アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

インナースペース ’87 アメリカ

2006-01-31 | SF
スティーブン・スピルバーグを製作総指揮に迎えた、SFXアドベンチャー。
笑いあり、涙あり、愛があり、そして友情ありの、落ち込んでいるときに観るにはもってこいの、元気印の映画である。

人間をミクロ化し、動物の体内へ送り込む研究者達。
ウサギの体内へ入るべく、注射器の中で準備態勢にいるタック。
しかし、その注射器を持っていた研究者が、スパイに狙われ追い回されてしまう。
やむを得ずその研究者は、手にしている注射器を通りすがりの男、ジャックのおしりにブスッと・・・!

ウサギのはずが、何故人間の体内に!?
疑問だらけのタック。
僕の体の中がおかしくなっている!
頭の中もヘンになってしまったとカン違いのジャック。
さあ、ここからジャックとタックとのすったもんだが始まってゆく。

ジャック役のマーチン・ショートが笑える。
彼は、アメリカの有名なコメディ・ショーの出身なので、こういった笑いの間がうまい。
スティーブ・マーチンと共演した、’86の『サボテン・ブラザーズ』もアホらしくて可笑しかったなぁ。

人間の体の中の映像やら、超リアルに映し出されていて、特に胃の内部なんておぉっ、怖っ!(笑)
さすがスピルバーグ、そういった細かい部分にまで、目を光らしていたであろうことがうかがえる。

生まれ変わったようなジャックが、ひらりとオープンカーに乗り、去ってゆくシーン。
パート2があってもおかしくないエンディングだったけど。
メグ・ライアンとデニス・クエイドが別れちゃったんじゃ、今更どうすることもできないか。
ある意味、残念だ。 

めぐりあう時間たち 2003年 アメリカ

2006-01-27 | ヒューマン・ドラマ
女流作家ヴァージニア・ウルフ著『ダロウェイ夫人』を軸に、三つの時代のヒロインたちの心の深奥を描いた力作。

1923年、『ダロウェイ夫人』を執筆中のヴァージニア。
彼女を演じ、アカデミー賞で見事、主演女優賞を獲得したニコール・キッドマン。
青い血でも流れているような、陶器を思わせる白い肌のクール・ビューティなニコールだが、今回の演技は、彼女の実力を垣間見たような思いであった。
〈つけ鼻〉に関しては、ちょっとズルかったかもしれないけど(笑)
トム・クルーズと離婚してから、ますます仕事に拍車がかかっているようで、お喜び申し上げてよいのかどうか・・・

1951年、『ダロウェイ夫人』を愛読中の主婦ローラ。
彼女をジュリアン・ムーアが演じていた。
個人的には、ニコールよりも、彼女の演技に好感がもてた。
女性ならではの、心の奥底に潜む苦悩を巧みに演じた彼女。
決して目立つ演技ではないのに、非常に光っていたのが印象的。

2001年、『ダロウェイ夫人』と、元恋人から呼ばれているクラリッサ。
幅広い演技で名高いキャリア女優、メリル・ストリープが演じたクラリッサは、現代の女性らしく、一人で何役もこなすパワフルウーマンである。
だが、表向きは元気そうに見せてはいても、そこはやはり現代人。
ストレスで心は疲れているのである。

それぞれの時代の女性たちの生き方に同情しつつ、またいつの時代でも女性が抱えるものは重く、やっかいなものなのだと改めて考えさせられてしまうのである。

点子ちゃんとアントン ’99 ドイツ

2006-01-22 | ドラマ
10才の点子ちゃんと、同級生のアントンは大の仲良し。
どちらかが困っているときは、必ず片方が助けてあげる。

点子ちゃん家はお金持ち。
だけど家族みんなで過ごすときがない。
お父さんもお母さんも、仕事で忙しいから。
アントンはお母さんと二人暮し。
病気のお母さんの代わりに、夜、アイスクリーム屋さんで働いている。(もちろん内緒で!)
アントン親子はとっても仲がいい。
だから点子ちゃんは、そんな二人をとってもうらやましく思っている。

友だちを助けようと、力になろうと奮闘する彼らが、なんとも勇ましい。
本作品は、ドイツの有名な児童文学の一つであることから、昔の『カルピス劇場』のアニメのように、大人にとっても懐かしく、また元気をもらえるストーリーである。

子供も10才位になると侮れないものだ。
大人がドキッとするようなことも平気で言うし、この点子ちゃんもお母さんを説教しちゃったりして(笑)
アントンの母思いと、しっかりさにも感心してしまう。
でも、二人ともまだまだお母さんに甘えたい年頃なんだよね。
点子ちゃんが、「もっとお母さんと一緒にいたい」ってセリフには、忙しいお母さんたちには、ちょっとくるものがあるかも。

みんなと一緒の楽しいバカンス。
「胸がいっぱいで・・・」
そう、嬉しそうにつぶやく点子ちゃんの笑顔のラストが最高!




スモーク ’95 日本・アメリカ

2006-01-18 | ヒューマン・ドラマ
愛煙家たちにはたまらなく、味わい深いこの映画。
奥深く、非常に歯ごたえのある作品だ。

原作者のポール・オースターは、アメリカでは相当人気のある作家だそう。
彼の小説を気に入ったウェイン・ワン監督が、直々に、本作品の脚本を彼に頼み込んだそうである。
男が惚れ抜いたってところがまた本気っぽくって、期待したくなってくる。
本作品は、その期待を裏切りません。

ブルックリンの街角で、煙草屋を営む男オーギーに、ハーヴェイ・カイテル。
凄味のある役が多かった俳優だが、この映画の彼は自然体で味があって、とにかく渋い!

オーギーは店の前で、毎日同じ時刻に、街角の写真を撮るのが日課なんだが、これがなかなか粋な趣味だ。
彼がその写真のアルバムを、店の常連である作家と煙草をくゆらせながら眺めているシーン。
これがまたいい。
「みんな同じじゃないか」
「いや、よく見てみろ。 みんなどことなく違ってるんだ。 同じものなんて一枚もない」
作家を演じたウィリアム・ハートの、静かな演技もまた格別。

なんてことはない日常を、煙草屋を中心に四方八方と話を入り組ませ、これほど上質な作品に仕上がったのは、本作品に携わった者たちの力量といえるだろう。  

宋家の三姉妹 ’97 香港・日本

2006-01-12 | 伝記
不思議と、三姉妹というのは仲のよいケースが多いように思う。
○○さん家の三姉妹もとても仲がいい(笑)
映画に出てくる三姉妹も、何だかんだ言いながらも、たいていが仲良しだ。
バランスがいいのだろうか。

本作品の三姉妹は、20世紀初頭、激動の中国で波乱に満ちた人生を送った人物たちである。

富を愛した長女のアイレイは、孔子の75代目の孫にあたる大財閥の御曹司と、祖国を愛した次女ケイレイは、革命家である孫文と、そして、権力を愛した三女ビレイは、軍事司令官、後の台湾総統となる蒋介石と結婚する。

幼い頃から仲のよかった姉妹たちが、それぞれの思想の違いから離れざるを得ない状況になりながらも、血の結束というのだろうか、三人の絆の強さに、また三人の劇的な生きざまに驚かされる。

次女のケイレイを演じたマギー・チャンがよかった。
この人は、〈内に秘めた強さを持った女性〉という役柄が、本当に上手い女優さんである。
そのうえ品のある演技で、今回も適役でありました。

ラストのテロップに映し出される、「革命は愛である。 愛もまた革命である」とは、何とも言い得て妙ではないか。  

フランスの思い出 ’87 フランス

2006-01-09 | ドラマ
9才のルイは弟が産まれるまで、母親の友人マルセルの家に預けられる。
パリ育ちの彼にとって、田舎の生活はどれも新鮮なことばかり。
初めて母親と離れて過ごすのは、ちょっぴり不安だし、とっても淋しいこと。
だけど、マルセルと彼女の夫プロ、そして隣に住むおませなマルティーヌたちの元気をもらって、ひ弱だったパリジャンが、少しだけ成長した姿が微笑ましい。

マルセル夫婦は子供を亡くしていた。
プロが言う。
「生きていれば、ちょうどお前ぐらいの年だ」
マルセルは、その辛い過去から抜け出せないでいた。
その理由からか、彼女は夫に心を閉ざしたままでいて・・・

ふたりともどこへ感情をぶつけていいのかわからない。
夫は酒におぼれ、妻は針仕事に没頭する。
そこへやってきたルイが、きっとふたりの心を初心に戻してあげたのだろう。

ルイのおかげで、きっちりと向き合うことができたマルセルとプロ。
下手に淋しさを隠していたって仕方がないことに気づいたふたり。
温かな抱擁が、彼らの気持ちをよく表現していたラストであった。

出て行く者よりも、残された者のほうが辛いけど、その分強くなっていけるんじゃないかな。 

シャイン ’95 オーストラリア

2006-01-05 | 伝記
実在のピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴッドをモデルとした本作品。
彼の父親との確執、ラフマニノフへのこだわり、そして伴侶の愛の支えに至るまで、スコット・ヒックス監督が、ヘルフゴッド夫妻の協力のもと、素晴らしい映画を作り上げた。

少年時代~青年期、ピアノと父親に対する重圧で、痛々しいほどの時代を過ぎ、やがて成人後の何ものにも縛られず、力まず、何より人々が明るく自分に接し、愛してくれていることに実感できた、彼の幸福に満ちた表情を見て素直に嬉しく思えてくる。

ハイライトは何といっても、青年時のデヴィッドがコンクールで『ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番』を弾くシーンだろう。
ほとばしる汗。
我を忘れるほど、一心不乱に鍵盤を叩くデヴィッド。
だが、あまりにも繊細な神経であった為、情熱的すぎるラフマニノフを弾きこなした直後、彼のその繊細な糸は切れてしまう・・・

しかし彼はラフマニノフを愛し、また弾き続けるのである。
ラフマニノフに苦しめられ、泣かされ続けたにも拘らず・・・

成人後のデヴィッドを演じたジェフリー・ラッシュ。
本作品で、アカデミー賞の主演男優賞を受賞している。
本当にスゴイ名演技でありました!