◎プロペラはボス部の工作が難しい
岡本勝治の『航空発動機主要部品工作と段取』(中央工学会、一九四四年三月)を紹介している。本日は、第10章「プロペラ」を紹介してみたい。
「図」はすべて省略する。
第10章 プ ロ ペ ラ
第1節 プロペラとは
プロペラは第89図の如き形状にして、推進機、螺旋機〈ラセンキ〉などゝも呼ばれ、飛行機の機体、発動機と共に三つの重要な部分である。
又現今発動機の単位馬力が急速に増大するに伴つて、これに適応した性能のプロペラの硏究が急務となつてゐる。
第2節 プロペラの形状及び構造
従来プロペラは軽いことゝ、加工が容易なためにマホガニ、胡桃〈クルミ〉等の木材が使用されてきたが、この木製プロペラは振動には強いが外傷には弱いのが欠点で、これを補ふために翼の表面に布又は真鍮網〈シンチュウアミ〉を張り、この上に塗料を塗つて補強したものであるが、最近では軽くて丈夫なヂユラルミン製の一体となつたものや、組立式のものが多く用ひられるやうになつた。
第3節 プロペラの製作と段取
プロペラの加工に際して、普通は特殊曲面を有する翼〈ヨク〉の部分がむづかしいやうに考へられてゐるが、実際には翼の部分よりも、高速度に廻転するプロペラ翼の全遠心力を支へ、正しい位置に固定するボス〔boss〕の部の工作が最もむづかしく、高精度を要する所であるから、加工には非〔ママ〕らず治具〔jig〕を用ひ、特殊な工作方法が応用されてゐる。
例へば第90図の如くプロペラ翼の軸心が常に全円周に対し、等角を有するやう三翼式のものでは120°に正確に仕上げねばならない。
若し〈モシ〉これが不正確であると、プロペラ全体の不平衡を来し〈キタシ〉、飛行中に震動を起す等の原因となる。
故にこの部分の工作は第91図の如く丈夫な正面板に正確に割出し得る治具を用ひ、ターレツト旋盤にて加工される場合が多い。
又第92図は普通旋盤に特殊装置を工夫し翼根本の丸径部を切削〈セッサク〉中のもので、翼の部分がビヽルことのなきやうに押へてゐる。
旋盤加工が終れば、研磨盤により孔を研磨し、ラツプ磨きをするのであるが、最近ではフオスタ一社〔Foster Machine Co., Elkhart, Ind.〕の超仕上機により超仕上するものも多くなつた。
以上の如く、ボス部の工作は高精度を必要とするものであるが、未だ真の特殊工作機械は少なく、万能自動機械に特殊な装置を設計したものが多い。
次にプロレラの工作順序をプロペラ翼部とボス部に区別して説明する。【以下略】
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