《社説①・08.21》:プラ合意見送り 条約策定へ協議続けよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・08.21》:プラ合意見送り 条約策定へ協議続けよ
プラスチックによる環境汚染への歯止めが、またもまとまらなかった。
国際社会は深刻な影響への危機感を共有し、実効性のある規制に向けた合意形成を急がねばならない。
スイスで開かれていたプラスチック汚染防止に関する国際条約作りの政府間交渉委員会は、今会合での条文案合意を断念した。
2022年の国連環境総会で条約策定を決めたが、24年内の合意を目指した韓国での交渉に続く失敗となった。
再び交渉委を開くとするが、具体的な時期などは未定という厳しい状況である。
最大の焦点だったプラ生産規制の導入を巡って、意見が一致しなかったことが大きい。
大量の漂着ごみの被害を受ける島しょ国や環境問題に熱心な欧州連合(EU)は、世界共通のプラ削減目標の設定、有害プラ製品の製造や輸出入禁止を訴えた。
しかし、サウジアラビアなど原料の石油を産油する中東諸国側は、需要減を警戒して「廃棄物対策を強化すべき」と反対し、米国も同調した。
トランプ米大統領は、紙製ストローへの転換を中止するなどプラ規制の効果に懐疑的で、「サウジの後ろから耳打ちしていた」と指摘されている。
だが、広がる汚染に手をこまねくことは許されない。
経済協力開発機構(OECD)の推計で、19年にプラ生産量は4億6千万トンを超えた。うち3億5千万トンが廃棄され、いずれもこの20年で倍増している。リサイクル利用されるのは1割に満たない。
海洋に流出したプラごみは、50年までに魚の総重量を上回るとする試算もある。
波や紫外線の作用で微細になったマイクロプラスチックは、魚や鳥のみならず、人間の脳や血管からも発見されており、今、手を打たないと多様な命に影響が及びかねない。
日本の責任も重大である。
1人当たりのプラ容器包装の廃棄量が世界2位になり、リサイクル率の高さなどをアピールするが、6割以上は焼却して発電などに使う熱回収だ。原料そのものの再資源化は進んでいない。
「川下」の廃棄物対策に限界があり、「川上」の生産まで全段階で地球規模の規制が求められる。
大量生産、大量消費を見直し、持続可能な世界へ粘り強く一致点を見いだしたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年08月21
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