【社説・08.17】:老いる水道施設/着実な更新でリスク減を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・08.17】:老いる水道施設/着実な更新でリスク減を
兵庫県内にある水道インフラの「老い」が進んでいる。県によると、県内の水道管総延長は2022年度時点で2万8673キロに及ぶ。うち26・1%が法定耐用年数の40年を超え、全国平均の23・6%を上回る。
埼玉県八潮市では1月、下水道管の腐食が原因とみられる道路の陥没事故が起きた。水道事業は自治体が担っている場合が多い。老朽化や自然災害によるリスクは高まっており、設備の更新や耐震化を着実に進める必要がある。
姫路市は、赤穂市から家島諸島へ水を送る「海底送水管」を今後約20年かけて更新する。約14キロの管路は日本最長で敷設から40年が経過した。総額100億円超の大事業だ。
計画決定にあたり、船による水の運搬、海水から淡水をつくる施設の整備、新しい送水管への更新-の3案を比較し、維持管理費が抑えられる送水管更新を採用した。
姫路市が更新に踏み切った背景には、離島ならではの事情がある。人口減に伴う料金収入の減少で水道事業の経営悪化が全国的な課題となる中、浄水場の集約など広域連携を模索する自治体は多い。しかし、離島では施設の統廃合は難しい。
多額の費用がネックだったが、国の補助が決まった。離島への海底送水管を持つ姫路市など全国13の自治体と団体が、財政支援を国に求めていた。県内ではほかに淡路島から沼島に海底送水管が通っている。
昨年1月の能登半島地震では、水道管損傷に伴う断水被害が中山間地といった地理的要因も相まって長期化した。埼玉県の道路陥没事故もあり、政府は「国土強靱化(きょうじんか)」の次期計画(26~30年度)に老朽化した上下水道管の更新などを盛り込んだ。
日常的な水道施設のメンテナンスや修繕も欠かせないが、予算や技術職員の不足が壁となっている。国は財政支援に加え、技術者の育成や確保など、自治体への幅広いサポートに取り組むべきだ。
一方、自治体は将来にわたって安心・安心な水道事業を維持するために、収支状況を住民に丁寧に説明してほしい。受益者である住民と課題を共有し、将来像を議論することが肝要だ。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年08月17日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。