礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

日常の中にある戦争(大西進『日常の中の戦争遺跡』を読む)

2012-07-17 04:09:39 | 日記

◎日常の中にある戦争(大西進『日常の中の戦争遺跡』を読む)

 先日、摂河泉地域文化研究所の小林義孝さんにお目にかかった折り、大西進氏著の『日常の中の戦争遺跡』(アットワークス、二〇一二年六月)という本をいただいた。
 この本は、旧陸軍の「八尾・大正飛行場」に関わる資料・史実を発掘した本である。帯にも、「旧陸軍航空兵力の一大拠点/八尾・大正飛行場の全貌」とある。それだけでも注目すべき本である。しかし、それ以上に注目すべきは、この本が、戦時中(特に敗戦直前)の大阪・河内地区における「戦争」の日常を、リアルに再現していることではないだろうか。
著者の大西進さんは、大阪・河内地区に残存する「戦争遺跡」を克明に調査され、かつての「戦争の日常」を、当時の一般庶民の視線に立って再現することに成功している。
この本のタイトル『日常の中の戦争遺跡』には、今日においても、大阪・河内地区に、多数の戦争遺跡が現存しているという意味がある(『日常の中の「戦争遺跡」』)。同時にまた、「日常の中に戦争があった」時代を振りかえるという意味が含まれている(『「日常の中の戦争」遺跡』)。後者の意味においては、この本が訴えようとしたことは、もちろん、大阪・河内地区という「空間」を超えている。あるいは戦時中という「時間」を超えている可能性もある。
 おそらく、全国どの書店の店頭に並ぶというという本ではないであろう。しかし、労作であり、また考えさせられる本である。コラムの読者諸氏には、是非とも、手にとっていただくようおすすめしたい。同書の構成は以下の通り。

序 ふるさと八尾 戦争と戦争遺跡(聞き手・小林義孝)
 Ⅰ 帝国陸軍大正飛行場
 Ⅱ 大正飛行場の風景
 Ⅲ 日常生活に見える戦争の痕跡
 Ⅳ 「防空都市」作り
 Ⅴ 空襲の被害
 Ⅵ 「本土決戦」の幻想
 あとがき
 戦争遺跡を綴る

今日の名言 2012・7・16

◎戦後、この防空空地帯を活用して大阪中央環状線ができました

 大西進さんの言葉。『日常の中の戦争遺跡』23ページより。「防空空地帯」は、〈ボウクウクウチタイ〉と読むのであろう。中央環状線は、大阪府東部を縦断する幹線道路であるが、大西さんによれば、この幹線道路もまた「戦争遺跡」にほかならない。

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