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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【話題の本・著者に聞く】:日本一のマンモス私大「日大帝国」の権力と闇 『魔窟』 ■著者・森功氏に聞く

2025-05-04 08:15:20 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【話題の本・著者に聞く】:日本一のマンモス私大「日大帝国」の権力と闇 『魔窟』 ■著者・森功氏に聞く

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【話題の本・著者に聞く】:日本一のマンモス私大「日大帝国」の権力と闇 『魔窟』 ■著者・森功氏に聞く

 日本一の学生数を誇る日本大学。逮捕された田中英壽元理事長(2024年1月没)の時代に築かれた闇を、流行作家の林真理子理事長が切り崩し、改革を断行していくかに見えたが、実態はどうか。ノンフィクション作家の森功氏に聞いた。

 ◆日大田中帝国の権力と黒い繋がり

 ──日大といえば田中英壽という剛腕理事長を想起します。

 08年に日大理事長に選出された田中は、政官業から右翼・暴力団に至る地下水脈とつながり、巨大な利権、言うなれば「田中帝国」を築き上げた。

魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史
『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』(森 功著/東洋経済新報社/1980円/358ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。 

 ──田中の大学統治手法にはモデルがあったようですね。

 田中は、日大中興の祖と呼ばれる古田重二良(じゅうじろう)を師と仰いでいた。

 古田は戦中に縮小された日大の各学部を復活させ、新たな学部を次々に設置すると同時に、既存の学部を拡大・再編して日大を巨大組織によみがえらせた。

 政界人脈を駆使し、私学助成制度の導入にも力を注ぐ。今や私立大学の経営の安定に不可欠となっている私学助成制度は、古田の尽力の賜物だ。

 古田は1962年、各界の大物を引き入れ「日本会」という社団法人を立ち上げている。

 世話人には岸信介、大平正芳、三木武夫、田中角栄、福田赳夫、中曽根康弘ら首相経験者がずらり。松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助や九州電力社長、会長を歴任した赤羽善治のほか、「黒幕」と呼ばれた国際興業グループの小佐野賢治の名もある。

 日本会は日本の権力中枢が集った体制右翼組織だった。これだけの大物を集められる器量が古田にはあった。日本会の名簿には載っていないものの政財界のフィクサー児玉誉士夫や、右翼暴力団・住吉連合会(後に住吉会)の小林楠扶(くすお)とも古田は親交があった。

 ──日本会を組織した目的は何だったのでしょうか。

 古田が頭角を現していった時期は、米軍や日本政府が左翼勢力の弾圧に乗り出した時期と重なる。

 もともと日大は60年代半ばまで学生運動が存在せず、「眠れる大学」と揶揄されるほど学内は静かだった。日本会を率いる古田が、学生運動を徹底的に抑え込んでいたのだ。日本会設立の目的はここにあった。

 政財界を動かした古田が日大の会頭だった65年、日大経済学部に入学したのが田中英壽だ。

 2年後の67年4月20日、学内である事件が起きた。左翼学生たちが大学当局と衝突した「4.20事件」だ。古田ら当時の日大首脳は左翼学生に対抗すべく、運動部員を市ケ谷の本部にかき集めていた。あまり知られていない事件だが、目撃した学生はこう証言している。「応援団や空手部、相撲部などが中心になって(左翼学生に対する)凄惨なリンチが行われた。田中(英壽)は間違いなくその首謀者の一人だった」。

 私が取材で入手した大学内部の資料にも、この事件の加害者として「田中英壽(相撲部)」という名前が記されていた。

 4.20事件は学生運動の熱に火をつけ、日大紛争と呼ばれる激しい闘争へと発展してゆく。

 田中自身は隠していたようだが、田中は伝統ある相撲部員として左翼学生に立ち向かった運動部員の一人であり、そこで存在感を発揮した。後に日本一のマンモス大学の理事長として権勢を誇ることになる田中の原点は、ここにある。 

 ──田中が日大トップに上り詰めることができたのはなぜでしょう。

 カギは経歴にある。99年に理事となった田中は、翌00年に運動部を抱える保健体育事務局長に就任。01年には120万人超の卒業生を束ねる校友会の本部事務局長、本部長、副会長のポジションを得た。02年には学校法人ナンバー2の常務理事に就く。

 校友会は理事や評議員を送り込む。校友会を握れば、大学運営の重要決定事項のキャスティングボートを握れる。こうした仕組みの下で田中は権力基盤を固め、田中派を増やし、田中帝国を築いた。

 その過程では、裏社会との交友もつねにささやかれた。住吉会や山口組の幹部とのツーショット写真がマスコミに出回り、国会でも議題になるほど注目を浴びた。

 ──21年9月から東京地検特捜部が日大の捜査に踏み込みます。

 特捜部は田中帝国の闇に斬り込み、破壊した。同年11月、所得税法違反の容疑で田中を逮捕。当初、田中は無罪を主張したが、翌年の公判では「争う気はありません」とあっさり罪を認めた。

 ──その後、理事長には作家の林真理子が就任します。

 就任会見では「マッチョな体質を変えたい」「親田中派はもういない」などと語り、旧田中体制との決別を宣言した。

 自身もテレビや新聞に頻繁に登場しては改革をアピール。あるテレビ番組に出演した際には「(周囲は)私がここまでガツガツやるとは考えていなかったかもしれない」と自画自賛した。彼女を称賛するマスコミも少なくなかった。

 ◆林真理子改革の失敗と忖度

 ──今や失望の声が聞こえます。

 ガバナンスが欠如している事例は数え切れず、本書に詳しく書き込んだ。典型例が薬物事件だ。

 23年7月、林は理事長就任1年の節目に記者会見を開き、「すべてのウミは出し切った」と胸を張った。だが、実はその1週間ほど前、アメリカンフットボール部の薬物問題が発覚し、日大内部はパニックに陥っていた。林はそのことを知らなかったはずはない。

 その後も日大執行部の不可解な言動が続いた。林改革は成功どころか、旧態依然とした隠蔽体質があらわとなり、ガバナンスはむしろ低下しているという職員たちの告発が絶えない。

 「面白そう」などという好奇心だけで、日大という巨大組織の理事長は務まらない。彼女は理事長を引き受けるべきではなかった。

 ──もともと中央公論新社で出版する予定の本でした。

 その予定で取材・執筆を進めていたのだが、原稿を送った後、中央公論新社から突如、企画中止を告げられた。愕然とした。

 ──出版業界において、流行作家である林真理子への批判はタブーとされています。

 忖度(そんたく)だろう。出版中止に至った経緯は別の機会に書く予定だ。=敬称略=

(聞き手:野中大樹)

 ■著者プロフィール

 『魔窟知られざる「日大帝国」興亡の歴史』著者の森 功氏
[著者プロフィル]森 功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年生まれ。岡山大学卒業後、『週刊新潮』編集部などを経て独立。『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞を受賞。『地面師』『国商 最後のフィクサー葛西敬之』など著書多数(撮影:尾形文繁)
 
・定価:定価 1,980円(税込)
・発売日:2024年12月18日
 
 元稿:東洋経済新報社 東洋経済オンライン 主要出版物 ライフ 【話題・【話題の本・著者に聞く】:日本一のマンモス私大「日大帝国」の権力と闇 『魔窟』 ■著者・森功氏に聞く】  2025年01月26日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【好評既刊】:『魔窟』 知られざる「日大帝国」興亡の歴史

2025-05-04 08:15:10 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【好評既刊】:『魔窟』 知られざる「日大帝国」興亡の歴史

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【好評既刊】:『魔窟』 知られざる「日大帝国」興亡の歴史

 ◆概要

 迷走する「林真理子体制」。裏切られた改革。大宅賞作家が日本一のマンモス私大の「権力と闇」に光を当て、現在進行形のタブーに迫る
 
 大宅賞作家が「日本一のマンモス私大」の「権力と闇」に光を当て、現在進行形の「タブー」に迫る。
 
魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史

 2021年、田中英壽理事長(当時)が率いる日本大学を舞台に起こった一連の事件には、日本の私立大学が長らく抱えてきた共通の病が潜んでいた。日本一のマンモス私大「日本大学」の歴代トップが歩んできた日大の歴史を紐解きながら、転換期にある日本の私大問題を掘る。

 120万の卒業生を日本社会に送り出した日本最大の私学である日大は、私学の歴史そのものを投影しているといっていい。光の裏に潜む知られざる暗黒史もまた、日大の歴史といえる。――「はじめに」より

 文理学部畑の加藤直人から理事長の座を引き継いだ芸術学部出身の林真理子体制になった日大は、田中の側近幹部職員や理事を主要ポストから外し、田中支配から解放された。それは間違いない。反面、こと大学の組織運営という点では、迷走していく。それは、ある意味でカリスマ理事長の田中による統治といガバナンスが機能しなくなったからかもしれない。実のところ、そこを危惧している日大の職員も少なくない。――第9章より 

 ◆目次
 
  第一章 期待の「林真理子体制」迷走の始まり

  第二章 中興の祖「古田重二良」の罪

  第三章 日大紛争が生んだ怪物
 
  第四章 ワンマン理事長「田中英壽」の原点

  第五章 地下水脈に通じた田中帝国の誕生

  第六章 裏社会との腐れ縁
 
  第七章 不祥事

  第八章 流行作家理事長の誕生

  第九章 ジレンマを抱えた改革

  第十章 薬物事件の真相

  終 章 パニックの果てに

 ◎田中英壽体制の地下水脈
 ◎中興の祖「古田重二良」の呪縛
 ◎アメフト部薬物事件
 ◎入学志願数2万2000減
 ◎重量挙部・陸上部・スケート部「被害額1億1500万円超」の金銭不祥事
 ◎「1000億円建替えプロジェクト」医学部附属「板橋病院」の税務調査 など…

 ■著者プロフィール

  森 功  【著】
  もり いさお

  1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、『週刊新潮』編集部などを経て、2003年に独立。2008年、2009年に2年連続で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。2018年には『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)で「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞」受賞。
『同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録』『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『国商 最後のフィクサー葛西敬之』(以上、講談社)、『総理の影 菅義偉の正体』(小学館)、『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』(幻冬舎)など著書多数。
・定価:定価 1,980円(税込)
・発売日:2024年12月18日
 
 元稿:東洋経済新報社 東洋経済STORE 主要出版物 政治・経済・社会 【話題・日本一のマンモス私大の「権力の闇」に光を当てる「魔窟」】  2024年12月18日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【福井県立大学】:国内初の“珍”新学部新設を発表、X興味津々「人気になりそう」「私なら目指す」

2025-04-08 23:55:10 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【福井県立大学】:国内初の“珍”新学部新設を発表、X興味津々「人気になりそう」「私なら目指す」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【福井県立大学】:国内初の“珍”新学部新設を発表、X興味津々「人気になりそう」「私なら目指す」 

 福井県立大恐竜学部の公式X(旧ツイッター)が30日、更新。来年25年4月から国内初の学部が新設されると報告した。

 「国内初、『恐竜学部』誕生」と恐竜の絵文字を添えて書き出し「ようやく仮称がとれました」とつづった。

 公式Xでは、同大が発表した令和7年度(2025年度)入学者選抜要項を掲載。要項によると一般選抜の前期後期や学校推薦型選抜や外国人留学生らが対象の特別選抜など多岐にわたる。理念、目的については「恐竜学部は、福井県で蓄積された恐竜研究をさらに発展させ、地質学を含めた地球科学分野の教育・研究活動を通じ、現代社会の地球科学諸問題に対応するため、幅広い教養と地球科学に関する知識・技術を持ち、多様な局面において協働的および自主的に課題を探求・解決できる人材を育成するとともに、学術情報を地域社会へ積極的に開放することを目的とする」と記している。入学定員は約30名だという。

福井県立大恐竜学部の公式X(旧ツイッター)から

 また、公式Xによると、今月28日に「大学設置・学校法人審議会より、福井県立大学恐竜学部恐竜・地質学科(仮称:申請中)の設置認可を『可』とする旨の答申がなされました」と明かしている。

 「恐竜学部」の新設にXでは「人気になりそう かっこいいなあ」「モンゴルに行ったりしそう」「いいですね! もし私が中学生、高校生だったら絶対目指してるなぁ」「どんな学問領域になるんだろう。生物、気象、地学…あとなんだ、なんか色々ありそうやけど、利活用先として遺伝子とか医学とかプロダクトデザインとか?」などの興味津々のコメントが寄せられていた。

 福井県内の観光名所として「福井県立恐竜博物館」が有名。福井県勝山市村岡町の長尾山総合公園内にある、恐竜を主たるテーマとした自然史博物館。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・福井県立大・恐竜学部の公式X(旧ツイッター)が30日、更新】  2024年08月30日  18:18:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・04.03》:少子化時代の大学再編 地方で学ぶ場守る方策を

2025-04-06 02:03:40 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

《社説②・04.03》:少子化時代の大学再編 地方で学ぶ場守る方策を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・04.03》:少子化時代の大学再編 地方で学ぶ場守る方策を

 少子化や人口減少が続く中でも、地方の若者が大学に進学できる機会を確保する必要がある。

 文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が少子化時代の大学のあり方について答申をまとめた。再編・統合を進めるとともに、大学や学部の設置認可審査も厳格化して総数を減らすことを目指す。

 背景には、大学が増える一方で子どもの数が減っているという事情がある。2024年に約63万人いた大学進学者数は40年には約46万人に減るとの推計がある。

中央教育審議会の荒瀬克己会長(中央)から答申を受け取る阿部俊子文部科学相(右)=東京都千代田区で2025年2月21日午前10時44分、井川加菜美撮影

中央教育審議会の荒瀬克己会長(中央)から答申を受け取る阿部俊子文部科学相(右)=東京都千代田区で2025年2月21日午前10時44分、井川加菜美撮影

 私立大には既に影響が出ている。24年に入学者が定員割れした大学は約6割に達し、過去最高となった。とりわけ人口減が加速している地方の小規模大が置かれた状況は厳しい。

 近年は学生が集まらなくなった私立大を自治体が引き継ぎ、公立化するケースも相次いでいる。

 だが答申は自治体に対して、地域での人材ニーズや財政負担などを考慮し、安易な公立化は避けるよう求めた。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/04/03/20250403org00m040001000p/9.webp?1" type="image/webp" /></picture>

 大学は公共的な存在でもある。地方からなくなれば、経済的な事情で都市部への進学が難しい受験生の学ぶ機会を奪いかねない。

 都市との教育機会の格差を拡大させないためにも、地域に根ざした大学像を模索する必要がある。

 提言には、自治体や企業も参加して地域に必要な人材育成などについて議論を深めることや、大学同士の連携で教育や研究の質を確保することなども盛り込まれた。

 学生が減る中でいかに教育の質を高めるかも課題だ。

 答申は、学生の成績評価の厳格化や履修のアドバイスをする専門職員の導入、大学院の強化などを例示した。社会人や留学生などの受け入れを促進し、多様な学生を確保する提案もしている。

 私立大の数は増え続けてきた。規制緩和の流れを受け、国が1990年代初めに大学設置基準を緩めたことが理由の一つだ。経営者側にも見通しの甘さがあった。

 政策や経営の失敗のツケを次世代を担う若者たちに負わせることがあってはならない。

 教育は人々の人生を豊かにし、社会を支える基盤である。どこに住んでいても、誰もが質の高い教育を受けられる環境を整えなければならない。

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【社説①・03.31】:少子化時代の大学 規模の適正化は地域で議論を

2025-03-31 16:00:30 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【社説①・03.31】:少子化時代の大学 規模の適正化は地域で議論を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.31】:少子化時代の大学 規模の適正化は地域で議論を 

 少子化が進む中、日本の国力の土台となる大学教育の質向上と量の調整をどうするのか。制度設計が問われている。

 18歳人口の急減で定員割れに陥る大学が増えている。昨春で私立大の約6割に上った。

 短期大や女子大は特に深刻だ。京都では龍谷大短期大学部と池坊短大が今春から新入生の受け入れを停止し、京都光華女子大は2026年度の入学生から共学化することを決めた。滋賀でも滋賀文教短大が26年度以降の学生募集を取りやめる。

 定員割れや経営状況の悪化は、教育の質と研究力の低下に直結する。大学が高等教育機関としての役割を十分に果たすためには、教育プログラムや研究環境の充実を図る必要があるのは当然として、過剰となる設置数や定員の適正化に踏み込むこともやむを得ない。

 中教審は先月、今後の高等教育の在り方について阿部俊子文部科学相に答申した。24年に約63万人だった大学進学者は40年には約46万人まで減少し、現在の定員の7割程度しか埋まらなくなるとして、経営難の大学については、規模の縮小や撤退、他大学への統合を強く促している。

 ただ、大学の淘汰(とうた)を市場原理だけに委ねるのは問題が大きい。定員割れに苦しむ大学は地方の私立に多く、都市部と地方の教育格差が広がる恐れがある。大学は地域への人材供給源の役割も担っており、社会インフラとしての公共性も十分考慮する必要があろう。

 答申は、地域ごとに産学官の人材育成や大学規模の適正化も含めた教育の在り方を検討する「地域構想推進プラットフォーム」を設けることを提言している。各論に入れば、大学の再編・統合や自治体への支援要請など、地元に一定の「痛み」を伴う策も想定される。都道府県と市町村で視点も異なろう。

 地域の将来像と大学の役割を重ね、住民と共有して理解と協力を広げる姿勢が欠かせない。

 ただ、地域への丸投げは許されまい。人口減少が想定されながら、規制緩和で大学の新設を認めてきた国の責任も重い。

 学部新設や定員増の要件を厳格化するだけでなく、各大学の財務や定員充足率、地域性を見極め、集約や撤退を適切に誘導する透明性の高い仕組みが要る。大学の統合がしやすい環境づくりも求められよう。

 答申は、国立大も学部の定員規模の見直しが避けられないとして、大学院重点化で定員に振り替えることを提案している。だが、大学院への進学率が低迷する中、実効性に疑問が残る。

 文科省は答申を踏まえ、夏をめどに今後10年程度の政策工程をまとめるという。社会人の「学び直し」や生涯学習の場としての活用、留学生のさらなる受け入れなど多様な選択肢と支援措置を整えたい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年03月31日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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《そこが聞きたい・03.30》:理系女子、なぜ少ない 九州大教授 河野銀子氏

2025-03-30 02:03:00 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

《そこが聞きたい・03.30》:理系女子、なぜ少ない 九州大教授 河野銀子氏

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《そこが聞きたい・03.30》:理系女子、なぜ少ない 九州大教授 河野銀子氏

 <くらしナビ ライフスタイル>

 企業や大学の理工系分野での女性の少なさが課題となっている。女性の理系人材==を増やそうと国を挙げての取り組みが進むが、効果は限定的だ。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/03/30/20250330ddm013070124000p/9.webp?2" type="image/webp" /></picture>

 「理系は男子」のイメージを抱く人も少なくないが、中学生の学力調査では、理系科目で女子が男子に劣らないことも判明した。

 教育や科学分野の男女格差を研究する河野銀子・九州大教授(教育社会学)に背景を聞いた。【聞き手・久野洋】 

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 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【そこが聞きたい】 2025年03月30日  02:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・01.21》:女子医大の元理事長逮捕 経営私物化の全容解明を

2025-01-25 02:03:40 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

《社説②・01.21》:女子医大の元理事長逮捕 経営私物化の全容解明を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.21》:女子医大の元理事長逮捕 経営私物化の全容解明を 

 大学の経営がむしばまれ、医療機能が低下した。私物化の全容を解明しなければならない。

 東京女子医科大の岩本絹子・元理事長が背任容疑で逮捕された。

岩本絹子・元理事長の逮捕を受けた記者会見を終え、一礼する東京女子医科大の清水治理事長(右)と山中寿学長=東京都新宿区で2025年1月13日午後4時2分、北山夏帆撮影

 新校舎2棟の建設で、実態のないアドバイザー業務の対価として建築士に報酬を支払うなどし、大学に1億円余の損害を与えたとする容疑だ。うち約3700万円は元理事長に渡ったとみられる。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2025/01/21/20250121ddm005070122000p/9.webp?1" type="image/webp" />東京女子医科大と元理事長の岩本絹子容疑者を巡る経過</picture>
東京女子医科大と元理事長の岩本絹子容疑者を巡る経過

 新病棟建設の際にも、建築士に支払った報酬から、約5000万円を自身に還流させた疑いが出ている。トップを務めた同窓会組織で、職員らに不明朗な支出をした疑惑もある。

 事実とすれば、立場を悪用して私腹を肥やすという言語道断の行為だ。捜査を尽くす必要がある。

<picture>東京女子医科大の岩本絹子・元理事長=大学ホームページより</picture>
東京女子医科大の岩本絹子・元理事長=大学ホームページより

 元理事長は大学創立者の親族で、2014年に大学の経営を統括する役職に就いた。付属病院で鎮静剤を大量投与された男児が死亡する事故が起き、経営が低迷していた時期だ。

 再建を託されたが、その手法は人件費の抑制や施設の集約など、徹底したコストカットだった。

 一時は黒字に戻したものの、待遇悪化で医師や職員の大量退職を招いた。事故を教訓に設置された「小児集中治療室」も短期間で閉鎖された。病床利用率は落ち込み、収支は再び赤字に転落した。

 一方で、自身の報酬は増額させていた。大学が設置した第三者委員会の報告書は「金銭に強い執着心を持っていた」と指摘する。

 異論を唱える人は排除され、経営陣は「岩本1強」体制になっていった。とはいえ、専横を止められなかった周囲の責任は重い。

 女子医大は、女性医師の養成に特化した国内唯一の大学だ。臓器移植や消化器などの専門医療でも評価されている。

 教育機関や高度医療の拠点として社会的責任がある。公費助成や税の優遇も受けている。

 混乱で最も影響を受けるのは学生と患者である。ガバナンスと経営の立て直しが急務だ。

 私立大の経営トップによる不祥事が相次ぐ。今年4月には、理事会に対するチェック体制を強化する改正私立学校法が施行される。

 公正で風通しの良い組織であるか、運営体制の不断の点検が求められている。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月21日  02:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・01.16】:女子医大逮捕 解体的な出直しが必要だ

2025-01-16 05:03:50 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【主張①・01.16】:女子医大逮捕 解体的な出直しが必要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・01.16】:女子医大逮捕 解体的な出直しが必要だ 

  不明朗な資金流出疑惑で警視庁の捜査を受けていた東京女子医大の岩本絹子元理事長が逮捕された。容疑は1億円を超す背任だ。

  大学の校舎棟建設工事を巡り、嘱託職員とした建築士に、実態がないにもかかわらず、建築アドバイザー報酬名目で、給料とは別に約1億1700万円を不正に支払わせていた疑いが持たれている。

東京女子医大=13日午後、東京都新宿区

  問題は流出資金の使途だ。数千万円が岩本容疑者に還流した疑いがある。自宅など関係先から多額の現金や金品が発見されており、この出所や趣旨の解明も捜査の焦点となるだろう。

  昨年3月に捜索を受けた同大学から委嘱され、第三者委員会が8月に調査結果を報告した。そこには岩本体制の深刻な問題が指摘されていた。

  大学病院で医療事故が相次ぎ特定機能病院の承認が取り消された同大学は経営が悪化した。平成31年に理事長になった容疑者は人件費など経費を激しく削減し、一時的な黒字転換に成功したが、医療の質を顧みない削減は人材流出を招き、医療供給そのものが危機に陥った。

  その陰で容疑者は自分の報酬を上げ続け、第三者委は「金銭に対する強い執着心」「立場の弱い教職員を犠牲にした」と批判した。この延長線上で事件は起きたとみるべきだろう。

  疑惑について容疑者は学外に説明を一切しなかった。医大トップという公人の説明責任をどう考えているのか。極めて無責任だ。説明するよう促さなかった大学の責任も重い。

  同大学は解体的出直しが必要だ。なぜ容疑者の暴走を止められなかったか。第三者委報告と警察捜査を受け、自ら検証して経営態勢を見直し、組織統治を機能させなければならない。

  医療事故の反省から導入したものの、容疑者の誤った経営判断で停止した小児集中治療室をいかに再開させるか。脆弱(ぜいじゃく)化した医療供給体制をどう回復するか。問題は山積している。

  記者会見した同大学は、財務担当理事を置き、内部監査室を改革し、一連の問題に関係した職員への責任追及を行うなどの方針を明らかにした。施策を実効性あるものにするには進捗(しんちょく)を社会に公表する必要がある。

  この不祥事で最も被害を受けるのは患者だ。何のために同大学は存在するのか、根本的な認識から再生を図るべきだ。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年01月16日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・01.16】:女子医大背任 理事長の専横をなぜ許した

2025-01-16 05:00:50 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【社説②・01.16】:女子医大背任 理事長の専横をなぜ許した

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.16】:女子医大背任 理事長の専横をなぜ許した

 医療を専門とする大学の経営再建を託された理事長が、厳しいコスト削減の裏で私利私欲を満たしていたとすれば、言語道断だ。警察は不正な蓄財疑惑を徹底解明してほしい。

 警視庁が、東京女子医大の元理事長岩本絹子容疑者を、新校舎建設を巡る背任容疑で逮捕した。

 岩本容疑者は、副理事長や理事長だった2018~20年、建築士に対し、実態のない業務の報酬という名目で、大学から1億円余りを不正に支出させ、大学に損害を与えた疑いが持たれている。

 警視庁は、このうち3700万円が岩本容疑者に還流し、ブランド品の購入などに充てられていたとみている。岩本容疑者の自宅などからは、現金2億円と、2億円相当の金塊も押収された。

 女子医大には、国の私学助成金も交付されている。不正な資金の流れを明確にする必要がある。

 女子医大の創立者一族で卒業生でもある岩本容疑者は、14年に副理事長に就いた。当時は、付属病院で起きた鎮静剤の大量投与事故の影響で大学の経営が悪化していて、立て直しを担った形だ。

 教職員の人件費削減などで黒字化を果たし、19年には理事長になった。だが、こうしたコストカット優先の姿勢が医師らの反発を招き、退職者が続出した。昨春には同窓会組織を巡る不正給与疑惑で大学が警察の捜索を受けた。

 大学の第三者委員会は、問題が多発する背景に、岩本容疑者の「1強体制」と、金銭に対する強い執着心があったと指摘した。

 他の幹部たちは、トップの暴走を食い止められなかった。その結果、病院は患者離れが一層進み、大学運営は危機に 瀕 ひん している。

 人事や経理の権限を一手に握る容疑者の報復を恐れて異論を挟めなかったのかもしれないが、幹部らの経営責任も免れない。

 大学は岩本容疑者を理事長から解任し、支出のチェック強化などを盛り込んだ改善計画を公表した。計画を着実に実行することが信頼回復の第一歩となろう。

 東京女子医大は日本で唯一、女子だけを対象に医学教育を行う大学として、多くの女性医師を社会に送り出し、高度医療や地域医療にも貢献してきた。大学の混乱は、患者こそが被害者であることを、忘れてはならない。

 私大では近年、理事長らの不祥事が相次いでいる。今年4月には、ガバナンス(組織統治)の強化を図る改正私立学校法が施行される。組織の運営に緩みがないか、各大学で点検してもらいたい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月16日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《憂楽帳・01.09》:冬の記憶

2025-01-09 13:02:30 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

《憂楽帳・01.09》:冬の記憶

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《憂楽帳・01.09》:冬の記憶

 冬の冷気を感じる時期になると、札幌市で過ごした大学院生時代をよく思い出す。

 十数年前に大学院で学んだのは河川工学。暖房のない部屋で長さ10メートルほどの水路に冷水を流し、寒さに震えながら水の動きをひたすら計測する実験に取り組んでいた。つらい記憶だ。

筆者が過ごした北海道大の構内=札幌市北区で2024年3月12日、鳥井真平撮影

筆者が過ごした北海道大の構内=札幌市北区で2024年3月12日、鳥井真平撮影

  院生のつたない研究とはいえ、苦労の一端を経験したからこそ、「抜け道」を探す研究者から目を離せなくなったのかもしれない…、

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《なるほドリ・12.28》:箱根駅伝 MVPなぜ新設? 優勝チームたたえる 金栗杯との重複OK=回答・高橋広之

2024-12-29 02:02:50 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

《なるほドリ・12.28》:箱根駅伝 MVPなぜ新設? 優勝チームたたえる 金栗杯との重複OK=回答・高橋広之

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《なるほドリ・12.28》:箱根駅伝 MVPなぜ新設? 優勝チームたたえる 金栗杯との重複OK=回答・高橋広之

 なるほドリ 箱根駅伝(はこねえきでん)(東京(とうきょう)箱根間往復大学駅伝)までもうすぐだね。今回は誰(だれ)が活躍(かつやく)するかなあ。

箱根駅伝を1位でフィニッシュする選手=藤井達也撮影

箱根駅伝を1位でフィニッシュする選手=藤井達也撮影

 記者 5区の山上りなど、これまでも数々(かずかず)の名勝負が繰(く)り広(ひろ)げられましたね。今回からは、総合優勝したチームの中で最も活躍した選手に「最優秀選手賞(さいゆうしゅうせんしゅしょう)(MVP)」が贈(おく)られます。大会役員らが選考委員となって決定します。

 ■この記事は有料記事です。残り640文字(全文848文字)

 ■続きは、会員登録後、お読み下さい。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【なるほドリ】  2024年12月28日  02:08:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録・12.28】:年内入試

2024-12-28 07:00:40 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【天風録・12.28】:年内入試

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・12.28】:年内入試

 「受験」は春の季語である。憧れの大学を目指し、若者はこの時季、年末年始返上で勉学に打ち込むことが当たり前だった。その光景に何やら変化が起きている

 ▲12月までに合否が分かる「年内入試」の合格者が2023年度に全体の半数を超えた。春どころか、正月前に合格を手に入れ、安心したい若者が増えているのだろうか。初詣で合格祈願の絵馬を掛ける姿を見かけることも、心なしか減った気がする

 ▲大学側にも早めに入学者を確保したい思いが透ける。出生数は大学定員の約64万人に近い水準まで既に落ち込んでいる。定員割れに危機感を募らせるのは当然で、就職時に批判を集めた「青田買い」が入試でも加速しそう

 ▲東洋大が今月行った、新しい年内入試が物議を醸した。面接、小論文ではなく学力テストで事実上選考し、併願も認める。定員の35倍に当たる2万人が志願したが、文部科学省は「学力試験による選考は2月以降」と原則の徹底を求める方針という

 ▲国公立中心の一般入試はこれから本番を迎える。受験を終えた年内入試組に負けず、一般入試組も頑張ってもらいたい。双方が交じる教室で、授業を続ける高校の先生たちにもエールを送る。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2024年12月28日  07:00:00  これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。

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【社説②・12.07】:私立大の経営難 少子化に見合う適正な規模に

2024-12-07 05:01:50 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【社説②・12.07】:私立大の経営難 少子化に見合う適正な規模に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.07】:私立大の経営難 少子化に見合う適正な規模に

 少子化の進行で私立大学の経営環境が悪化している。再編や統合による経営合理化が避けられない。万一の破綻に備え、学生保護の仕組み作りも急がねばならない。 

 文部科学省の試算によると、年62万人いる大学への入学者数は、少子化の影響で、2050年には42万人に減る見通しだ。

 一方、私立大の数は年々増加する傾向にあり、現在は過去最多の624校に上る。人気回復を狙って4年制に移行する短大が相次いでいることも影響している。

 入学者が定員を下回る「定員割れ」の私立大は今年度、6割に達した。入学者の減少で授業料収入が落ち込み、地方の中小規模校などは深刻な財政状態にある。

 経営陣は危機意識を高め、大胆な改革に取り組んでほしい。

 中央教育審議会の部会は、統廃合や定員の縮小を推進し、大学を「適正規模」にしていくべきだとする答申案をまとめた。

 私立大同士で統合するほか、学部を譲渡してスリム化を図る選択肢もある。現状を見極め、早期に対策を講じることが不可欠だ。

 私立大の運営を自治体が引き継ぎ、公立大に転換するケースも目立っている。「公立」のブランドが強みになるうえ、国からの財政措置を得られるため、私立大に比べて授業料が安く抑えられる。

 若者を引き留め、人口流出を防ぎたいという地元の思惑にも合致している。ただ、大学運営にかかる費用が自治体の財政を圧迫する恐れもある。安易な公立化にはリスクが伴うと認識すべきだ。

 経営の改善が見込めない場合は、撤退もやむを得まい。その際、避けねばならないのは、学生を抱えたまま破綻することである。文科省は、大学が突然閉鎖される事態に備え、学生が継続して修学できるルール作りを進めている。

 学生が立ち往生することがないよう、しっかりとしたセーフティーネットを築いてほしい。

 中小規模の私大の多くは、地域で活躍できる人材を育てる役割を担っている。地元産業界の意見も聞きながら、特色ある教育を展開することが大切だ。

 近年は、デジタル人材の育成に主眼を置いた新学部への転換を図る大学も目立っている。時代のニーズを的確に捉え、地域貢献の使命を果たしてもらいたい。

 日本の若者だけにターゲットを絞った大学経営は限界に来ている。社会人や留学生にも魅力を感じてもらえるよう、教育の質を高めていくことが重要だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月07日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・12.03】:名桜大学の30年

2024-12-03 04:00:10 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【金口木舌・12.03】:名桜大学の30年

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・12.03】:名桜大学の30年

 毎月第3日曜日、名護市の宮里公民館前広場で「宮里朝市」が開かれる。地域で育てられた野菜が並び、賑(にぎ)わう中で、住民と触れ合う大学生の姿がある

 ▼名桜大学看護学科生が中心のサークル「VAG」のメンバーだ。朝市に合わせて、地域住民の健康支援活動を続けてきた。先日、大学のある委員会に出席した際、VAGの活動を映像で見た

 ▼学生が優しく話しかけ、血圧測定、健康チェックに応じる、住民の柔らかな表情が印象的。活動は、将来看護の現場に出る学生の糧となる。大学を地域と結び、相互理解を生む役割もあるのだろう

 ▼名桜大は公設民営で開学し、今年で30年。1994年の入学式、当時の東江康治学長は「地方文化の核として地域振興に貢献したい」と語った。2010年に公立大学法人化し、多分野で活躍する人材を輩出している

 ▼健康支援などボランティア活動をする学生をよく目にする。大学近くの飲食店で、学生を前に運動部の成績を喜ぶ店主の笑顔を見たこともある。大学は「地域の核」として着実に成長している。今年9月には新本館も完成した。さらなる大学の発展が楽しみだ。

 元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年12月03日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【産経抄・11.24】:余熱はいまも、「雪の早明戦」

2024-11-24 05:01:40 | 【大学「国公立・私学・大学院・医学系・工学部系」、大学ファンド=優秀な研究成果】

【産経抄・11.24】:いまも、「雪の早明戦」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・11.24】:いまも、「雪の早明戦」 

 歌人の永田和宏さんにラグビーの名吟がある。<首級のごときを抱えてどうと倒さるる泥のラガーを寒く見て立つ>。足場がぬかるむ中での戦いだろうか。楕円(だえん)球を奪い合う選手たちには、泥にまみれたジャージーがよく似合う。

関東大学ラグビー 早稲田大対明治大=昭和62年12月06日

 ▼「泥」と聞いて、雪上の名勝負を思い出すファンも多いだろう。昭和62年12月6日、東京・国立競技場で行われた関東大学ラグビー対抗戦の早明戦である。12月上旬の都心に雪が積もるのは、戦後初めてのことだった。気象庁の記録に2センチとある。

 ▼グラウンドの方々が白く光り、誰かが倒れる度に泥と水しぶきが四散した。橋本謙太郎著『伝説「雪の早明戦」』(双葉社)には、<蒸発した汗が冷気にふれて湯気となり、もうもうと上がった>の描写もある。客席は約6万2千人で埋まり、満場の歓声で空気が震えたという。

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 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】  2024年11月24日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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