【社説①・08.11】:学力の低下 要因の多角的な検証を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・08.11】:学力の低下 要因の多角的な検証を
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年08月11日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・08.11】:学力の低下 要因の多角的な検証を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・08.11】:学力の低下 要因の多角的な検証を
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年08月11日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説②・04.19】:水泳授業の廃止 存続への工夫が先ではないか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.19】:水泳授業の廃止 存続への工夫が先ではないか
水泳の授業を廃止する中学校が相次いでいる。日本は海に囲まれ、川も多い。子供に泳ぎ方を教えなくていいのか。地域の実情に応じ、存続への工夫を重ねたい。
静岡県沼津市は今年度から市立中学全17校で水泳の授業をやめる。老朽化したプールの改修費が1校あたり約2億円かかり、財政的に厳しいためだとしている。
埼玉県鴻巣市のように、コロナ禍以降、授業を再開せず、そのまま廃止した自治体もある。
学校プールの多くは、1960~70年代に建設された。老朽化に伴う改修費に加えて、多額の水道代もかかり、清掃や水質管理といった教員側の負担の大きさも廃止の理由になっている。
国の学習指導要領では、水泳は小学1年から中学2年まで「必修」とされている。水泳場の確保が困難な場合に限り、授業をしないことを認めているが、財政面や教員側の事情だけで廃止するのは早計ではなかろうか。
水泳は、55年に高松市沖で修学旅行中の小中学生が乗った船が沈没し、168人が犠牲となった事故を機に、授業で教えるべきだという機運が高まった。文部科学省も「水難事故から子供の命を守る点でも重要だ」としている。
一方、近年は生徒から「水着が嫌だ」「日焼けしたくない」といった声も上がっているという。こうした声に配慮し、男女共用水着の導入や手足を覆うラッシュガードの着用なども進んでいる。
熱中症対策を兼ねて、公営の屋内プールなどを授業に活用することも一案だろう。
京都市は昨年度から、小中学校の一部の授業を民間事業者に委託した。教員の負担軽減になるうえ、費用も長期的には学校プールの維持管理より安く済むという。他の自治体にも参考になりそうだ。
改修する学校プールを絞り込み、複数校で共同利用することも検討したい。小中学校間での共用なども選択肢になるはずだ。
日本の競泳は国際的にもレベルが高い。水泳の廃止は競技人口の先細りにつながりかねず、スポーツ振興の流れにも逆行する。
苦境にあるからといって「廃止ありき」ではなく、どうしたら授業を継続できるか、地域ごとに知恵を絞ってもらいたい。
少子化の進展で生徒数が減り、自治体が財政難にあえいでいるのは事実だ。文科省は対応を自治体任せにせず、各地の実態を把握し、持続可能な授業にするために有効な対策を打ち出すべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月19日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説②・04.03】:高校教科書検定 多様さ考える記述こそ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.03】:高校教科書検定 多様さ考える記述こそ
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月03日 07:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・03.29】:教科書検定 デジタルの功罪見極めて
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.29】:教科書検定 デジタルの功罪見極めて
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月29日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・03.29】:高校教科書検定 沖縄戦記述 課題残した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.29】:高校教科書検定 沖縄戦記述 課題残した
文部科学省は2026年度から主に高校1年生が使用する教科書の検定結果を公表した。現行の学習指導要領に対応した2回目の検定で記述変更は小規模だが、沖縄戦に関する記述は課題を残した。
06年度の検定以来、高校日本史教科書における沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に関する記述が注目されてきた。今回、「歴史総合」では11点中7点が「集団自決」に触れたが、明確に日本軍による「強制・関与・誘導」を記述したのは2社にとどまったのは残念だ。
「集団自決」につながった日本軍の強制性を削除した06年度の教科書検定に対し、県民は「沖縄戦の実相をゆがめるもの」と強く抗議した。このことが教科書執筆者や編集者、教科書検定の過程で認識されるべきだが、まだ十分とは言えない。
この中で、「戦時体制下の日本軍による教育・指導や訓練の影響などを受けて、『集団自決』に追いこまれた人々もいた」(第一学習社)のように悲劇の背景に触れる記述があった点は評価できる。「集団自決」は「強いられた死」であることを生徒に伝える工夫を重ねてほしい。
「公民分野」では、各社が安全保障3文書の閣議決定や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保持など、前回検定(2021年)以降の出来事を取り上げ、日本の防衛政策の転換を記述した。在沖米軍基地の重要性が増したと指摘する教科書もあったが、政府の安全保障政策を踏襲するだけでは沖縄の過重な基地負担は伝わらない。沖縄の実情に沿った記述を求めたい。
「基地負担の軽減が進まないなか、沖縄県民のなかには、沖縄以外の人々に現状を理解してもらえていないと感じる人も多い」と県民感情に触れ「基地問題の解決のためには、沖縄だけの問題と捉えず、私たちの問題として、解決策をさぐっていく必要がある」(第一学習社)のような記述は、沖縄の基地問題は国民的課題であることを指導する上で有効であろう。
教師と生徒の対話形式で「台湾有事」と沖縄の軍備増強に触れ「日米が軍備を増強すれば、相手国も同じ対応をして危険性が高まるだろう。やはり、安全保障の問題は、具体的かつ冷静に考えることが大切だね」(実教出版)と諭す記述もあった。「南西シフト」に対する県民の危機感に沿うものだ。
社会科教科書の執筆・編集、検定作業の過程で、時の政権の歴史認識や外交・安全保障政策が教科書記述に色濃く反映する可能性がある。
アジア・太平洋諸国を侵略した過去の戦争の反省、近隣諸国との友好関係、武力ではなく対話を基調とした外交・安保政策の価値を生徒と教師が共有できる教科書記述と教育現場の実践を求めたい。偏った歴史認識や不当な介入を防ぐためにも教科書検定のさらなる透明化が不可欠だ。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月29日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・03.03】:デジタル教科書/利点と課題 幅広く検証を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.03】:デジタル教科書/利点と課題 幅広く検証を
社会のデジタル化が進む中、学校の教科書も姿を変えそうだ。
文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の作業部会は、タブレット端末などで読むデジタル教科書を、現行の代替教材としての位置付けから、正式な教科書に「格上げ」する案をまとめた。次期学習指導要領が小学校で全面実施される見込みの2030年度から使用するのが望ましいとした。
実現すれば、紙、デジタル、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」の3形式から、各教育委員会が選ぶ。教科ごとに使い分けることも想定している。小中高校のどの学年や教科でデジタル教科書を導入するかは、これから議論する。
文科省はデジタルの利点と課題を幅広く検証し、子どもの発達段階を踏まえて教科書作成に反映させる必要がある。何より重要なのは、児童生徒が授業内容を理解し、学びを深めることだ。教育現場でデジタル教科書を効果的に使うための実効ある支援態勢が欠かせない。
デジタル教科書には、文字の拡大や音声の読み上げ、動画の再生といった機能がある。ペンで線を引くことや、図表の切り貼りも可能だ。現在、紙の教科書と併用する代替教材として小学5年~中学3年の英語と算数・数学で導入されている。
実践例も積み上がりつつある。例えば、英語のネーティブ・スピーカーが話す音声を聞かせるときに再生速度を調整したり、算数・数学で図形やグラフを自由に動かしながら考えさせたりしている。「一人一人に合った学習がしやすくなった」と効果を語る教員もいる。
一方、子どもが授業と関係ない操作に集中してしまう、といったデメリットが報告されている。紙の教科書の方が一覧性に優れているとの意見は根強い。2010年代からデジタル化を進めてきたスウェーデンでは紙の教科書に戻る自治体が出てきている。課題の克服には海外の事例も参考になろう。
兵庫県内の小中学校でデジタル教材を積極的に活用している教員たちからは、校内の通信環境の改善が欠かせないとの声が上がる。一度に多くの子どもが使うと端末が動かなくなるケースは少なくないという。国の支援によるハード面の整備に加え、教科書会社にはデータの軽量化といった工夫が求められる。
正式な教科書になれば、検定や小中学校での無償配布の対象となる。外部のウェブサイトなどと接続が可能なデジタル教科書の検定については、範囲や方法を今後詰める。
紙とデジタルの良さをうまく使い分けながら、教員は指導力に一層の磨きをかけてもらいたい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月03日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・02.15】:デジタル教科書 紙との選択制は教育格差生む
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.15】:デジタル教科書 紙との選択制は教育格差生む
教科書は紙とデジタルのどちらを使うのか。現在の紙中心をやめ、自治体に選択を委ねるのは義務教育の地方への丸投げに他ならない。国の責任放棄は容認できない。
文部科学省の中央教育審議会の作業部会が、現在は「代替教材」とされるデジタル教科書を、検定や無償配布の対象となる「正式な教科書」にすることを柱とする中間報告書をまとめた。
2026年度までに制度を改正し、30年度からの使用を目指す。紙のみ、デジタルのみ、その両者を組み合わせたタイプを導入し、どれを使うかを自治体に選ばせる「選択制」を想定している。
義務教育はこれまで、国が全国一律に一定水準の教育を受けられる環境を維持してきた。選択制の導入は、その大転換である。
審議会の下部組織である一作業部会で決める問題ではない。政治の場を含め、義務教育はどうあるべきか、幅広く議論すべきだ。
デジタルは動画や音声を活用できる利点があるが、深い思考や記憶の定着には紙の方が優れているという研究報告が相次いでいる。地域によって使う教科書のタイプが異なれば、学力の格差を始め、様々な混乱が生じかねない。
デジタル先進国のスウェーデンは最近、紙の教科書や手書きを重視する「脱デジタル」に転換した。デジタルだけでは子供の集中力が続かず、考えが深まらないなどの弊害が確認されたためだ。
問題のある政策に、日本が今から突き進むべきではない。
文科省は、子供一人ひとりの学力や学習の進度、特性などに応じた「個別最適な学び」を充実させるには端末の活用が重要だ、としている。部会では「教員も変わらなければ」という意見も出た。
しかし、学校現場には依然として、過度のデジタル化を懸念する声が根強い。教員への十分な研修もせずに、道具にすぎない端末に合わせて指導法を変えろと言うのであれば、本末転倒である。
そもそも高校入試は大半が紙と鉛筆で行われる。大学入試では、50万人近い受験生の学力を一律に測るテストが実施され、生徒はそれに向けた勉強をしている。
デジタルを使って個別最適な教育を目指す、という作業部会の目標は、こうした現実とかけ離れているのではないか。
今後も補助教材としてデジタルの有用性を生かすことが先決だろう。理念先行で現場に浸透せず、学力低下を招いた「ゆとり教育」の教訓を忘れてはならない。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月15日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説②・02.07】:高校無償化 大局的な視点で議論を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.07】:高校無償化 大局的な視点で議論を
誰のため、何を目指し、どんな影響があるのか。継続する財源はあるのか。党利党略でなく、大局的な視点での議論を求めたい。
高校の授業料無償化を巡る協議が、自民、公明両党と日本維新の会で続いている。
所得制限のない高校授業料の無償化を看板政策に掲げる維新が、2025年度の予算案を賛成する条件として実現を求める。
与党は段階的に実質無償化となる所得制限の撤廃案を提示したが、維新がこだわるのは私立高も含めた早期の「完全無償化」だ。子どもの希望や能力に応じ、進学先を選択できる機会が広がると主張する。物価高が続く中、家計の負担軽減にもつながるという。
経済格差を埋める無償化は、国が一定進めてきた。公立高に子が通う年収910万円未満の世帯を対象とし、授業料に相当する年11万8800円を支援。私立高(全日制)も同額で、さらに年収590万円未満の世帯に39万6千円を上限に助成する。所得制限による対象外は3割弱という。
完全無償化で新たに恩恵を受けるのは高所得者層であり、高額な私学授業料を賄う予算がかさむ。
浮いた費用を塾代に回し、教育格差が拡大するとの懸念もある。私立の中には同族経営や企業の系列などもあり、一律に公費投入を増やすのが妥当なのか。
維新の吉村洋文代表が知事を務める大阪府や、東京都が独自に始めた完全無償化は、その余波が広がっている。大阪では私立高を第1希望とする志願者が過去20年で初めて3割を超え、府立高の約半数が定員割れに陥った。東京でも都立高の志願者が減っている。
同じ無償ならばと、特色ある教育や施設環境を整えた私立への希望者が増えたようだ。私立は大阪市や京都市など都市部に集中しており、地方から生徒が流出し、過疎に拍車をかける恐れがある。公立高の再編や中学受験の過熱にもつながりかねない。
全国で完全無償化を実施するには年約6千億円が必要とされるが、恒久財源を確保する見通しも立っていない。
今夏の参院選に向けた党の実績づくりで拙速に進めるようなら、将来に禍根を残すだろう。
維新は立憲民主、国民民主の3党で公立小中学校の給食費を無償化する法案を出している。年5千億円近くを要する。限られた財源の中、子どもの貧困や格差の是正を目指すなら、まずこちらの実現を最優先にしてはどうか。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月07日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【政府】:教員の「残業代」、基本給の10%まで引き上げ…長時間労働の是正へ計画策定も義務づけ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:教員の「残業代」、基本給の10%まで引き上げ…長時間労働の是正へ計画策定も義務づけ
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・教員の処遇改善に向け、政府が通常国会に提出する教員給与特別措置法(給特法)改正案などの関連法案の概要が判明】 2025年02月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説②・01.31】:教員の働き方 業務の効率化をいかに図るか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.31】:教員の働き方 業務の効率化をいかに図るか
教員の給与を上げても長時間労働が変わらない限り、なり手不足は解消されないだろう。業務の削減や簡素化を進め、教育現場を魅力ある職場に変えていかねばならない。
公立小中高校の教員給与が来年度から引き上げられる。これまで「残業代」の代わりに基本給の4%を一律支給してきた教職調整額を段階的に引き上げ、2030年度までに10%とする予定だ。
教職調整額は1972年施行の法律で4%と定められた。これは当時、月約8時間だった教員の平均残業時間に基づいている。
だが現状は、中学校教員の77%、小学校教員の65%が、国の定める残業時間の上限「月45時間」を超えている。教員の採用倍率は今年度、小中高校ともに過去最低だった。長時間労働が要因の一つだと指摘されている。
労働の実態に合わない給与の規定を改めるのは当然だ。だが、より重要なのは、教育現場で常態化している長時間労働をいかに緩和するかであろう。
国は給与の引き上げにあたり、残業の平均時間を29年度までに現状より3割少ない「月30時間」まで減らす目標を掲げた。この達成に向け、実効性ある対策を展開していくことが重要だ。
長時間の会議や煩雑な書類の作成などは、現場の運用で削減できるはずだ。校長のリーダーシップが求められる。保護者対応に経験豊富な教員OBらを活用することなども有効だろう。
神戸市は26年秋までに、市立中学での部活動を終了し、民間団体などを運営主体とした地域のクラブ活動に移行する方針だ。
中学校教員にとって、部活動は特に負担が大きいとされる。地域や学校の実情を踏まえ、外部人材の登用などを進めていきたい。
国は来年度、教職員の定数を5800人増やす。教科ごとに専門の教員が教える、小学5、6年生対象の「教科担任制」を4年生にまで広げることや、中学で生徒指導を担う教員を増やすためだ。
教員の負担を減らすことで、子供と向き合ったり、教材の研究に充てたりする時間を確保し、質の高い教育につなげたい。
社会の変化に伴い、学校で教えるべき内容が増えている。授業時間に対して、教える分量が多すぎるとの指摘もある。学習指導要領に詰め込みすぎがあるなら、国が見直すことも必要だろう。
教員は子供の成長を支える大事な仕事である。それを教員が実感できる環境作りが大切だ。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月31日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・01.24】:デジタル教科書 義務教育の変質招く利用拡大
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.24】:デジタル教科書 義務教育の変質招く利用拡大
過度のデジタル化は教育に悪影響があるとしてIT先進国には教科書を紙に戻す動きがある。
日本でも学校現場の懸念は根強い。それにもかかわらず、国はなぜ今、デジタルへの傾斜を強めようとしているのか、理解に苦しむ。
文部科学省は中央教育審議会の作業部会に、現在は「代替教材」とされるデジタル教科書を正式な教科書に位置づけることを盛り込んだ論点を示した。2026年度までに制度を改正し、30年度から使用することを目指している。
デジタル教科書は現在、小5~中3の英語と算数・数学の一部に導入され、紙と併用されている。これを正式な教科書に変更すれば、紙とデジタルが教科書として併存することになり、いずれも無償給与や検定の対象となる。
作業部会では、紙のみ、デジタルのみの教科書のほか、両者を組み合わせたタイプの導入も検討している。どれを使うかは教育委員会が選ぶ形を想定している。
どれを選択するかで、子供の教育内容に差が生じかねない。全国一律で一定水準の教育を受けられる環境を維持してきた義務教育の大転換だと言えよう。
学びの中核にある教科書の形式をどうするのかという判断を地方に丸投げするに等しく、国の責任放棄ではないのか。
教科書のデジタル移行が進んだスウェーデンは一昨年、学習への悪影響があるとして、紙の教科書や手書きを重視する「脱デジタル」に 舵 を切った。子供の成績が落ち、集中力が続かないといった傾向もみられたためだ。
日本も同じ状況に陥らないか心配だ。スウェーデンの警鐘を重く受け止めなければならない。
深い思考や記憶の定着には、デジタルより紙の方が優れているという研究報告が各国で相次いでいる。小中学校長を対象にした読売新聞の調査では、95%が紙との併用を望み、デジタルのみの利用に懸念を示す声が圧倒的だった。
紙の教科書による授業に特段の支障がないのに、なぜ現場の声を無視して、効果がはっきりしないデジタルへの転換を急ぐのか。
教科書は紙を基本とし、デジタルは動画や音声を活用できる特性を生かすという、これまで通りの代替教材にとどめるべきだ。
コロナ禍でデジタル化の遅れが鮮明になり、国はそれを挽回したいのかもしれないが、強引に推し進めた保険証のデジタル移行は、国民の強い反発を招いた。同じ 轍 を踏むべきではない。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月24日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・01.19】:中学部活の見直し 地域移行、実情踏まえ柔軟に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.19】:中学部活の見直し 地域移行、実情踏まえ柔軟に
教員の多忙化や少子化の中で、中学生の健全な成長に向け、クラブ活動をどう続けるのかが問われている。
公立中学校の部活を地域の団体に委ねる「地域移行」を進める国の方針を受け、京都、滋賀でも具体化の動きが強まっている。
京都市教育委員会は2028年度をめどに、地域指導者のもとで実施する「エリア制地域クラブ活動」と、文化芸術活動やレクリエーション的なスポーツを主に教職員が見守る「放課後活動」の2本立てに切り替える方針をまとめた。
京滋の他自治体でも、休日の部活を中心に民間委託や複数校の合同練習などさまざまな試行が行われている。
部活の地域移行は、教員の働き方改革の一環として、23年度から31年度にかけ段階的に進める方針である。
京都市教委が市立中教員を対象に昨年実施したアンケートでは、約75%が部活動の指導を負担と感じていた。長時間労働が常態化している学校職場の環境改善や、少子化で部活の存続が厳しい地方実態などを踏まえれば、部活の見直しは必要だ。
ただ、中学の部活は豊かな人間関係の構築や個性の伸長、健康づくりといった意義も大きい。こうした教育的効果を継承できるよう、国や自治体は、地域や保護者の十分な理解と協力を得なければならない。
地域移行は当初、25年度を目標としていたが、受け皿不足など課題が多く、実質的に期間が延長された経緯がある。
移行後の実施主体に想定されているのは、保護者や元教員らでつくる地域団体、総合型スポーツクラブ、芸術文化団体などである。京滋では既に、大学の運動クラブやバスケットボールのプロチームから指導者の派遣を受けている例もある。
試行中の民間委託は、指導方針や練習内容を地域の指導者と学校の間で共有しながら進められているとみられるが、完全実施後も、学校や行政による活動への関与は一定残す必要があるのではないか。
生徒や保護者からは教育的な側面が薄れたり、行き過ぎた指導が行われたりしないかといった不安が聞かれる。民間に丸投げするのでなく、生徒が安心して参加できるよう、活動の安全と質を担保する仕組みが欠かせない。
原則保護者負担とされる指導費についても、各家庭の実情を踏まえた助成が要る。
最大の課題は地域格差だろう。都市部以外では、教員に代わる指導者の確保が厳しいとの声が少なくない。指導者の育成や掘り起こしを進める一方、義務教育の機会均等の観点から、学校が運営主体となる選択肢も検討すべきだ。国や自治体の財政支援が求められよう。
一律対応でなく、地域の実情に応じて柔軟に進めてほしい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月19日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説②・01.14】: 教員の職場環境 着実な人手確保が必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.14】:教員の職場環境 着実な人手確保が必要
公立小中学校の教員の給与改善や負担軽減に関する政府の新たな方針が決まった。
【社説・01.13】:学習指導要領/教育現場にもっと余裕を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.13】:学習指導要領/教育現場にもっと余裕を
2030年代の学校教育の在り方についての議論が始まった。画一的な授業から脱し、多様な個性や背景を持つ子どもたちの成長を促す取り組みを着実に進めてほしい。
阿部俊子文部科学相は、小中高校で教える内容や教育目標の基準となる学習指導要領の改定を、有識者らでつくる中央教育審議会に諮問した。指導要領はほぼ10年ごとに見直されており、中教審は26年度中の答申を目指す。新しい指導要領に基づく授業は30年度以降、小学校から順次始まる見通しだ。
諮問は「多様性を包摂する教育」を強調する。現在の指導要領が掲げる「主体的・対話的で深い学び」の方向性を維持しながら、学校の裁量拡大による教育課程の柔軟化、デジタル時代に合わせた教育、教員の負担軽減-の検討を求めている。
例えば教育課程の柔軟化では、1こまの授業時間を5分短縮して浮いた時間を個別学習や探究活動に振り向けたり、学年の枠を超えて過去につまずいた分野の授業を受けられたりすることなどを想定する。
学校現場の自由度を高め、教員の創意工夫を後押しする狙いは妥当といえる。しかし、子どもの多様性に対応しつつ主体的な学びを進めるには、全体の学習内容や授業数を見直し、教員の配置拡充に踏み込むなどして、現場に余裕を持たせることが不可欠だ。
指導要領は改定のたびに内容が膨らみ、「終わらせるだけで精いっぱい」との声が上がる。教員の持ちこま数を減らし、児童生徒に向き合う時間を増やすことが教育の質向上につながるとの指摘は多い。だが、学力低下の批判を恐れる文科省は、このたびの諮問で「(総授業数は)現在以上に増加させない」とするにとどめた。
不登校の小中学生は、23年度に過去最多の34万人超となった。発達障害の可能性がある児童生徒や、外国にルーツを持つ子など、丁寧な支援が要るケースは増えている。そうした中で、文科省は生成人工知能(AI)の発達を踏まえ、情報モラルの育成なども現場に要請している。
十分な対策を取らなければ、教員の負担は軽くならないばかりか、学力格差が広がることにもなりかねない。中教審には、疲弊する学校現場と問題意識を共有しながら、改善への道筋を探ってもらいたい。
国際的な調査では、日本の子どもの学力は世界トップクラスだが、自己肯定感が低く、自律的に学習に取り組む意欲が乏しいとの結果が出ている。次代の「生きる力」を育むために、長期的な視野で教育の在り方を議論し、先進国でも低い教育への財政支出を増やす必要がある。
元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月13日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《社説②・01.11》:神戸市の部活地域移行 先行例の知見広く共有を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.11》:神戸市の部活地域移行 先行例の知見広く共有を
神戸市教育委員会が市立中学校の部活動を2026年8月末で終了し、全面的に地域クラブに移行すると発表した。
少子化や教員の負担増に対応するため、文部科学省が進めている部活動改革の一環だ。平日、休日を問わず、完全移行に踏み切る先行例として注目される。
市教委の審査を通ったスポーツ・文化芸術団体やNPO法人などが、クラブの運営に当たる仕組みだ。保護者らが新たに団体を発足させることも可能で、活動内容は市教委や学校に報告する。
16日からは「KOBE◆KATSU(コベカツ)」という専用のホームページで、活動を引き受ける団体の募集が始まる。届け出の際には、責任者や会計担当者、指導者ら1団体当たり3人以上の登録が必要となる。
市教委によると、市内の生徒数は23年度で約3万4000人、部活動数は971部に及ぶ。これだけの生徒の活動を支えるには相当な数の人材が必要となる。
地域クラブに移っても、多くの場合、引き続き学校施設を使えるが、指導や運営に携わる人をどれだけ確保できるかが課題だ。教員も兼業許可を得て指導に当たることができるものの、地域住民の協力が欠かせない。
民間運営となるだけに、安全管理や指導者の質の担保は大切だ。家庭の費用負担が重くなることも予想される。経済事情で生徒が活動機会を奪われないよう、行政も支援しなければならない。
部活動改革を巡っては各地で試行錯誤が続いている。神戸市のように積極的に推進するのは静岡市だ。全面移行を当初予定の30年8月から前倒しするという。一方、熊本市は受け皿となる団体の確保が見通せず、部活動を継続する。
それぞれの地域の実情に応じた取り組みが必要だ。神戸市など先行例の知見を広く共有し、実現可能な方法を模索すべきだ。
引き受け先がなく、子どもたちの行き場が失われるようなことがあってはならない。地域社会と学校が連携して活動を支える態勢作りが求められている。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月11日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。