく、基準値をはるかに超えたガイガー管が鳴るという。最近では避難した人たちを「過剰避難」と言い出す向きもあるという。会には社民、立憲、共産、れいわ、無所属の議員が駆け付けたが、復興などと軽々に言う議員は1人もいなかった。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2025年05月16日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【大谷昭宏のフラッシュアップ・03.17】:人口流出に泣かされた福島の町、ささやかな反転攻勢

2025-04-22 08:01:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【大谷昭宏のフラッシュアップ・03.17】:人口流出に泣かされた福島の町、ささやかな反転攻勢

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・03.17】:人口流出に泣かされた福島の町、ささやかな反転攻勢 

 先週、発生から14年となった東日本大震災。今年も福島県川俣町を訪ね、初めて県立川俣高校の卒業式を取材させてもらった。

 創立117年。町の高台にある学校の広さは東京ドーム1・5個分。かつて320人いた生徒は震災後、町の人口減もあっていまは51人。うち卒業生は14人だ。

 式を終えた卒業生は教室で最後のホームルーム。3年間担任だった50代の男性教師から1人ずつ証書を手渡され、ほとんどの生徒が皆勤賞、精勤賞、生徒会功労賞。何かの表彰を受けて、みんなに向けてひと言話す。

 仙台の大学に行きます。この町のために役場で働きます。震災の時は3歳でしたが、当時のことを親から聞いて看護師の道に進みます。

 驚いたのは、4人もの生徒が「じつは中学時代は不登校だった」と話し出したことだ。「だけどこの3年間は楽しかった」「いい仲間だった」「こんな私が精勤賞。みんな、本当にありがとう」

 その川俣高校が、この春から大きく変わる。こうした学校の雰囲気と恵まれた環境を生かして、県立高校では珍しく全国から生徒を募集することになった。

 そういえば避難地域となって在校生ゼロが続く町内の山木屋小中学校も、この春から校区の学校に通いにくい子どもを広く受け入れる。人口流出に泣かされた福島の町が、ささやかな反転攻勢に打って出たのだ。

 そんな福島の川俣高校最後のホームルーム。先生は、この日で卒業生を送り出すのは8回目。270人になると話し出した。

  「そのうち1人は若くしてがんで亡くなりました。そしてもう1人は、自死でした。仕事に行き詰まったと後で聞きました」。先生はそこでひと呼吸置いて、「だから約束してほしい。きみたちは卒業していくけど、先生は、生きている限り、みんなの担任だと」

 大粒の涙が頬を伝った。

  ♪ぼくら離ればなれになろうとも クラス仲間は…

 残雪の磐梯山に、こだまが吸い込まれていくようだった。

 ◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「ニュース ONE」などに出演中。

大谷昭宏のフラッシュアップ

 ■大谷昭宏のフラッシュアップ

 元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】  2025年03月17日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・04.09》:東電が再建計画先送り 原発頼みの限界露呈した

2025-04-09 02:05:50 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

《社説①・04.09》:東電が再建計画先送り 原発頼みの限界露呈した

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・04.09》:東電が再建計画先送り 原発頼みの限界露呈した 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月09日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・04.03】:東電再建計画 福島復興の責務を果たすには

2025-04-04 05:00:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説②・04.03】:東電再建計画 福島復興の責務を果たすには

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.03】:東電再建計画 福島復興の責務を果たすには

 東京電力ホールディングスは、2024年度に予定していた経営再建計画の策定を先送りした。収支の見通しを固められなかったためだ。 

 福島復興の責務を果たすためには、収益力を高める計画を作ることが不可欠である。

 計画は、福島第一原子力発電所事故後の賠償や廃炉、除染などの費用を捻出するためのものだ。東電が国や銀行からの支援を受ける前提条件でもある。12年以降、数年ごとに改定している。

 事故処理にかかる費用23・4兆円のうち、17兆円程度を東電が負担し、毎年5000億円を返済していく枠組みになっている。

 今回、現行計画を見直した暫定版を公表し、正式な計画は25年度中の策定を目指すことにした。

 策定を先延ばししたのは、経営再建の柱と位置づけている柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の見通しが立たないためだ。

 その原因は東電にもある。テロ対策の不備などが次々と露呈し、地域の不信を招いたからだ。

 東電は柏崎刈羽原発が1基動いた場合、約1000億円の収益改善効果があると見込み、今夏の再稼働を目指している。地元の同意を得られるよう、信頼回復に全力を挙げねばならない。

 東電が長期にわたり、着実に資金を返済していくためには、原発の再稼働だけではなく、収益の向上策に取り組む必要がある。

 東電を取り巻く経営環境は厳しい。電力販売では、電力小売りの自由化により、東京ガスや通信会社などの新電力に顧客を奪われ、一般家庭向け市場のシェア(占有率)は約7割に低下している。

 一方で、洋上風力発電といった再生可能エネルギーの活用など脱炭素の推進に向けた投資拡大を迫られている。人工知能(AI)の普及で増大する需要に対応し、電力を安定供給する責任も重い。送電網の増強も怠れない。

 収益力を高めなければ、成長に必要な投資資金が不足する負の連鎖に陥ってしまうだろう。

 それを打開するには、新たなビジネスを開拓し、稼ぐ力を高めていくことが重要だ。

 東電は19年、中部電力と火力発電部門を統合し、JERAという新会社を発足させた。しかし、この事例以外には、目立った成果を上げられていない。

 異業種や海外勢も含めて、他の企業との連携策も探ってほしい。業務の効率化など、一段と踏み込んだ経営合理化策に取り組んでいくことも必須だ。  

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・03.24】:福島の除染土 不安を解消して再利用進めよ

2025-03-26 05:00:35 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説①・03.24】:福島の除染土 不安を解消して再利用進めよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.24】:福島の除染土 不安を解消して再利用進めよ

 東京電力福島第一原子力発電所の周辺に大量に残されている「除染土」の処分に道筋をつけない限り、福島の復興は望めない。地元以外にも受け入れ先を広げることが肝要だ。

 原発事故では放射性物質が周囲に拡散し、それを住宅地や農地から取り除く除染作業が行われた。その際に削り取った除染土が、福島県大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で保管されている。

 総量約1400万立方メートルのうち4分の3は放射線量が低く、道路の盛り土や土地造成などに再利用することが想定されている。放射線量が比較的高い残りの土は、2045年までに県外の最終処分場に搬出すると決まっている。

 貯蔵が始まって今月で10年となったが、処分に向けた見通しは開けていない。

 読売新聞が全国の知事を対象に行った意向調査では、再利用の受け入れを「容認できる」と回答した都道府県は一つもなかった。最終処分場の受け入れについても「条件次第で検討する」と答えたのは5県にとどまった。

 これでは問題は到底解決できまい。各自治体が消極的なのは、住民の理解を得るのが難しいことが背景にあるのだろう。環境省は埼玉県所沢市や東京都新宿区で再利用の実証事業を行う計画を立てたが、住民の反対で頓挫した。

 だが、除染土の上で作業した場合でも、浴びる放射線量は年間1ミリ・シーベルトを下回る。日常生活で浴びる量や、1回のCT検査より低く、安全上問題はない。再利用にあたっては数十センチの覆土をするため、放射線量はさらに下がる。

 県外の受け入れ先が見つからない中、双葉町長は、町内の造成工事などで再利用を検討する考えを表明した。自ら引き受ける姿勢を示すことで、他の自治体に理解を呼びかける思いからだろう。

 地元だけに問題を押しつけず、全国の自治体で再利用に協力すべきではないか。国と自治体の双方がリーダーシップを発揮し、住民に理解を求めることが必要だ。

 原発事故で避難指示が出された地域では順次、除染が進められ、今は住めるエリアも広がった。しかし、住民の帰還は伸び悩み、原発周辺の11市町村の人口は、震災当時に比べて8割減の計1万7000人にとどまっている。

 地域の再生には、原子炉本体の廃炉作業を確実に進めると同時に、除染土についても、昨年末に発足した全閣僚会議を通じ、受け入れ先の確保に向けた省庁横断の取り組みを強化していきたい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月24日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・03.18】:原発事故無罪/東電の社会的責任は重い

2025-03-22 06:00:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説①・03.18】:原発事故無罪/東電の社会的責任は重い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.18】:原発事故無罪/東電の社会的責任は重い 

 2011年3月の発生から14年となった東京電力福島第1原発事故を巡り、東電の旧経営陣が業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判で、最高裁が検察官役の指定弁護士側の上告を棄却し、武黒一郎元副社長と武藤栄元副社長の無罪が確定した。勝俣恒久元会長は昨年10月に死去したため公訴棄却となっていた。

 史上最悪レベルの重大な事故を起こした旧経営陣が刑事責任を負わない結論に、被害を受けた住民は納得できないだろう。最高裁は「事故の予見可能性はなかった」と判断した。しかし、人々の平穏な暮らしを奪った東電の社会的責任は免れない。現在の経営陣も含めて、その重さを改めて自覚してもらいたい。

 事故では、避難を余儀なくされた入院患者が多数死亡するなどした。被害を踏まえ、福島県の住民ら約1万4千人が勝俣氏や政府関係者らを告訴・告発した。検察は同氏らを不起訴としたものの、市民で構成する検察審査会が起訴すべきだと2度議決し、3人が強制起訴された。市民が刑事責任を追及したと言える。

 争点の一つは、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)の「長期評価」の信頼性だった。東電はこの予測に基づき、最大15・7メートルの津波の恐れがあるとの試算を得ていた。

 旧経営陣5人に対し、会社に与えた損害を賠償するよう求めた株主代表訴訟では、東京地裁が「(長期評価は)相応の科学的信頼性があり、津波対策を義務付けられるものだった」との判決を出した。ところが今回、最高裁は「信頼度が低く、10メートルを超える津波が襲来する現実的な可能性を認識させる情報だったとまでは認められない」と判断した。

 無罪推定の原則がある刑事裁判では、民事より緻密な立証が求められることは理解できる。とはいえ津波対策を先送りし、重大事故を防げなかった刑事責任を問えない司法の仕組みでは、事故の教訓を今後に生かすのは難しい。個人ではなく企業を処罰対象とする「組織罰」導入などの議論を深める必要がある。

 原発事故で避難した住民らが国に損害賠償を求めた集団訴訟では、最高裁が22年に国の責任を認めない判決を出した。その後、同種訴訟の下級審では同様の判断が続いている。

 そうした中、政府は原発回帰に大きく政策転換した。今年改定されたエネルギー基本計画では、事故を教訓にした「可能な限り原発依存度を低減する」との表現を削った。老朽原発の運転や建て替えも容認する。

 国が責任を問われず、経営陣も刑事罰を受けない。その現状でもし再び深刻な原発事故が起きれば、誰がどのように責任を取るのか。政府と電力会社の見解を聞きたい。

 元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月18日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・03.07】:福島第1原発事故「予見できない」東電旧経営陣に無罪?予見するのが専門家のはず

2025-03-14 07:40:10 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【政界地獄耳・03.07】:福島第1原発事故「予見できない」東電旧経営陣に無罪?予見するのが専門家のはず

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【政界地獄耳・03.07】:福島第1原発事故「予見できない」東電旧経営陣に無罪?予見するのが専門家のはず 

 ★11年に起きた東日本大震災の東京電力福島第1原発事故を巡り、検察官の不起訴処分に対して検察審査会が起訴議決して刑事事件として公判に至った東京電力旧経営陣2人の上告審が6日、開かれた。業務上過失致死傷罪が争われ、最高裁第2小法廷は1、2審判決を支持し、無罪を言い渡した。地震大国でどこであっても危ないのを承知で建設し、津波予防が必要との専門家の指摘にも反応せずにいた安全対策をすべき経営責任者の刑事的責任はないと決着した。裁判の争点は自分たちの想定以上の津波はこないという想像力のなさを「予見できない」とした裁判官の想像力のなさも目を見張る。

 ★ただ多くの民事訴訟では東京電力の賠償責任はすべての判決で認定されており、司法の落とし穴に陥ったのではないか。思い出すのは99年、小渕恵三内閣での東海村JCO臨界事故だ。JCOが事故正規のマニュアル以外に「裏マニュアル」で作業を行い、事故当時はそれも簡略化していた。我が国初の臨界事故で2人が死亡、1人が重症となったほか、667人の被ばく者を出した。この時は安全履行義務違反が明らかで刑事責任が問われた。責任はJCOに集中したが、情報伝達の手際の悪さも住民らを苦しめた。官邸も事の重大さに気づかず、科技庁など役所も事態をのみ込めず的確な指示が遅れ、住民避難指示も二転三転し事態を悪化させた。

 ★今回の判決を見るまでもなくその後、全国の多くの原発は停止に追い込まれ、今は再稼働ラッシュだ。では本当にマニュアルは順守されているか、情報伝達は包み隠さず周知されているか。非常電源は津波などで水没の恐れのある地下から移設されているか。それぞれで改善されただろうが、責任の所在はどうなっているのか。多くの教訓がデータに残してあっても次世代に引き継がれなければ意味がない。経験のないことを予見するのが専門家ではないのか。最高裁判決が性善説に寄り添う、法の概念に沿っているのなら、いささか心もとない。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2025年03月07日  07:36:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・03.12》:東電旧経営陣が無罪に 原発事故の責任は消えぬ

2025-03-12 02:05:50 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

《社説①・03.12》:東電旧経営陣が無罪に 原発事故の責任は消えぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・03.12》:東電旧経営陣が無罪に 原発事故の責任は消えぬ 

 刑事責任が不問に付されたからといって、人々の暮らしと故郷を破壊した社会的責任は免れない。

 東京電力福島第1原発事故で、業務上過失致死傷罪に問われた旧経営陣2人の無罪が確定した。最高裁が、検察官役の弁護士の上告を棄却する決定を出した。

東京電力福島第1原発事故で旧経営陣の無罪が確定することを受け、記者会見する福島原発告訴団の武藤類子さん(中央)ら=東京・霞が関の司法記者クラブで2025年3月6日午後4時20分、長谷川直亮撮影

 検察は不起訴としたが、市民から選ばれた検察審査会の判断で強制起訴された。津波の襲来を予想できたかどうかが争点だった。

 これに基づく東電の試算でも、敷地の高さを大幅に上回る津波が想定された。だが、旧経営陣は外部の専門家に改めて確認する方針を決め、対策を先送りした。

 最高裁は「長期評価には積極的な裏付けが示されていない」と指摘し、やむを得ない対応だったと判断した。事故に至るほどの津波は予想できなかったとの結論だ。

 ただ、裁判では、津波の試算に関わった社員が、対策を進めるべきだと考えて旧経営陣に報告したと証言していた。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/03/12/20250312ddm005070127000p/9.webp?1" type="image/webp" />敷地内にベッドが放置された双葉病院。原発事故からの避難時に多くの入院患者が命を落とした=福島県大熊町で2011年11月16日午前10時19分、武市公孝撮影</picture>
敷地内にベッドが放置された双葉病院。原発事故からの避難時に多くの入院患者が命を落とした=福島県大熊町で2011年11月16日午前10時19分、武市公孝撮影

 原発でひとたび事故が起きれば、放射性物質が広範囲に飛散し、甚大な被害を招く。旧経営陣は本来、安全性を最優先にした措置を取るべきだったにもかかわらず、その責任を果たさなかった。

 「疑わしきは被告人の利益に」が原則の刑事裁判では厳格な有罪立証が求められる。多くの人が意思決定の過程に関わる大企業の過失について、経営陣の刑事責任を問うハードルが高いのは確かだ。

 しかし、今回の決定は原発特有のリスクを十分に考慮したとは言えず、疑問が残る。

 東電株主による民事訴訟では、長期評価の信頼性を認め、元役員4人に13兆円余の賠償を命じる判決が1審で出されている。

 事故から14年がたった。7市町村に帰還困難区域が残り、今も2万4000人以上が避難生活を送る。廃炉の見通しは立たず、除染のためにはぎ取った土の最終処分地も決まっていない。

 政府は原子力を最大限活用する政策を掲げ、東電も柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を目指す。だが、福島の教訓を忘れて原発回帰に突き進むことがあってはならない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月12日  02:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・03.11】:福島原発事故14年 「回帰」政策、被災者軽視だ

2025-03-11 07:00:50 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説①・03.11】:福島原発事故14年 「回帰」政策、被災者軽視だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.11】:福島原発事故14年 「回帰」政策、被災者軽視だ 

 東日本大震災と、それに伴う東京電力福島第1原発事故はきょう、発生から14年となる。わが家を離れて暮らさざるを得ない人が今も28千人近くいる中で、政府は原発についての政策を転換した。

 先ごろ決めた新たなエネルギー基本計画では、事故を踏まえて盛り込んでいた「依存度を可能な限り低減する」との文言を削った。原発回帰へと、かじを切ったのである。

 事故を機に高まった原発に対する国民の懸念が消え去ったわけではない。国民、とりわけ辛苦にさいなまれ続けている被災者の思いを受け止めた上での方針転換なのか。疑問が拭えない。

 原発を「最大限活用」とする新しいエネ計画は先月、政府が閣議決定した。1割に満たない原発の電源構成の比率を2040年度に2割程度まで上げる目標を掲げている。

 実現するには、既存原発の大半に当たる30基程度を15年以内に再稼働させる必要がある。安全を最優先しつつ地元住民の理解を得ながら進めていくには、相当高いハードルだろう。

 新増設を容認したが、建設費の高騰で電力会社は及び腰だ。そのため、建設費を電気料金に上乗せして国民に負担させる案も浮上している。

 原発で燃やす核物質の後始末も不透明だ。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場は完成時期が27回も延期され、着工から30年余り過ぎた今も稼働の見通しが立っていない。

 「核のごみ」、高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋める最終処分場も適地探しの段階にとどまっている。

 こうした現状を反映しているのか、国民は今も原発に厳しい目を向ける。本紙におととい掲載されていた全国郵送世論調査によると、「今すぐゼロ」と「将来的にはゼロ」は計62%に上った。

 反対に「積極的に活用」と「一定数を維持」は計36%だった。「再稼働すれば電気料金が下がる」などの意見もあるが、「核のごみ」処分のコストまで考えると、目先の電気料金引き下げで喜んでいいのか。多額の請求書が後で送られる事態も否定できない。

 事故を起こした福島原発の後始末も課題が山積みだ。東電と政府は溶け落ちた推定約880トンもの核燃料(デブリ)を51年までに全て取り出して、廃炉にする計画を示している。ただ、昨年初めて取り出したデブリは約07グラム。このままでは100年以上かかるとの試算もあり、51年までの廃炉は不可能に近い。

 事故の責任追及でも、被災者の思いは踏みにじられた。民事裁判では東電の責任が認められたが、刑事裁判では先週、最高裁によって当時の経営陣の無罪が確定した。

 これほどの大惨事を招き、「明らかに人災」と国会の事故調査委員会に指摘されていたのに、誰一人刑事責任を負わないのはなぜか。違和感を禁じ得ないのは、被災者だけではあるまい。

 事故の教訓は何か。いち早く忘れてしまったのは政府ではないか。被災者と改めて向き合うことが求められる。

 元稿:中國新聞社社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月11日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録・03.11】:忘却にあらがう

2025-03-11 07:00:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【天風録・03.11】:忘却にあらがう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・03.11】:忘却にあらがう

 芥川賞作家吉村萬壱さんが小説「ボラード病」で描いたのは、災厄後を思わせる近未来の世界である。舞台は避難先から住民が戻り、復興が始まった町。学校では「結び合い」を合言葉に協調や連帯が強いられ、子どもたちは地元賛歌を唱和する

 ▲住民は互いを監視し、復興に都合の悪いことは、なかったことに。漂う不穏な空気に違和感を表明しようものなら病人か犯罪者扱いされ、消されていく。戦前の全体主義や現代社会を覆う同調圧力への風刺にも読める

 ▲そんな世界は、どうか物語の中だけであってほしい。福島第1原発事故を招いた東日本大震災の発生からきょうで14年。今なお古里を奪われたままの人、心に深い傷を抱える人があまたいる

 ▲歳月は他者の痛みへの共感をも風化させてしまうのだろうか。原発事故の責任をうやむやに、政府は新たなエネルギー基本計画で推進にかじを切る。先日公表された地方紙による調査では原発容認が半数を超えていた

 ▲14年前、私たちは見えない放射線におののき、被災者の実情に胸を痛めた。原発に依存してきた暮らしを省み、真剣に考えた。せめて節目の日に思い起こし心に刻もう。それが忘却にあらがう力になる。

 元稿:中國新聞社社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2025年03月11日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に

2025-01-11 02:01:50 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.11》:福島原発事故の除染土 処分のシナリオを早期に

 東京電力福島第1原発事故で生じた「除染土」の処分が実現しない限り、福島の復興は完了しない。

 事故では大量の放射性物質が広範囲に放出された。福島県内の住宅地や農地などの除染で集められた土は約1400万立方メートルに及び、東京ドーム約11杯分に相当する。原発の立地する双葉、大熊両町に設けられた中間貯蔵施設に搬入された。

 地元は最終的に県外で処分することを条件に施設の建設を容認した。保管開始から30年に当たる2045年3月までに処分を終えることが法律で定められている。

東京電力福島第1原発(奥)の周辺に、除染で出た土を保管する中間貯蔵施設が広がる=福島県双葉町で2024年3月3日、本社ヘリから渡部直樹撮影

 その実現に向けて、政府は昨年末、すべての閣僚が参加する会議を設置した。今夏までに処分の具体的な工程表を策定する方針だ。

 国は放射性物質濃度が一定の水準を下回った除染土を再利用する方針を打ち出している。道路の盛り土や農地の造成など全国の公共事業で使うことが想定される。

 県内では、こうした用途での安全性を確認するための実証事業が進められている。国際原子力機関(IAEA)は昨年9月、政府の計画について「安全基準に合致している」との判断を示した。

 ただ、科学的に安全とされても、それだけで再利用の受け入れが進むわけではない。不安や風評被害への懸念が払拭(ふっしょく)されていないからだ。

 除染土の4分の1は汚染のレベルが高く、再利用しないことになっている。これらは県外で最終処分されるが、スケジュールや場所は決まっていない。

 こうした状況について、国民の理解は進んでいない。環境省が23年12月に実施した調査によると、除染土の再利用や最終処分を知らない人の割合は福島県外では7割以上に達した。

 福島原発から供給された電力は首都圏を中心に使われてきた。消費地こそ重く受け止めなければならない問題だ。

 廃炉作業も予定より遅れ、古里を奪われた人々の焦燥感は強まっている。事故の後始末の道筋を早急に示すのが政府の責務だ。 

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月11日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【記者コラム・12.18】:「記者生命を捧げます」原発事故から14年、福島に年100日通い続ける山川剛史記者の誓い

2024-12-19 15:00:30 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【記者コラム・12.18】:「記者生命を捧げます」原発事故から14年、福島に年100日通い続ける山川剛史記者の誓い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【記者コラム・12.18】:「記者生命を捧げます」原発事故から14年、福島に年100日通い続ける山川剛史記者の誓い

〈福島第1原発事故を見つめた14年〉①
 
 東京電力福島第1原発事故の発生初期から取材班キャップを6年ほど務め、その後は編集委員として、今なお深刻な影響を与え続ける事故の実態を取材し続けてきました。

 ◆どうして途中で追うのを止められる?

 「ずっと同じ取材を続けられるね」と問われることもあります。
でも福島の原発事故は歴史的な大事件で、私にとっては既存の価値観を根底から揺さぶられました。
 
事故収束作業が続く東京電力福島第1原発(奥左から1~4号機)と、県内各地の除染で発生した汚染土の貯蔵施設(2024年11月撮影)

 事故収束作業が続く東京電力福島第1原発(奥左から1~4号機)と、県内各地の除染で発生した汚染土の貯蔵施設(2024年11月撮影)

 事故収束作業は10年や20年で終わるようなものではありませんし、どう終わらせるのかもはっきりしません。
 
 まき散らされた膨大な放射能の影響は、30年かけてやっと半分になるので、元の水準に下がるまでざっと300年かかります。
 
 私が一生かけても終わらない状況なのに、どうして途中で追うのを止められるでしょうか?

 ◆被災者から問いに、啖呵を切って…

 かつてそろそろキャップを後進に、という話が持ち上がったとき、上司から「この後どうしたいんだ?」と問われ、即座にこう懇願しました。

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 元稿:東京新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【記者コラム】  2024年12月18日  15:00:00  これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。

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【福島第一原発】:除染土処理、「全閣僚会議」新設へ…45年までの最終処分向け対応加速

2024-12-04 05:00:20 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【福島第一原発】:除染土処理、「全閣僚会議」新設へ…45年までの最終処分向け対応加速

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【福島第一原発】:除染土処理、「全閣僚会議」新設へ…45年までの最終処分向け対応加速

 政府は、東京電力福島第一原子力発電所事故を巡って発生した「除染土」の処理に向け、具体策を検討する全閣僚会議を設置し、月内に初回会合を開く方針を固めた。2045年までに福島県外で全量を最終処分する必要があるが、受け入れ先の確保などで課題が指摘されており、省庁横断で取り組むことで対応を加速させる狙いがある。

 ■仮設住宅の展示棟で「同窓会」、東日本大震災後に避難生活送った住民が再会…岩手県住田町

首相官邸
首相官邸

 複数の政府関係者が明らかにした。 

 会議のトップは林官房長官が務め、復興相、環境相、国土交通相、総務相、農相ら全閣僚が参加する方向だ。除染土の処理に関わる省庁の枠を環境省などの一部から広げ、政府として多角的に問題に対処する姿勢を明確にする。

 除染土は、原発事故後に住宅地や農地などで実施した除染作業の際にはぎ取られた土。同原発が立地する同県大熊、双葉両町に設けられた中間貯蔵施設に累計約1300万立方メートルが搬入されており、東京ドーム約11杯分の量になる。中間貯蔵のあり方などを定めた法律で、国は45年までに県外で最終処分を完了させるよう義務づけられている。

除染度を巡る状況
除染度を巡る状況

 除染土の4分の3は、放射性セシウム濃度が1キロ・グラムあたり8000ベクレル以下で、安全に再利用できる基準を満たしている。政府は8000ベクレル以下の土は、飛散防止の対策を行った上で、道路工事のアスファルトの土台に使用するなど、公共事業の資材を中心に活用することを検討している。残りは埋め立てなどで最終処分する考えだ。

 政府はこれまで、除染土に通常の土をかぶせた畑でキュウリやダイコンを収穫したり、道路の盛り土に活用したりと、福島県内で安全性を確認する実証事業を行ってきた。

 一方で、環境省は22年度、東京都新宿区の新宿御苑などで花壇や芝生での再利用の実証事業を計画したが、地元の反対で頓挫した。

 政府は今後、公共事業を発注する国交省、農地利用を所管する農林水産省など、各省庁間で役割を分担し、処理を具体化させていく方針だ。

 ■あわせて読みたい

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・災害・東日本大震災・福島第一原発事故】  2024年12月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.18】:デブリ初取り出し 「廃炉」計画、抜本的見直しを

2024-11-19 07:00:40 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【社説・11.18】:デブリ初取り出し 「廃炉」計画、抜本的見直しを

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.18】:デブリ初取り出し 「廃炉」計画、抜本的見直しを 

 国内の原子力施設では史上最悪の事故を起こした東京電力福島第1原発の2号機から溶け落ちた核燃料(デブリ)が初めて取り出された。小石状の約5ミリ大で重さは約07グラム。廃炉に向けて一歩前進との評価も、東電などからは聞こえてくる。

 しかし、デブリは炉心溶融(メルトダウン)の起きた13号機に推計で約880トンもある。採取開始は当初計画より3年遅れ。国や東電が目標とする2051年までの廃炉完了は現実的に不可能ではないのか。計画をこのままにしておくのは無責任だ。抜本的な見直しが求められる。

 デブリは放射線量が非常に高いため人は近づけず、取り出しには遠隔操作の機械やロボットを使わざるを得ない。初歩的ミスやカメラの不具合などで作業着手は3回延期された。事故発生から13年半たって、今回初めて取り出せたものの、わずかな量。試験取り出しとの位置付けで、展望が開けたわけでもない。

 今回のデブリは、原発運転時の核分裂で生じる放射性物質が検出され、核燃料の一部だと分かった。今後1年程度かけて分析を進め、取り出し工法の検討などに生かすという。本格取り出しは1年以上も後になるのだろうか。

 しかも、13号機ごとにデブリの状態は異なり、今回の分析結果だけでは、デブリの全体像はつかめない。

 計画では、30年代初頭に最もデブリの多い3号機で大規模な取り出しを始める。ただどうやって取り出すか決まっておらず、先は見通せない。

 そもそも880トン全て取り出すのに何年かかるのか。取り出したデブリはどこに置くのか。作業に伴い生じる放射性廃棄物も膨大な量になる。福島県や住民は、どちらも県外搬出を望んでいるが、受け入れる所があるだろうか。

 深刻な事故を起こした米国のスリーマイルアイランド原発では、10年かけ、ほとんどのデブリを取り出した。しかし今もわずかに残っている。

 デブリの量は福島の2割弱しかなかった。制御棒などと均一に溶けて圧力容器内にとどまったが、福島は原子炉のタイプが違うため、デブリは均一ではない。圧力容器の外にある格納容器にまで達してしまった。そんなデブリの取り出しは世界に例がなく、極めて難しい。成功例が当てはまるとは到底思えない。

 加えて、スリーマイルでは仮とはいえ、搬出先が決まってから作業に入った。たとえ取り出せたとしても、置き場の決まっていない福島とは前提条件が全く異なっている。

 むしろ、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故対応の方が参考になるかもしれない。デブリは取り出さず原子炉建屋ごとコンクリートで覆う「石棺」で放射性物質の飛散を防いでいる。専門家の中には、この方法を勧める人もいる。

 51年までに廃炉を完了する方針は、事故発生から1年もたたないうちに決められた。国や東電は、その後の知見を踏まえつつ、デブリ取り出しが進まない現状に誠実に向き合うべきだ。計画を練り直さなければならない。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月18日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【日報抄・11.15】:雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、

2024-11-15 06:10:15 | 【原発事故・東電福島第一・放射能汚染・デプリ・東電の再建・処理水の海洋放出

【日報抄・11.15】:雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【日報抄・11.15】:雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、 

 雪の降らない地域の視点に基づく「暖国政治」の打破を掲げたのは、本県の初代民選知事・岡田正平だった。1949年の県議会本会議で、こう訴えた

 ▼「日本の政治は明治の薩長藩閥の政治以来常に日の当たる地域に向けての政治だった」「新しい地方自治法が敷かれても今日なお暖国中心の政治が行われ、積雪寒冷地帯は画一行政の弊に苦しんでいる」

 ▼かつては中央省庁に雪対策を陳情しても「どんな大雪でも春になれば解けてなくなるでしょう」と、軽くあしらわれたこともあったという。そんな感覚は今でも根強いのか。先日の本紙記事を読んでそう思った

 ▼原発の重大事故と大雪が重なった際、屋内退避などにはどう取り組めばいいのか。不安を抱える県内の自治体からは詳細な対応基準を求める声が上がる。それなのに中央の当局からは、つれない声しか聞こえてこないようだ

 ▼事故時の屋内退避の運用を検討するチームを設けている原子力規制委員会は、自然災害での対応の検討は「範疇(はんちゅう)外」としている。原子力防災を担当する内閣府は、被ばくを避けるより自然災害対応を優先する「基本的考え方」を提示しているので「解決済み」との立場だという

 ▼自宅に退避したものの、大雪がなお続いたとしたら。雪下ろしはどうしたらいいのか。自宅からさらに別の場所には避難できるのか。この地に生きる身からすれば、不安は尽きない。そうした憂いに寄り添うことがなければ、再稼働の地元同意など到底おぼつかないのだが。

 元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【日報抄】  2024年11月15日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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