【社説①・06.29】:週のはじめに考える 「諍い」を食らう怪獣
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・06.29】:週のはじめに考える 「諍い」を食らう怪獣
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『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・06.29】:週のはじめに考える 「諍い」を食らう怪獣
【養老孟司が考えるゴジラとは?】:日本が生んだ、世界のゴジラを国内外のアーティストが新作で競演
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【養老孟司が考えるゴジラとは?】:日本が生んだ、世界のゴジラを国内外のアーティストが新作で競演
2024年に生誕70周年を迎えたゴジラ。映画の枠を超え、多様なアートによりゴジラの世界観を表現する展覧会「ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展」が森アーツセンターギャラリーで開幕した。
■ 【画像】ゴジラ第一作の映画ポスターをベースに、近日公開の架空の映画ポスターを制作した福田美蘭の《「ゴジラ」ポスター》
■ゴジラとは、何か。
1954(昭和29)年11月3日に公開された映画『ゴジラ』が、2024年に生誕70周年を迎えた。ゴジラは70年の歴史のなかで国内だけでも30作の長編映画が作られ、1998年にはハリウッド版『GODZILLA』が誕生。2014年からはハリウッド版「モンスター・ヴァースシリーズ」がスタートし、2024年公開『ゴジラxコング 新たなる帝国』まで5作品が制作されている。
日本が生んだ、世界のゴジラ。これまで制作された数々の映像作品はそれぞれの時代性を表現しながら、手がける監督によって異なる存在として描かれてきた。ゴジラという同一の名で語られながらも、その姿やあり様は常に変化し続けている。
ゴジラ生誕70周年を記念して森アーツセンターギャラリーで開幕した「ゴジラ・THE・アート展」。多彩なジャンルで活躍する28名の国内外のアーティストが、各々に「ゴジラとは、何か。」を考え、生み出した新作が展示されている。絵画、立体、映像、写真など、その手法はさまざま。多様なゴジラ作品と対峙しながら、自分にとっての「ゴジラとは、何か。」について思いを巡らせたい。
■養老孟司が考えるゴジラとは
ゴジラとは、何か。展覧会のゼネラルプロデューサーである養老孟司は、展覧会開催に寄せて以下のメッセージを発信している。
「私にとってゴジラとはなんだっただろうか。考えてみれば「災害」の象徴として終始あったように思う。1954年、最初の映画『ゴジラ』の背景には、水爆事故や環境汚染への問題提起の姿勢が作者にあったというが、その9年前の1945(昭和20)年に、原爆投下と戦争の終焉を経験した日本人は、なにを考えていたのだろう。
『ゴジラ』公開時に高校生だった私は、映画そのものというより、社会の空気としてゴジラを受け止めていた。だから、ゴジラは、地震や台風といった自然災害も含めた、災害のもたらした歴史や文化、歴史的に日本にある空気の象徴として、私の中にある。なにかうまくいえない、その形にならないものがゴジラとして姿を成し、動き出す。
海外でも非常に愛されているというが、2016年に公開された庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』では、今私が住む鎌倉の界隈が電信柱ごと見事に踏み潰されていて、あっぱれでさえあった。この壊滅のあと、私たちはそこになにをまた生み出すのか、どう再生していくのか。今、なにがアートに求められているのか。ゴジラはずっと無言で問いかけている」(メッセージより抜粋)
■今の目にも衝撃、ゴジラ第一作
1954年制作のゴジラ第一作は、今の目にも衝撃的に映る。記者が初めて同作を見たのは80年代だが、その時以上に作品が放つ熱量が高まっているように感じた。
1954年といえば、終戦からわずか9年。復興に向けて動き出したとはいえ、まだまだ混乱が続いていた時期だろう。1954年3月1日には、アメリカがマーシャル諸島ビキニ環礁で水爆実験を実施。この実験により、爆心地から160km離れた海上で操業していた静岡県焼津港所属の遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員23人は全員被ばくした。
第五福竜丸事件を受けて、東宝の田中友幸プロデューサーは『ゴジラ』に向けて動き出した。田中は4月の東宝の企画会議に企画案を提出するが、上層部は「荒唐無稽、映像化不可能」と一蹴。しかし、ゴジラの企画は秘密裏に進行され、田中は作家・香山滋に原作を依頼。東宝特殊技術課の円谷英二にも声をかけ、着々と作品化が進められていった。
それから3か月後の7月、製作発表記者会見開催。だが、メディアの反応は悪く、読売新聞には「“ゲテもの映画界をまかり通る”原子怪物、東京に上陸」というゴシップ風記事が掲載されたという。
だが、11月に映画が公開されると、日本国内はもちろん、アメリカでも高い評価を獲得した。水爆実験により目を覚ましたゴジラを新兵器オキシジェン・デストロイヤーで滅ぼすという人間の身勝手さ。復興が進む東京がゴジラによって再び破壊されるという断ち切れない暴力の連鎖。被爆国として世界に発信した物語は、世界中の人々に「ゴジラとは、何か。」を考えさせたのだろう。それから70年が経ってはいるが、世界情勢が不安定な今こそ、見るべき映画ともいえるのではないか。
■人気アーティストの新作が集結
展覧会の出品作にはゴジラ第一作に着想を得た作品が多い。福田美蘭はゴジラ第一作の映画ポスターをベースに、近日公開の架空の映画ポスター《「ゴジラ」ポスター》を制作した。ゴジラ第一作の戦慄と恐怖の物語を現代が直面する問題と照らし合わせ、AI兵器による第三次世界大戦の危機を想定している。
映像メディアを用いるアーティストとして、また詩人としても活躍する青柳菜摘は、ビキニ環礁での水爆実験からわずか半年でゴジラ第一作が公開されたことと、その公開1年前の1953年に日本でテレビ放送が始まったことに着目。ゴジラと報道の歴史を重ねながら、映像作品を作り上げた。
これから先、どんなゴジラ映画が制作され、どのようなゴジラアート作品が生まれてくるのだろうか。「あのゴジラが最後の一匹とは思えない。もし、水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類が、また、世界の何処かに現れて来るかも知れない」(ゴジラ第一作、山根博士の言葉)。ゴジラは今も世界を見つめ続けている。 TM & ©TOHO CO., LTD.
◆(ライター、構成作家:川岸 徹)
■「ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展」
会期:開催中〜2025年6月29日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー
開館時間:10:00〜19:00(金曜日・土曜日は〜20:00)
※入館は閉館の30分前まで 休館日:会期中無休 お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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元稿:JBPress 主要ニュース 社会 【話題・TM & ©TOHO CO., LTD.・2024年に生誕70周年を迎えたゴジラ・「ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展」】 2025年05月14日 11:06:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《ひと・03.29》:関雄二さん=4月に国立民族学博物館の館長に就任
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《ひと・03.29》:関雄二さん=4月に国立民族学博物館の館長に就任
◆関雄二(せき・ゆうじ)さん(68)
2024年に創設50年を迎えた国立民族学博物館(民博)の7代目館長に就任する。「今の時代、『ワンマン経営』は求められていない」。新館長として気を配るのは、研究者一人一人の「個」が際立つ環境づくりだ。
小学生の頃、「ファーブル昆虫記」の影響を受け、昆虫採集に熱中。将来の夢は昆虫学者だった。やがて天文学、古代史、神話学などに関心を広げ、東大大学院時代に人類学者・寺田和夫(故人)の誘いで、南米アンデスの考古学調査隊に参加。現地の人々や自然、遺跡の魅力にとりつかれ、アンデス考古学の専門家…、
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元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ひと】 2025年03月29日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《社説①・03.12》:学術会議法人化 法案成立させてはならぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・03.12》:学術会議法人化 法案成立させてはならぬ
学術研究の自由と独立を根幹から揺るがす制度改定である。法人化のごり押しは認められない。政府は法案を撤回すべきだ。
日本学術会議を特殊法人に移行する法案を政府が国会に提出した。日本の科学者を内外に代表する組織として、国の「特別の機関」と定めてきた学術会議の位置づけを転換する。
現行法は、学術会議が「独立して職務を行う」ことを条文に明記している。新たな法案にその文言はない。国は「自主性、自律性に配慮しなければならない」と定めるだけだ。「配慮」にすぎず、尊重するのですらない。
国費で全額を賄ってきた財政についても、「必要と認める金額を補助できる」と定め、国が支える仕組みではなくなる。そればかりか、裁量の権限を握る政府に首根っこを押さえられかねない。
政府は、国から切り離すことで独立性が高まると言うが、まやかしだ。法案は、学術会議の運営や会員の選出に政府が介入できる仕組みを随所に埋め込んだ。
新たに置く監事は、首相が任命し、業務の監査にあたる。加えて、活動計画の策定と実績評価を義務づけ、内閣府の評価委員会が意見を述べる。その委員も首相の任命だ。会員の選出に関しても、外部の識者らによる助言委員会の意見を聴いて選定方針を決める。
国の機関として財政基盤が確保され、独立を法で保障された学術会議が、その土台を失って、身動きを封じられかねない。それは、学問の自由を確保する防波堤が崩れることを意味する。
学術会議の光石衛会長は、自主性・独立性の観点から指摘してきた懸念が払拭されていないとして、法案の閣議決定を遺憾とする談話を出した。法案を検証し、総会で対応を検討するという。
執行部は昨年12月の段階で、法人化を受け入れるかのような姿勢を見せた。懸念が残る点は政府と協議するとしたが、無為に時間を費やし、押し切られた形だ。
法案は、学術会議の実質的な解体につながる恐れが大きい。前会長の梶田隆章氏が言う「日本の学術の終わりの始まり」になりかねない。時を置かずに、会員の総意を明確に示す必要がある。
2020年に菅義偉首相が会員6人の任命を拒否した不当な権力の行使を覆い隠すように、政府は学術会議の法人化に動いてきた。そもそも横紙破りな議論である。学術会議を国の機関から切り離す理由はない。国会は法案を成立させてはならない。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月12日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説①・03.09】:民具収蔵庫の不足 地域とともに考える契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.09】:民具収蔵庫の不足 地域とともに考える契機に
庶民の暮らしで使われ、工夫が凝らされて伝わった数々の「民具」を、どう保存し、継承していくのか。全国各地の博物館は、収蔵スペースが足りないという悩みに直面している。
昨年7月、奈良県の山下真知事は、県立民俗博物館の収蔵庫が満杯になったとして、所蔵する農具や生活道具の整理と部分廃棄を提案した。「価値のないものも引き受けてきたのではないか」と疑問を投げかけた。
これに対し、日本民具学会は、文字で記録されにくい民衆の生活史を物語る貴重な資料群であると反論し、知事の提案は「博物館や学問の理念そのものを脅かす」と声明を発表した。
1974年開設の同館は、県内から収集、寄託された農具や民具など有形民俗文化財4万5千点を所蔵する。設備の老朽化から、資料の半数を廃校舎や土木事務所に仮置きしている。
このため、県は専門家の委員会を設け、収集や保存に関する基準を策定した上で、3次元データで残すデジタルアーカイブ導入や、基準に満たない資料は市町村や民間への譲渡か、廃棄で集約する方向を示した。
ただ、民具は複数あることで比較研究でき、後で価値が見直されることもある。地域の生活と密接に関わり、土地から切り離せば意味を失いかねない。安易な現物廃棄は避けたい。
京都と滋賀の施設でも、増え続ける民具の置き場は課題だ。
特に過疎化や高齢化が進む地域では、増加する寄託や寄贈を引き受けられない事例も多い。収蔵品があふれ、プレハブ倉庫や公民館に仮置きする施設もある。職員たちは「住民共有の財産を簡単には処分できない」というジレンマを抱える。
高度経済成長期、失われゆく民具の収集運動が盛り上がり、各地で博物館や資料館ができた。半世紀以上たち、自治体の財政が逼迫(ひっぱく)して予算や人員が削られる中、多くの施設は収蔵庫を増設する余裕がない。
法政大の金山喜昭教授らが全国の公立施設に収蔵庫に関して尋ねたアンケート調査で、3割超が「入りきらない資料がある」とし、4割以上が「ほぼ満杯状態」と答えた。
問題は、どのような資料を収集し、どう活用するのか、理念と指針が不明確なままであることだ。廃棄や散逸を見過ごせない難しさもあっただろうが、議論を尽くし、一定の基準づくりは欠かせない。
一方で、複数の館が連携し、農業や漁業など分野別に分担して保管する動きも出ている。愛知県では、公立3館が共同収蔵庫を設ける計画を進める。
顧みられなかった生活道具に価値を見いだす「民芸」という言葉が誕生し、今年で100年となる。何を残し、伝えていくか。民具を最もよく知る地域の住民たちが関わり、ともに考えていくきっかけとしたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月09日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【社説②・01.19】:国立劇場再整備 国際的な視野で活用法を探れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.19】:国立劇場再整備 国際的な視野で活用法を探れ
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月19日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《ひと・01.11》:ヤン・トゥーレさん=日本の陶芸の魅力をフランスに紹介
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《ひと・01.11》:ヤン・トゥーレさん=日本の陶芸の魅力をフランスに紹介
◆ヤン・トゥーレ(Yann Touret)さん(43)
2024年11月12日から約1カ月間、日本に滞在し、三重県以西の陶芸家約30人を訪ね歩いた。自分の店舗で作品を扱う陶芸家との再会や新規開拓が目的の「セラミックツアー」は、東日本中心だった23年に続き、今回で2回目だ。各地で作陶に使う土や釉薬(ゆうやく)、技法も異なるなど、日本の陶芸の多様さに改めて驚き、興味は尽きないという。
フランス北西部ブルターニュ地方で生まれた。無印良品のパリの店舗に就職した後、源氏物語を通じて日本の文化に興味を抱き、08年に旅行で初めて日本を訪れた。滞在した京都の民宿では、提供する料理や和菓子に合わせて多種多様な陶磁器を使いわけており、手作りの素朴さ、繊細さに引かれた。
■この記事は有料記事です。残り317文字(全文644文字)
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ひと】 2025年01月11日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《24色のペン・01.10》:働く=稼ぐ? 「数値化する社会」を問う=清水有香
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《24色のペン・01.10》:働く=稼ぐ? 「数値化する社会」を問う=清水有香
働くのはお金を稼いで生きるため。でも、その「生」が脅かされているとしたら、働く意味はどこにあるのだろう。過労死防止法の施行から10年を経てもなお、過酷な労働による健康被害や自殺は後を絶たない。
「今の世の中、働くことがすごく矮小(わいしょう)化されていると思うんです」
奈良県東吉野村で私設図書館を開く思想家の青木真兵(しんぺい)さん(41)は語る。「労働力を提供し、その対価として賃金をもらう。これは働くことの一部でしかない」と。
ならば、働くことの本来の意味はどう捉えたらいいのか。青木さんは「数値化できないもの」というキーワードを挙げる。
奈良市内から車で約1時間半。山のふもとの小さな橋を渡り、杉木立を抜けた川のほとりに平屋の古民家がある。“彼岸の図書館”をうたうそこは、青木さんと妻・海青子(みあこ)さん(39)が2016年から自宅を開放して運営する「ルチャ・リブロ」だ。
館の名前は、メキシコのプロレス「ルチャリブレ」と、本を意味するスペイン語「リブロ」にちなむ。どちらも青木さんが愛してやまないもの。板張りの居間や和室の棚には、歴史や哲学書、文学を中心とした約3000冊が並ぶ。本に貼られた数々の付箋が、夫婦の蔵書であることを物語る。
2人は9年前にこの山村に移り住むまで、兵庫県西宮市で暮らしていた。
青木さんは当時、古代地中海史の研究者として…
《フィールドの向こうに・01.09》:2025年の「自分史」=田原和宏
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《フィールドの向こうに・01.09》:2025年の「自分史」=田原和宏
2025年は「昭和100年」、戦後80年、さらに阪神大震災から30年にあたる。節目の年だが、一介のスポーツ記者が論じるには荷が重い。歴史のことは歴史家に聞け。東京・神保町の古書店を巡ると、色川大吉さんの著書「ある昭和史―自分史の試み」(中央公論社)の一節が目に留まった。
「人は誰しも歴史をもっている」
色川さんは正史よりも、名もなき人々の思いをつなぐ「民衆史」「自分史」の提唱者で知られる。21年に96歳で亡くなった。同時代にあって歴史の流れを見極めるのは難しい。個人の体験や認識がどれほど限られ、偏っているか。悔いや過ちを含めて書くことで、歴史の全体像に近づけると説いた。
■この記事は有料記事です。残り646文字(全文935文字)
《水説・01.08》:「笑顔」のパワー=赤間清広
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《水説・01.08》:「笑顔」のパワー=赤間清広
<sui-setsu>
笑う門には福来たる。「笑いが絶えない人や家には自然と幸福が訪れる」ということわざだ。
これは単なる「精神論」ではないらしい。
「笑顔を意識するだけで、身体的にさまざまなプラス効果が期待できると分かってきたんです」
教えてくれたのは国際パフォーマンス研究所の佐藤綾子代表だ。日本におけるパフォーマンス学の第一人者である。
佐藤さんは東京都内の医療機関などと協力し「笑い」のパワーを研究し続けている。
■この記事は有料記事です。残り746文字(全文957文字))
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【水説】 2025年01月08日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《あした元気になあれ・01.07》:自分の翼で羽ばたけ=小国綾子
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《あした元気になあれ・01.07》:自分の翼で羽ばたけ=小国綾子
「若い頃は『わたしを束ねないで』と詩に書いたけど最近は束ねられたい気持ちになるのよね」。95歳で亡くなった詩人、新川和江さんは約30年前、そんなふうに語ったことがあったそうだ。
これは新川さんの「お別れの会」(昨年12月8日)で、音楽家の吉岡しげ美さん(75)が明かしてくれたエピソード。吉岡さんは45年間以上、女性詩人の詩に曲をつけ、歌ってきた。「わたしを束ねないで」ももちろん古くからのレパートリーだ。
「束ねられたい、ってどんな思いだったのかなあ」と首をひねる私に、吉岡さんは「束ねられることも減り、自由になれた60代、ふっと物寂しさを覚えるのも人生だものね」とほほえんだ。
《ひと・01.07》:池上彰さん=角川武蔵野ミュージアムの館長に就任
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《ひと・01.07》:池上彰さん=角川武蔵野ミュージアムの館長に就任
図書館であり、美術館であり、博物館でもある異形の文化施設に、自身が魅了されている。「良い意味での『ごちゃまぜ』。あらゆる要素による、新たな融合が生まれるのではないか」と胸を躍らせる。
長野県出身。NHKで長く社会部記者として働いた後、「週刊こどもニュース」のお父さん役で親しまれた。2005年にNHKを退職してフリーのジャーナリストに。本の執筆に大学教員、テレビ出演と、多忙な日々を送る。
ニュースをはじめ「物事を分かりやすく伝える」営みの第一人者だが、「説明できないこと、理解しづらいことも実は大切」という。「頭の中がはてなマークでいっぱいになることで、人間は成長するのではないか」
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《そこが聞きたい・01.05》:「読まぬ人6割」の時代に 神奈川近代文学館長 荻野アンナ氏
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《そこが聞きたい・01.05》:「読まぬ人6割」の時代に 神奈川近代文学館長 荻野アンナ氏
<くらしナビ ライフスタイル>
横浜市中区の神奈川近代文学館==の館長に2024年4月、仏文学者で作家の荻野アンナさんが就任した。創立40年を迎えた同館の展覧会やイベントには多くの人が来館する一方、読書環境の変化に伴い、新たな取り組みも期待されている。6代目館長の荻野さんに、文学館に求められている役割について聞いた。【聞き手・棚部秀行】
――昨春に新館長に就任して約9カ月がたちました。橋本治、庄野潤三、安部公房ら話題の特別展が続き、多くの来館者がありましたね。
■この記事は、有料記事です。残り2029文字(全文2272文字)
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元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【そこが聞きたい】 2025年01月05日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
《発言・01.01》:実演芸術にもっと価値置く国に=尾上墨雪・日本芸能実演家団体協議会理事
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《発言・01.01》:実演芸術にもっと価値置く国に=尾上墨雪・日本芸能実演家団体協議会理事
新たな年を迎え、新春公演が始まる。私たち伝統芸能に携わる実演家にとって、国立劇場は年初めの華やかで初々しい心持ちで立つ特別な舞台だった。それが閉場し、1年以上が経過した。
国立劇場再整備は先の見えない状況が続いたが、昨年末に国が補正予算を計上したことで、我々もようやく胸をなでおろした。しかし、一部予算が上乗せされただけで安心してはいられない。劇場とは単なる建築物ではなく、公演が行われ、観客が入って初めてその役割を全うするのである。日本の伝統ある芸を継承し、創造と発展を支える場として、再整備中と再開場後も、継続的な予算措置が必要であることは言うまでもない。
私も一人の舞踊家として、大切な劇場が長期間失われることに対して大変な危機感を持ち、日本の顔である劇場の整備は、国が責任を持って行うべきだと強く訴え続けてきた。この国で実演芸術を豊かに創造し続けることはできるのか。伝統芸能に関わらずとも、多くの方が疑念を抱いたに違いない。
■この記事は有料記事です。残り863文字(全文1280文字)
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元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【発言】 2025年01月01日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
【小社会・12.27】:布袋さん
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.27】:布袋さん
ぷっくり膨らんだおなかと頬、傍らの大きな袋にもたれかかり、気持ちよさそうに居眠りをしている。その寝顔を見ていると、こちらもなんだか幸せな気分になってきた。
いろいろと気ぜわしい師走。高知県立美術館で開かれている「生誕200年 河田小龍展」で、ほっと一息つける絵に出合った。掛け軸の「眠り布袋図」。
おどろおどろしい芝居絵で知られる幕末の絵師、金蔵(絵金)から影響を受けるなど、小龍は時代とともに作風を変えてきた。芝居絵と対照的な七福神の寝姿。つい見入ってしまった。
もともと小龍は松梁、小梁などと号した。龍を描くのが得意で自信もあったのだろう。明治期に読みが同じ小龍としたという。険しい眼の龍が天上をにらむ掛け軸も会場にあった。名前を変えた理由がよく分かった。
その龍(辰=たつ)から蛇(巳=み)へ、バトンタッチをする日が迫ってきた。この1年さまざまな出来事があった。元日の能登半島地震に始まり、国内の政治状況の変化、各地の紛争…。昨日の本紙によると国内の平均気温が連年で最高を更新しそうだという。「異常な高温」。気象庁担当者の言葉は重い。来る年も多くの課題に向き合わねばなるまい。
布袋様の袋には何が入っているのだろう。福の神だけに暮らしに役立つたくさんの知恵が詰まっているのかもしれない。お知恵を拝借? いやいや、居眠りの邪魔をしてはならない。まずは自分たちで―。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】 2024年12月27日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。