【高橋洋一氏・政治経済ホントのところ・05.14】:日銀は参院選まで静観 景気予測を大幅引き下げ
『漂流する日本の羅針盤を目指:【高橋洋一氏・政治経済ホントのところ・05.14】:日銀は参院選まで静観 景気予測を大幅引き下げ
日銀は今月1日の金融政策決定会合で景気予測を大幅に引き下げ、2025年度の実質国内総生産(GDP)成長率を1月時点の前年度比1・1%から0・5%にした。トランプ米政権の関税強化策に端を発した貿易摩擦で世界経済が急減速し、国内企業の収益が打撃を受けると判断した。政策金利を維持することも決めた。日銀の今回の判断に対する見解はどうか。
25年度のGDP成長率は1・1%から0・5%へ下方修正され、消費者物価指数は2・1%から2・3%へと上方修正されている。なお、インフレ目標のベースとなる消費者物価指数(生鮮食品除く)では、2・4%から2・2%へと下方修正している。
この日銀の判断は、先日の本コラムに書いた国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しとほぼ同じである。ちなみにIMFの世界経済見通しでは25年の日本のGDP成長率は1・1%から0・6%へ、消費者物価指数は2・0%から2・4%になるとされている。
本コラムにおいて、日銀の植田和男総裁は、インフレ率がインフレ目標の範囲内にあるにもかかわらず在任期間中に政策金利を2%まで引き上げたいので、あと3年の任期中1年に2回のペースで利上げをもくろんでいるとした。
しかし、さすがに今回の世界経済の混乱を前にして、そのペースをにおわすこともできなかった。IMFの世界経済見通しを機械的に踏襲し、今は騒がないのが得策と考えているのだろう。ちなみに金利正常化(つまり利上げ)という報道も影を潜めている。
米国の25年1〜3月期の経済成長率は、駆け込み輸入増でマイナス0・3%だった。日本の25年1〜3月期は16日に公表されるが、米国と同様にマイナス成長の可能性もある。4〜6月期は本格的に景気後退の可能性も否定できない。
今のところ米連邦準備制度理事会(FRB)がトランプ大統領の利下げ要求にも屈しないで頑張っていることは、日銀にはありがたい援軍だろう。当面は、世界経済情勢や米FRBの動きを注視しつつ、年2回の利上げチャンスをうかがうが、米国が利下げすると日銀も頑張りきれないだろう。
いずれにしても、7月の参院選の前までは、日銀が動くのは適切ではないので基本的に静観である。その後、どう動くかは参院選の結果や与野党の枠組み、7月初旬で切れるトランプ関税の猶予期間後の米政権、米FRBの動きなどを総合的に勘案しながらの政策運営になるだろう。
■(たかはし・よういち=嘉悦大教授)
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元稿:北國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【コラム・連載「政治経済ホントのところ」】 2025年05月14日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。