アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

ミルコのひかり 2005年 イタリア

2009-06-30 | 伝記
目にしているものを、本当に欲しているとは限らない。
それが真実かどうか見定めることが、往往にしてできないことがある。
目から伝わるすべてが正しいとはいえない。
見ることができなければ、感性で見極めるしかない。

見えているのに見抜けない。
見えていないのに見通すことができる。
見えていても見過ごしてしまう。
見えていなくても心で見えている。

自然の音を、これほど丁寧に聞いたことがあるだろうか。
目を閉じて、じっと耳を澄ましてみる。
普段聞こえない音まで、そっと耳に入ってくる。
心で見、心で聞く。

先日の国際コンクールで優勝したピアニストの辻井伸行さんに、インタビュアーが「もし一日、目が見えたら何を一番見たいですか?」と訊いていた。
彼は、両親の顔、それから星を見てみたいと、丁寧に答えていた。
その後に、「でも心で見えているから、それで満足です」と付け加えた。
その言葉を聞いて、甚く胸が熱くなった。
音楽を聴く際、無意識に目を閉じるのは感性によるものだろうが、そうすることによって、より音が鮮明に聞こえてくる。
見えなかったものも“見える”ようになる。

不慮の事故により、10才で光を失ってしまったミルコ。
彼はイタリア屈指の音響クリエイターである。
そのずば抜けた才能は少年の頃すでに開花しており、それが優れた感性とともに、確固たる信念を貫かせた。

ハードキャンディ 2005年 アメリカ

2009-06-23 | ミステリー&サスペンス
14才のヘイリーは、出会い系サイトでチャット中。
3週間続くその相手は、32才のプロカメラマン、ジェフ。
二人が初めて会う。
〈11時で、どう?〉

「なんかそんな感じに見えなーい」
ヘイリーは、大好きなガナッシュをほおばりながら、ジェフの印象をそう告げる。
甘え上手なヘイリーに、ジェフは目を細める。
「送っていくよ」というジェフの言葉を制すヘイリー。
「家に行ってもいいよ」

「怪しい飲み物は飲んではダメって言われてるの」
ジェフが差し出すグラスを拒むヘイリー。
「賢いな」
「それよりも、もっと美味しいもの作ってあげる」
冷蔵庫を開け、オレンジジュースを取り出す。
女バーテンダーよろしく、ヘイリーはスクリュードライバーをジェフに手渡す。
「ねぇ、あたしを撮ってよ」

序盤から一転して、ものすごい展開になっていったのには恐れ入った。
少女と男の一騎打ち。
どちらの言っていることが正しいのか。
ヘイリーは一体誰なのか。
少女といえども、あなどるなかれ。

男性を震撼させたこの映画。
身も大事なモノも縮みそうなほどの恐怖である。
実際鑑賞中に失神した人もいたそうなので、冗談ではなく、体調が悪いときは遠慮したほうがいいかもしれない。

しかし驚いたのが、ヘイリー役を演じたエレン・ペイジだ。
『花の中3トリオ』の頃の森昌子似に加え、少女時代のジュリエット・ルイスを甘くしたような大それた演技。
彼女はただ者ではないゾ。

マッチポイント 2005年 イギリス

2009-06-15 | ミステリー&サスペンス
試合の最後を決める一点は、“運”なのか。
冒頭、テニスの試合でマッチポイントを決めた後、コート上にボールが乗った際、そのボールがどちらのコートに落ちるかは運だと言っていた。
確かにそれもあるだろう。
アウトか? インか!?
ボールがライン上に落ちたときの心境も、まさにそんな感じである。

古典的なミステリー作品らしく、終盤ギリギリまで基本通りの筋書きであるため、フムフム、ハイお次は?ってな感じで鑑賞。

上流階級育ちのトムとクロエの兄妹。
トムには、アメリカから来た女優志望のノラという婚約者が。
クロエは、兄が連れてきた元テニス・プレイヤーのクリスを気に入る。
後にクリスは、トムたちの父親に目をかけられ、彼のもつ大企業の重役ポストにまで上りつめる。
やがて、クロエと結婚。
一方で、トムとノラは婚約を解消し、トムは別の女性と結婚する。
この中で、ドロドロの関係に陥っていたのが、クリスとノラである。
「お互いの仲が分かってしまったら、せっかくのチャンスが丸つぶれよ」と、ノラはクリスに警告したのであったが、クリスはノラに夢中ながらも、ちゃっかりクロエと逆玉婚してしまう。

その後も当たり前のように、クリスはノラと関係を続ける。
そして、お決まりのように、ノラは妊娠してしまうのである。
これは一大事だ。
もちろん、クリスは今の生活を壊すつもりなんて毛頭ない。
ノラは人が変わったように、クリスに詰め寄る。
頭を抱えるクリス。

もうここからは、恐らく同じような展開を想像すると思うのだが、ラストは意外であった。
悪運が強いというのはこういうことか。
後味は、苦め。

マーズ・アタック! ’96 アメリカ

2009-06-05 | SF
いやぁ、よかった。
マジメに見入ってしまった(笑)。
これをくだらないととるか素晴らしいとみるかは、それぞれの判断に委ねるが、個人的には両方とれる(笑)。
いや、だからこそいいのだ。

当時、一部の批評家やライターたちには絶賛され、「本年度(97年)のベスト3に入る」とまで、熱烈に(?)支持されていた映画なのである。
キャスティングをみてもそうそうたる顔ぶれであり、ティム・バートン監督への信頼度の高さがうかがえる。

火星人たちが、地球へとやってきた。
― WELCOM TO THE EARTH ―
「わたしたちは、あなた方を歓迎いたします」
「ワレワレハ ユウコウノタメニ ヤッテキタ」
その言葉に感動した聴衆の一人が、白鳩を放つ。
しかし鳩は、無残な姿で地面に叩きつけられる。
火星人の持つレーザー銃が、平和の象徴である鳩に向けられたのだ。
「・・・文化の違いから誤解されたのは、無理もないことであります」
文化の違いって・・・(笑)

火星人たちは人間を、都市を破壊する。
ものすごい顔の火星人たち。
むこうからしてみれば、人間もものすごい顔に見えるのだろうなぁ。
人間の首に、犬の頭部をくっつけちゃったりするのだから。

ビキニパンツ姿の火星人たちには驚愕したが(笑)、リサ・マリーが素のままで火星人に見えてしまう、その人間を超越した姿にも驚きを隠せない。