アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

死ぬまでにしたい10のこと 2003年 カナダ・スペイン

2007-02-22 | ヒューマン・ドラマ
余命はあと2,3ヶ月。
突然そう告知されたアンは、一瞬動揺する。
だが、前を見据え考える。
わたしにはしなければならないことがたくさんある。
残された時間でできることは・・・

自分が然るべきことを10項目に分けリストアップしていく。
幼い娘たちに。
残される夫に。
そして自分自身に・・・

生きているって素敵なこと。
愛すること、愛されること。
雨を感じる。
素足に感じる大地。
普段何とも思わなかったことが、身体を通して伝わってくるこの感じ。
・・・じっと、かみしめよう。

隣に、同じ名前のアンという看護師が越してきた。
どことなくわたしに似ている。
子供たちも彼女になついている。
彼(夫)もきっと・・・、きっとみんな大丈夫だわ。

個人的に引っかかったのは、アンが別に恋人をもったこと。
リストの中にも書いている。
17才で最初の子を産んだ彼女であったから、また恋をしたいって気持ちもあったのかもしれない。
コンビニエンスな相手といっては失礼だが、恋人をも傷つけることを承知で関係を続ける狡さが痛々しい。
あの優しい夫に、背信行為を残した彼女の複雑な思いに首をひねる一方で、妻でも母でもない、一人の女として最期を迎えた意固地な姿勢に、ある種の潔さをも感じる。

ミッドナイト・ラン ’88 アメリカ

2007-02-16 | アクション
元シカゴ警察の刑事だったジャックは、今では保釈金融会社と手を組む、金さえ手に入りゃあ何だってやると息巻く、成り下がった男であった。

仕事が終わるや否や、新たな話がジャックに舞い込む。
マフィアの金を横領した、会計士のデュークを期限内に連れて帰ること。
契約金は10万ドルだ。

しかし、そう易々と連れて来られないところが笑える。
飛行機恐怖症だというデュークのため(後でウソだと判明)、バスを乗り継ぎ、車を盗み、貨物列車に飛び乗り・・・
次から次へと、彼らに邪魔が入るのもおかしい。
ちょっと間の抜けたFBIやら、ジャックと同業者の頭のよろしくないマーヴィンだとか、これまた何だか覇気のないマフィアの連中が先回りして、ジャックたちを待ち伏せしていても、何やかやで、いつも失敗だらけ。
ジャックのすったもんだの珍(?)護送が見もの。

この映画は、忘れた頃に観直すとすごくいい。
ひねくれ者ジャックと、筋を通さずにはいられない性質(たち)のデュークとの掛け合いもいい。
突っ張っていたジャックも、いつしかこんな言葉を発するようになっていた。
「来世では、友達になれるかもな」

デュークは、ジャックの心根を知った。
ジャックは、心を入れ替えた。
だが、二人はもう会うことはない。
そして、互いに声を掛け合う。
「来世でまた会おう」

駅 STATION ’81 日本

2007-02-03 | ドラマ
高倉の健さんと聞いて『網走番外地』をイメージする人は、相当の健さん好きだろう。
「俺はわらじをはくぜ。 北へ向かう」
なんて健さん風に言っても、恥ずかしくなるだけです(笑)

男、健さんは雪との相性が抜群なのだ。
どこがロケ地に合うかといったら、どうしたって雪国だろう。
間違っても南国ではない。
寡黙な男には雪が似合うのだ。

本作品は、女性の名前にスポットを当てた三幕から成っている。
第一幕は、健さん演じる、警察官三上の元妻の名前〈直子〉。
第二幕は、犯人の妹の名前〈すずこ〉。
そして第三幕は、三上が惚れた女の名前〈桐子〉である。
特に終幕は、前二幕の人物も登場させて、うまく繋がりをもたせている。

桐子役の倍賞千恵子。
寅さんの妹〈さくら〉のイメージが強いが、ここでは女のしたたかさを見事に演じていた。

彼女の店でふたりきり。
桐子が三上の胸にもたれかかる。
そこに絶妙のタイミングで流れる、八代亜紀の『舟唄』。
非常に効果的な場面であった。

別れと出会いの舞台である駅。
切なさと、一度決めた事を貫徹できなかった悔しさが入り混じった三上の表情に、涙した男たちも多いと思う。