【HUNTER・2025.04.18】:鹿児島県医師会元職員の強制性交事件に新証拠|「録音データ」は犯罪の証明
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・2025.04.18】:鹿児島県医師会元職員の強制性交事件に新証拠|「録音データ」は犯罪の証明
2021年秋に新型コロナウイルス感染者の療養施設で起きた鹿児島県医師会の男性職員(2022年10月に退職。以下「男性」)による強制性交事件の民事裁判に、これまで刑事事件の捜査過程でも明かされていなかった証拠が提出された。被害女性側の弁護団が新たに示したのは、男性職員が被害女性の雇用主に呼ばれ“犯行”を自供した際の録音データ。衝撃的な内容によって、「合意に基づく性行為」だと強弁してきた男性と県医師会の主張が揺らぐ展開となっている。

■事件発覚から4年、録音データの衝撃
(*原告=被害女性 被告=元男性職員 証人C=女性の雇用主)
今年1月に鹿児島地方裁判所で開かれた民事訴訟の法廷に提出されたのは、男性が被害女性の雇用主に呼ばれ、事件の経緯を“白状”した際の録音データ。被害女性の代理人弁護士が録音データに沿って尋問したが、男性の証言は、傍聴人全てを納得させ得る合理的な説明とは言えないものだった。
女性の代理人弁護士が、静かに語り出した。“令和3年12月1日の証人Cとの面談状況を聞くが、被告は証人Cから頬っぺをたたかれた記憶があるか?”
これに対して被告は、「もちろんある」「音がある」「確実にそうだ」と証言。録音データに残された『パン』という音を、被告は「たたかれた音だ」と断言した。
しかし、女性の雇用主である証人Cはこの日午前中の法廷で、「持っていたファイルで机をたたいた音」だと説明。その場にいたという別の職員の証言も、「手に書類かファイルかを持って。それでパンパンと(机を)たたいた」という内容だった。原告の女性は、被告代理人の質問に対し「紙でテーブルをたたいたような音」と振り返っており、その場にいた3人が、表現は違うものの被告の言い分を否定した格好となった。
一連の性的行為について被告は、原告女性から誘われたものだったと主張する。しかし、録音データに沿った質問への被告の答えは、自身の主張と著しく矛盾する。
・雇用主に、“お前、何をしたんだ?”と聞かれ――「(原告と)セックスしました」
この後の女性の代理人弁護士が質した“セックスの事実を認めるか”に対しては――「もちろん」。さらに、女性の代理人弁護士から“女性に対しすいませんでした”と言ったかどうか問われ――「はい、そうですね」。不服そうに事実関係を認める被告だったが、録音された際の雇用主とのやり取りを巡っては防戦一方となる。以下は、代理人弁護士によって明かされた録音データの内容から。
・雇用主からセックスに至った経緯を聞かれ――「女性と2人でいろいろ話をしたから(セックスに至った)」「セミナーでお世話になった頃から原告Aさんに好意はあったのは確実(だから性的行為に走った)」
・雇用主から“話をしただけでセックスするのか”と聞かれ――「多少、強引に」
・雇用主に“多少?”と問い返され――「多少でもないですね」
・雇用主が“それを一般的には何というのか”と詰めると――「一般的に言えば強姦罪です」
法廷でのやり取りと録音データから分かったのは、男性が雇用主に呼ばれて部屋の中に入ってからの、次のような経過だ。
・男性職員が雇用主から呼び出しを受け、雇用主、被害女性、別の男性職員の3人がいる部屋に入室。
・雇用主から「お前、何してるの」と問われる。
・雇用主から“座れよ”、“もっと前に”などと言われソファに腰を落とす。
・雇用主から“言いたいことはないか”、“何をしたのか言えよ”と告げられ――「(原告と)セックスをしました」
・雇用主からセックスに至った経緯を聞かれ――「女性と2人でいろいろ話をしたから(セックスに至った)」
・雇用主から“話をしただけでセックスするのか”と聞かれ――「多少、強引に」
・雇用主に“多少?”と問い返され――「多少でもないですね」
・雇用主が“それを一般的には何というのか”と詰めると――「一般的に言えば強姦罪です」
録音データが示したのは、「セックスした」「強引に」「強姦です」という行為についての一連の言葉が、被告男性から発せられたもので、雇用主の誘導は一切なかったということ。つまり強制なき『自白』だ。男性はこの数日後に「罪状」と題する文書を手書きし、その画像を雇用主にSNSで送信していた(*下の画像)。文面には「強制性交罪等であることを認めます」。録音データが、男性が無理強いされたのではなく、自ら進んで罪を白状し、さらに罪状を認める文書まで作成したことを証明した形だ。

法廷での尋問と録音データの内容は、他の重要な事実まであぶり出した。男性側が裁判所に提出した準備書面には「多少強引に」や「一般的に強姦罪」といった文言が一切なかったという。準備書面にあったのは「強姦罪というようなことを認めたということはあり得ない。絶対にない」という強い否定。しかし、雇用主や女性の前で釈明した際には自身の行為を「強姦罪」と明言しており、準備書面には虚偽の内容が記されていた可能性さえある。
記者が感じたのは、開き直りと言うしかない被告男性の態度への疑問。新形コロナの療養施設内で性行為に及んだということについて反省の色が見えなかったからだ。“どうしたらこんな態度がとれるのか。あまりに無責任だ”――その無責任さが如実に示された場面があった。
女性の代理人弁護士が、性行為の際に一度もコンドームを使っていなかった点について聞いたところ、男性は「そこになかったので使ってない」。さらに、妊娠の可能性を考えなかったのかと追及されると「(女性から)生理不順だから大丈夫だよ、と言われたので鵜呑みにした」と説明する。しかし、複数回の性交渉を行っていながら、すべて「生理不順だから大丈夫」で片付けられる話ではあるまい。ましてや男性は医師会の職員。避妊に関する知識は持ち合させていたはずだ。この無責任かつ不合理な証言に呆れたのか、男性は裁判官からもコンドームを持っていなかった理由を聞かれ、きっぱりと「そもそも購入をしてなかったという、ただそれだけ」。“生理不順を鵜呑みにした”という理由を自ら否定してしまった。
男性や県医師会の幹部たちは、事件発覚以来「合意に基づく性行為」だったと強弁し続けてきた。しかし、刑事事件の捜査過程では提示されなかった録音データが民事法廷で示したのは、男性や県医師会の主張を根本から覆す男性本人の “自供過程”だった。今後、裁判の行方に注目が集まるのは確実だ。
ちなみに、刑事事件の捜査過程で録音データが提供されなかったのは、女性が持参した告訴状の受け取りを拒否した県警中央署の姿勢と、男性の父親が同署勤務の警官だったことから、「事件を潰される」と危惧したのが主な理由だと考えられる。つまり、被害女性側が警察や検察を信用していなかったということだ。女性側の想定が当たっていたことは、その後の鹿児島県警を巡る数々の隠ぺい事案が証明している。(中願寺純則)
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【疑惑・2021年9月に新型コロナウイルス感染者の療養施設内で起きた強制性交事件で被害を受けたと訴えてきた女性からの、告訴状を受理しながら、鹿児島県警の捜査がまったく行われていなかった問題】 2025年04月18日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。