礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『英文法汎論』「訂正続版に際して」および「続訂五版に臨みて」

2021-10-22 02:44:02 | コラムと名言

◎『英文法汎論』「訂正続版に際して」および「続訂五版に臨みて」

 本日も、細江逸記著『英文法汎論』の話である。本日は、同書の第十三版(一九五〇年一二月)の巻頭から、「訂正続版に際して」および「続訂五版に臨みて」を紹介したい。
 なお、国立国会図書館でインターネット公開されている『英文法汎論』は、同書の訂正続版と思われるが(一九二六年一〇月発行)、その巻頭には、「Foreword」、「再版に臨みて」、「訂正続版に際して」が載っている。

     訂 正 続 版 に 際 し て

 本書が絶版になつてから既に数年を閲した。其間学界の各方面から或は残籍を求められたり、或はその続刊を勧められたりした事は絶えず繰返へされた限りなき感謝の種であつた。然も本書は其理想の相当高きにも拘はらず、未熟なる予の不完全なる著作である事を痛感するが故に是非共筆を新にして今少しく予の理想に近きものとしたい考から続刊を止めて居たが、公私多端、学窓寡閑、加ふるに筆を執つて既知を録せんよりは文を読んで未知を探らん事の望まるゝ事しげく、月又年と徒に〈イタズラニ〉過ぎて大方の同情に副ひ得なかつた事は誠に慚愧に堪へない。実に予は外遊中に於てすら遠く書を寄せて残部の有無を問合はされた方もあり、帰朝後にも再三続刊の勧説を受けて益〈マスマス〉自己の無能を恥ぢたのである。偶〈タマタマ〉泰文堂主篠崎〔信次〕君の反復の懇請に接したので今度こそは公務以外の万事を放擲して完稿を期し度いと思つたが、諸種の事情は到底短時日の間に山積の材料を整理せしめて呉れないので、已〈ヤム〉を得ず本書に訂正を施して続刊する事にした。日進月歩の学界にも英文法界は牛歩の憾〈ウラミ〉なきを得ない。予は今上述の事情の下に乏〈トボシキ〉を尽して僅に〈ワズカニ〉学界多年の同情に酬ゆる丈〈ダケ〉であるが若し多少にても進学の士の参考となり新学確立の階梯ともならば多幸、又貧弱ながら本書が前版の上に一歩でも進めて居る事が認めらるゝならば望外の喜悦である。若し夫れ〈ソレ〉予が希望する新著の完成に至りては諸賢の同情と垂教とを仰いで之を遠からざる将来に期し度い。予は研究を怠らないであらう。

 大正十五年九月      細 江 逸 記

     続 訂 五 版 に 臨 み て

 この拙き小著が属版発行後矢継早に再三版を重ねなければならなくなつた為、先年の第一版に見た誤植が思ひがけなくも再び顔を出した事を遺憾としつゝも之を訂正する閑を得なかつた事を謹んで社会に陳謝する。今小閑を得て第四版を出すに当り、出来る丈の訂正を加へると共に多少字句に修正を施して見たが、反復の酷使に損傷した紙型は最早充分の用をなさないな憾がある。幸に尚学界の同情を得るを得ば此次には全然版を組み替へ面目を新〈アラタ〉にして教を乞ふ考である。

 昭和二年三月       細 江 逸 記

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