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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説・07.09】:百日ぜき/乳児の感染防止に全力を

2025-07-13 06:03:10 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説・07.09】:百日ぜき/乳児の感染防止に全力を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・07.09】:百日ぜき/乳児の感染防止に全力を 

 激しいせきが長期間続く「百日ぜき」が猛威を振るい、今年の全国の累計患者数は6月29日時点で3万9672人にのぼった。近年では経験のない流行だ。乳児が感染すると重症化する恐れがあり、兵庫県などで複数の死者も出ている。赤ちゃんを守るために、感染防止に全力を挙げなければならない。

 原因となる「百日ぜき菌」は感染力が非常に強く、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)、患者との接触で広がる。生後2カ月以降に公費で定期接種する5種混合ワクチンに含まれるが、未接種のまま感染すると肺炎や脳症を併発して死亡することがある。

 近年は治療薬が効かない耐性菌も報告され、兵庫で亡くなった赤ちゃんも耐性菌に感染していた。定期接種を受ける前の感染を防ぎ、時期が来たら速やかに打つことが重要だ。

 兵庫県感染症情報センターなどによると、県内の今年の累計患者数(6月29日時点)は1829人を数え、昨年1年間の患者数207人の9倍近くに上っている。今年3月には生後1カ月の女児が亡くなり、最近11週の新規患者数はいずれも100人台と高止まりしている。

 患者の8割以上が19歳以下で、10~14歳が45%、5~9歳が28%を占める。乳幼児期にワクチンを打っていても年月とともに効果が薄れ、感染の可能性が高まる。日本小児科学会は、就学前と11~12歳での追加接種を推奨している。身近に新生児がいる家庭などでは、任意の接種を検討してほしい。

 かつてない流行は百日ぜきにとどまらない。

 両頰などに発疹が出る伝染性紅斑(リンゴ病)の6月16~22日の患者数も過去最多を更新し、姫路から尼崎まで瀬戸内海沿岸の保健所管内で警報レベルとなっている。

 「パルボウイルスB19」が原因で、飛沫や接触で広がる。患者は子どもが中心で、風邪のような症状の後に発疹が広がるが、通常は1週間程度で回復する。

 注意が必要なのは妊婦だ。初めて感染すると流産や死産、胎児の水腫・貧血につながる恐れがある。子どもとの食器の共有を避けるなど対策が欠かせない。

 異例の流行の背景に、新型コロナウイルスの感染対策で免疫力が落ちていることが挙げられる。学校や職場で感染した人が、家庭などで重症化リスクの高い人にうつす事態を防ぐ行動が求められる。

 新型コロナウイルスもここ数年、夏季に感染が拡大しており、今年も流行の兆しを見せる。手洗いやうがい、マスク着用による飛沫防止など基本的な対策を徹底し、感染症が多発する夏を乗り切りたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年07月09日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・06.10】:アベノマスクの契約 文書の全面開示が必要だ

2025-06-10 07:00:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説・06.10】:アベノマスクの契約 文書の全面開示が必要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・06.10】:アベノマスクの契約 文書の全面開示が必要だ 

 使わないまま捨てた人も少なくあるまい。新型コロナウイルス対策で、2020年に全世帯に配られた「アベノマスク」である。業者との契約過程を記した文書を開示するよう司法が政府に命じた。

 神戸学院大の上脇博之教授が文書開示などを求めた訴訟の判決で、大阪地裁が先週、不開示決定の大半を取り消した。政府側は一部を除き「保有していない」などの理由で文書は不開示としていた。

 判決が指摘したように、業者との交渉を記録した電子メールや報告書が一通も作成されなかったとは考え難い。政府は控訴せず、まずは関連文書を早急に捜し出すべきだ。

 布製のアベノマスクは、全世帯と、介護施設や保育所向けに配られた。使い捨てマスクが不足する中、安倍晋三首相周辺が厚生労働省や経済産業省との事前調整なしに決めた。冷静な検討を欠いた思い付きのような施策だった。

 「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」。新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)の報告書によると、当時の官邸スタッフがそう証言している。

 調達方法も異例だった。通常の入札ではなく、随意契約で進められた。厚労省などが約32千万枚を17業者に発注した。会計検査院の決算検査報告によると、支払額は440億円を超えた。

 納入業者や、政府が公募した時期によって、1枚当たりの単価に大きな開きが生じた。税抜きで62・6150円と24倍に達した。

 不良品も多かった。髪の毛の混入や汚れているとの報告が市町村から寄せられて検品した。チェックしたマスクの約15%に当たる約1100万枚が不良品だった。検品には約21億円を要したという。

 多額の公費を注ぎ込んだにもかかわらず、国民の不評を買った。「無駄遣いだ」との批判の声も上がっていた。

 実際、配布されずに残ったマスクも多く、一時は8千万枚以上も倉庫で保管。その保管費は約6億円に上った。

 不発に終わった施策だからか、アベノマスクに関して、検証に必要な情報を隠そうとする政府の姿勢が目につく。

 業者に発注した枚数と単価を不開示にしたのも、その一つ。上脇教授が提訴して既に2年前、不開示決定を取り消す判決が出て確定している。

 アベノマスクの契約文書に限らない。「桜を見る会」の招待者名簿をはじめ、公文書の廃棄や改ざん、隠蔽(いんぺい)が安倍政権では相次いで発覚した。

 隠蔽体質は今も変わっていない。例えば学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書。財務省が改ざんした問題で、自殺した元職員の遺族側に同省が開示した関連文書に一部欠番があることが今春、明らかになった。政治家との関わりを記した、肝心の時期の文書である。

 公文書管理法は第1条で「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」だと公文書を位置付けている。その重みを政府は再認識して隠蔽体質を転換すべきだ。アベノマスク文書の全面開示を第一歩とする必要がある。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年06月10日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・05.14】:感染症条約 国際連携で対策強化を

2025-05-14 16:05:55 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①・05.14】:感染症条約 国際連携で対策強化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・05.14】:感染症条約 国際連携で対策強化を 

 新型コロナウイルス禍の教訓をいかに生かすか。次なる感染症危機に備えて、各国の対策充実はもとより、国際的な保健協力の強化を加速させたい。

 感染症の世界的大流行(パンデミック)に対処する新たな国際ルール「パンデミック条約」が、19日から始まる世界保健機関(WHO)の総会で採択される。

 WHOによると、新型コロナは2020年から世界的に流行し、死者数は700万人超とされる。実際は2千万人との推計もある。

 感染症は国境を越えて広がるため、対策には各国の取り組みに加え、国際的な連携が重要となる。だが、コロナ時は足並みがそろわず、ワクチンを先進国が囲い込む場面さえあった。

 こうした教訓を踏まえ、パンデミック条約は4月に加盟国間で合意した。医薬品を製造する技術の移転や、対策に必要な資金を途上国が受けられる枠組みを構築する内容が盛り込まれた。

 注目されるのは、ワクチンなど医薬品分配の仕組みだ。先進国と途上国の隔たりを克服するため、感染症の病原体の遺伝情報を製薬会社が早くに入手できるようにする一方、生産する医薬品の1割をWHOへ寄付。さらに1割を入手しやすい価格で提供することで折り合った。

 ただ、詳細な制度設計は持ち越しており、公平なルールづくりが必要である。

 一方、懸念されるのは米国のWHO脱退をトランプ大統領が表明したことだ。最大の資金拠出国として、2022~23年にはWHO予算の約15%の12億8千万ドルを負担していたのが24~25年は停止した。財政面の不安から、WHOは現在76ある部門を半減する計画案を加盟国に示す事態にある。

 トランプ氏は、世界的活動で感染経路の特定や診断力向上に貢献してきた米疾病対策センター(CDC)にWHOとの情報共有を絶つよう指示した。コロナワクチンを開発・供給したファイザーなど米製薬会社の関与にも影響することが懸念される。

 だが感染症危機は米国内だけで封じることはできず、多国間連携への協力と再加盟を粘り強く促す必要がある。

 日本は感染症対策の司令塔となる政府組織に加え、今年4月に専門家組織を統合した「国立健康危機管理研究機構」を発足させた。流行再来に対応できる医療体制の整備やワクチン、治療薬の開発・供給力の向上とともに、パンデミック抑止の国際貢献に努めたい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年05月14日  16:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・04.27】:はしか患者増 海外の流行状況を注視したい

2025-04-27 05:00:55 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説②・04.27】:はしか患者増 海外の流行状況を注視したい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.27】:はしか患者増 海外の流行状況を注視したい

 麻疹(はしか)の患者が世界的に増加傾向にあり、日本でも 罹患 りかん 者の報告が相次いでいる。海外との往来が活発になった今、注意が必要だ。 

 国内で確認されたはしかの患者は今年に入って計78人に上っている。すでに昨年1年間の患者数(45人)を上回った。

 日本はワクチン接種が進んだため、2015年に麻疹ウイルスを排除した国として世界保健機関(WHO)から認定された。にもかかわらず患者が再び増えているのは、流行国からの持ち込みが主な原因とみられる。

 今年、報告された患者の半数は、ベトナムやタイなど外国で感染したとみられるケースだった。

 大型連休に海外旅行を計画している人もいるだろう。アジアのほか、最近は米国の一部地域でも流行している。渡航予定者には、厚生労働省が公開している各国の流行状況を注視してもらいたい。

 訪日する外国人の増加に伴い、国内に感染が持ち込まれるリスクも高まっている。大阪・関西万博が開幕して国内外から人が集まることも、感染拡大に拍車をかける可能性がある。社会全体で警戒を強めることが欠かせない。

 はしかは空気感染するため感染力が非常に強く、感染者と同じ部屋にいるだけでも、うつることがある。感染すると、10~12日の潜伏期間の後、発熱や発疹の症状が出る。重症化すると肺炎や脳炎を起こし、命にかかわる。

 はしかにかかったことのある人は生涯、免疫が続くとされている。かつては日本でも繰り返し流行したため、50歳代以上は感染した経験のある人が多いだろう。

 また、00年以降に生まれた人は、ワクチンの定期的な接種が1歳と就学前の計2回行われており、十分な免疫があると考えられる。

 心配なのは、罹患した経験のない人と、ワクチンを1回しか接種していない人だ。以前は定期接種が1回だけだった時期がある。

 流行国への渡航前などには、医療機関で自分に抗体があるかどうか検査を受け、必要に応じてワクチンを接種することが重要だ。

 ただ、一部メーカーのワクチンが、予防効果が不十分だとして出荷停止となり、供給が不安定になっている。国は他のメーカーなどに働きかけて、生産や流通が滞らないようにすべきだ。

 流行国に出かけた人は、帰国後2週間程度は健康状態に留意する必要がある。発疹などの症状が表れた場合、医療機関に電話した上で医師の診察を受けてほしい。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月27日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・04.20】:週のはじめに考える コロナの宿題と向き合う

2025-04-21 07:24:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①・04.20】:週のはじめに考える コロナの宿題と向き合う

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説11・04.20】:週のはじめに考える コロナの宿題と向き合う

 2020年1月に国内初の感染者が見つかった新型コロナウイルス。急激な感染拡大を受け、政府が同年4月に初の緊急事態宣言を出してから5年を迎えました。

 約3年に及ぶコロナ禍では、マスク着用での通勤・通学が日常に。外出自粛や休業・休校も余儀なくされました。生きるために必要な活動が制限されたのです。
 厚生労働省は今月から、全国の医療機関で新たに風邪症状の患者数の調査を始めました。感染症の動向を幅広く監視し、未知の感染症を迅速に把握するためです。
 治療を担う組織と感染症発生動向を把握する組織を統合した国立健康危機管理研究機構「JIHS(ジース)」も発足しました。

 ◆検証進まぬ感染症対策

 感染症に対する政府の備えは進んでいるように見えますが、対策が機能するのか、不安は消えません。過去の対策の検証が十分に行われていないからです。
 政府の新型コロナ対策を検討・提案した分科会長を務めた尾身茂さんは、最近の共同通信インタビューに「政府の検証は十分とは言えない。仕事、生活、教育にこれほど多大な影響を与えたパンデミック(世界的大流行)の検証をしっかりすることは次の備えに必要だ」と指摘しています。
 検証すべき項目は多岐にわたります。医療提供、専門家と政府との役割分担、全国一斉休校、長期の休業要請、観光支援事業「Go To トラベル」、アベノマスク配布、東京五輪・パラリンピック開催、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置…。
 政府が講じた対策の効果や課題を検証しなければ、次に備えることはできません。
 さらに重い宿題もあります。
 医療現場の献身には感謝しかありませんが、感染症患者が優先されたため、それ以外の患者治療が制限されました。経済活動の制限により職を失って生活が困窮し、自殺した人もいました。
 命を救う対策が、一方で死者を出す結果を招いたのです。
 必要な医療を幅広く提供し、経済も動かして一人も死なせないことは現実には難しい。
 重い宿題とは人の死や医療逼迫(ひっぱく)など社会の「痛み」をどこまで許容するのか、という問いです。価値観の問題にもつながります。
 実は分科会は22年4月、検討のたたき台を示しています。
 感染症が拡大した場合、(1)社会経済活動の法的な制限を実施、医療は特定の医療機関のみで対応(2)同制限を実施、医療は広く地域の医療機関で対応(3)同制限はせず国民の自主的な対策に任せ、医療は特定の医療機関のみで対応(4)同制限はせず自主的な対策に任せ、医療は広く地域の医療機関で対応-の四つの選択肢です。
 社会経済活動の制限を緩めれば感染拡大で死者が増え、さらに医療機関を限定すれば、医療逼迫の懸念が強くなります。
 逆に制限を強めれば、教育や経済に影響が及び、地域の医療機関にも対応を求めれば院内感染などが拡大する恐れがあります。
 中間的な対応もあり、より多くの選択肢が考えられます。

 ◆痛みも直視して考える

 分科会では複数の委員から、(4)を選ぶ場合「感染者が増加し、高齢者を中心に一定程度の人が亡くなるということを、社会が許容することが必要」「感染対策に強い社会は絶対に必要。一方でそこに向かうために一定の犠牲が出ることはある程度仕方がない面も出てきてしまう。その辺りも直視しながら考える必要がある」との意見が出ました。
 別の委員は「どの選択肢が望ましいかは、価値観に依存する。国民の代表である政策決定者の判断だ」と指摘しました。
 分科会は答えを出しているわけではありません。結局、私たち国民しか決められないからです。
 社会には多様な価値観や考え方があります。感染症対策についても何を目指すのか、そのために何を優先するのか、財源や人材をどの程度投入するのかを巡って意見が分かれ、答えは簡単には出ません。その一方、国民の合意がないままでは、対策を講じても社会の分断を招いてしまいます。
 新型コロナの感染は今も続いています。将来、新たな感染症の出現も予想されています。
 多くの人の命が危険にさらされる感染症に備えるには、平時の今こそ、過去の事例をしっかりと検証し、たとえ難しくても考え、議論し、重い宿題にも答えを出しておかねばならないのです。

  元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月20日  07:24:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・04.20】:風邪を「5類」に 新たな感染症の発生に備えよ

2025-04-21 05:00:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説②・04.20】:風邪を「5類」に 新たな感染症の発生に備えよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.20】:風邪を「5類」に 新たな感染症の発生に備えよ

 誰もが経験したことのある 咳 せき やのどの痛みといった風邪の症状の中に、新たな感染症が潜んでいる可能性がある。

 

きめ細かく医療現場の情報を収集し、感染拡大を抑えねばならない。

 いわゆる風邪の症状で、医師の診察を受けた患者数の定点調査が今月7日から始まった。

 政府が昨年、風邪のような症状がある感染症全般を「急性呼吸器感染症」と位置づけ、感染症法上の「5類」に分類したことを受けた措置だ。約3000ある定点医療機関は、患者数などを保健所に報告することになった。

 医療機関はこれまで、季節性インフルエンザや新型コロナウイルスなど病原体ごとに患者数を報告してきた。検査でこうした診断がつかない風邪の症状の患者については、報告の対象外だった。

 このため、新しい感染症が発生したかどうかが分かりにくく、対策が後手に回ってしまう、という課題があった。そこで、風邪の症状全般について、幅広く発生情報を集めることにした。

 こうした患者の一部からは鼻やのどの粘液を検体として採取し、病原体を分析する。得られたデータから、新しい感染症を速やかに把握できる体制を整えたい。

 感染症の情報は、保健所などを通じて国立感染症研究所に報告されてきたが、今年度からは、感染研と国立国際医療研究センターを統合した国立健康危機管理研究機構に集約される。

 研究機構は、感染症の 蔓延 まんえん 時に政府に助言をする役割を担っている。感染動向の情報は、国民にも滞りなく公開してもらいたい。

 風邪が感染症法上の5類となっても、インフルエンザや新型コロナのように出勤や登校が制限されることはない。誤解が生じないよう国は丁寧に説明すべきだ。

 また、風邪とは別に最近は、激しい咳が長く続く「百日咳」の流行が急拡大している。

 百日咳は、細菌が原因の感染症で、乳児は重症化しやすく、肺炎や脳炎を起こすこともある。主に咳やくしゃみの 飛沫 ひまつ からうつる。ワクチンは乳幼児を対象に定期接種が行われている。子どもには速やかに接種させる必要がある。

 感染した場合は抗菌薬で治療できるので、早めに診察を受けることが重要だ。

 新型コロナの流行後、手洗いなど基本的な対策の大切さを実感した人は多いのではないか。一人ひとりが感染症の情報に注意を払い、対策を点検しておきたい。

  元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月20日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・04.08】:コロナ禍5年 感染症担う人材の育成急務

2025-04-09 16:00:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①・04.08】:コロナ禍5年 感染症担う人材の育成急務

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.08】:コロナ禍5年 感染症担う人材の育成急務 

 新型コロナウイルス感染の拡大を受け、政府が最初の緊急事態宣言を発出して、きのうで5年となった。

 大流行の波は沈静化したが、新たなウイルスのパンデミック(世界的大流行)はいつ来ても不思議ではない。コロナ禍の多大な犠牲と混乱を繰り返さぬよう、次の備えが問われている。

 中国が原因不明の肺炎患者発生を発表したのは、2019年末。半月後、日本国内で初の感染者が確認された。

 感染規模を広げながら大流行が次々と襲い、医療態勢が逼迫(ひっぱく)。検査・ワクチン接種の遅れ、マスクや医薬品の不足、病院にかかれぬ自宅死など、社会・経済を止める大きな打撃をもたらした。

 5年間で感染者は国民の6割近い7千万人、死者は13万人に達した。京都府は2500人以上、滋賀県も千人を超える人が亡くなった。

 この冬は「第12波」を免れ、関心が遠のきつつあるが、一昨年5月に感染症法上で季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行後もコロナで4万人が命を落としている。長引く後遺症に苦しむ人も少なくない。

 コロナの再流行への警戒が引き続き求められる。

 一連の教訓を踏まえ、重大な感染症対策の科学的裏付けを担う専門家組織「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」が今月発足した。

 国立国際医療研究センター(NCGM)と、国立感染症研究所を統合し、対応能力の強化を目指す。米国で感染症対策や国民の健康問題に強力に取り組む疾病対策センター(CDC)がモデルである。

 基礎的な研究だけでなく、臨床試験と連携。政府に科学的知見を提供するという。

 感染者の隔離や待機期間に必要な調査分析、リスク評価を速やかに示し、初期からの対応につなげる必要がある。

 コロナ禍では、流行対策の知見の迅速な収集と分かりやすい発信が十分ではなく、感染防止と経済活動の両立を巡り、政府と専門家会議の意見相違が混乱を招いた。

 旧感染研には疫学や公衆衛生の専門家が足らず、対応が後手に回った。

 研究や対応を担う人材育成は急務だ。ふさわしい予算確保と環境整備は欠かせない。

 政府では一昨年9月、感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」を創設した。JIHSと密に連携し、省庁の「縦割り行政」を排した対応と備えへ、具体策を求めたい。

 京都府は、新たな感染症に対して「京都版CDC」の来年度設置に向け、健康対策課を増員した。国は各自治体と意思疎通を強めてほしい。

 コロナ禍の検証は、不十分なままである。国会が調査権を振るい、踏み込むべきだ。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月08日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・04.06】:感染症専門組織 的確な助言を危機に生かせ

2025-04-06 05:00:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説②・04.06】:感染症専門組織 的確な助言を危機に生かせ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・04.06】:感染症専門組織 的確な助言を危機に生かせ

 新型コロナウイルスの脅威は今、忘れられたかのように見える。だが、いつまた新たな感染症が 蔓延 まんえん するかわからない。教訓を踏まえ、準備を急ぐ必要がある。 

 感染症危機に備えた専門家の新組織「国立健康危機管理研究機構」が発足した。病原体の研究と感染動向の調査をしてきた「国立感染症研究所」と、患者の診療や海外支援を行ってきた「国立国際医療研究センター」を統合した。

 研究機構は、東京・新宿を拠点とし、医師や研究者ら約3900人からなる。

 政府は2023年、感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」を創設した。今回発足した研究機構は、統括庁に対し科学的知見に基づいた助言を行い、政府の意思決定を支える。

 コロナ禍では当初、政府に専門的な助言をする機関がなく、流行が始まってしばらくした後に、ようやく専門家会議が発足した。助言のための機関をあらかじめ設けておくことは、初動対応の迅速化につながるはずだ。

 国立感染症研究所は、感染症対策の司令塔としての役割が期待されたが、感染状況の分析にとどまり、感染拡大を食い止める対策の道筋までは示せなかった。

 いざという時に混乱しないよう統括庁と研究機構は普段から意思疎通を重ねることが大切だ。

 研究機構の特徴は、新たな感染症が発生した場合、まず患者を受け入れる病院機能と、病原体を分析する研究所の機能を併せ持ったことだ。病気の実態を迅速に把握し、治療法や新薬の開発につなげる狙いがある。

 日本は海外に比べ、新型コロナのワクチンや治療薬の開発で立ち遅れた。新しい研究機構は、新薬の候補となる物質を速やかに見つけて臨床試験に取り組める体制を整えることになる。

 薬の臨床試験には、他の医療機関の参加も必要だ。各地の主要な病院と平時から協力関係を築いておくことが欠かせない。

 これまで感染研が担ってきた感染情報の収集、分析機能も強化する。コロナ禍では、各保健所の業務が 逼迫 ひっぱく し、国に素早く情報が伝わらず、全体像の把握に手間取った。デジタル化を進め、国と地方の情報共有を促進すべきだ。

 世界の専門家の間では、次のパンデミックは新型コロナとは性質が大きく異なるものになる、とされる。若者の命を脅かすような毒性の強いウイルスの出現もあり得る。警戒を怠ってはならない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年04月06日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・02.05】:高度実験施設 新たな感染症出現に備えたい

2025-02-06 05:00:45 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説②・02.05】:高度実験施設 新たな感染症出現に備えた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.05】:高度実験施設 新たな感染症出現に備えた

  新型コロナウイルスの世界的流行が示したように、感染症に対する備えは国の危機管理の基本である。あらゆる病原体に対処できる態勢を整えなければならない。 

 政府は長崎大学が新設した実験施設について、致死性の高いエボラウイルスなどの病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」に指定した。

 国内のBSL4施設としては、すでに国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)の施設があるが、周辺住民の要望を踏まえ、市外への移転が検討されている。早急に候補地を決め、2施設体制を確保したい。

 感染研の施設が患者の検査・診断などに限定されているのに対し、長崎大の新たな施設は、ワクチンや治療法の開発といった幅広い研究が可能とされる。感染症への対応能力が大きく向上することになるだろう。

 長崎大でも周辺住民の反対運動が起きている。病原体が施設から漏れ出るのではないかと不安に思うのは自然なことだ。ただ、実験室は外気と遮断されており、研究者は専用の防護服を着るなどの感染予防措置が講じられている。

 危険な病原体であればこそ、それを管理し研究しない限り、対策の立てようがない。海外から病原体が持ち込まれ、感染が疑われる患者が出た場合、対応できる施設が国内になければ、迅速に病原体を特定することすらできない。

 世界では20か国以上に約60か所のBSL4があるという。非常時に病原体の分析を他国に依頼している余裕はなく、先進各国は自前の施設を維持している。市街地にある大学や研究所内に併設されることも少なくない。

 政府は施設の役割や安全対策を十分に説明し、国民に理解を深めてもらう必要がある。

 地球温暖化や環境破壊が進むことで、新しい感染症が出現する懸念は年々高まっている。国際的に人や物の往来が激しくなり、いつまた未知の感染症が世界に 蔓延 まんえん しても不思議ではない。

 今回、長崎大の施設が指定にこぎ着けるまで、計画の検討を始めてから15年以上がかかった。日本は、新型コロナワクチンの開発・製造でも欧米に大きく後れをとっている。感染症に対する危機意識が薄かったのではないか。

 長崎大は、施設を安全に運営し、地元の信頼を獲得することが大切だ。BSL4施設の運用や、ウイルス研究に関する人材育成の拠点となることも期待したい。 

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年02月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・01.15】:インフル猛威 集団感染への警戒を強めたい

2025-01-16 05:00:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説②・01.15】:インフル猛威 集団感染への警戒を強めたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.15】:インフル猛威 集団感染への警戒を強めたい

 全国でインフルエンザの猛威が止まらない。患者の急増によって、医療現場では検査キットや薬の不足が起きている。油断せずに基本的な感染対策を徹底したい。 

 インフルエンザの患者数は、昨年暮れの1週間で1医療機関あたり64・39人となり、警報レベルとされる30人を大きく上回った。現在の集計方法になった1999年以降、最多の数字である。

 年末は会食や帰省など大勢で交流する機会が多く、流行に拍車がかかったようだ。年明けは、休診している医療機関が多かった影響で減少に転じたが、冬休みが終わって学校や職場が再開した今、再び感染が広がりかねない。

 心配なのは、タミフルなどインフルエンザ治療薬の一部の製造が追いつかず、供給が一時停止されていることだ。メーカーは増産を急いでほしい。医師は患者によく説明し、効き目が同等の他の薬を処方することも必要だ。

 国や都道府県は治療薬を備蓄している。薬の不足が深刻化した場合には速やかに活用すべきだ。

 新型コロナウイルスの流行が深刻だった頃は、感染対策が徹底され、インフルエンザの流行はなかった。このため免疫力が低下した人が多く、大規模な感染拡大につながった面もある。

 特に注意しなければならないのは、高齢者施設や病院での集団感染だ。お年寄りは肺炎など重い症状を起こすリスクが高い。

 感染予防にはまず、ワクチン接種が肝心となる。高齢者施設などで感染者が出たら、発症していない人に治療薬を予防的に投与する方法も選択肢になる。

 小さな子どもは、インフルエンザによる脳症で死亡例があった。 痙攣 けいれん や意識障害があれば、 躊躇 ちゅうちょ せず救急車を呼ぶ必要がある。

 新型コロナの患者が国内で初めて確認されてから、15日で5年となる。時間がたち警戒感はすっかり薄れているが、今も流行が続いていることに変わりはない。

 手洗いや人が集まる場所でのマスク着用、部屋の換気や加湿など基本的な感染対策を、この機会に再点検してはどうか。

 中国では、風邪の症状を起こすヒトメタニューモウイルスの急拡大が伝えられている。以前からあるウイルスだが、日本でも感染動向を注視することが大切だ。

 今週末には大学入学共通テストが行われる。受験生や家族は基本的な感染対策のほか、十分な睡眠と栄養補給を心がけ、後悔のないよう備えてほしい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月15日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.15】:インフル急増 日々の予防心がけよう

2025-01-15 16:05:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①・01.15:インフル急増 日々の予防心がけよう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.15】:インフル急増 日々の予防心がけよう 

 インフルエンザが各地で猛威をふるっている。

 全国5千の定点医療機関から報告された患者数が昨年末の1週間、現行の統計を始めた1999年以降、最多の31万人を記録し、年明け後も収まる気配がない。一部で医療の逼迫(ひっぱく)や治療薬の供給不足も懸念されている。感染対策を強めたい。

 1機関当たりの患者数は64・39人になった。全国平均で警報レベルの30人を上回り、前週から1・5倍という急増だった。

 京都府内も過去最多の1機関当たり54・88人に、滋賀県も55・78人に上り、両府県はインフルエンザ警報を発している。年末年始、自治体が設けた休日診療所に急患が押し寄せ、京都市では医師を2倍に増やして対応したという。

 九州では1機関当たり100人を超える県もあり、医療崩壊が危ぶまれた新型コロナウイルス流行時に匹敵する水準の地域もある。

 今回の大流行は、コロナ対策が定着してインフルエンザがしばらく流行せず、免疫を持つ人が減ったことが一因とされ、年末年始の人の移動で広がったとみられる。新学期も始まり、社会活動が本格化する中、さらなる感染拡大が危惧される。

 検出されているウイルスは、A型のH1N1。気がかりなのは、例年2月前後に始まるB型の流行期が近いことだ。A型のピークアウトを待たずに重なれば、医療体制をさらに圧迫しかねない。

 特に、高齢者や基礎疾患のある人は重症化リスクが高い。子どもが感染すると脳症の恐れもあり、警戒を怠れない。専門家は、ワクチン接種は今からでも効果があるといい、選択肢の一つになる。

 治療薬の安定供給に向け、一部の製薬会社が出荷の制限や停止を行った。厚労省は、製薬会社などに約1500万人分の在庫を確認しており、冷静に対応したい。

 国内で感染者が初確認され、きょうで5年になる新型コロナも増加傾向で、注意が必要だ。感染法上の分類が5類に移った23年5月から1年間の死者数は約3万2千人。同期間のインフルエンザの15倍で、危険な病気に変わりはない。

 同じ呼吸器感染症のヒトメタニューモウイルス感染症も、中国で感染が広がる。春節(旧正月)に伴う連休が28日に始まり、日本への影響も注視する必要がある。

 十分に休養を取り、手洗い、マスク着用、換気といった基本的な感染症対策の徹底が鍵になる。コロナの教訓を生かしたい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月15日  16:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・01.15】:新型コロナ5年 命を守る「医療」確実に 中国は自由な調査受け入れよ

2025-01-15 05:04:00 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【主張①・01.15】:新型コロナ5年 命を守る「医療」確実に 中国は自由な調査受け入れよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・01.15】:新型コロナ5年 命を守る「医療」確実に 中国は自由な調査受け入れよ 

 新型コロナウイルス感染症の患者が日本国内で初めて確認されてから15日で5年になる。

 国内では昨年8月までに約13万人が新型コロナで亡くなった。後遺症に苦しむ人も多い。また、飲食店をはじめ多くの事業者が打撃を受けた。

 今も、病院や高齢者施設で面会制限などが続いている。新型コロナ禍は終わっていない。

ワクチン開発でも日本は後手に回った

 ただ、多くの人はコロナ禍以前のような生活を送れるようになった。それでも、未知のウイルスによる感染症は今後も発生し得ることを忘れず、万が一の事態に備えたい。

 ■厚労省は反省したのか

 ところが、政府の対応は十分とは言いがたい。それを象徴するのが、コロナ禍に関する本格的な報告書を政府がまとめていないことだ。問題点を洗いざらい挙げて反省しなければきちんとした対策は講じられない。

 まず、初動対応に大きな問題があった。水際対策を巡り政府は当初、湖北、浙江両省からの入国禁止にとどめた。危機感が足りなかった。

 検査体制の拡充に消極的だった厚生労働省の責任も重い。検査と隔離が徹底されず、日本でも感染者がどんどん増えていった。安倍晋三首相(当時)が検査体制強化を求めても厚労省の対応は遅々としていた。民主的に選ばれた首相の指示に医官を含む官僚が従わない事態はあってはならない。

 日本の医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さも浮き彫りになった。

 医師や看護師など多くの医療従事者が患者のため奮闘してくれたことは感謝してもしきれない。今でも医療従事者らはコロナと戦ってくれている。

 ただ、コロナの蔓延(まんえん)当時、日本は人口当たりの病床数は外国に比べて多いのに、入院が必要な患者を適切に受け入れられなかった。医療従事者の集中的な配置がうまくできなかったことなどが背景にある。発熱患者への対応を見送った診療所が多かったことも事実である。

 令和4年の感染症法改正で、都道府県と医療機関は、病床確保や発熱外来などに関する協定を結ぶことになった。自治体は住民にどの医療機関がどのような役割を担うかを周知しなければならない。医療機関の平時からの連携も極めて重要だ。

 6年には政府の自治体への指示権を拡充する改正地方自治法が成立した。国民に重大な影響を及ぼす場合、必要な対応を指示できる特例を設けた。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染で、都道府県境を越えた患者の受け入れ先の調整が難航した反省からだ。

 コロナ蔓延当時でも、新型コロナ対応の特別措置法は、医師や看護師らに必要な医療を行うよう「要請」や「指示」ができる強い権限を厚労相や知事に与えていた。だが、この権限が適切に行使されなかった点を深刻にとらえるべきである。

 ■WHOの改革は急務だ

 ほかにも教訓はある。ワクチンやマスクなどを外国に依存するようでは被害が拡大するという点だ。パンデミックは安全保障の問題である。医薬品の原料確保も課題だ。

 国産ワクチンの開発が遅れ、欧米からの調達を待つしかなかったのは苦い経験だ。本来は日本も真っ先に開発し、諸外国を支援すべきだった。政府と製薬企業は「ワクチン敗戦」を繰り返してはならない。

 中国政府が新型コロナの情報を十分に開示せず、世界に一気に感染を広めてしまった責任は大きい。中国の情報隠蔽(いんぺい)が、日本を含む世界に禍(わざわい)をもたらしたといえる。

 米下院の特別小委員会は6年12月、中国・武漢の研究所に関連した事故で新型コロナウイルスが出現したとみられるとの最終報告書を公表した。

 中国外務省は「信頼性がない」と反発している。ならば、海外の研究者に、自由に徹底調査をさせることを認めるべきだ。世界保健機関(WHO)の国際調査団が発生から約1年後に武漢入りした際、中国側が同意した場所でしか調査を認めなかった。これでは科学的な解明が進むわけがない。

 WHOのテドロス事務局長は中国を擁護し緊急事態宣言の発出が遅れた。責任をとるべきだったが、トップの座に居座っている。WHOは年次総会への台湾のオブザーバー参加を認めていない。感染症対応で台湾という空白域を作っているのは国際社会への背信といえる。WHO改革も急務である。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年01月15日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・01.11】:インフルエンザ急増 暮らしの中で対策徹底を

2025-01-14 04:00:25 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説・01.11】:インフルエンザ急増 暮らしの中で対策徹底を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.11】:インフルエンザ急増 暮らしの中で対策徹底を 

 インフルエンザが全国で猛威を振るっている。県内でも患者数が急増している。日常生活の中で「うつらない、うつさない」の感染対策を怠ってはならない。「二十歳の集い」が各地で開催される連休中の感染拡大を防ぎたい。

 厚生労働省は9日、全国約5千の定点医療機関から昨年12月23~29日の1週間に報告されたインフルエンザ患者数は計31万7812人で、1医療機関当たり64.39人になったと発表した。前週(12月16~22日)は42.66人で、既に警報レベル(30人)を上回っていた。

 この数値は、現行の統計を始めた1999年以降、最多である。昨年同期(21.65人)の約3倍に達しており、今期の患者数の多さは突出している。一部で医療の逼迫(ひっぱく)や治療薬の供給不足も起きており、危機的な状況だ。

 沖縄県内の12月23~29日の定点当たり患者数は24.30人で全国最少ではあるが、決して油断はできない。前週10.43人から2.33倍に増えており、伸び率は全国で最も高い。今後、さらに患者数が急増する恐れがある。

 昨年の夏以降、県内ではインフルエンザ流行の兆しを見せていた。厚労省統計によると昨年9月から12月末までの間、県内では1校で休校、16校で学年閉鎖、78校で学級閉鎖が出ている。県は昨年8月9日から14週連続でインフルエンザ注意報(基準値10人)を出していた。11月15日に解除したものの、12月27日に再び注意報を出している。

 厚労省は基本的な感染対策として「手洗い」と「マスクの着用を含む咳エチケット」を呼びかけている。特に高齢者や基礎疾患のある人が感染した場合、重症化する恐れがある。高齢者と会ったり、大人数で集まったりする場合はマスク着用を心掛けたい。

 手洗いや手指消毒、こまめな換気も必要だ。これらは2020年以降の新型コロナウイルス対策の中で実践してきたことだ。自身と周囲の健康を守るためにも思い出してほしい。基本的な対策に加えてワクチン接種も効果的だ。

 今以上の医療機関の逼迫と治療薬の供給不足の深刻化を防がなければならない。インフルエンザ治療薬の製造が急激な感染拡大に追いつかず、供給の一時停止を明らかにした製薬会社もある。医療現場の混乱を回避するためにも、生活レベルでの感染対策が不可欠だ。

 連休中には県内各地で「二十歳の集い」が開催される。会場には多くの人が集まるはずだ。式典後、飲食を伴う会合を予定している人も多いはずである。これをインフルエンザ感染拡大の場にしてはならない。「咳エチケット」を心掛けてほしい。県や市町村の広報活動も必要だ。

 これから受験シーズンに入る。受験生が万全な体調で試験に臨むためにも「うつらない、うつさない」の感染対策が欠かせない。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月11日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・01.10】:豚熱5年、かつ丼にありがとう

2025-01-14 04:00:10 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【金口木舌・01.10】:豚熱5年、かつ丼にありがとう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・01.10】:豚熱5年、かつ丼にありがとう 

 5年前の年明け、県内で34年ぶりの豚熱が発生した。白い防護服の人間が殺処分した豚を埋却する穴にまかれた大量の白い粉。手塩にかけた豚を思わぬ形で失った養豚家の悲しみ

 ▼中国で「謎の新型肺炎」が出現した時期と重なる。その後、コロナ禍は世界を暗く覆い、毎日のように豚は殺され埋められ、殺処分は1万2千頭を超えた。心冷えたあの季節からもう5年、まだ5年

 ▼全国では今も豚熱終息に至らず、県内では予防ワクチン接種が続き、農家に負担がのしかかる。海外への輸出解禁の見通しは立たない

 ▼いずれは人間に食べられる命。消費者が殺生と食を後ろめたく思うのは一時の感傷か。命の重さを一番知るのは豚を育てる人だろう。殺処分に立ち会い続けた養豚家の姿を忘れまい

 ▼SF掌編も多く描いた「ドラえもん」の藤子・F・不二雄さんは「ミノタウロスの皿」など食にまつわる短編を残した。「人間が食べる原罪を強く自問自答したのでは」と作詞家の児玉雨子さんは指摘する。豚熱発生5年の8日、死んでいった豚のことを思い、ミニかつ丼を食べた。養豚業の「通常運転復帰」も応援しよう。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2025年01月10日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《なるほドリ・01.07》:風邪の位置づけ、変わるんだって? 感染症法上「5類」に 発生動向、早めに把握=回答・肥沼直寛

2025-01-07 02:02:30 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

《なるほドリ・01.07》:風邪の位置づけ、変わるんだって? 感染症法上「5類」に 発生動向、早めに把握=回答・肥沼直寛

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《なるほドリ・01.07》:風邪の位置づけ、変わるんだって? 感染症法上「5類」に 発生動向、早めに把握=回答・肥沼直寛 

 なるほドリ 風邪(かぜ)の感染症法(かんせんしょうほう)上の位置づけが変わるんだって?

 記者 急性呼吸器(きゅうせいこきゅうき)感染症(ARI)を5類(るい)とする対応のことですね。

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 ARIは鼻炎や副鼻腔炎(ふくびくうえん)などの上気道炎(じょうきどうえん)、気管支炎や肺炎などの下気道炎(かきどうえん)を引き起こす病原体による病気の総称です。

 すでに新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)などが5類ですが、風邪や原因不明の急性肺炎などが新たに含まれることになります。

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